ロリっ娘女子高生の性癖は直せるのか

きり抹茶

4-3 「当日のお楽しみにね!」

「私、今日はお馬さんごっこで遊びたいな、瑛美お兄ちゃん!」

 聞き間違いか?
 最初は自分の耳を疑ったが、どうやら問題はないようだ。なら……。

 瑛美お兄ちゃんって誰だよ!?
 いや、なんでお兄ちゃんなんだよ!?

 言葉を失う俺を見て察したのか、堂庭が話し始める。

「この手のゲームにありがちだけど、主人公は男固定なのよねー。これって男女差別だと思わない?」
「あぁそういう事ね。でも女だとただの百合ゲーになるし、どうせ男しか需要無いだろ……」

 まあ目の前にそのがいるわけですが。

「あと設定は大抵兄妹っていうね。別にいいんだけど実際こんな可愛い妹なんて存在しないし、お触りできるほど仲が良い兄妹も有り得ない。だからイマイチ主人公に感情移入できなくて楽しめないのよね……」

 なんか語り出しているけど……あなたには桜ちゃんっていう二次元にも負けない可愛い妹がいるでしょうが。

「まあ所詮ゲームだしいいんじゃねぇの?」

 堂庭の言い分も理解できるが、ゲームと現実を区切って考えるのは大事だ。
 現実で有り得ない事ができるからこそのゲームなのである。

 その後も堂庭は幼女ゲームの在り方について持論を繰り広げていた。俺は適当に相槌を打ってやり過ごしながら、VRの中に住む女の子と遊んだ。

「ふぅ、これで一通り終わりか」

 一区切りついた所で装着していたVRゴーグルを外す。
 すると堂庭は期待のまなざしで顔をぐいっと寄せてきた。

「どうだった?」
「あ、うん……面白かった、けど……」

 不覚にもドキドキしてしまう。見慣れた顔だというのに……。
 恐らくVRの世界から戻ってきたギャップのせいだな。うん、それに違いない。

「何か不満な所とかあった?」
「うーん。不満というよりはだな……」

 ゲーム内容に違和感があった。
 幼女と仲良く遊ぶのがテーマ。それは分かったのだがなんというか……変なのだ。

「馬乗りとか脱衣野球拳とか……色々おかしくないか?」
「ふっふっふ。気付いちゃった?」

 手を顎に当て、嬉しそうな顔をする堂庭。
 そして一旦しまったゲームのパッケージを再び取り出して俺に見せつけてきた。

「じゃーん! これは『VRヨウジョ』って名前のゲームなの!」
「む? それがどうか…………って!?」

 パッケージの表面をよく見てみる。
 ゲーム内で登場した女の子のCGイラストとタイトルが可愛らしいロゴで大きく描かれている。
 ここまでは問題ない。普通(?)のゲームだ。
 だがパッケージの左下にいけないマークとメッセージが……。

『R-18 18歳未満の購入・遊戯を禁止します』

「エロゲーじゃねぇかこれ!?」
「ちょっとそんな大声で叫ばないでよ、恥ずかしい」
「お前のゲームだろうが……つかどうやって手に入れた?」

 店頭はおろか、通販でもこの手のゲームの購入は一筋縄ではいかないはずだが……。

「メイドに頼んだの! あたしの事情をきちんと理解してくれてるし助かってるわ!」
「その手があったか! くそっ、この変態お嬢様め……」

 堂庭家には昔から豪邸の管理をしているメイドが何人も働いている。
 従者と主人という立場を利用した計画的な手口……こいつの幼女愛は底知れないな。

「でも安心しなさい! 基本的に如何わしい展開はロックしてあるから至って健全なゲームだわ!」
「そっか、なら良かった……じゃねぇよ! つか基本的にって言ったけど解除してやった事もあるのか?」
「それはまあ……コンプの為に…………」

 顔を赤くして答える堂庭。

「一つ言っておくが……犯罪はするなよ?」
「……うん、分かってる」

 なんとも馬鹿らしい説教で本日のお楽しみタイムは幕を閉じた。


 ◆


「また遊びに来てもいいわよー」
「二度とやるか! あんな変態ゲームなんざこりごりだ」

 背の高い大きな門の前。
 見送りに来た堂庭と軽く小話をしていた。

「話は変わるけど、今度あたし達と遊ばない?」
「いや、今日みたいな遊びだったらお断りするぞ」
「……あのさ、今あたしって言ったのよ。二人きりじゃないのにあんなエッチなゲームできる訳ないでしょ」
「お、おぅ、そっか……」

 一応自覚はあるんだな。ってか俺とならエロゲーで遊んでも良いのかよ。
 いくら幼馴染みとはいえ俺も男である。そこんところの自覚はもっと持っていこうぜ。

「桜や……あの口の悪いお姫様にも一応迷惑かけちゃったし、そのお詫びとして一緒に遊ぼうって考えたの」
「お詫び……? あ、もしかして七夕祭りの事か?」
「そうよ。あたしのせいで色々台無しにしちゃったからね」

 あはは……と苦笑いを浮かべる堂庭。
 こいつは反省する時は凄い真面目になるし、見た目はお子様でも中身は普通にしっかりしているんだよな。

「で、何して遊ぶんだ?」
「それは……キャンプよ、新しく買った別荘でね!」
「…………別荘!?」

 なんだこいつ! この豪邸以外に別荘まで持っていたのかよ!

「先月くらいかなー。あたしがバーベキューしたいっておねだりしたらお父さんが箱根で物件を探して買ってくれたの!」
「買ってくれたの、じゃねーよ! コンロとか材料を買うだろそこは!」

 つかこの広い家ならバーベキューぐらい好きなだけできるだろ。

「でも大丈夫、価格は皆さんお手頃の二千万円よ!」
「高えーよ。普通に高えーよ」

 思い立ったら不動産を買うとか富裕層怖すぎ……。

「で、買ったはいいんだけど、結局一回しか行かなくて今は切磋琢磨働いているメイドの住処になっているのよね」
「あぁもう贅沢すぎるなおい」
「だから晴流も誘って一緒にキャンプをしようと思ってるの。そう、『合法ロリメイドが潜む静かなお屋敷』でね!」
「俺は別に構わないけど……なんだその変な呼び方は?」

 合法ロリメイドって言葉が気になりすぎるんだが。嫌な予感しかしない。

「ふふふ、それは当日のお楽しみにね!」

 笑顔で答える堂庭を見て、俺はより一層心配になった。


「じゃあな。日程とか決まったらまた連絡してくれ……」
「はいはーい! 今日はありがとねー!」

 手を軽く振って体を横に向ける。
 すると突然、どこからか分からないが聞き覚えのある声が俺達に響き渡った。

「話は聞かせてもらったよ! 宮ヶ谷君、瑛美りんっ!」

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