怪談殺し

ダイナソー

砂浜と水着

 明美は夢を見ていた。
 海底の神殿。
 明美は九つの首と相対していた。
 九つの首が明美に語りかける。
「扉と鍵を探せ。そして鍵を私の元へ持って来るのだ」

 明美がハッと目を覚ます。
「なんだ、夢か」
 明美はテントの中を見回す。
 三虎と滝が眠っている。闇子の姿は無い。
 明美はふと、テントの外から音楽と声が聞こえて来る事に気付いた。
 明美がテントから出ると、其処では闇子と十金、そしてニャルがラジオの音声に合わせて動いていた。
 トラックの上から武者が明美に声をかける。
「ラジオ体操だってさ」
 武者は明美に笑ってみせる。
「おはよう」
 明美も武者に笑ってみせる。
「おはよう武者さん」
 二人が挨拶し、他愛もない話をしている内にラジオの音声が止んだ。

 明美はラジオ体操をしていた三人にも挨拶をし、ニャルに一つ質問をする。
「そういえばニャルさんはこの村に何を探しに来たの?」
 ニャルは明美の質問に答える。
「明美さん達はこの村の資料を探しに来てるんでしたね。僕は……」
 ニャルは一瞬黙った後、言葉を続ける。
「僕は扉と鍵を探す為にこの村に来ました」

「扉と鍵?」
 トラックの中で明美は対策本部のメンバーにその日見た夢の事を話した。
 三虎は首を横に振る。
「悪いけどその夢の内容に心当たりは無いの」
 明美が憶測を立てる。
「でもニャルさんが言ってた扉と鍵と、夢の中で言われた扉と鍵は関係があるのかも」
 明美の憶測に闇子が異議を唱える。
「ただの偶然じゃない?」
 武者が口を挟む。
「偶然かどうかは分からないが、そのニャルは今何処に居るんだ?」
 武者に明美が答える。
「ニャルさんは今日、村の高台に行くって言ってたよ」
 武者は言う。
「じゃあ俺達は今日はどうする? ニャルを探して夢の事を聞いてみるか?」
 三虎が再び首を横に振る。
「いいえ、私達は今日は海に行くの」

 海に着いた明美達は皆、水着に着替えていた。
「武者さんと和也さんも一緒に来れば良かったのにね」
 ビキニ姿の明美が言った。その体形は標準的だった。
「和也さんは昨日見つけた本をクーラーの効いた場所で読みたいって言ってたから、武者さんも一緒に読みたいって言ってたけど、まあ和也さんを一人にしておく訳にもいかないしね」
 そう応える闇子もまたビキニ姿で、その体形は少し筋肉質だった。
「二人共早いの。滝、もっと早く歩くの」
 滝におんぶされて三虎がやって来た。
 セパレーツ姿の滝はスリムながらも豊満な胸の持ち主、対する三虎はタンキニ姿で全体的に華奢な体形だった。
「じゃあ私と滝はあっちで砂のお城でも作ってるから、二人も思う存分海を楽しむと良いの」

「酷いと思いませんか。十金さん」
 フィリップの言葉に十金は答える。
「何がだ?」
 十金とフィリップは海岸の外れの祠に来ていた。
 フィリップは十金に言う。
「女の子達は砂浜で今、遊んでいるっていうのに僕たちはこっちで祠の調査だなんて」
 十金はフィリップに答える。
「お嬢様のご命令だ。それに」
 フィリップは十金に問う。
「それに?」
 十金は再びフィリップに答える。
「早く済ませればあっちに合流しても良いぞ」
 フィリップはその言葉を聞いて、張り切って祠を調べ始めた。
「十金さん。これは何て書いてあるんです?」
 十金は祠に書かれた消えかけの文字を読む。
「くとぅぐあ此処に眠る」

 明美達は海で遊び、後から十金達がやって来てからまた遊んだ。
 そして気づけば夕方になっていた。
 明美以外の皆は海から上がり、明美も海辺から砂浜に上がろうとしていた。
 その時、明美はふと右足に違和感を覚える。
 右足が妙に重い。
 そして明美が右足に視線を移すと。
 白く長い腕が明美の右足を掴んでいた。
 瞬間、明美は海の中へと引きずり込まれた。

 明美の様子の変化に一番早く気付いたのは闇子だった。
 闇子は明美が数秒間、海辺で止まっているのに疑問を持った。
 そして明美が何かに海へ引きずり込まれるのとほぼ同時に闇子は動き出していた。
 闇子が動き出すのを見て十金も動こうとしたが、闇子がそれを声で遮る。
「十金さんは来ないで! 武者さんを呼んできて!」
 その言葉に十金はこれが怪談絡みである事を察知し、闇子とは逆方向へ走り出した。
 その様子をニャルは高台から見ていた。

 闇子は海の中へ飛び込み、無数の白く長い腕に掴まれている明美の姿を見た。
 明美は何本もの自分に絡みつく腕をはぎ取ろうと、もがこうとしたが体が痺れて思う様に体を動かす事が出来ない。
 闇子は腕に触れる事に危険を感じ、腕の先に在るであろう本体を探す。
 そして闇子は海底にそれを見つけた。
 何本もの腕を触手に見立てれば、それはまるでイソギンチャクの様な姿をした怪談だった。
 闇子は腕の本体に近づくべく、まるでイルカの様に高速で海中を泳ぐ。
 しかし腕は本体を守るべく闇子へ腕を伸ばし、闇子は思う様に進む事が出来ない。
 その間も腕は本体の大口へ明美を運び続ける。
 闇子がどうするべきか考えを張り巡らせていたその時。
 闇子は気付く。
 海底が競り上がって来ている事に。

 夕日の輝く砂浜の前。
 海底が海上に競り上がり、水中の浮力を失った腕は陸に打ち上げられた魚の様に、動く事が出来ずにいた。
 闇子は腕の本体目掛けて一直線に駆け寄り、そのままの勢いで本体に蹴りを叩き込んだ。
 腕の本体は大口から泡を吹き、意外な程あっさりと消滅した。
 闇子は考えていた。
 こんなことは要人にも出来ない。怪談が私達を助けた。
 しかし一体誰が?
 闇子は疑問に思いながらも明美を抱え、仲間達の元へと戻った。

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