手違いダンジョンマスター~虐げられた魔物達の楽園を作りたいと思います~

ノベルバユーザー168814

首洗って待っててくれ

「んじゃあな、数日後には迎えに来るから首洗って待っててくれ」
「その台詞は使いどころが違うんじゃないですか、ご主人様?」
「……ユニークですっ!」

 サイゾウは俺のお茶目な発言にクレームを入れてくる。ユリは何故かフォローしてくれているがフォローになっているのかは怪しい。

「まぁ、気長に待つのさ。今後の退屈凌ぎの前の最後の余暇って奴を楽しんでおくのさ」
「俺らが帰った後に殺されたりしてな。あはははは」
「ボクら既に死んでるけどね?」

 笑えないな。それよりもダンジョンに入れた後が問題だ。
 どうやって暇を潰してもらおうかな、ユキムラと十勇士の特訓相手にでもなってもらおうかな。

 俺は相手なんてしないぞ? 死ぬだけだからな、わっはっは。

 適当に挨拶を済まして早々にゾンビ村から立ち去る。森までは少し距離があるし、そこからダンジョンまではもっとかかるからな。
 こんな早朝に出るのも仕方ないだろう。

「まさか村にいるゾンビまで見送りに来るとは思わなかったけど……」
「次あった覚えてやがれです!」
「……今度こそ勝ちますっ!」

 サイゾウとユリはグール達に対抗心が強い様だ。向上心があるのは良い事だな。

「……もう来るな、面倒」
「……私は構わんよ」

 グール達は別々の意見らしい。にしてもコイツら似てるな、いや、どっちもキレイとは言ってもゾンビよりはって事だしあんまり区別つかねぇな。






 森に入るまでは特になんの魔物の接触もなかった。
 まぁ、ここはだだっ広い平原なので見晴らしが良い、普通に魔物がいたら分かる事だけど。

「あとはダンジョンに帰るだけだな。……それが1番面倒何だけど」
「よしっ! 隠密の練習しながら行きましょう! グールめ、覚えてやがれです!」
「まだ言うか……でもあんまり離れるなよ? 熊が出たら俺対処出来ないぞ」
「またまたぁ~、ご主人様ってば冗談が上手ですよね!」

 冗談じゃないわ! 一般人なめんなよ!? 意外と何にも出来ねぇからな!?

「……大丈夫ですっ、こ、今度は私が着いてますからっ」
「流石はユリだ。自分勝手なサイゾウとは違うな」
「ちょちょちょ、冗談です! 私もちゃんと護衛しますからぁ! 置いてかないで下さい!」

 サイゾウは放置してユリを肩に乗せたまま森の中へ足を踏み入れていく。
 やっぱりスライムってひんやりしてて気持ちいいな。

「ん? 心なしかユリの色がほんのり赤いような……」
「き、気のせいですっ」
「まぁ、いいか」

 機嫌も良いようだし気にする必要はないか。





 森に入って数時間位は経ったかな、恐らく中腹位までは来ているだろう。
 俺達は絶賛、木陰で休憩中だ。森の中なのど木陰だらけなんだけどな。

 今回は珍しくサイゾウとユリは離れることはせず、俺の肩に乗って移動をしていた。
 ひんやりしてて気持ちいいのは有難いんだが、如何せん少し重いし動きづらい。お陰でスタミナごっそりとられた。

「お前達ね、少しは自分で歩いたらどうよ」
「でも、離れるとご主人様どこか行っちゃいそうですから!」
「……そうですっ! 離れる訳にはいかないですっ!」

 俺は歩き始めたばかりの赤ん坊か。

「いや、でもさ、歩く位なら……」
「ムリです、疲れました!」
「……私もですっ! ですから……おんぶ、してもらえませんか?」
「お、おう……」

 目とか無いけど凄い剣幕で見られている気がする。何となくだけど……。
 取り敢えず逆らうことが出来そうもないな、俺、ダンジョンマスター何だけど……。

「それにしても腹へったな。良く良く考えたら何も食べてなかったな」
「むぅ、仕方ないですね……ちょっと探してきますから動かないでくださいよ?」
「俺をどんな問題児だと思ってるわけ!?」
「サイちゃん、私が見てるから大丈夫ですっ」
「それはそれで癪だけど仕方無いですね! 任せましたよ」

 あっという間に消えていったサイゾウ。ここまでどうやって戻ってくるんだろうか、俺なら確実に迷う自信がある。
 そしてひっそりと木にもたれ、胡座をかいている足の間にユリが乗ってくる。抜群のフィット感だ。

「いきなりどした?」
「……いえ、あの、その……嫌ですか?」
「別に嫌じゃないぞ、寧ろ良い感じだ」

 もじもじと揺れているユリ。にしても、数日前は話しただけで逃げられたんだけど、今ではそんな事があったと感じさせない程くっついてくるな。

 もしや……なついたか!

 うんうん、仲良くなることは良いことだからな。これも主人と配下じゃなく1人と1匹の友情だな。

「戻りましたよーって……何してるんですかユリィ!」
「は、はいっ! すみませんっ!」

 大量の果物を持ってきてくれたサイゾウが突然叫び驚いたユリは俺から離れる。

「サイゾウ、ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして! ……ユリ、お話ししませんか?」
「うぅ、折角のお楽しみが……」

 なにやらこそこそ話している様だが全く聞こえないので放置で良いだろう。殴り合いとかに発展しそうなら止めるけどね。死なない程度なら。
 それよりも腹へったし、果物でも食べておくとしよう。

「梨っぽいなこれ……ゴブリンに喰わせた奴じゃ無いだろうな」

 でもあの果物はリンゴみたいな形だったしこれもまぁ、多分ギリギリ大丈夫なんじゃないかな。

 色々と観察するように離してみたり近づいて見たりしていたら果物がとられた。

 俺の果物盗りやがったのはどこのどいつだ!

「グルゥ……」
「嘘やん」

 それは目に立派な傷の入った熊さんだ。

 やぁ、こんなところで再会できるとは思ってなかったよ。したくも無かったけどね!

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