特殊科学研究事務所-muzina-
第3話 孤独な池
雨がしとしと降る中、森を歩いて行く。
暗い森を抜けるとそこには、大きな池が木々に隠れるようにひっそりとあった。
「ここだよね!この場所だよねっ!」
「たぶんな」
相変わらず記憶は戻らないが、確かここだったはずと思いつつ、俺はしゃがみこんでいけの中を覗いた。
魚がいるのか、時折ピチャンッと音がするが池の中は茶色く濁って見えない。
- ……サレ……チ…レ -
「ん?なんか言ったか?」
俺は立ち上がって麗奈たちを見る。
「何も言ってないけどぉ」
『『私どもも何も言っていませんが』』
あれ?おかしいな。気のせいか?
- タチサレ タチサレ -
今度ははっきりと聞こえた。なんだこの声は。
麗奈たちもこの声に気づいたようだ。
「えっなにこの声」
『これは……ゴーストの声でしょうか。取り敢えず一旦逃げましょう』
ムジナが言ったのもつかの間、俺は足を引っ張られた。そのまま池へ引きずり込まれそうになる。
「!?」
「おにぃちゃんっ!」
『『危ないっ!』』
麗奈たちが引っ張ってくれたおかげでなんとか助かった。
何なんだこれは……俺は敵意のないことを伝えようとした。
「俺は言魂伶斗。お前らと争うつもりはない!」
- ヤハリニンゲンオロカダ -
今度ははっきりと俺の前の池から聞こえてきた。見ると池の真ん中からブクブクと泡がではじめている。泡がこっちに近づいてくる。
『にげてくださいっ!』
その声を聞いて慌てて池の傍から離れた俺と入れ違うようにして池から二つの影が飛び出した。
それらは、俺もよく知るUMA〝河童〟だった。
凄い勢いで飛び出したにも関わらず、全く水しぶきを立てていない。
『くっ。河童ですか。小さいですがとても力が強いので一体ならまだしも二体となると生身の人間では勝ち目がありません』
「そうは言っても戦わないわけには行かないだろ」
さっきからもの凄い殺気を放っている。
いつ仕掛けてくるかわからない。
すると弱いヤツから仕留めようとしたのか河童達は麗奈に近づき始めた。
「やめてぇ。来ないでよぉ」
「……!」
俺は麗奈と河童達の間に入る。
- デテイケニンゲン -
「うちの妹に手ぇ出してんじゃねぇ!」
殴り掛かった俺をかわし、河童は殴り返してくる。避ける時間はない。
俺は体で河童の拳を受け止める。
その瞬間、俺の体は吹き飛んだ。
「かはっっ」
十メートルほど吹き飛ばされた俺は木の幹に強く背中を打ち付けた。
「おにぃちゃんっ!」
『『伶斗様っ!』』
「……大丈夫だ」
凄く背中が痛むが、折れてはいなさそうだ。
俺はもう一度河童に立ち向かおうとする。
『逃げましょうっ!生身の人間では勝てません!河童は本来、これ程の力はありません。しかし何かが原因で狂暴化してしまったのでしょう』
「逃げられるならそうしたいけどよ。こいつら逃がしてはくれないようだぞ。」
たとえ出て行こうとしても、背中を見せたら攻撃されるだろう。
それに麗奈は、腰が抜けたのか地面にぺたんと座り込んでいる。
その間にも河童達は麗奈との距離を詰める。
「くそっ。このままじゃ」
その時ムジナが口を開いた。
『一つだけ手があります。私が--』
俺はムジナの声を遮って叫ぶ。
「なんでもいい!速くやってくれ!」
『了解。では一言〝憑依〟と唱えてください』
もう河童達は麗奈の目の前だ。
「憑依!!」
唱えるとムジナの体は消え、魂が俺の中に入ってくるように感じた。同時に俺は白いマントの様なものを羽織っていた。
河童達を見る。
今にも麗奈に襲いかかろうとしている。
人間の速さでは絶対届かない距離。
『「まにぃあえぇぇぇぇ!!!」』
一歩踏み出すと、俺の体は風の様に動いた。
一瞬にして麗奈と河童の間に入り込む。
俺はそのままの勢いで河童を殴った。
『「ふぅきとぉべぇぇえ!!!」』
凄まじい威力の拳が河童を吹き飛ばし、後ろにいたもう一体にも当たり、森の奥へ吹き飛んでいった。
『「ハァハァ、やったか。だけどあの速さだと流石に自分にも反動が来るな」』
今の俺の声はムジナと同化している。
モノノケの力を借り人間の身体能力を超える。それが〝憑依〟
麗奈の方を見る。幸い大丈夫そうだが、気絶している。
俺は麗奈を連れて帰ろうとする。
『「……?!!」』
森の奥を睨む。
憑依して感覚が研ぎ澄まされているからか、森の奥から来る、ただならぬ気配を感じた。
暗い森を抜けるとそこには、大きな池が木々に隠れるようにひっそりとあった。
「ここだよね!この場所だよねっ!」
「たぶんな」
相変わらず記憶は戻らないが、確かここだったはずと思いつつ、俺はしゃがみこんでいけの中を覗いた。
魚がいるのか、時折ピチャンッと音がするが池の中は茶色く濁って見えない。
- ……サレ……チ…レ -
「ん?なんか言ったか?」
俺は立ち上がって麗奈たちを見る。
「何も言ってないけどぉ」
『『私どもも何も言っていませんが』』
あれ?おかしいな。気のせいか?
- タチサレ タチサレ -
今度ははっきりと聞こえた。なんだこの声は。
麗奈たちもこの声に気づいたようだ。
「えっなにこの声」
『これは……ゴーストの声でしょうか。取り敢えず一旦逃げましょう』
ムジナが言ったのもつかの間、俺は足を引っ張られた。そのまま池へ引きずり込まれそうになる。
「!?」
「おにぃちゃんっ!」
『『危ないっ!』』
麗奈たちが引っ張ってくれたおかげでなんとか助かった。
何なんだこれは……俺は敵意のないことを伝えようとした。
「俺は言魂伶斗。お前らと争うつもりはない!」
- ヤハリニンゲンオロカダ -
今度ははっきりと俺の前の池から聞こえてきた。見ると池の真ん中からブクブクと泡がではじめている。泡がこっちに近づいてくる。
『にげてくださいっ!』
その声を聞いて慌てて池の傍から離れた俺と入れ違うようにして池から二つの影が飛び出した。
それらは、俺もよく知るUMA〝河童〟だった。
凄い勢いで飛び出したにも関わらず、全く水しぶきを立てていない。
『くっ。河童ですか。小さいですがとても力が強いので一体ならまだしも二体となると生身の人間では勝ち目がありません』
「そうは言っても戦わないわけには行かないだろ」
さっきからもの凄い殺気を放っている。
いつ仕掛けてくるかわからない。
すると弱いヤツから仕留めようとしたのか河童達は麗奈に近づき始めた。
「やめてぇ。来ないでよぉ」
「……!」
俺は麗奈と河童達の間に入る。
- デテイケニンゲン -
「うちの妹に手ぇ出してんじゃねぇ!」
殴り掛かった俺をかわし、河童は殴り返してくる。避ける時間はない。
俺は体で河童の拳を受け止める。
その瞬間、俺の体は吹き飛んだ。
「かはっっ」
十メートルほど吹き飛ばされた俺は木の幹に強く背中を打ち付けた。
「おにぃちゃんっ!」
『『伶斗様っ!』』
「……大丈夫だ」
凄く背中が痛むが、折れてはいなさそうだ。
俺はもう一度河童に立ち向かおうとする。
『逃げましょうっ!生身の人間では勝てません!河童は本来、これ程の力はありません。しかし何かが原因で狂暴化してしまったのでしょう』
「逃げられるならそうしたいけどよ。こいつら逃がしてはくれないようだぞ。」
たとえ出て行こうとしても、背中を見せたら攻撃されるだろう。
それに麗奈は、腰が抜けたのか地面にぺたんと座り込んでいる。
その間にも河童達は麗奈との距離を詰める。
「くそっ。このままじゃ」
その時ムジナが口を開いた。
『一つだけ手があります。私が--』
俺はムジナの声を遮って叫ぶ。
「なんでもいい!速くやってくれ!」
『了解。では一言〝憑依〟と唱えてください』
もう河童達は麗奈の目の前だ。
「憑依!!」
唱えるとムジナの体は消え、魂が俺の中に入ってくるように感じた。同時に俺は白いマントの様なものを羽織っていた。
河童達を見る。
今にも麗奈に襲いかかろうとしている。
人間の速さでは絶対届かない距離。
『「まにぃあえぇぇぇぇ!!!」』
一歩踏み出すと、俺の体は風の様に動いた。
一瞬にして麗奈と河童の間に入り込む。
俺はそのままの勢いで河童を殴った。
『「ふぅきとぉべぇぇえ!!!」』
凄まじい威力の拳が河童を吹き飛ばし、後ろにいたもう一体にも当たり、森の奥へ吹き飛んでいった。
『「ハァハァ、やったか。だけどあの速さだと流石に自分にも反動が来るな」』
今の俺の声はムジナと同化している。
モノノケの力を借り人間の身体能力を超える。それが〝憑依〟
麗奈の方を見る。幸い大丈夫そうだが、気絶している。
俺は麗奈を連れて帰ろうとする。
『「……?!!」』
森の奥を睨む。
憑依して感覚が研ぎ澄まされているからか、森の奥から来る、ただならぬ気配を感じた。
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