極寒の地で拠点作り
初期設定
 
「うぁ……ここは?」
  目を閉じ、ボタンを押して辿り着いた場所での私の第一声はありがちな言葉になった。真っ暗なのにはっきりと自分の身体が見える、そんな不思議な空間に戸惑っていると、
「ようこそ、『Guild Strategy Online』へ!」
『Guild Strategy Online』
  確かこのゲームの名前だったか、どこからか声がした。そういえばこのゲームの特徴とかほとんど聞いてなかったなぁ……まあ何とかなるでしょ、うん。
「ではまずあなたの名前を教えて下さい」
 あ、これから初期設定みたいな事をするのかな。それにしても肝心の名前を考えてなかった。
本名そのままで『ユズハ』にするのもなぁ……。
  英訳とか逆さから読んだり~とか色々考えたけど、結局一番良いのは『ユズ』ということになった。
「はい、『ユズ』さんですね。登録しておきます」
  そういえば琴音は何て名前にしたんだろ。九条の九で『ナイン』とか?いや、琴音に限って番号みたいな名前を好きで選ばないか。
「では次に初期装備ですが…」
  と言って、目の前に装備一覧が表示されたウィンドウが現れた。
 上から順に、斧に剣、その剣の中にも片手剣や大剣、ナイフなど種類は色々あるみたい、悩むなぁ。でもまず、近接武器は無しだよね、攻撃受けやすいのは嫌だし。となると、遠距離系になるかな?
「えっと、杖は魔法が使えて攻撃や回復が可能……弓矢は経験が無くても撃つことが出来る……」
  他にも銃とかあったけどあまりピンとこなかったのでやめておいた。
  そもそも弓矢にせよ銃にせよ、矢や弾は消費アイテムに入るらしく、何故だか非売品でその素材だけが売っている、とヘルプ欄に載っていて始めの方では量産が難しいから初心者には向かないみたいだった。私が唯一知っているこのゲームの特徴は『協力』ってのもあるから、消費アイテムなのもなんとなく分かる気がする。
  それで結局、私はロッドと呼ばれる種類の杖を選んだ。理由は、どうせなら現実で出来ないことをしてみたかったから。ロッドって言うのはよく分からなかったけど聞き覚えがあったから選んでみた。多分大丈夫。
「はい、では『初心者のロッド』を装備しておきますね」
  よし、これで私も魔法使いデビューだね!なんてことを考えていたら次の項目にウィンドウが変化した。
「では最後にステータスの確認をお願いします」
「えっ」
  思わず声が出ちゃった……最後?身長とか容姿とかその辺り弄れないの?とか思ったけどヘルプ欄を見たら現実と感覚が合わず、また現実に戻った時も合わないなんて事が起きるらしいので仕方無く諦めた。
「えっと、私のステータスは、っと」
ユズ
Lv.1
主要ステータス
【HP:20/20】
【MP:10/10(+5)】
【STR:10】
【VIT:10】
【AGI:10】
【DEX:10】
【INT:10(+2)】
「へぇ、オール10からのスタートなんだ」
  他のゲームがどれくらいなのかは知らないけど、0からじゃないんだね。それぞれのステータスの意味はヘルプ欄に載ってたから助かった。このカッコの中は杖の追加効果らしい。
「それで装備は、っと」
装備
【頭:なし】
【体:なし】
【右手:初心者のロッド】
【左手:(初心者のロッド)】
【脚:なし】
【靴:なし】
その他装備品
【空欄】
「なし」と言っても一応服はデフォルトで着ている。薄着で少し寒いけど。
  杖は両手持ち設定の様で片方の手に装備したらもう片方には装備することは出来ないみたいだ。
「ご確認出来ましたらこちら、『終了』ボタンを押して下さい」
「はい、終了っと」
  これから現実とは違う世界で生活していく、そう思うとやっぱりワクワクしてくる。いざ、VRMMOの世界へ!……とか思ってたら、
「では次の手続きがあるので、こちらにお進み下さい」
  うぇ、まだあるの?せっかく意気込んでたのになぁ。少しがっくりしていると瞬間、目の前が白に包まれ、思わず目を瞑ってしまう。次に目にしたのは噴水のある円形の広場だった。この広場には私と同じくプレイを新しく開始した人が集まるらしく、友達と始めたのか楽しく喋っている姿が見て取れる。
  友達と言えば、琴音はどうしたのかな?と辺りを見回していると、何やら背後に気配がすると思った瞬間、
「わっ!」
「きゃっ!」
  その気配の主は琴音だった。
  思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。思いのほか大きな声だった様なので周りの人がこちらに視線を向けている。恥ずかしくなった私は広場の隅に琴音を引っ張っていった。
「もう!驚いたじゃん!」
「あはは、ごめんごめん。まさかあんなに驚くとは思わなくて」
  相変わらず笑い続ける琴音。いつもこんな感じで、よく琴音には振り回されてる。まあ振り回されてるといえばそうなんだけど、私もこんな性格だからどっちもどっちなのかも。
「はぁ、琴音はいつもこうなんだから……」
「仕方ない仕方ない。それと、私は琴音じゃないよ?……あっ、違う違う!人違いとかそんなんじゃなくて、ここでは『ハープ』だよってこと!」
  一瞬焦った私に気付いたのか、慌てて訂正してきた。そっか、ここはもう現実とは違う別の世界だもんね。それにしてもハープかぁ……ナインじゃなかった。
「九条の九で『ナイン』ってのも考えたんだけど、なんか女の子っぽくないからやめた」
  あ、考えてたこと当たった。まあでも杞憂で良かった。それにしても女の子っぽい、ねぇ……?
「何?私が女の子っぽさを気にするのがそんなにおかしい?」
「え、あ、顔に出てた?」
  これはこれは……まさか顔に出てしまっていたとは。とりあえずさっきのお返しって思っとく。
「驚かされたお返しだよ!」
「言ったなー!柚葉の癖にぃ」
と言ってくすぐってくる。これもいつも通りだ。
「それと、私も柚葉じゃなくて『ユズ』だよ!」
「あんまり変わってないよね」
「あはは…………あ、そうそう。そういえば、思い出したけどここって何する所?」
  完全に忘れていたけど、所々にカウンターがあってそこで何やら手続きをしているプレイヤーの姿がいることに気付いた。
「ん、あれ?言ってなかったっけ。あれはね……」
  そう言って話し始めたハープの話をまとめると、この世界は『ギルドホーム』と呼ばれる拠点を元にプレイヤー達が活動していて、そのギルドホームのレベルを上げることで内部の施設を増やしたり向上させることでより便利に出来て、外部の壁の強度が上がったりするみたい。
  それで何より最大の特徴は、他人のギルドホームから資源を奪ったり施設を破壊することも可能らしくって、それの対策として防衛設備の質を上げることも大事なんだって言う事らしい。それがこのゲームの題名にもある『strategy』ってそういうことなのかな?まあでも、単純にフィールドの敵も襲って来るからってのもあるみたいだし。
「うん……それで、そのギルドホームの新設の申請をあそこのカウンターで執り行ってるっていうこと?」
「うん、そういうこと。このゲームは公式が直々に大人数推奨って言う位ギルドホームに重点を置いてるものだから私一人でやるのも何だったからね。迷惑じゃなかった?」
「ううん、全然そんなことないよ。寧ろ琴音……ハープと一緒に遊べるって考えるととっても楽しみだよ!」
  普段から一緒に遊んだり話したり学校行ったりして思えばずっと一緒だけど、こういう二人で何か共同の物を作るって言うのはあまり無いから素直に楽しみと言える。
「良かった……そう言ってくれると嬉しいよ」
「よし。じゃあ早速、申請しに行こう!」
  私は感傷に浸っているハープの腕を再び引っ張って、カウンターに向かうのであった。
「うぁ……ここは?」
  目を閉じ、ボタンを押して辿り着いた場所での私の第一声はありがちな言葉になった。真っ暗なのにはっきりと自分の身体が見える、そんな不思議な空間に戸惑っていると、
「ようこそ、『Guild Strategy Online』へ!」
『Guild Strategy Online』
  確かこのゲームの名前だったか、どこからか声がした。そういえばこのゲームの特徴とかほとんど聞いてなかったなぁ……まあ何とかなるでしょ、うん。
「ではまずあなたの名前を教えて下さい」
 あ、これから初期設定みたいな事をするのかな。それにしても肝心の名前を考えてなかった。
本名そのままで『ユズハ』にするのもなぁ……。
  英訳とか逆さから読んだり~とか色々考えたけど、結局一番良いのは『ユズ』ということになった。
「はい、『ユズ』さんですね。登録しておきます」
  そういえば琴音は何て名前にしたんだろ。九条の九で『ナイン』とか?いや、琴音に限って番号みたいな名前を好きで選ばないか。
「では次に初期装備ですが…」
  と言って、目の前に装備一覧が表示されたウィンドウが現れた。
 上から順に、斧に剣、その剣の中にも片手剣や大剣、ナイフなど種類は色々あるみたい、悩むなぁ。でもまず、近接武器は無しだよね、攻撃受けやすいのは嫌だし。となると、遠距離系になるかな?
「えっと、杖は魔法が使えて攻撃や回復が可能……弓矢は経験が無くても撃つことが出来る……」
  他にも銃とかあったけどあまりピンとこなかったのでやめておいた。
  そもそも弓矢にせよ銃にせよ、矢や弾は消費アイテムに入るらしく、何故だか非売品でその素材だけが売っている、とヘルプ欄に載っていて始めの方では量産が難しいから初心者には向かないみたいだった。私が唯一知っているこのゲームの特徴は『協力』ってのもあるから、消費アイテムなのもなんとなく分かる気がする。
  それで結局、私はロッドと呼ばれる種類の杖を選んだ。理由は、どうせなら現実で出来ないことをしてみたかったから。ロッドって言うのはよく分からなかったけど聞き覚えがあったから選んでみた。多分大丈夫。
「はい、では『初心者のロッド』を装備しておきますね」
  よし、これで私も魔法使いデビューだね!なんてことを考えていたら次の項目にウィンドウが変化した。
「では最後にステータスの確認をお願いします」
「えっ」
  思わず声が出ちゃった……最後?身長とか容姿とかその辺り弄れないの?とか思ったけどヘルプ欄を見たら現実と感覚が合わず、また現実に戻った時も合わないなんて事が起きるらしいので仕方無く諦めた。
「えっと、私のステータスは、っと」
ユズ
Lv.1
主要ステータス
【HP:20/20】
【MP:10/10(+5)】
【STR:10】
【VIT:10】
【AGI:10】
【DEX:10】
【INT:10(+2)】
「へぇ、オール10からのスタートなんだ」
  他のゲームがどれくらいなのかは知らないけど、0からじゃないんだね。それぞれのステータスの意味はヘルプ欄に載ってたから助かった。このカッコの中は杖の追加効果らしい。
「それで装備は、っと」
装備
【頭:なし】
【体:なし】
【右手:初心者のロッド】
【左手:(初心者のロッド)】
【脚:なし】
【靴:なし】
その他装備品
【空欄】
「なし」と言っても一応服はデフォルトで着ている。薄着で少し寒いけど。
  杖は両手持ち設定の様で片方の手に装備したらもう片方には装備することは出来ないみたいだ。
「ご確認出来ましたらこちら、『終了』ボタンを押して下さい」
「はい、終了っと」
  これから現実とは違う世界で生活していく、そう思うとやっぱりワクワクしてくる。いざ、VRMMOの世界へ!……とか思ってたら、
「では次の手続きがあるので、こちらにお進み下さい」
  うぇ、まだあるの?せっかく意気込んでたのになぁ。少しがっくりしていると瞬間、目の前が白に包まれ、思わず目を瞑ってしまう。次に目にしたのは噴水のある円形の広場だった。この広場には私と同じくプレイを新しく開始した人が集まるらしく、友達と始めたのか楽しく喋っている姿が見て取れる。
  友達と言えば、琴音はどうしたのかな?と辺りを見回していると、何やら背後に気配がすると思った瞬間、
「わっ!」
「きゃっ!」
  その気配の主は琴音だった。
  思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。思いのほか大きな声だった様なので周りの人がこちらに視線を向けている。恥ずかしくなった私は広場の隅に琴音を引っ張っていった。
「もう!驚いたじゃん!」
「あはは、ごめんごめん。まさかあんなに驚くとは思わなくて」
  相変わらず笑い続ける琴音。いつもこんな感じで、よく琴音には振り回されてる。まあ振り回されてるといえばそうなんだけど、私もこんな性格だからどっちもどっちなのかも。
「はぁ、琴音はいつもこうなんだから……」
「仕方ない仕方ない。それと、私は琴音じゃないよ?……あっ、違う違う!人違いとかそんなんじゃなくて、ここでは『ハープ』だよってこと!」
  一瞬焦った私に気付いたのか、慌てて訂正してきた。そっか、ここはもう現実とは違う別の世界だもんね。それにしてもハープかぁ……ナインじゃなかった。
「九条の九で『ナイン』ってのも考えたんだけど、なんか女の子っぽくないからやめた」
  あ、考えてたこと当たった。まあでも杞憂で良かった。それにしても女の子っぽい、ねぇ……?
「何?私が女の子っぽさを気にするのがそんなにおかしい?」
「え、あ、顔に出てた?」
  これはこれは……まさか顔に出てしまっていたとは。とりあえずさっきのお返しって思っとく。
「驚かされたお返しだよ!」
「言ったなー!柚葉の癖にぃ」
と言ってくすぐってくる。これもいつも通りだ。
「それと、私も柚葉じゃなくて『ユズ』だよ!」
「あんまり変わってないよね」
「あはは…………あ、そうそう。そういえば、思い出したけどここって何する所?」
  完全に忘れていたけど、所々にカウンターがあってそこで何やら手続きをしているプレイヤーの姿がいることに気付いた。
「ん、あれ?言ってなかったっけ。あれはね……」
  そう言って話し始めたハープの話をまとめると、この世界は『ギルドホーム』と呼ばれる拠点を元にプレイヤー達が活動していて、そのギルドホームのレベルを上げることで内部の施設を増やしたり向上させることでより便利に出来て、外部の壁の強度が上がったりするみたい。
  それで何より最大の特徴は、他人のギルドホームから資源を奪ったり施設を破壊することも可能らしくって、それの対策として防衛設備の質を上げることも大事なんだって言う事らしい。それがこのゲームの題名にもある『strategy』ってそういうことなのかな?まあでも、単純にフィールドの敵も襲って来るからってのもあるみたいだし。
「うん……それで、そのギルドホームの新設の申請をあそこのカウンターで執り行ってるっていうこと?」
「うん、そういうこと。このゲームは公式が直々に大人数推奨って言う位ギルドホームに重点を置いてるものだから私一人でやるのも何だったからね。迷惑じゃなかった?」
「ううん、全然そんなことないよ。寧ろ琴音……ハープと一緒に遊べるって考えるととっても楽しみだよ!」
  普段から一緒に遊んだり話したり学校行ったりして思えばずっと一緒だけど、こういう二人で何か共同の物を作るって言うのはあまり無いから素直に楽しみと言える。
「良かった……そう言ってくれると嬉しいよ」
「よし。じゃあ早速、申請しに行こう!」
  私は感傷に浸っているハープの腕を再び引っ張って、カウンターに向かうのであった。
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