特殊科学研究事務所-muzina-
プロローグ
俺の祖父は、世界一の科学者だ。
にわかには信じられないが、この世の全てを科学で証明したらしい。
俺の自慢の祖父だった。
数年前、その祖父が死に、科学の進化は滞った。
研究結果などのレポートは跡形もなく消えて、死因は〝不明〟だった。
祖父が死んでからというもの、俺の頭に変な声がつきまとっている。俺以外の人間には聞こえないらしい。
今の超科学社会では、そういうのが見える・聞こえる人は『ルーナ』と呼ばれている。
ルーナは実際、障害者とされている。
だから多分聞こえるこの声も、幻聴なのだろう。
ある朝、俺は気まぐれにいつもと少し違うことをした。
起きて、朝食を食べ、歯を磨くところまでは同じだったが、この日は、不意に祖父の部屋に立ち寄った。
綺麗に片付けられており、今は物置として使われている。正確には元祖父の部屋か。
ただ一つ、祖父がいた頃から変わらないものがあった。
何かの木彫りの像だ。
これは何故か1ミリたりとも動かされていない。
今頃気がついた俺は、それをよく観察してみる。
うん。何なのかはわからないが、普通の木彫りだ。
その時、いつものように幻聴が聞こえた。
-その……を右……回せ-
ところどころ聞こえた幻聴を、今日は気まぐれに無視せず実行する。置物を右に回すと、変化は起こった。
部屋の内装が瞬時に変わり、ドアが消えた。
丸い光の珠がそこかしこに浮いている。
まるで部屋自体が別空間に行ったかのようだ。
異様な雰囲気が漂っている。
祖父の部屋にあるものとすればここは……
俺には心当たりがあった。
幼い頃に聞いた、祖父の口癖を思い出す。
-心の目で見るんじゃよ
       目で見ることはすべてではない-
俺は幻聴に聞いてみた。
「お前は幻聴なのか?」
すると、
『前々から言っているとおり、
 私は幻聴ではなく、モノノケです』
はっきりと聞こえた。
祖父の言葉のとおりに〝心で見てみる〟
だんだん濃くなっていくそれは、どうやら俺の前に〝いる〟ようだ。
『やっと気づいてくれましたか』
目の前には気品の漂う一匹の白いイタチ?がいた。
『イタチではなく、ムジナと申します』
ムジナ? 聞いたことない動物だ。
『動物ではなく、モノノケです』
やっぱりだ。こいつ、俺の心を読んでいる。
それにしても、モノノケっていったか?
『はい。モノノケです』
モノノケってなんだ? もはや声に出さずに話す。
『それは隆也の研究結果を見ればわかるのでは?』
そう言ってムジナは、部屋の一角の机にちょこんと座った。しきりに三本ある尻尾で、机を叩いている。
見ろってことか?
机の上にはレポート用紙があった。
さっき、隆也といっていたから、多分俺の祖父の研究結果だろう。
さっと用紙に目を通す。
-つまり私は、この世界で生きているのは動物だけではないということを発見した。この世界には我々の予想が及ばない生物がいる。それを今からモノノケと、そう呼ぼう-
なるほど。
祖父はどうやら科学的に〝モノノケ〟という生物を発見したようだ。
俺は祖父が死んだ理由がわかるかもしれないと思った。
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