特殊科学研究事務所-muzina-
第11話 恐怖の怪力
「ただいまぁー」
フラフラの足を引きずりながら家に入ると、凄い勢いで麗奈が飛び出して来た。
「おにいちゃんおにいちゃんおにいちゃん!!!大変だよ!」
「んぁ? 何がどうしたんだよ……」
麗奈はとんでもなく焦っているが残念な事に俺は今フラフラではやく寝たい気分なのだ。
麗奈の横を通って階段を登ろうとする。
「まって! だから大変なんだってば-」
言い終わらないうちにリビングのドアが開き、中から人が出てきた。
麗奈は大きめの手にガシッと頭を掴まれ泣きそうな笑顔で言った。
「-叔母さんが来たよ」
やばい。とっさに逃げようとしたが麗奈と同様頭をガシッと掴まれる。相変わらず凄い握力だ。
「だぁ〜れがオバサンだってぇ?」
笑いながら指の力を強めてくるこの人は俺らの叔母さん、言魂珠侑である。
「イタタタ」
「珠侑おば……おねえさん頭が痛いです」
その回答に満足したのか叔母さんは身の毛もよだつ様な笑顔で言った。
「久しぶりだねえ」
そのまま俺らは頭を掴まれたままリビングに連れていかれる。
叔母さんといっても俺らの母さんと二十歳も離れた実際二十五歳のおねえさんだ。
髪型はショートボブで身長は百八十センチのモデル体型の人である。会うのは二年ぶりだ。
しかし綺麗な顔立ちとは裏腹にその性格はとんでもなく怖い。
幼い頃……たぶん6歳くらいの時、俺らはプールに突き落とされたり断崖絶壁に立たされたり稽古と称してボコボコにされたりした。
「あらおかえり伶斗」
リビングのソファに座り、まともな笑みを浮かべているのは母である。子供二人が美少女に頭を掴まれながら連れてこられるこの状況を見ても何も言わないという特殊な人だからまあ、まともでは無いのだけれども。
「あのすいません珠侑おねえさん。俺今凄く疲れてて寝ないとやばいんですよ」
「あ? 私だって眠て〜けどわざわざ来てやったんだよ。感謝しやがれ」
そしてこの人には言葉というものが通じない。
俺の言葉をまともに聞いてくれたことなんてたったの一度もないんじゃないか?
「そういえば珠侑。お仕事の方はどうなの?」
叔母さんは確か記者の仕事をしていてスクープをよく撮る記者界では知らぬ者はいない有名人なのだとか。同時に編集の作業もするという謎の立ち位置にいるのだ。
「ん〜まあまあかな。それよりお前ら久しぶりなんだから向こうで少し話そ〜ぜ」
「それがいいわ。伶斗、麗奈、珠侑とお話してきなさいな」
俺らの返事を聞かずに叔母さんは廊下へ出た。
勿論、頭を掴んだまま。
「どこに行くんですか?」
「私……お勉強が」
「いいから黙ってろ」
「「……」」
先程の殺気のぶつかり合いとは違う意味でやばい。あんな目で見られたら怖すぎて言い返すことなんて出来るわけが無い。
叔母さんはじいちゃんの部屋の前で止まり、周りを見渡した後、部屋に入りあの木彫りの像を回した。
すぐさま世界観がガラッと変わり、宙に白い明かりが浮いた。
「ここを見ても驚かねぇってことはもうここに来たことあんだろ?」
流石記者。すごい観察眼だ。
「「はい」」
「じゃあお前らもモノノケ-」
『あれ? 珠侑じゃないのよう!』
叔母さんが言いかけた時、すーちゃんの声が遮った。
「ん〜? おお、すーじゃねえか! 久しぶ-」
すーちゃんがドロップキックをかます。
すーちゃん! なにやってんだよ! 殺されるぞ! まじでやばいって……
俺らは叔母さんのとばっちりを受けるかもしれないことに焦り戸惑っていた。
ところが……
「急に痛てぇんだよオカマ野郎!!」
『はぁ? 人をまたせといてその態度!?』
「んぁそれは悪かったって。けど蹴るなよ!」
『反省が見られないわよ?』
「まあまあ一回落ち着いてください」
あれ? すーちゃん叔母さんと対等に渡り合ってる気がするんだが。
とんでもない争いが生まれそうだったのでここで俺が仲裁に入る。
帰りに❛晏月❜で買っておいたおはぎを出して落ち着いてもらうことにする。
あーまじで買っといてよかった。
となりで麗奈が親指を立ててgoodポーズをしている。
「おお! これじじいんとこのおはぎか。やっぱクソうめえな! あそこの店のやつはよ」
『そうよねぇ。何度食べても美味しいわぁ』
一段落ついたところで叔母さんが質問してきた。
「あん時わざわざ記憶まで飛ばしたのに……麗奈はともかく伶斗がモノノケに耳を傾けるなんてね。まったく予想外だったよ。あ〜私はそこのオカマ河童と組んでてね。まあ一応私のせいでモノノケに触れてしまったお前らの記憶を消して普通の人生に戻してやったわけなんだけど……」
「俺らからモノノケに触れちゃったと」
「まあそういうわけだ。二度目はないからな」
「大丈夫です。後悔はしてないんで」
おかげでムジナ達にも出逢えたしな。
けど待ってほしい。水虎って憑依すると力がとんでもなくなるんだったよな? でも叔母さんは素であの力。確か十五歳くらいで片手でリンゴを割っていた気がする。となると二人が合わさるって一体……
「そうか……そりゃ良かったが本題はここから」
叔母さんは残りのおはぎを飲みこみ、自分で淹れたお茶を流し込んだ。
「お前の目的はなんだ? まさか伶斗がお遊びだけの為にモノノケの声に耳を傾ける訳がねえ。なんかあるんだろ?」
叔母さんには筒抜けの様だ。
「じいちゃんの死んだ原因が……もしかしたら他殺じゃないかって思ったんで調べてるんです」
「やっぱそのことか。……私もな、そのことに違和感を覚えて記者の立場で探してたわけだ。そしたら驚くほどやばいことが分かった。けど、こっから先はお遊びじゃすまねえぞ。聞いてから後戻りなんて出来ねぇ。それでもいいか?」
先程の事でより身近に感じた“死”
今までの自分の覚悟がどれだけ浅はかだったか分かった。
だからこそ……これからは命をかけて生きようと思う。
「俺は大丈夫です」
「私もです」
叔母さんはフッと笑い言った。
「珍しく覚悟決めた顔してんじゃねえか。ガキが一丁前に……まあいい。お前らの気持ちは分かった。私が調べたことを包み隠さず教えてやる」
俺は叔母さんの目を見ながら唾を飲み込んだ。
フラフラの足を引きずりながら家に入ると、凄い勢いで麗奈が飛び出して来た。
「おにいちゃんおにいちゃんおにいちゃん!!!大変だよ!」
「んぁ? 何がどうしたんだよ……」
麗奈はとんでもなく焦っているが残念な事に俺は今フラフラではやく寝たい気分なのだ。
麗奈の横を通って階段を登ろうとする。
「まって! だから大変なんだってば-」
言い終わらないうちにリビングのドアが開き、中から人が出てきた。
麗奈は大きめの手にガシッと頭を掴まれ泣きそうな笑顔で言った。
「-叔母さんが来たよ」
やばい。とっさに逃げようとしたが麗奈と同様頭をガシッと掴まれる。相変わらず凄い握力だ。
「だぁ〜れがオバサンだってぇ?」
笑いながら指の力を強めてくるこの人は俺らの叔母さん、言魂珠侑である。
「イタタタ」
「珠侑おば……おねえさん頭が痛いです」
その回答に満足したのか叔母さんは身の毛もよだつ様な笑顔で言った。
「久しぶりだねえ」
そのまま俺らは頭を掴まれたままリビングに連れていかれる。
叔母さんといっても俺らの母さんと二十歳も離れた実際二十五歳のおねえさんだ。
髪型はショートボブで身長は百八十センチのモデル体型の人である。会うのは二年ぶりだ。
しかし綺麗な顔立ちとは裏腹にその性格はとんでもなく怖い。
幼い頃……たぶん6歳くらいの時、俺らはプールに突き落とされたり断崖絶壁に立たされたり稽古と称してボコボコにされたりした。
「あらおかえり伶斗」
リビングのソファに座り、まともな笑みを浮かべているのは母である。子供二人が美少女に頭を掴まれながら連れてこられるこの状況を見ても何も言わないという特殊な人だからまあ、まともでは無いのだけれども。
「あのすいません珠侑おねえさん。俺今凄く疲れてて寝ないとやばいんですよ」
「あ? 私だって眠て〜けどわざわざ来てやったんだよ。感謝しやがれ」
そしてこの人には言葉というものが通じない。
俺の言葉をまともに聞いてくれたことなんてたったの一度もないんじゃないか?
「そういえば珠侑。お仕事の方はどうなの?」
叔母さんは確か記者の仕事をしていてスクープをよく撮る記者界では知らぬ者はいない有名人なのだとか。同時に編集の作業もするという謎の立ち位置にいるのだ。
「ん〜まあまあかな。それよりお前ら久しぶりなんだから向こうで少し話そ〜ぜ」
「それがいいわ。伶斗、麗奈、珠侑とお話してきなさいな」
俺らの返事を聞かずに叔母さんは廊下へ出た。
勿論、頭を掴んだまま。
「どこに行くんですか?」
「私……お勉強が」
「いいから黙ってろ」
「「……」」
先程の殺気のぶつかり合いとは違う意味でやばい。あんな目で見られたら怖すぎて言い返すことなんて出来るわけが無い。
叔母さんはじいちゃんの部屋の前で止まり、周りを見渡した後、部屋に入りあの木彫りの像を回した。
すぐさま世界観がガラッと変わり、宙に白い明かりが浮いた。
「ここを見ても驚かねぇってことはもうここに来たことあんだろ?」
流石記者。すごい観察眼だ。
「「はい」」
「じゃあお前らもモノノケ-」
『あれ? 珠侑じゃないのよう!』
叔母さんが言いかけた時、すーちゃんの声が遮った。
「ん〜? おお、すーじゃねえか! 久しぶ-」
すーちゃんがドロップキックをかます。
すーちゃん! なにやってんだよ! 殺されるぞ! まじでやばいって……
俺らは叔母さんのとばっちりを受けるかもしれないことに焦り戸惑っていた。
ところが……
「急に痛てぇんだよオカマ野郎!!」
『はぁ? 人をまたせといてその態度!?』
「んぁそれは悪かったって。けど蹴るなよ!」
『反省が見られないわよ?』
「まあまあ一回落ち着いてください」
あれ? すーちゃん叔母さんと対等に渡り合ってる気がするんだが。
とんでもない争いが生まれそうだったのでここで俺が仲裁に入る。
帰りに❛晏月❜で買っておいたおはぎを出して落ち着いてもらうことにする。
あーまじで買っといてよかった。
となりで麗奈が親指を立ててgoodポーズをしている。
「おお! これじじいんとこのおはぎか。やっぱクソうめえな! あそこの店のやつはよ」
『そうよねぇ。何度食べても美味しいわぁ』
一段落ついたところで叔母さんが質問してきた。
「あん時わざわざ記憶まで飛ばしたのに……麗奈はともかく伶斗がモノノケに耳を傾けるなんてね。まったく予想外だったよ。あ〜私はそこのオカマ河童と組んでてね。まあ一応私のせいでモノノケに触れてしまったお前らの記憶を消して普通の人生に戻してやったわけなんだけど……」
「俺らからモノノケに触れちゃったと」
「まあそういうわけだ。二度目はないからな」
「大丈夫です。後悔はしてないんで」
おかげでムジナ達にも出逢えたしな。
けど待ってほしい。水虎って憑依すると力がとんでもなくなるんだったよな? でも叔母さんは素であの力。確か十五歳くらいで片手でリンゴを割っていた気がする。となると二人が合わさるって一体……
「そうか……そりゃ良かったが本題はここから」
叔母さんは残りのおはぎを飲みこみ、自分で淹れたお茶を流し込んだ。
「お前の目的はなんだ? まさか伶斗がお遊びだけの為にモノノケの声に耳を傾ける訳がねえ。なんかあるんだろ?」
叔母さんには筒抜けの様だ。
「じいちゃんの死んだ原因が……もしかしたら他殺じゃないかって思ったんで調べてるんです」
「やっぱそのことか。……私もな、そのことに違和感を覚えて記者の立場で探してたわけだ。そしたら驚くほどやばいことが分かった。けど、こっから先はお遊びじゃすまねえぞ。聞いてから後戻りなんて出来ねぇ。それでもいいか?」
先程の事でより身近に感じた“死”
今までの自分の覚悟がどれだけ浅はかだったか分かった。
だからこそ……これからは命をかけて生きようと思う。
「俺は大丈夫です」
「私もです」
叔母さんはフッと笑い言った。
「珍しく覚悟決めた顔してんじゃねえか。ガキが一丁前に……まあいい。お前らの気持ちは分かった。私が調べたことを包み隠さず教えてやる」
俺は叔母さんの目を見ながら唾を飲み込んだ。
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