ロリっ娘女子高生の性癖は直せるのか
【スピンオフ・修善寺の過去】小学生編「ロリ化計画」
「あの女共……絶対に反省なんかしてないはずだわ」
私への陰口が叩かれるようになってから数日後。
追い詰められた私に瑛美は「許さない」と言ってくれて味方についてくれた。そして彼女がクラスメイトにガツンと怒ってくれたのだろう。今日の私は一日を通して悪口を聞いたり、軽蔑される事は無かった。だけど……。
「十分じゃよ。父の行いもわしの言葉遣いも事実なのだし、直接害を受けないだけで十分満足じゃ」
馬鹿にするように笑われたり、ノートへ落書きされる事は無くなった。でも無視はされ続けている。クラスに存在しない者として私は未だにハブられているのだ。
「何が満足よ。あんただって本当は皆と仲良くしたいでしょ」
「そう……だけどわしには仲間に入れてもらう資格は無い……」
「ほらそういうとこ。あんたってそんな弱気でナメクジみたいにウジウジした奴だったの?」
顔を近付けてきて睨まれる。
今までの私だったら、笑って吹き飛ばすか蓋をして無かった事にするかのどちらかを選択していただろう。だが今の私は中途半端。瑛美が苛立ちを覚えるのも無理はない。
「ごめん……。わしもよく分からないのじゃ……」
「はぁ……。あんたって本当に世話焼かせな子ね」
きっと数年後の私だったら「お前が言うな」と叫んでいるだろう。だが当時の瑛美は抜け目が無く実に頼もしい存在だったのだ。
落ち込む私に瑛美は溜め息を漏らした後、薄らと笑った。
「私の部屋で遊ばない? 見せたい物もあるし、ちょっと気分転換しましょ」
言いながら私に背を向けて歩き出す瑛美。どうやら拒否権は無いようだ。でもこれも瑛美なりの配慮であり、照れ隠しでもあるのだろう。ここは一つ、彼女の言葉に甘えておく事にする。
「……自由な奴じゃのう、お主は」
「ん? 何か言った?」
「いや、なんでも」
振り返る瑛美に私は無言の笑顔で返す。
小学生の私にはあまりにも辛過ぎる惨劇で、誰も居ない無限の彼方へ逃げ出したいとも思ったけれど今は瑛美がいるから生きていけると思った。
今は彼女が私自身を繋ぎ止めてくれていた。
◆
「ささ、入って」
「お邪魔します……」
久々に訪れることとなった寮と瑛美の部屋。
自宅通学するようになってからは何となく疎外感を抱くようになり、寮内に立ち入るどころか付近を歩かないようにしていた。
お互いの部屋を行き来するほどだった瑛美も今では学校の外で遊ぶことがほとんどになった訳だし。
「なーに、かしこまっちゃってるのよ。もっと楽にしなさいって」
「じゃが……なんか緊張するんじゃよ」
しばらく来なかったせいなのか私の精神的不安定さが問題なのかは分からないけど、最も頼れる存在の瑛美を前にしても私は素直になれなかった。
「まあいいわ。……で、あんたはどうするの?」
「どうするって……?」
ベッドの側面に腰掛けた瑛美が問いかける。
「クラスの連中はあんたの口癖を馬鹿にしてるけどさ、それでも直す気は無い?」
「それは……」
私の特徴的な言葉遣いは私の自己満足によるものではない。「お姫様っぽい!」と気に入ってくれた蒼琉くんの遺志を受け継いでいるのだ。だから――
「うむ。わしが彼を想う限り、この癖は誰に何を言われても止めはしないのじゃ。もし止めてしまったらわしはわしで無くなってしまうからのう」
「そっか。なら良いんだけど」
私の答えを聞いた瑛美はニコリと微笑んで立ち上がる。
「ちょっと待ってて。あんたに見せたいモノ、出してくるから」
そう言い残して部屋の奥へと駆けて行ってしまった。瑛美が私に見せたい物って……一体何だろう。
◆
「え、何これ……」
意気揚々とした表情で両手に抱えて持ってきたのは衣類とアクセサリーが数点。ブランド物の自慢でもするのだろうか、と思いきや内容が奇抜すぎた。
「じゃーん! どう? これあたしが着たら似合うと思う?」
「は、はぁ!? これをお主が着るのか!?」
私の前に並べられたのは水色のスモッグや黄色い通学帽。制服のようなものも有るが……どれも園児向けの衣類だった。
「もちろんそうよ。ほら、あんたが昔に言ってたじゃない」
「……わしはお主が変態になるよう指導した覚えはないのじゃが」
「ち、違うわよ! そうじゃなくて「敢えて子供らしく売り込むのもアリ」って言葉よ」
「あぁ……。確かに言ったような気はするが……」
大人のレディーになる等と言ってるくせにツインテールと大きなリボンを付けていた瑛美を注意した時に言ったんだっけ。しかしあれは年相応の良さを生かすという意味で言ったのであって、逆行しろという意味では無かったのだが……。
「あれから気付いたのよ! あたしはモデルさんみたいにスタイルは良くないし、胸だってまだぺったんこだわ。だから大人っぽさを目指すのは止めて子供になれば良いってね!」
体型にコンプレックスを抱いている者は私を含めて巨万といるだろう。だがそのコンプレックスを逆手に取って行動に移すのは恐らく瑛美くらいだ。彼女のポジティブ具合は計り知れないな。
「知ってる? 世の中にはこういう服を着る女の子が好きな人もいるらしいんだよ。だからあたしもモテると思うの!」
「あぁモテモテになるかもしれないのう。ロリコンにな」
きらきらと目を輝かせている瑛美は知らないだろうけど、このロリコンという人種にはろくな人間がいないと聞いたことがある。
もちろん善良な奴もいるだろうが、時折私たち小学生女児を狙う不審者の情報を耳にすると、やはり良い印象を覚えないのが実情だ。
「止めたほうが良い。そんな馬鹿げた服を着て外に出たら格好の餌食じゃぞ?」
「やっぱりそうかな? だってモテちゃうもんね!」
「そうじゃない。お主の身に危険が及ぶからじゃ」
「危険……? でもそっか。確かに大勢の人に取り囲まれたら危ないよね」
「残念」と呟きながら園服を畳み出す瑛美。私の言う危険性がイマイチ伝わっていないようだが、諦めてくれたので結果オーライかな。
「じゃあ今度は小さい女の子が好きなおもちゃとか買ってみようかな。外見が駄目なら内面から磨かないとね!」
「はぁ……。もう好きにするとええ」
瑛美の欲深さには到底叶わない。彼女が片想いしている相手はとんだ幸せ者だな。
私への陰口が叩かれるようになってから数日後。
追い詰められた私に瑛美は「許さない」と言ってくれて味方についてくれた。そして彼女がクラスメイトにガツンと怒ってくれたのだろう。今日の私は一日を通して悪口を聞いたり、軽蔑される事は無かった。だけど……。
「十分じゃよ。父の行いもわしの言葉遣いも事実なのだし、直接害を受けないだけで十分満足じゃ」
馬鹿にするように笑われたり、ノートへ落書きされる事は無くなった。でも無視はされ続けている。クラスに存在しない者として私は未だにハブられているのだ。
「何が満足よ。あんただって本当は皆と仲良くしたいでしょ」
「そう……だけどわしには仲間に入れてもらう資格は無い……」
「ほらそういうとこ。あんたってそんな弱気でナメクジみたいにウジウジした奴だったの?」
顔を近付けてきて睨まれる。
今までの私だったら、笑って吹き飛ばすか蓋をして無かった事にするかのどちらかを選択していただろう。だが今の私は中途半端。瑛美が苛立ちを覚えるのも無理はない。
「ごめん……。わしもよく分からないのじゃ……」
「はぁ……。あんたって本当に世話焼かせな子ね」
きっと数年後の私だったら「お前が言うな」と叫んでいるだろう。だが当時の瑛美は抜け目が無く実に頼もしい存在だったのだ。
落ち込む私に瑛美は溜め息を漏らした後、薄らと笑った。
「私の部屋で遊ばない? 見せたい物もあるし、ちょっと気分転換しましょ」
言いながら私に背を向けて歩き出す瑛美。どうやら拒否権は無いようだ。でもこれも瑛美なりの配慮であり、照れ隠しでもあるのだろう。ここは一つ、彼女の言葉に甘えておく事にする。
「……自由な奴じゃのう、お主は」
「ん? 何か言った?」
「いや、なんでも」
振り返る瑛美に私は無言の笑顔で返す。
小学生の私にはあまりにも辛過ぎる惨劇で、誰も居ない無限の彼方へ逃げ出したいとも思ったけれど今は瑛美がいるから生きていけると思った。
今は彼女が私自身を繋ぎ止めてくれていた。
◆
「ささ、入って」
「お邪魔します……」
久々に訪れることとなった寮と瑛美の部屋。
自宅通学するようになってからは何となく疎外感を抱くようになり、寮内に立ち入るどころか付近を歩かないようにしていた。
お互いの部屋を行き来するほどだった瑛美も今では学校の外で遊ぶことがほとんどになった訳だし。
「なーに、かしこまっちゃってるのよ。もっと楽にしなさいって」
「じゃが……なんか緊張するんじゃよ」
しばらく来なかったせいなのか私の精神的不安定さが問題なのかは分からないけど、最も頼れる存在の瑛美を前にしても私は素直になれなかった。
「まあいいわ。……で、あんたはどうするの?」
「どうするって……?」
ベッドの側面に腰掛けた瑛美が問いかける。
「クラスの連中はあんたの口癖を馬鹿にしてるけどさ、それでも直す気は無い?」
「それは……」
私の特徴的な言葉遣いは私の自己満足によるものではない。「お姫様っぽい!」と気に入ってくれた蒼琉くんの遺志を受け継いでいるのだ。だから――
「うむ。わしが彼を想う限り、この癖は誰に何を言われても止めはしないのじゃ。もし止めてしまったらわしはわしで無くなってしまうからのう」
「そっか。なら良いんだけど」
私の答えを聞いた瑛美はニコリと微笑んで立ち上がる。
「ちょっと待ってて。あんたに見せたいモノ、出してくるから」
そう言い残して部屋の奥へと駆けて行ってしまった。瑛美が私に見せたい物って……一体何だろう。
◆
「え、何これ……」
意気揚々とした表情で両手に抱えて持ってきたのは衣類とアクセサリーが数点。ブランド物の自慢でもするのだろうか、と思いきや内容が奇抜すぎた。
「じゃーん! どう? これあたしが着たら似合うと思う?」
「は、はぁ!? これをお主が着るのか!?」
私の前に並べられたのは水色のスモッグや黄色い通学帽。制服のようなものも有るが……どれも園児向けの衣類だった。
「もちろんそうよ。ほら、あんたが昔に言ってたじゃない」
「……わしはお主が変態になるよう指導した覚えはないのじゃが」
「ち、違うわよ! そうじゃなくて「敢えて子供らしく売り込むのもアリ」って言葉よ」
「あぁ……。確かに言ったような気はするが……」
大人のレディーになる等と言ってるくせにツインテールと大きなリボンを付けていた瑛美を注意した時に言ったんだっけ。しかしあれは年相応の良さを生かすという意味で言ったのであって、逆行しろという意味では無かったのだが……。
「あれから気付いたのよ! あたしはモデルさんみたいにスタイルは良くないし、胸だってまだぺったんこだわ。だから大人っぽさを目指すのは止めて子供になれば良いってね!」
体型にコンプレックスを抱いている者は私を含めて巨万といるだろう。だがそのコンプレックスを逆手に取って行動に移すのは恐らく瑛美くらいだ。彼女のポジティブ具合は計り知れないな。
「知ってる? 世の中にはこういう服を着る女の子が好きな人もいるらしいんだよ。だからあたしもモテると思うの!」
「あぁモテモテになるかもしれないのう。ロリコンにな」
きらきらと目を輝かせている瑛美は知らないだろうけど、このロリコンという人種にはろくな人間がいないと聞いたことがある。
もちろん善良な奴もいるだろうが、時折私たち小学生女児を狙う不審者の情報を耳にすると、やはり良い印象を覚えないのが実情だ。
「止めたほうが良い。そんな馬鹿げた服を着て外に出たら格好の餌食じゃぞ?」
「やっぱりそうかな? だってモテちゃうもんね!」
「そうじゃない。お主の身に危険が及ぶからじゃ」
「危険……? でもそっか。確かに大勢の人に取り囲まれたら危ないよね」
「残念」と呟きながら園服を畳み出す瑛美。私の言う危険性がイマイチ伝わっていないようだが、諦めてくれたので結果オーライかな。
「じゃあ今度は小さい女の子が好きなおもちゃとか買ってみようかな。外見が駄目なら内面から磨かないとね!」
「はぁ……。もう好きにするとええ」
瑛美の欲深さには到底叶わない。彼女が片想いしている相手はとんだ幸せ者だな。
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