怪談殺し

ダイナソー

神と玉座

 荒れ果てた広場の真ん中で。
 明美は武者を見つけ出し、その側に寄り添っていた。
 明美は何も言えず、ただその手を握り、涙を流す。
 武者の全身には痛ましい風穴が空き、その命はもう長くない。
 武者は目を閉じたまま苦しそうに、ゆっくりと明美へ喋りかける。
「上手く……やったな」
 喋るたび、武者の口から血が漏れる。
「悪い……もう……目が開かない」
 喋るたび、武者の体が塵になっていく。
「明美の事……好きだったぜ……」
 最後に僅かに口角を上げ、武者は完全に消え去った。

 明美は泣いた。
 泣き叫んだ。
 泣き叫んで疲れ果てた頃。
 明美の側へ近寄る二つの影が在った。
 明美が振り返ると、ヤミコと騎士の姿が其処に在った。
 ヤミコは明美に騎士を紹介する。
「明美ちゃん……この人が武者さんの言っていたアマデウスさん。明美ちゃんに話が有るって」
 明美は立ち上がり、騎士に顔を合わせる。
 騎士は重く鋭い声で明美に語る。
「君が明美か……私は君の事を殺したかった。だが神の器の無くなった今、その必要も無くなった」
 騎士は言葉を続け、そして告げる。
「君も気付いているのだろう? 彼の魂は転生しない」
 明美は頷く。
「武者さんの魂が消え去るのを感じた。でもその理由が分からない」
 騎士は明美の側に置かれた刀を指差す。
「本来転生の為に使われる力を、彼はその刀に込めた。彼の魂が消滅する事も顧みずに」
 騎士は説明する。
「此処は全ての生き物の想いが集まって作り出された世界。そしてこの世界で作り直される死者の魂も、その者の想いを糧に形作られる。だが彼はその想いの力を全てその刀に使ってしまった」
 明美は刀を手に取り、それを静かに眺める。
「でも武者さんの想いはこの刀に受け継がれている」
 騎士は頷く。
「君に見せたいものがある」

 玉座の間。
 騎士の案内で明美とヤミコはこの部屋へやって来た。
 其処は玉座の間と言うにはあまりに小さく、その豪華な玉座は強い光を放ち、まるでこの部屋には不釣り合いだ。
 騎士は説明する。
「此処は玉座の間、神の力を受け継ぐ場所」
 騎士は明美を玉座へと促す。
 明美は問う。
「どうして殺そうと思っていた相手に神の座を譲り渡すの?」
 騎士は答える。
「それは彼が君を愛していたからだ」
 騎士は言葉を続ける。
「彼は始め、ただ怪談を殺す存在だと思って戦っていた。だが彼はいつの間にか、君を愛し守る為に戦う存在だと想って戦っていた。そう彼は言っていた」
 明美は言う。
「武者さんが……そんな事を」
 騎士は言う。
「私は彼の意思を尊重する。彼の想いを尊重する。だから君は彼の次に神の座へ相応しい。たとえ憎い要人の子孫であったとしても」
 少しの間を置いて、明美は頷く。
「……分かりました」
 そして明美は玉座に座り。
 明美の体を光が包んだ。

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