創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜

RAKIHA

第38話 謎の黒

広大な草原から遠くにある森。そこには、奇妙な現象が起きていた。
森が、真っ黒に染まっている
自然では絶対に起きることのない、不可思議な現象。その黒が。ゆっくりと森を侵食している。

この数時間後に、グラスター魔法学園の生徒たちは、モンスターの恐怖を知ることとなる・・・。




(索敵には異常無しか)


僕は索敵の魔法を使用する。特に問題はないので、王女様の護衛を続行する。先程からまだモンスターに遭遇していないが、王女様ともう1人の女子生徒・・名前は確かアルナだったか?は、先程から緊張している様子で周りを伺っている。


「すっごい緊張するね・・・」
「は、はい。何か出そうな気がしますから・・」
(周囲にいるのは雑魚だぞ〜〜)


僕は心の中でそう思うが、彼女たちの緊張も実習のうちだと考えよう。僕は体験したことない感覚だが、魔導師にはそのような緊張も必要なのだろう。
僕は、SSSランクのモンスターが出てくれば、それなりに緊張するかもしれないけど・・・。
と、そうこうしているとモンスターが出てきた。


「きゃ!モンスターが出ましたよ!」
「よーし!得点稼ぐわよ!!」


今目の前にいるのはランクモンスターのファイトモンキーだ。ファイトモンキーは近接格闘術しか使ってこないため、遠距離の得意な王女様なら相性はいい。


「いきます!【ウィンドカッター】!!」


予想通り、王女様が風の刃を生みだし、ファイトモンキーを倒してしまった。それなりに自分の長所を理解しているようだ。


「あー、私の出番なくなっちゃった」
「あ、ご、ごめんなさい!」
「あはは。いいんだよ。まだ時間とかあるし、嫌でもモンスターに遭遇するんだから」
「そ、そうですね。まだたくさん出るんですよね」
「そうそう。だから戦う機会はあるからさ」


2人が楽しそうに話している時、僕の索敵に少し強めのモンスターが引っかかった。


(これは・・・生徒が相手にするには早すぎるかもな・・・)


僕は王女様の居場所を把握しつつ、そのモンスターの討伐へ向かった。





およそ2分で、そのモンスターの居場所までつくことができた。そのモンスターは八本の手足を持った人型の姿をしていた。
僕はルーン魔法で相手の情報を調べる。


「スパイダーコング・・・ランクBか・・・」


凶暴そうな見た目とは裏腹に、ランクはそこまでだった。どうやら近接攻撃と口から吐く毒、同じく口から吐く粘着性のある糸が主な攻撃手段らしい。


「だが・・・なんだろう?こいつ、なんで半分だけ真っ黒なんだ?」


入ってきた情報とは全く違う外見なのだ。本来は茶色い体毛で覆われているようなのだが、目の前にいるそれは身体の半分が黒い何かで覆われていた。


”ゴルアアアアアアアア!!”


どうやら僕に気づき威嚇してきたようだ。本来なら、そのまま消滅してやるところだが、少々気になることがあるので身体を残したまま殺すことにした。


「【重力強化】」


こちらに突進してきていたスパイダーコングが、地面に倒れ伏す。重力を強化したので、前に進むことができないのだ。僕はスパイダーコングの一部に、さらに重力をかけた。


「【心臓部の重力を10倍に引きあげろ】」


かけた瞬間。スパイダーコングはビクリっと身体を震わせ、絶命した。
が次の瞬間に、僕は驚愕することとなる。


「なっ・・!」


スパイダーコングから離れた黒い物体が、スパイダーコングの姿を形取ったのだ。全身は真っ黒だが、間違いない。
そしてそのまま僕に向かって突進を始める。


「チッ!取り付いた相手をコピーするってことか!」


僕は吐き捨てるように、持論を言葉にした。が、そんなことを言っている場合ではないと、魔法を使用する。


「【空間ごと消滅しろ】」


黒いスパイダーコングは、その身体を不自然なほど小さくしながら消滅した。僕が奴のいる空間ごと消滅させた。消滅させた空間はすぐに戻る。そのように念じたのだ。


「もし。もしあの黒い物体がこの森中にいるとしたら・・・まずいことになるな」


僕は改めて、いまどのような状況にあるのかを考える。モンスターのコピーなどとんでもないことだ。1体倒してももう1体いるのだ。はっきり言ってかなり危険な状態。


僕は嫌な予感がするが、ひとまず王女様の元に戻ることにした。





その頃のマリーたちは、順調にモンスターを倒しており、その死骸はアルナの水魔法によって運ばれている。


「それなりに倒しましたね。一旦休憩しましょうか」
「そうだね、じゃあそこの倒木でーに座ろうか」


2人は近くの倒木に腰を下ろし、水分補給を行う。そして、少し緊張がほぐれたようで、談笑をし始めていた。
クラスのことや、この実習のこと、モンスターのことなどを話していた。
と、その話は隣のクラスのことになっていた。


「ねえ、マリーちゃんは知ってる?」
「?なにがですか?」
「隣のBクラスに、ほとんど授業に出てない子がいるんだって」
「な、なんですかそれ?問題児ってことなんですか?」
「それがさ。なんか研究室にこもってずっと研究してるらしいよ」
「け、研究ですか?」
「そう研究。なんの研究かはわからないけど、学園長に許可を貰って授業とか出てないらしいよ」
「が、学園が認めてるん・・・ですか?」


それはマリーも驚きだった。それに、学園長から認められた研究とは一体なにかも気になった。


「その方は・・・どんな方なのかは知っていますか?」
「ええっと。私は多分1回だけ見たことあるかも」
「そ、それはどんな?」
「んーっとね。すっごい見た目かっこいい人だった。でもなんか近寄り難い感じ?クールそうな人だったかな」
「容姿端麗な方なんですか?」
「少なくてもあれはかっこいいとかの次元じゃなかったけどね」
「そ、そんなに・・・」


マリーは興味をそそられた。友人がここまで絶賛するほどの容姿の持ち主なのだ。一度会って見たい・・・。


「あーあとね。Bクラスの子から聞いたんだけど、魔法検査の時の推定ランクはAだったそうだよ」
「ラ、ランクAですか!?」
「なんでも、空中に巨大な氷の花を生み出して、あの人形に落下させたらしいの。あの結界は全壊で、人形の身体も貫いていただけじゃなくてね。周囲10メートルくらい凍らせちゃったらしいの」
「と、とんでもない人なのですね・・・」


マリーはここまで聞いて、なお疑問に思う。何故、そこまでの実力があるのに、授業に出ないのだろうかと。絶対にもっと強くなれるはずなのに、それを伸ばそうとしないのは何故か。


「1度会って見たいですね。そして、授業に出るように説得したいです」
「そのほうがいいよね。もったいないくらい強いらしいから」


マリーは、その生徒に授業に出るようになってもらおうと、密かに決心した。












本人が近くで話を聞いていたのも知らずに・・・・。

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