極寒の地で拠点作り
洞窟の空洞にて
思わず、フラッシュを解いてしまう程にはソレはかなり大きく、迫力があった。ぼんやりとは見えるので、もうあまり必要無いから使い直さないでおく。
その特徴は、空洞の天井にまで届く様な頭。鋭い牙。蒼い炎の燃える眼孔。
「骨の…………ドラゴン?」
ハープはそう呟く。
ソレは、骨だった。というより、骸?
どちらでもいいけど、全体を見てみればその骸骨は小さい頃博物館で見た恐竜の骨の様な、トカゲにも見える様な、どっちでも言えそうな微妙な感じで、それに骨の翼が付いているのでドラゴンかなと思った。
「これも、神様の眷属だったり?」
「わかんないけど、まあ有り得るよね」
前いた元眷属さん、もとい静かなる老木さんは逃げ出してあそこにいたというのだから、今度のも眷属さんだったら悪いけど本当に部下からの人望が薄いと考えざるを得ない。
ラアトが言ってたくらいには高い地位にいるんだから神様だけでも充分強いんだろうけども、部下に逃げられまくる神様ね……そもそも、まだ、この骨のドラゴンが神様の眷属と決まった訳じゃないけど。
と、そんなことを考えていると骨のドラゴンがこちらを大きく口を開けて見下ろしていた。
「……ッ! 避けてください!」
その様子を見たケイ君が私達に向かって叫ぶ。多分、この動作は何かの兆候なのだろう。
すると、骨のドラゴンの口の奥に何やら蒼い光が……
「ユズ! 避けるよ!」
「え、ああ、うん!」
私達はそれぞれ横に避けた。その直後、
【スカルドラゴンの死のブレス!】
つい三秒くらい前までいた所が蒼い炎に包まれる。少しぼうっとしてたから危なかった。
「リンちゃん! ケイ!」
そうしてハープはその駿足で二人の元に駆け寄ると、私も遅れて追いつく。
「すみません。助けて頂いて……」
「何言ってんの、ケイ。仲間なんだから助けて当然でしょ?」
「……あ、ありがとうございます」
「それで? アレは何?」
アレ、骨ドラゴンはスカルドラゴンという名前でほぼそのまんまだった。
それでそのスカルドラゴンはあのブレスを放つと反動で動けないのか、私達がこっちに来ても追いかけてきたりしてこなかった。
「わ、私達にもわからないです……ただ、この空洞に入ってみたらいきなり襲われて……」
「俺の水魔法は少し効いたんですが、毒魔法とのコンボ技は効かなくて。それで追い詰められてた所、お二人が来たという感じです」
「うーん。となると私達が接近戦でどうにかするしかないかな?」
「私達?」
「そ、私とユズだよ。そのおかしいSTR値でどうにかなるでしょ?」
「おかしいって……確かにそうだから否定しないけど」
「そんなに高いんですか?」
「うん。ユズのSTR値は色々ヤバいね。今までそのメイスでどれだけの人間を葬ってきたか……」
「えっ、ちょっとハープ!」
「そ、そうなんですか……?」
そんな冗談を言うと、リンちゃんは明らかに私から距離を取る。ケイ君はちゃんと理解してくれている様でそんなことは無かった。
「ほら、リン。今更じゃないのか? ユズさんがこうなのって」
「ん?」
あれ、なんか怪しいぞ?
「あの奈落の穴も然り、リンは俺より付き合いが長いんだから、ユズさんがそんなことをしても何らおかしいことは無いと考えられる要素は思い出せば沢山見つかるのでは?」
あ、これはアレだ。
ケイ君は間違った方向に理解しちゃってる。まあでも、時々来る断片的な情報は事実だからあながち間違いじゃないけど…………間違いじゃないんだけど、私は、喜んで人を殴り殺す様な邪な性格はしてないよ?
「うーん……な、なるほど……」
「いや、待って! 待って、リンちゃん! 納得しないで!」
「そうだろう、リン」
「ケイ君もリンちゃんを納得させないで!」
「でしょ? ユズは滅多に怒らないけど、怒らせたら……後は怖くて言えない」
「ハープ!」
私はハープを睨むと、わざとらしく怯えた感じになり、それはリンちゃんの領得を加速させることとなった。おのれ、ハープ。
「まあまあ。とりあえず、さっき話した感じで行くよ? …………その前に皆、スカルドラゴン来るよ!」
ハープが起こした誤解に対応している時間は、スカルドラゴンが復帰するのに充分な時間だったみたいだ。ガシャガシャ言いながら、ドンドンと近づいてくる。
「リンちゃんとケイはとりあえずサポートお願い!」
「わかりました!」
「了解です」
そうして私達は散開する。
足の速いハープは背後から脚を狙う為に回り込む。私は遅いので、回り込んでも同時に振り向かれる。だから、ブレスを撃った後に攻撃に入ろうと思う。なので通常時はハープのみが攻撃に入り、私もサポートに入る。
ハープは回り込んだ後、すぐに足下へ向かう。
「やあっ!」
そしてそのまま、骨である脚に突き刺す……突き刺した!? どれだけ硬いの、闇ノ短剣って。骨だからせいぜいダメージ与えられて切り傷程度かな、と思ってたけど見くびってた。
まあ、そもそも一部の武器しかダメージ与えられないボスがいるなんて流石に無いよね。
それで、攻撃されたことに気づいたスカルドラゴンは体を回転させる。またあのブレスが来る。
「ハープ、こっち!」
【スカルドラゴンの死のブレス!】
「危なっ!」
間一髪。
こっちに向かってきたハープに向かって撃ったつもりなんだろうけど、さっきハープが脚を削ったせいで踏ん張れなくて、体勢を左後脚側に崩しながら斜めにブレスを放ってきた。
結果、私達の頭上すれすれに蒼い炎が通っていった。めちゃくちゃ危なかった。
「せ、セーフ……」
「ちょっとハープ、大丈夫?」
ハープは撃たれた瞬間、スライディングする形で私の所まで滑り込んできた。私が手を貸してやって立ち上がる。
「んしょ、ありがと」
「うん。それで、私の出番?」
スカルドラゴンがブレスの反動で動けなくなった時に私も攻撃に参加するので、今が出番である。
「そうだね。さっきの感じからするに、反動はだいたい一分くらいだったから早く行かないと……という訳で」
「えっ?」
「ほら、早く! 時間短縮の為だよ!」
「う、うん」
ハープがいきなりおんぶする体勢になったので、少し戸惑った。まあ、乗せてもらうんだけど。
「行くよ」
ハープが地面を蹴り、一瞬で近づく。流石に速い。そして降ろしてもらって、私は右後脚側に、ハープはさっきの続きで左後脚側に攻撃を仕掛ける。もう今度の作戦としては、脚を四本とも駄目にして動きを取れなくさせる、で行こうと思ってる。
「えいっ!」
私は杖を右後脚にフルスイングする。
いくら殴打用って言っても、横に振る様な使い方はしないと思うんだよね。でも一撃で砕けたから良かった。
同時にハープも砕いたみたいで、声を出せないスカルドラゴンは暴れながらバランスを崩す。
「やったね!」
「うん!」
私とハープはハイタッチをして離脱する。
それにしてもこのスカルドラゴン、技は死のブレスしか使ってこない。
もしかしてもしかしなくても、この空洞内ではそれぐらいしか使えないのかも。だって翼とか生えてる辺り、絶対望んでここで戦ってる訳じゃなさそうだし。まあ、外に出たら出たで空から攻撃されると思うからここにいてブレスだけ撃ってくれた方が嬉しいんだけどね。
「よし、じゃあこの調子で行くよ!」
「わかった!」
後脚を砕かれて前脚だけでズルズルと動くスカルドラゴンは、時折その長い尻尾で攻撃してくる。その攻撃が当たってもリンちゃんの所に行けば回復してくれるので、実質ダメージはほぼ無い。
とりあえず、次の死のブレスを待つんだけど、流石に学習したのか撃ってこない。
「どうする?」
「近づいたら尻尾攻撃食らうもんね。あ、またアレやる?」
「アレ?」
ハープは何かを投げる動作を見せてきた。
あー、アレって『投擲』のことね。
「でも、尻尾で跳ね返されるんじゃ……」
「それはそれで尻尾破壊出来るんじゃないかな」
「脚を狙うと見せかけて尻尾が本命ってこと?」
「そういうこと!」
という訳で私達はスカルドラゴンの側面に行って、私はハープが取りやすい様に杖を掲げる。
「じゃあ行くよー」
「うん。何時でもいいよ」
「おーけい。じゃあ、『投擲』」
するとハープは、助走をつけて私の杖を取り、そのままの勢いで前のめりになりながら思いっきりぶん投げた。
「よっ、と!」
杖が前左脚目掛けて飛んで…………お、尻尾がその前に?
結果として、見事杖は尻尾に当たり、尻尾は四方に砕け散った。
「やった! 成功したよ!」
「ハープ、さっすがー!」
「あはは、ありがと。あ、そうだ、ユズの杖そのままだったね」
ハープは「戻って!」と言うと、骨と一緒に飛んでいった私の杖がハープの手に戻ってきた。ほんと便利だね、それ。
「……さてと」
ハープは後脚を砕かれ、尻尾はすっかり短くなってしまい醜くなったスカルドラゴンを見つめる。
「残りもやっちゃいますか!」
「そうだね!」
残り、というと前脚からかな。
そんなことを考えていると、リンちゃんが遠くからこう叫んだ。
「えっ? あの、ハープさん! ユズさん!」
「なーに? リンちゃ……」
ハープの声が途中で止まる。
こういう反応は、敵モンスターに何らかの変化が起きた時のソレだ。嫌な予感を感じ取りつつスカルドラゴンを見ると、
「……骨が、組み変わってる?」
「みたいだね……」
スカルドラゴンは動きづらくなったその体を、骨を不思議パワーで変形させたりして形を変えていく。暫くその変化を観察していると、次第に規模が小さくなっていき、
【スカルドラゴンは変形した!】
【スカルスネークが現れた!】
ドラゴンだった骨達は蛇の様な姿になった。
因みにそれを見たハープは、
「…………蛇? ツチノコじゃないの?」
まあ、確かに蛇にしては胴が横に太いからそう見えなくもないんだけどさ。見えることには見えるんだけどさ。
『スカルツチノコ』ってさ…………なんか、微妙じゃない?
その特徴は、空洞の天井にまで届く様な頭。鋭い牙。蒼い炎の燃える眼孔。
「骨の…………ドラゴン?」
ハープはそう呟く。
ソレは、骨だった。というより、骸?
どちらでもいいけど、全体を見てみればその骸骨は小さい頃博物館で見た恐竜の骨の様な、トカゲにも見える様な、どっちでも言えそうな微妙な感じで、それに骨の翼が付いているのでドラゴンかなと思った。
「これも、神様の眷属だったり?」
「わかんないけど、まあ有り得るよね」
前いた元眷属さん、もとい静かなる老木さんは逃げ出してあそこにいたというのだから、今度のも眷属さんだったら悪いけど本当に部下からの人望が薄いと考えざるを得ない。
ラアトが言ってたくらいには高い地位にいるんだから神様だけでも充分強いんだろうけども、部下に逃げられまくる神様ね……そもそも、まだ、この骨のドラゴンが神様の眷属と決まった訳じゃないけど。
と、そんなことを考えていると骨のドラゴンがこちらを大きく口を開けて見下ろしていた。
「……ッ! 避けてください!」
その様子を見たケイ君が私達に向かって叫ぶ。多分、この動作は何かの兆候なのだろう。
すると、骨のドラゴンの口の奥に何やら蒼い光が……
「ユズ! 避けるよ!」
「え、ああ、うん!」
私達はそれぞれ横に避けた。その直後、
【スカルドラゴンの死のブレス!】
つい三秒くらい前までいた所が蒼い炎に包まれる。少しぼうっとしてたから危なかった。
「リンちゃん! ケイ!」
そうしてハープはその駿足で二人の元に駆け寄ると、私も遅れて追いつく。
「すみません。助けて頂いて……」
「何言ってんの、ケイ。仲間なんだから助けて当然でしょ?」
「……あ、ありがとうございます」
「それで? アレは何?」
アレ、骨ドラゴンはスカルドラゴンという名前でほぼそのまんまだった。
それでそのスカルドラゴンはあのブレスを放つと反動で動けないのか、私達がこっちに来ても追いかけてきたりしてこなかった。
「わ、私達にもわからないです……ただ、この空洞に入ってみたらいきなり襲われて……」
「俺の水魔法は少し効いたんですが、毒魔法とのコンボ技は効かなくて。それで追い詰められてた所、お二人が来たという感じです」
「うーん。となると私達が接近戦でどうにかするしかないかな?」
「私達?」
「そ、私とユズだよ。そのおかしいSTR値でどうにかなるでしょ?」
「おかしいって……確かにそうだから否定しないけど」
「そんなに高いんですか?」
「うん。ユズのSTR値は色々ヤバいね。今までそのメイスでどれだけの人間を葬ってきたか……」
「えっ、ちょっとハープ!」
「そ、そうなんですか……?」
そんな冗談を言うと、リンちゃんは明らかに私から距離を取る。ケイ君はちゃんと理解してくれている様でそんなことは無かった。
「ほら、リン。今更じゃないのか? ユズさんがこうなのって」
「ん?」
あれ、なんか怪しいぞ?
「あの奈落の穴も然り、リンは俺より付き合いが長いんだから、ユズさんがそんなことをしても何らおかしいことは無いと考えられる要素は思い出せば沢山見つかるのでは?」
あ、これはアレだ。
ケイ君は間違った方向に理解しちゃってる。まあでも、時々来る断片的な情報は事実だからあながち間違いじゃないけど…………間違いじゃないんだけど、私は、喜んで人を殴り殺す様な邪な性格はしてないよ?
「うーん……な、なるほど……」
「いや、待って! 待って、リンちゃん! 納得しないで!」
「そうだろう、リン」
「ケイ君もリンちゃんを納得させないで!」
「でしょ? ユズは滅多に怒らないけど、怒らせたら……後は怖くて言えない」
「ハープ!」
私はハープを睨むと、わざとらしく怯えた感じになり、それはリンちゃんの領得を加速させることとなった。おのれ、ハープ。
「まあまあ。とりあえず、さっき話した感じで行くよ? …………その前に皆、スカルドラゴン来るよ!」
ハープが起こした誤解に対応している時間は、スカルドラゴンが復帰するのに充分な時間だったみたいだ。ガシャガシャ言いながら、ドンドンと近づいてくる。
「リンちゃんとケイはとりあえずサポートお願い!」
「わかりました!」
「了解です」
そうして私達は散開する。
足の速いハープは背後から脚を狙う為に回り込む。私は遅いので、回り込んでも同時に振り向かれる。だから、ブレスを撃った後に攻撃に入ろうと思う。なので通常時はハープのみが攻撃に入り、私もサポートに入る。
ハープは回り込んだ後、すぐに足下へ向かう。
「やあっ!」
そしてそのまま、骨である脚に突き刺す……突き刺した!? どれだけ硬いの、闇ノ短剣って。骨だからせいぜいダメージ与えられて切り傷程度かな、と思ってたけど見くびってた。
まあ、そもそも一部の武器しかダメージ与えられないボスがいるなんて流石に無いよね。
それで、攻撃されたことに気づいたスカルドラゴンは体を回転させる。またあのブレスが来る。
「ハープ、こっち!」
【スカルドラゴンの死のブレス!】
「危なっ!」
間一髪。
こっちに向かってきたハープに向かって撃ったつもりなんだろうけど、さっきハープが脚を削ったせいで踏ん張れなくて、体勢を左後脚側に崩しながら斜めにブレスを放ってきた。
結果、私達の頭上すれすれに蒼い炎が通っていった。めちゃくちゃ危なかった。
「せ、セーフ……」
「ちょっとハープ、大丈夫?」
ハープは撃たれた瞬間、スライディングする形で私の所まで滑り込んできた。私が手を貸してやって立ち上がる。
「んしょ、ありがと」
「うん。それで、私の出番?」
スカルドラゴンがブレスの反動で動けなくなった時に私も攻撃に参加するので、今が出番である。
「そうだね。さっきの感じからするに、反動はだいたい一分くらいだったから早く行かないと……という訳で」
「えっ?」
「ほら、早く! 時間短縮の為だよ!」
「う、うん」
ハープがいきなりおんぶする体勢になったので、少し戸惑った。まあ、乗せてもらうんだけど。
「行くよ」
ハープが地面を蹴り、一瞬で近づく。流石に速い。そして降ろしてもらって、私は右後脚側に、ハープはさっきの続きで左後脚側に攻撃を仕掛ける。もう今度の作戦としては、脚を四本とも駄目にして動きを取れなくさせる、で行こうと思ってる。
「えいっ!」
私は杖を右後脚にフルスイングする。
いくら殴打用って言っても、横に振る様な使い方はしないと思うんだよね。でも一撃で砕けたから良かった。
同時にハープも砕いたみたいで、声を出せないスカルドラゴンは暴れながらバランスを崩す。
「やったね!」
「うん!」
私とハープはハイタッチをして離脱する。
それにしてもこのスカルドラゴン、技は死のブレスしか使ってこない。
もしかしてもしかしなくても、この空洞内ではそれぐらいしか使えないのかも。だって翼とか生えてる辺り、絶対望んでここで戦ってる訳じゃなさそうだし。まあ、外に出たら出たで空から攻撃されると思うからここにいてブレスだけ撃ってくれた方が嬉しいんだけどね。
「よし、じゃあこの調子で行くよ!」
「わかった!」
後脚を砕かれて前脚だけでズルズルと動くスカルドラゴンは、時折その長い尻尾で攻撃してくる。その攻撃が当たってもリンちゃんの所に行けば回復してくれるので、実質ダメージはほぼ無い。
とりあえず、次の死のブレスを待つんだけど、流石に学習したのか撃ってこない。
「どうする?」
「近づいたら尻尾攻撃食らうもんね。あ、またアレやる?」
「アレ?」
ハープは何かを投げる動作を見せてきた。
あー、アレって『投擲』のことね。
「でも、尻尾で跳ね返されるんじゃ……」
「それはそれで尻尾破壊出来るんじゃないかな」
「脚を狙うと見せかけて尻尾が本命ってこと?」
「そういうこと!」
という訳で私達はスカルドラゴンの側面に行って、私はハープが取りやすい様に杖を掲げる。
「じゃあ行くよー」
「うん。何時でもいいよ」
「おーけい。じゃあ、『投擲』」
するとハープは、助走をつけて私の杖を取り、そのままの勢いで前のめりになりながら思いっきりぶん投げた。
「よっ、と!」
杖が前左脚目掛けて飛んで…………お、尻尾がその前に?
結果として、見事杖は尻尾に当たり、尻尾は四方に砕け散った。
「やった! 成功したよ!」
「ハープ、さっすがー!」
「あはは、ありがと。あ、そうだ、ユズの杖そのままだったね」
ハープは「戻って!」と言うと、骨と一緒に飛んでいった私の杖がハープの手に戻ってきた。ほんと便利だね、それ。
「……さてと」
ハープは後脚を砕かれ、尻尾はすっかり短くなってしまい醜くなったスカルドラゴンを見つめる。
「残りもやっちゃいますか!」
「そうだね!」
残り、というと前脚からかな。
そんなことを考えていると、リンちゃんが遠くからこう叫んだ。
「えっ? あの、ハープさん! ユズさん!」
「なーに? リンちゃ……」
ハープの声が途中で止まる。
こういう反応は、敵モンスターに何らかの変化が起きた時のソレだ。嫌な予感を感じ取りつつスカルドラゴンを見ると、
「……骨が、組み変わってる?」
「みたいだね……」
スカルドラゴンは動きづらくなったその体を、骨を不思議パワーで変形させたりして形を変えていく。暫くその変化を観察していると、次第に規模が小さくなっていき、
【スカルドラゴンは変形した!】
【スカルスネークが現れた!】
ドラゴンだった骨達は蛇の様な姿になった。
因みにそれを見たハープは、
「…………蛇? ツチノコじゃないの?」
まあ、確かに蛇にしては胴が横に太いからそう見えなくもないんだけどさ。見えることには見えるんだけどさ。
『スカルツチノコ』ってさ…………なんか、微妙じゃない?
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