特殊科学研究事務所-muzina-
第6話 俺の覚悟
「おっはぎっ! おっはぎっ!」
『おっはぎっ! おっはぎっ!』
そんなこんなで、
徒歩四・五分の所にある和菓子屋❛晏月❜に着いた。
普通は皆ネットで購入し、«POT»と呼ばれる一家に一台ある装置に品物を転送してもらう。
そのためこの店のようにリアルで営業しているところはほぼないのだ。それでも収入があったのは、この店の和菓子がとても美味かったからだろう。
いかにも老店舗といった感じの和菓子屋は、がらんとしているが“営業中”と書いてあるので一応はやっているらしい。
実際ここに来るのは十年以来だと思う。
昔は親とよく行っていたらしいが随分昔のことなので記憶がない。
「「すいませぇん」」
俺達は入口に掛かってる暖簾をくぐり抜けて店内に入った。
店内は狭く、二人用くらいのテーブルが四組ほど並んでいる。少し突き出て会計のカウンターのようなものがあり、その後ろが厨房のようだ。
「おぉ。いらっしゃあい!」
声が聞こえたあと、厨房から一人の中年男性が現れた。
「お客さん珍しいねぇ、こんな店に来るなんて……って伶斗じゃねぇか! こんなに大きくなっちまったけどおっちゃんの目は誤魔化せねぇぞ! ガッハッハッ」
「えっ」
おじさんが俺の頭をガシッと掴んでわしゃわしゃしている。
どうやらこのおじさんは、相当昔に来た俺の事を覚えていたらしい。俺は覚えてないけど。
「お前、おっちゃんの事忘れちまったんか! まあしょうがねえか。こんなに久しぶりだもんな。取り敢えず座りな!」
お言葉に甘えて俺らは座る事にした。
「おじちゃんおはぎちょーだぁい!」
『ここのおはぎは美味しいのよねん』
すーちゃんと麗奈が足踏みをしている。我慢の限界が来たようだ。もちろん、すーちゃんの事は見えてないんだろうけど。
「おっ! 麗奈ちゃんか。ん? 姉ちゃん見ねぇ顔だな。どっから来たんだ?ってそれどころじゃねーな! おはぎ何個欲しいんだ?」
「うーんとね。いち、にぃ、さん、しぃ、五個!五個欲しい!」
麗奈が思いっきりムジナ達をカウントしてるけど……そうじゃない!このおじさんすーちゃんが見えてるのかっ?今あからさまにすーちゃんのこと見て言ってたよな?
「ガッハッハッ! そうか! こいつらもおはぎが食いたいか!」
今度はムジナ達を見て豪快に笑った。
やっぱり、これは100%見えてる。
「おじさん……こいつらが見えるのか?」
「見えるも何も俺もルーナだからな。噂とかで聞いてなかったのか? まあそのおかげで店は儲かんなくなったけどな! でも現実的な伶斗がモノノケに振り向くとはなぁ」
どうやら噂は本当のようだ。それにしてもおじさんのモノノケは見えない。ゴーストとかなのかな?
『おいっ! おはぎ六個できたぞ!』
「お! 俺の分も作るとは気が利くな!」
おはぎを乗せたお盆を運んで来たのは、〝小豆洗い〟だった。
「あ、小豆洗いだぁ」
麗奈が知っているほど小豆洗いはメジャーな妖怪だ。もちろん、俺も知っている。
『おっ。お嬢ちゃん俺の事知ってっか! ほら。おはぎをあげよう』
「やったぁー!」
『さあ、お前らも食え』
小豆洗いは一人一人におはぎを配った。
おじさんはじいちゃんの事知ってるのかな。
そう思いながら、俺はおはぎを口に入れる。
「なぁ、おじさんって俺の…………うまっ!」
絶妙な食感、甘さ。
思わず声に出してしまった。
相変わらずこの店のおはぎは美味い。
「うまぁ」
『やっぱりこれおんいしぃー!』
『『……っ!?』』
麗奈とすーちゃんは歓喜の声をあげる。
ん? ムジナ達は初めてだったか。すごい驚いてるな。
『こんなに美味しいおはぎなんて食べたことありませんっ! 素晴らしい!』
『うめぇか。そりゃそーだ。俺らの作ったおはぎだからな!』
「こいつがあんこ担当で俺がもち担当だ。昔から二人で続けてきたからな。ガッハッハッ」
口の中の幸せな味が無くなりかけた頃、俺は口を開いた。
「おじさんってうちのじいちゃんの事知ってるか?」
『ん……急になんだと思ったが隆也の事か? 懐かしいな。アイツとは小学からの仲だぞ』
「そんな仲だったのか。知らなかった」
どうりで家によくおはぎがあった訳だ。
『アイツもルーナだったからな。数すくねぇ俺の友だ。お前らが来たのはアイツの死因を聞くためだろう? だがそれについては答えられねえ。アイツはお前らを普通の人として育てる道を選んだ。それに聞いてどうする?』
おじさんは急に真剣な顔で椅子に腰掛けた。
「その言い方だと、じいちゃんは誰かにやられたってことなんだな。大丈夫。べつに仇討ちをしようってわけじゃない。俺の今の夢はじいちゃんと同じ“人間とモノノケの共存できる世界を作ること”だから……じいちゃんの敵になった奴らと恐らく当たる。その時の為にさ……知っときたいんだ」
しばらくの沈黙の後、おじさんが口を開いた。
「全てを教える事はできねぇ。だが少しだけなら言える。それを聞く覚悟はあんのか?」
俺は迷わず答えた。
「もちろんです!」
『おっはぎっ! おっはぎっ!』
そんなこんなで、
徒歩四・五分の所にある和菓子屋❛晏月❜に着いた。
普通は皆ネットで購入し、«POT»と呼ばれる一家に一台ある装置に品物を転送してもらう。
そのためこの店のようにリアルで営業しているところはほぼないのだ。それでも収入があったのは、この店の和菓子がとても美味かったからだろう。
いかにも老店舗といった感じの和菓子屋は、がらんとしているが“営業中”と書いてあるので一応はやっているらしい。
実際ここに来るのは十年以来だと思う。
昔は親とよく行っていたらしいが随分昔のことなので記憶がない。
「「すいませぇん」」
俺達は入口に掛かってる暖簾をくぐり抜けて店内に入った。
店内は狭く、二人用くらいのテーブルが四組ほど並んでいる。少し突き出て会計のカウンターのようなものがあり、その後ろが厨房のようだ。
「おぉ。いらっしゃあい!」
声が聞こえたあと、厨房から一人の中年男性が現れた。
「お客さん珍しいねぇ、こんな店に来るなんて……って伶斗じゃねぇか! こんなに大きくなっちまったけどおっちゃんの目は誤魔化せねぇぞ! ガッハッハッ」
「えっ」
おじさんが俺の頭をガシッと掴んでわしゃわしゃしている。
どうやらこのおじさんは、相当昔に来た俺の事を覚えていたらしい。俺は覚えてないけど。
「お前、おっちゃんの事忘れちまったんか! まあしょうがねえか。こんなに久しぶりだもんな。取り敢えず座りな!」
お言葉に甘えて俺らは座る事にした。
「おじちゃんおはぎちょーだぁい!」
『ここのおはぎは美味しいのよねん』
すーちゃんと麗奈が足踏みをしている。我慢の限界が来たようだ。もちろん、すーちゃんの事は見えてないんだろうけど。
「おっ! 麗奈ちゃんか。ん? 姉ちゃん見ねぇ顔だな。どっから来たんだ?ってそれどころじゃねーな! おはぎ何個欲しいんだ?」
「うーんとね。いち、にぃ、さん、しぃ、五個!五個欲しい!」
麗奈が思いっきりムジナ達をカウントしてるけど……そうじゃない!このおじさんすーちゃんが見えてるのかっ?今あからさまにすーちゃんのこと見て言ってたよな?
「ガッハッハッ! そうか! こいつらもおはぎが食いたいか!」
今度はムジナ達を見て豪快に笑った。
やっぱり、これは100%見えてる。
「おじさん……こいつらが見えるのか?」
「見えるも何も俺もルーナだからな。噂とかで聞いてなかったのか? まあそのおかげで店は儲かんなくなったけどな! でも現実的な伶斗がモノノケに振り向くとはなぁ」
どうやら噂は本当のようだ。それにしてもおじさんのモノノケは見えない。ゴーストとかなのかな?
『おいっ! おはぎ六個できたぞ!』
「お! 俺の分も作るとは気が利くな!」
おはぎを乗せたお盆を運んで来たのは、〝小豆洗い〟だった。
「あ、小豆洗いだぁ」
麗奈が知っているほど小豆洗いはメジャーな妖怪だ。もちろん、俺も知っている。
『おっ。お嬢ちゃん俺の事知ってっか! ほら。おはぎをあげよう』
「やったぁー!」
『さあ、お前らも食え』
小豆洗いは一人一人におはぎを配った。
おじさんはじいちゃんの事知ってるのかな。
そう思いながら、俺はおはぎを口に入れる。
「なぁ、おじさんって俺の…………うまっ!」
絶妙な食感、甘さ。
思わず声に出してしまった。
相変わらずこの店のおはぎは美味い。
「うまぁ」
『やっぱりこれおんいしぃー!』
『『……っ!?』』
麗奈とすーちゃんは歓喜の声をあげる。
ん? ムジナ達は初めてだったか。すごい驚いてるな。
『こんなに美味しいおはぎなんて食べたことありませんっ! 素晴らしい!』
『うめぇか。そりゃそーだ。俺らの作ったおはぎだからな!』
「こいつがあんこ担当で俺がもち担当だ。昔から二人で続けてきたからな。ガッハッハッ」
口の中の幸せな味が無くなりかけた頃、俺は口を開いた。
「おじさんってうちのじいちゃんの事知ってるか?」
『ん……急になんだと思ったが隆也の事か? 懐かしいな。アイツとは小学からの仲だぞ』
「そんな仲だったのか。知らなかった」
どうりで家によくおはぎがあった訳だ。
『アイツもルーナだったからな。数すくねぇ俺の友だ。お前らが来たのはアイツの死因を聞くためだろう? だがそれについては答えられねえ。アイツはお前らを普通の人として育てる道を選んだ。それに聞いてどうする?』
おじさんは急に真剣な顔で椅子に腰掛けた。
「その言い方だと、じいちゃんは誰かにやられたってことなんだな。大丈夫。べつに仇討ちをしようってわけじゃない。俺の今の夢はじいちゃんと同じ“人間とモノノケの共存できる世界を作ること”だから……じいちゃんの敵になった奴らと恐らく当たる。その時の為にさ……知っときたいんだ」
しばらくの沈黙の後、おじさんが口を開いた。
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