記憶改竄的現世界物語
第10話:ジェミニ
足を掴む。
プロであるからこその慢心。
コイツが犯した、たった一つのミス。
殺す瞬間。その一撃に全てをかける。
だからこそ、足元はガラ空きだった。
「おまっ....」
記憶を深く【改竄】する!
男の目からハイライトが消え、男はその場に膝から崩れた。
恐怖の感情を【発狂】レベルまで爆上げした。
もはや男は恐怖で喋ることすらできない。
しかも脳はその恐怖の正体を掴むことができない。
恐怖が足りなくなってはすぐに補われてを繰り返す永久機関。
数秒もしないうちに、男は意識を失った。
ざまぁみろ。
痛みが限界に達し、俺もそのまま意識を失った。
━…━…━…━…
気付くとBarに居た。
俊介が男の所持品を調べていたが、妙に楽しげなその表情に疑問の感情が浮かぶ。
「お、気づいたか?どうだ?一応体の傷は一通り治したが....」
気付くと体の傷が綺麗に治っていた。
破裂していたんじゃないかと思うほどに熱く、傷んでいた内蔵も痛み一つ発していない。
むしろ戦闘する前より健康になっている気がする。
一体どうやって?
「あ、あぁ」
「お手柄だぞ勝治。あの男の私物からとても興味深いものが出てきた」
そう言いながら俊介はカウンターの上に広げた男の私物の中から仮面を取り出した。
と、同時にバーに設置されていたテレビから耳を引くニュースが飛び込んできた。
「....えー、次のニュースです」
「本日、都内の某校にて大規模な火災が発生しました。被害人数は現在確認できている範囲で100人を超えています」
キャスターのアナウンスと共に、画面いっぱいに映し出された俺の学校。
テロップには重傷78人軽傷32人と出ていた。
クソ....。
「そうだ、男は?」
俺がそう聞くと、俊介は壁の方を指さした。
そこにはだらりと座りヨダレを垂らす男が居た。
どうやら俺の能力の効果がまだ残っているらしい。
「おい、おっさん。聞こえるか?」
「....んぁ?....へ?....あ?」
精神は崩壊している。
でも意識はしっかりあるようで安心した。
記憶を....【読む】。
【藤原 達也(36)】
職業はサラリーマン。
都内の事務所で働いている。
20代後半の時に組織【ジェミニ】に所属。
....季子の両親を殺したのはこの男では無いな。
ジェミニに関する記憶が綺麗に抜け落ちている。
断片的になっていて認識できない。
唯一認識できたことといえば、達也とかいうこの男が組織のボスの声すら聞いた事が無いと言うことぐらいだ。
基本的な指揮権を持っているのはその側近。名前も不明のソイツのようだが....。
達也....マジで無能力者だったのか?
情報が次から次へと出てくる中、一つの面白い記憶が出てきた。
記憶の中にギュウギュウ詰めにされていた違和感のある記憶。
【自分は殺し屋、今までに何千人と殺してきた】
たった数行程度の記憶だったが、彼が自身を【プロ】と称していたのはこの記憶が原因か....。
この記憶こそ何かの【異能力】で書かれたモノのようだが....。
組織に入った理由も、経緯も全部【消されて】いる。
「季子。コイツはお前の両親殺しの犯人じゃ無さそうだぞ」
「えぇ、さっき俊介に聞いたわ」
「え?」
こっちに向かって手を振る俊介。
「なんで分かったんだ?」
「私物だよ、この仮面さ」
そう言って俊介は再び仮面をこちらに向けた。
「この仮面には【強制力】があるんだ。真犯人....いや、黒幕って表現するのが適切かな。ソイツは恐らく【僕と同じタイプ】の能力者だよ」
「モノに【能力】を付与することが出来るみたいだ」
数秒の沈黙が走る。
能力を付与出来る能力。
付与できる能力に上限がないのだとしたら、俺等は詰んでいる。
そんなチート持ちの相手にどうやって戦えって言うんだ。
「そうだ、じゃぁ【ジェミニ】は知ってるか?」
「ジェミニ?」
「そう、この男....藤原 純也の記憶から出てきた組織名さ」
「20代後半の頃に、コイツはその組織に加入してる。まぁ、入った経緯だったり心境ってのは全部【削除】されちまってるんだが....」
「待って、黒幕は記憶も弄れるの?」
「組織の中に記憶を操作する能力者がいるって考えるのが妥当だろうな」
「ジェミニ....ふたご座か。組織名から黒幕を特定するのは難しそうだな」
「あぁ」
そんな俺と俊介の会話を聞きながら、季子は何かを考える仕草を取った。
「黒幕捜しの手がかりになるかは分からないけど、ヒントになりそうな人物なら心当たりがあるわ」
「マジで?」
「マジで」
ガシャン....と大きな音が鳴った。
仮面が急に回転を始めたのだ。
辺りにあった男の私物が全て払い落とされ、その仮面は高く飛んだ。
その仮面は男の顔面に一直線に飛んでいき、スポッとはまった。
精神崩壊していた達也がムクリと起き上がる。
その様はさながらゾンビの様だったが、それよりあそこまで深い精神的ダメージを受けておいて、あんなにピンピンしていることに恐怖を感じた。
「ハハハハ!死体を自分のアジトに持ってくるとかアホかお前ら!」
その話し方は達也のそれでは無かった。
まるで【別人】が操作しているような....。
達也がこちらに右手を向けると、手の平に火の玉が形成された。
「死ね」
手から発せられた火の玉はBarの壁に引火し、店内に火が回った。
「はぁ....分かった、分かった。これからは死体の処理もしっかりしておく事にするよ」
俊介がため息を一つ着くと、大炎上していたBarの火がピタリと動きを止めた。
指を鳴らすと、火は忽ち達也の手の平まで火の玉となり戻っていた。
その手の平に蹴りを入れる俊介。
火の玉はかすれて消えた。
【ウッドソード!】
俊介がそう唱えると、達也の体が宙に浮き、回転しながら燃え始めた。
数秒もしないうちに達也は灰と化し、地面にパラパラと落ちた。
落ちた灰は手で溶ける雪の様にじんわりとBarの地面に溶けていった。
「....殺したのか?」
「あぁ。殺した」
「....」
色々な驚きが俺の中を交差する。
達也を一撃で沈めた俊介の実力。
何の躊躇いも無しに殺した俊介の無慈悲さ。
人の命をなんとも思わないジェミニの残忍さ。
俺はとんでもない事柄に絡んでしまったのかも知れない....。
プロであるからこその慢心。
コイツが犯した、たった一つのミス。
殺す瞬間。その一撃に全てをかける。
だからこそ、足元はガラ空きだった。
「おまっ....」
記憶を深く【改竄】する!
男の目からハイライトが消え、男はその場に膝から崩れた。
恐怖の感情を【発狂】レベルまで爆上げした。
もはや男は恐怖で喋ることすらできない。
しかも脳はその恐怖の正体を掴むことができない。
恐怖が足りなくなってはすぐに補われてを繰り返す永久機関。
数秒もしないうちに、男は意識を失った。
ざまぁみろ。
痛みが限界に達し、俺もそのまま意識を失った。
━…━…━…━…
気付くとBarに居た。
俊介が男の所持品を調べていたが、妙に楽しげなその表情に疑問の感情が浮かぶ。
「お、気づいたか?どうだ?一応体の傷は一通り治したが....」
気付くと体の傷が綺麗に治っていた。
破裂していたんじゃないかと思うほどに熱く、傷んでいた内蔵も痛み一つ発していない。
むしろ戦闘する前より健康になっている気がする。
一体どうやって?
「あ、あぁ」
「お手柄だぞ勝治。あの男の私物からとても興味深いものが出てきた」
そう言いながら俊介はカウンターの上に広げた男の私物の中から仮面を取り出した。
と、同時にバーに設置されていたテレビから耳を引くニュースが飛び込んできた。
「....えー、次のニュースです」
「本日、都内の某校にて大規模な火災が発生しました。被害人数は現在確認できている範囲で100人を超えています」
キャスターのアナウンスと共に、画面いっぱいに映し出された俺の学校。
テロップには重傷78人軽傷32人と出ていた。
クソ....。
「そうだ、男は?」
俺がそう聞くと、俊介は壁の方を指さした。
そこにはだらりと座りヨダレを垂らす男が居た。
どうやら俺の能力の効果がまだ残っているらしい。
「おい、おっさん。聞こえるか?」
「....んぁ?....へ?....あ?」
精神は崩壊している。
でも意識はしっかりあるようで安心した。
記憶を....【読む】。
【藤原 達也(36)】
職業はサラリーマン。
都内の事務所で働いている。
20代後半の時に組織【ジェミニ】に所属。
....季子の両親を殺したのはこの男では無いな。
ジェミニに関する記憶が綺麗に抜け落ちている。
断片的になっていて認識できない。
唯一認識できたことといえば、達也とかいうこの男が組織のボスの声すら聞いた事が無いと言うことぐらいだ。
基本的な指揮権を持っているのはその側近。名前も不明のソイツのようだが....。
達也....マジで無能力者だったのか?
情報が次から次へと出てくる中、一つの面白い記憶が出てきた。
記憶の中にギュウギュウ詰めにされていた違和感のある記憶。
【自分は殺し屋、今までに何千人と殺してきた】
たった数行程度の記憶だったが、彼が自身を【プロ】と称していたのはこの記憶が原因か....。
この記憶こそ何かの【異能力】で書かれたモノのようだが....。
組織に入った理由も、経緯も全部【消されて】いる。
「季子。コイツはお前の両親殺しの犯人じゃ無さそうだぞ」
「えぇ、さっき俊介に聞いたわ」
「え?」
こっちに向かって手を振る俊介。
「なんで分かったんだ?」
「私物だよ、この仮面さ」
そう言って俊介は再び仮面をこちらに向けた。
「この仮面には【強制力】があるんだ。真犯人....いや、黒幕って表現するのが適切かな。ソイツは恐らく【僕と同じタイプ】の能力者だよ」
「モノに【能力】を付与することが出来るみたいだ」
数秒の沈黙が走る。
能力を付与出来る能力。
付与できる能力に上限がないのだとしたら、俺等は詰んでいる。
そんなチート持ちの相手にどうやって戦えって言うんだ。
「そうだ、じゃぁ【ジェミニ】は知ってるか?」
「ジェミニ?」
「そう、この男....藤原 純也の記憶から出てきた組織名さ」
「20代後半の頃に、コイツはその組織に加入してる。まぁ、入った経緯だったり心境ってのは全部【削除】されちまってるんだが....」
「待って、黒幕は記憶も弄れるの?」
「組織の中に記憶を操作する能力者がいるって考えるのが妥当だろうな」
「ジェミニ....ふたご座か。組織名から黒幕を特定するのは難しそうだな」
「あぁ」
そんな俺と俊介の会話を聞きながら、季子は何かを考える仕草を取った。
「黒幕捜しの手がかりになるかは分からないけど、ヒントになりそうな人物なら心当たりがあるわ」
「マジで?」
「マジで」
ガシャン....と大きな音が鳴った。
仮面が急に回転を始めたのだ。
辺りにあった男の私物が全て払い落とされ、その仮面は高く飛んだ。
その仮面は男の顔面に一直線に飛んでいき、スポッとはまった。
精神崩壊していた達也がムクリと起き上がる。
その様はさながらゾンビの様だったが、それよりあそこまで深い精神的ダメージを受けておいて、あんなにピンピンしていることに恐怖を感じた。
「ハハハハ!死体を自分のアジトに持ってくるとかアホかお前ら!」
その話し方は達也のそれでは無かった。
まるで【別人】が操作しているような....。
達也がこちらに右手を向けると、手の平に火の玉が形成された。
「死ね」
手から発せられた火の玉はBarの壁に引火し、店内に火が回った。
「はぁ....分かった、分かった。これからは死体の処理もしっかりしておく事にするよ」
俊介がため息を一つ着くと、大炎上していたBarの火がピタリと動きを止めた。
指を鳴らすと、火は忽ち達也の手の平まで火の玉となり戻っていた。
その手の平に蹴りを入れる俊介。
火の玉はかすれて消えた。
【ウッドソード!】
俊介がそう唱えると、達也の体が宙に浮き、回転しながら燃え始めた。
数秒もしないうちに達也は灰と化し、地面にパラパラと落ちた。
落ちた灰は手で溶ける雪の様にじんわりとBarの地面に溶けていった。
「....殺したのか?」
「あぁ。殺した」
「....」
色々な驚きが俺の中を交差する。
達也を一撃で沈めた俊介の実力。
何の躊躇いも無しに殺した俊介の無慈悲さ。
人の命をなんとも思わないジェミニの残忍さ。
俺はとんでもない事柄に絡んでしまったのかも知れない....。
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