Geschichte・Spiel(ゲシヒテ・シュピール)

ノベルバユーザー173744

achtzehn(アハツェーン)

 妹から受け取ったものを持ち、幼馴染であるカサンドラの手を引き歩くテオ。

「そう言えば、サンディ。何年か時々しか会わなかったが、元気だったか?」
「えぇ。テオ兄さん。見ての通りよ」
「そりゃ元気だな」

 笑う。

「で、アスティは本当に悪気はないんだ。許してやってくれ」
「許すも何も……嬉しいわ。私みたいな者に、わざわざ大切なものを譲って下さるんだもの」
「お前みたいなって言うけど、アスティにとって、お前は姉ちゃんだからな」
「でも……アスティは本当にお姫様よ。きっとどこにでてもおかしくない、お姫様……でも、私は……」
「お前もお姫様だろうが。な、兄さんたち」

 前を歩いていたディとカシミールは微笑む。

「恋人同士仲良いね」
「こら、からかうな!で、どうしたんだ?」
「あ、アスティがね」
「カサンドラ!」

 低い声が響き、カサンドラはビクッとする。
 父ユストゥスの声である。

「ち、父上……」
「お前は何をしている!怠けているようなものは!」

 きゅわぁぁ……
 キュルルル……
 ぎゅわぁぁ!

 3人の肩や頭に乗っていたドラッヘが、それぞれ鳴き声をあげる。

「こら、リューン。やめろ」

 たしなめたディは、ユストゥスを見る。

「すみません。ユストゥスどの。私の妹が、カサンドラに我儘を言っていたようです」
「それに、アストリットに頼まれて荷物を持って行っている最中です。そちらを優先させていただけませんか?」
「私も兄と、父に伝えておきますので……本当にすみません」
「……分かりました。カサンドラ。早めに用事を済ませて戻ってこい!」

 そう押さえ込むような、脅しつけるような声で言い放ち、去っていった。
 その背を見送り、テオは、

「……変わったな……昔はもっと明るい人だったのに……」

呟く。

「あの、申し訳ございません……急いで父の元に……」
「行かなくていいわよ。サンディ」

 4人の後ろから姿を見せたのは、少々お腹の大きくなったエリーザベト。
 二人の娘の手を引いている。

「ごめんなさいね。テオくんはまだ戻って疲れているだろうし、ディくん、カシミール。お母様の代わりに伝えて頂戴。私の体調が優れないので、手を貸してくれる人が欲しいの。で、女の子のカサンドラにお願いしますって。サンディごめんなさいね。このお腹でしょう?少し辛くて、でも近くにいるのは女の子がいいのよね。旦那様にはお願いしてあるから、よろしくお願いね」
「奥様!かしこまりました。ご命令に……」
「ご命令じゃなくて、お願い。さぁ、サンドラ。一緒に行きましょうね。テオくんもいらっしゃい」

 うふふ……

エリーザベトは微笑む。
 アストリットはカサンドラに近づき、

「あの、この『Notizenノーティーズン』は、普通に持っているもので……お姉様と一緒に文字を書いたり、フィーちゃんと絵を描いたりしたかったのです。それに、交換日記と言って、毎日1ページを好きなことを書いて、翌日お姉様にお渡しして、お姉様が私に色々なお話を……交換するのです。フィーちゃんともしているのです。お姉様ともしたいなぁって……」
「わ、私でいいのですか?」
「お姉様としたいのです」

 先ほどのノートとも違う可愛らしいと言うか、小花模様の絵のノートとペンを差し出される。

「ありがとうございます。アスティ」
「……お姉様ありがとうございます」
「いいわぁ……羨ましいわ。お母様も混ぜて!」
「お母様は、お父様と」
「えぇぇ〜つまらないわ〜」

 プンプン拗ねる母に、アストリットとカサンドラは微笑む。

「じゃぁ、お母様と3人で」
「嬉しいわ!一日目はアスティでしょう?二日目はサンディね?」
「はい。お母様。サンディお姉様に似合いそうなドレスを描いたのです。どうでしょうか?」
「まぁぁ!素敵!今度、仕立てましょうね。アスティのデザインでサンディのドレス。なんて素敵!」

 覗き込んだ4人は、

「へぇ……これは斬新だね。それに、サンディに似合いそうだ」
「俺にはわからないが……でも、サンディは似合うと思う」
「……可愛い」
「いいなぁ〜アスティお姉様。フィーにも!」
「今度ね。フィーちゃん」

アストリットは微笑む。

「では、お姉様に、『Austauschアウストゥース Tagebuchターゲブッフ』です」
「これは?」
「ノートの間に挟む、書く面の下に挟むと写らないでしょう?それに、この間には、フィーちゃんとお揃いの『Siegelズィーゲル』……シールなんです。ここに、こうして……」

 間から取り出したシールを一枚貼ってみせる。

「可愛いのよ。フィーのにはいっぱいなの」
「まぁ、可愛いわ」
「お姉様も使ってくださいね」
「あ、ありがとう……家では……リボン一つ、なかった……母の遺品も……父が隠したから……」

 ぽろっと呟く。

「父には言われる……お前は不細工だから……アストリット様のようになれるはずがない。烏滸おこがましい、図々しい。そんなことよりも、お前は一応この家の跡取りだ!跡取りとして、剣を持て!我が家の恥さらし……」

 ボロボロボロ……涙が溢れる。

「分かってる……自分が不細工だって……小さい頃から言われてる……アスティみたいに可愛くて優しくて……でも、私だって……」
「サンディ。もう、家には戻らなくていいのよ?ここにあなたの部屋を用意しましょう」
「お母様。お父様には……?」
「そうね。お父様にお伝えしましょう」

 テオが手を引き歩き出す。
 途中で、エリーザベトが横を通る侍女に、二言三言告げると、微笑み、

「かしこまりました。カサンドラお嬢様にあのお部屋ですわね。少々お待ちくださいませ。カサンドラお嬢様。どうぞこちらに」
「えっ、お、お嬢様?」
「お嬢様ですわ、どうぞ」

侍女に嬉しそうに連れ去られるカサンドラを見送り、テオが告げた。

「母上。養女ですか?」
「いいえ、テオくんが出て行ったらお母様泣いちゃいそうだから、お父様に、テオくんにお嫁さんをってお願いしていたの」
「えっ、兄さんじゃなくて俺ですか!」
「だって、カーシュは出かけている時以外はアスティについて回るでしょう?でもテオくんは、きっとどこかに行ってしまいそうで……お、お母様……」

 瞳に涙を浮かべウルウルと義理の息子を見る。
 夫と長男が追い出した次男はいつもエリーザベトのところに来る時には、恨み言が多かった。
 エリーザベトやエルンストはエリーザベトに似た長男と、エルンストに似たフレデリックが生まれ本当に分け隔てなく育てたつもりだった。
 年子もあり、仲良く育って欲しいと……しかし、カシミールは賢い子に育ったが、フレデリックはずる賢いと言うか、悲しい別れとなってしまった。
 その前から引き取っていたが、実の息子と呼ぶようになったテオには幸せになって欲しい……テオはフレデリックよりも素直で優しく柔軟な思考の持ち主である。

「本当のお母様じゃないけれど、私はテオくんを息子だと思っているの……可愛い息子をどこかに行くなんて……」
「は、母上!お、俺は、母上と父上がいらないと言うまでいます!」
「そんなわけないじゃないの!テオくんは私の自慢の息子なのに……」

 テオは慌てて義母を抱きしめる。

「ありがとうございます。母上。でも……兄上より俺、先ですか?」
「カーシュは結婚しそうにないんだもの」
「そうですね……」

 義理の兄は自分の世界にいて、天才だがちょっとずれている。

「でも、テオくんが結婚して家にいて欲しいんだもの……アスティはお嫁に行くでしょう?」
「お母様。そのお話は……私は、まだ結婚しませんわ。家にいたいのですもの。それに、お相手なんて……」

 もじもじとする少女に微笑む。

「ディ兄さんがいるじゃないか」
「えっ、えぇぇぇぇ!」
「年も近いし、俺だったら、ディ兄さんがアスティの旦那さんになって欲しいな」
「どうした?」
「うきゃぁぁ!」

 焦るアストリットに、ディは首を傾げる。

「あぁ、父上が、カーシュと一緒にユゥトゥス殿の元に……」
「あ、そうでしたか。あ、ありがとうございます。ディさま」
「ところで、父上に、テオの結婚と私とアスティの婚約を発表したいと言っていた」
「えぇぇぇぇ!」

 アストリットは一瞬意識が遠のいたのだった。


……………………………………………………

【名前:カサンドラ・ユットゥーラ・ナッサウ(声優:尾形未布留おがたみふる
キャラクターの略式設定:アストリット達の幼馴染み。父がユストゥス。
年齢:16歳
性別:女性
髪:豪奢な金茶色、短く切っている。
瞳:グリーン。
家族設定:父と一人娘。母と盗賊に襲われ、母に庇われ助かる。
職業:女性剣士。

初期レベル:18
初期体力:324
初期精神力:396
初期敏捷性:324
初期知力:432(最高数値)

HP:648
MP:792
武器:アーチェリー、ナイフ投げ
特殊能力:男性に比べ体力が劣るため、術を学んでいる。
両親は恋愛結婚で、母の遺体を見た父が、「ユッテ!何故、ユッテが死んで、カサンドラが生きているんだ!」と言い、それ以来ギクシャクしている。】

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