創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜

RAKIHA

第18話 入学式

フアナ様達から離れた後、僕は少し急いで王都に向かった。あそこで少し時間を使ってしまったのである。時刻は8時10分ほど。まだ2時間程あるが、ゆっくりはしていられない。


「お?あれかな?」


しばらく走り続け、少し先に王都の門とみられる場所が見えてきた。この距離ならあと10分も走ればつくだろう。僕は期待と不安を持って門を目指した。





10分後。門の前に到着したところで門番とみられる男に声をかけられた。


「ここは王都だ。中に入るには身分を証明する物がいるが・・・」
「はい」


僕はロドスさんから渡されていたカードを見せる。このカードの中に入っているお金を使うことができるので、当然身分を証明することも書いてあるのである。


「よしいいぞ。お前さんみたいな子供が1人でくるのは珍しいな」
「森で修行をしていたんで、戻ってきたんです。ちょうど入学式なんで」
「入学式っていうことは、お前さんは魔法学園に入学するのか」
「そうですが・・」
「あの学園に受かるなんてすげーな」


僕は普通に何もなく入学したのだが、他の生徒は受験があるのである。倍率もかなり高かったはずだ。


「ええ、まあ。それなりに勉強しましたから・・・」


ちょっとだけ心が痛い。本当に頑張って入った子達には申し訳ない。


「いやたいしたもんだ。おっと、ここで話してたら時間が来ちまうな。じゃあ通っていいぞ。頑張れよ」
「はい。ありがとうございます」


門を潜り、僕は王都の街中を歩き、家を目指す。王都の街中はとても活気付いているようで、色んな店が出ていた。店にはあまり用はないので今度見物することにする。
退屈しなさそうなところだというのが、第1の感想だった。





表の通りを抜け、僕は学校の付近にある僕の家を目指していた。まだ来たばかりなので、どこに何があるのかわからない。なので、僕はルーン魔法で案内をつけながら探していた。


「ここかな?なんか大きいけど・・・」


20分ほどして、ようやく見つけた家は、思っていたより大きい物だった。外観は白く塗られた石造りの屋敷。庭もついており、どこの貴族の別荘だと思いたくなるような建物である。
そしてもう一つ気になること。それは、建物の場所だ。ルーン魔法で調べたが、この建物があるのは人払いがされた場所である。そしてこの人払いは、魔法学園の生徒手帳を持った人間には発動しないようになっている。ということは・・


「ほとんど学校の敷地内みたいなところなんだよな〜」


家があるのは確かにありがたいが、大きすぎるし学校のすぐ近くで人払いされているところっていうのはどうなんだろうか。


「とりあえず入って荷物を置こうかな」

僕はとりあえず中に入ることにした。門の前には手を置くようなところがあった。おそらく魔力を流し、誰の魔力か判別して開けるのだろう。僕の魔力じゃなければ開かないわけだ。
というわけで魔力を流す。すると門がひとりでに開き始めた。


「防犯対策も完璧っと」

僕は屋敷の中に入った。




屋敷の中はやはり広かった。玄関に上がると同時に自動人形オートメイドが出迎えて来た。一体どれだけお金をかけているのだろうか?


「まあいいや。少ししたら入学式に行こう・・・」

僕はリビングに移動し、紅茶を淹れてから学校に向かった。





学校の敷地内に入るには、学生証が必要になるため用意する。
入り口に学生証を読み取る魔導具があるので、そこにかざし入るわけである。僕は他の生徒がやっているのを真似して中に入る。


「ええっと。僕のクラスは・・・」


クラス表のところまで来ると、クラスがAからDの4クラスに分かれていた。これは成績順ではなく、単純にランダムに割り振られるそうだ。


「僕はBクラスか」


自分のクラスを確認し、入学式が行われる生徒集会場に向かった。




何故だろうか。やけに視線を感じる。僕は特に目立ったことはしていないはずだ・・・。だがやはり視線を感じる。
そこで僕はとあることに気がついた。


(そうか。この髪の色か)


白銀の髪の毛は忌み嫌われると聞く。おそらくそれだろうと思うが、それにしては視線が嫌悪などのものとは全く別物だ。中にはそのような視線もあるが、かなり少ない。


「なんだか居心地悪いな・・・」

不可思議な視線を感じながら先を急ぐことにした。集会場に入ってしまえば視線も治るだろうと思ったのだ。だが・・・


(あ、甘かった・・・)


集会場に入ってから視線は激増した。入学式に参加する生徒が集会場に入るたびに視線を向けられる。これはかなり精神的に来るものがある。しかも、貴族がかなり多いのだ。僕は耐えるしかなかったが。


(なんでだろ。なにもしてないどころか、ここに来るのも初めてなんですけど・・・・)


受験をしていない僕はわけがわからなかったが、考えを改め、気にしないことにした。昔の経験からすればこんなもの苦痛のうちに入らない。
と、そんなことを考えている時だった。


(あなたの考え方は複雑よね)


頭の中に声が響く。だが僕は特に動じない。聞き慣れた声だったからだ。彼女・・は僕が退屈しているとよく話しかけて来るのだ。僕が忙しい時などは話変えて来ることはないので、そこの区別は付いているので問題はない。


(自然にそう考えちゃうんだよ。それに、視線じゃ身体は傷つかない)
(だからその考え方が・・・もういいわ。あとどれくらいあるの?)
(もう5分もすれば始まる。でもどうしたんだ急に?)
(あなたが退屈していたから出てきただけよ。契約してるんだから、主の状況くらいわかるわ)


ここまで話せばわかるだろうが、彼女は僕の契約精霊の1体だ。頭の中で会話ができているのは契約のパスが通っているからである。


(おっと、壇上に人が上がったから話をやめるぞ?)
(はいはい。わかったわよ)


僕は頭の中での会話を中断し、壇上へと視線を向けた。





式の初めは学校の簡単な説明や教訓などだったので、僕はほとんど聞き流した。生徒会長からの挨拶も聞くべきだったのかもしれなかったが、あまり聞いていない。そして最後の方になってから、学園長の祝辞があった。


「新入生の皆さん。まずは入学おめでとう。私がこの学園の学園長であるディアナ=ガードナーよ。魔法連盟ではSSランクの魔法師ということになっているわ」


その言葉に会場がどよめく。これは予想外だったのだろう。すごい魔法師であることは知られていても、そのランクまでは知ることができないらしい。例外は名前の売れている魔法師のみ。秘匿するように頼めば、名前とランクを公表しないで済むのだ。


「ここにいる新入生は、まだ生まれたばかりの卵でしかないわ。でも、この6年を使って、あなたたちは空に羽ばたく鳥に成長することになる。あなたたちが将来、素晴らしい魔法師になることを願っているわ」


とても短い祝辞だったが、生徒たちの心には十分残ったのだろう。皆がやる気に満ちた表情をしているのが見て取れる。
これで、入学式は終了した。



集会場から出たので次はクラスに移動する。が、やはり移動中に視線を感じる。もう気にしないことにしたが、先ほどより増えているので少し困った。
どうしようかと悩んでいると、いきなり放送がかかる。


『1年Bクラスの、ユリエル=フロウド君。学園長がお呼びですので、至急学園長室まで来てください』


クラスの顔合わせの時に何故呼び出すのだろうか・・・
 僕は本気でそう思った。

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