怪談殺し

ダイナソー

神話と民話

 九頭龍村の民話。
 怪物の国と十人の勇士。

 ある日、九頭龍村の砂浜に扉が流れつきました。
 扉を発見した村人がそれを調べてみようとすると、中から怪物が出てきました。
 驚いた村人が急いで村長に相談すると、村長は十人の村の勇士を集めました。
 十人の勇士は砂浜の怪物、くとぅぐあを退治し、扉をもっと詳しく調べてみる事にしました。
 十人の勇士が扉を調べていると、扉から更に新たな怪物が現れ、山へ向けて飛んで行きました。
 十人の勇士はこの山の怪物はすたあを追いかけ、また退治しました。
 扉が怪物の国に繋がっている事が分かり、十人の勇士は打って出る事にしました。
 怪物達の国どりーむらんどには沢山の怪物が居ました。
 十人の勇士はこれをことごとく打ち破り、遂には怪物の親玉あざとおすを退治したのでした。
 こうして十人の勇士は怪物の国から宝を持ち帰り、勇士達は要人と呼ばれるようになりました。
 そして要人達は村人達と末永く幸せに暮らしました。
 めでたしめでたし。

 明美達が夕食のカレーを食べ終わった後、和也が九頭龍村の民話について要約した内容を話した。
「以上が九頭龍村の民話で要人について書かれていた内容だ。質問はあるか?」
 和也の言葉に三虎は答える。
「くとぅぐあっていうのは砂浜の祠に書かれた名前と同じなの。そうよね十金?」
 十金は三虎に答える。
「ええ、お嬢様が我々に調べる様に言っていた祠に、その名前は確かにありました」
 十金の言葉を三虎は確認し、対策本部のメンバーに説明を始める。
「聞いて。私はくとぅぐあも、はすたあも、あざとおすも、その名前に覚えがあるの」
 対策本部のメンバーが三虎に注目する。
「それはクトゥルフ神話に出てくる神性の名前なの。正しくはクトゥグア、ハスター、アザトース……だったかな?」
 三虎がその名前を紙に書き、ランプの前で明美達に見せる。
「そしてこの村の名前は九頭龍村。九頭龍はクトゥルフとも読めるの。名前の通りクトゥルフ神話の神性の一柱なの」
 武者は三虎に質問する。
「そのクトゥルフ神話って言うのは何なんだ?」
 三虎は武者に答える。
「パルプ・マガジンの小説を元にした架空の神話体系なの」
 三虎はコホンと咳払いをした後、説明を続ける。
「それでクトゥルフ神話にはニャルラトホテプという神性も存在するの。この神性はさっきの和也の話にも出て来たドリームランドとも関わりが深いの」
 明美が口を挟む。
「ニャルさん。名前的に何か関わりがあるのかな」
 更に闇子と武者が口を挟む。
 まずは武者。
「ドリームランドってのには俺も聞き覚えがあるぞ。アマデウスが言ってた場所だ」
 続いて闇子。
「私も聞き覚えがある。化け猫があっちの世界の事をドリームランドって言ってた」
 三虎は再び咳ばらいをし、話を纏める。
「ニャルさんが何者で、ドリームランドがどんな場所かも今のところは分からないけど、この村はクトゥルフ神話と深い関わり合いがあると思うの」

 その日の報告を切り上げテントへと戻ろうとする闇子に明美が聞く。
「結局十人の勇士が持ち帰った宝って何なんだろうね?」
 闇子は肩を竦める。
「さあね。それより私はもう眠い。今日はもう寝かせてもらうよ」
 闇子は欠伸をして、テントに入ろうとしていた。
「待て!」
 それを武者が呼び止めた。
「どうやら眠るにはまだ早い様だぜ」

 明美達の目の前には鼠の大群が居た。
 鼠の大群の中の一匹が自らの名を名乗る。
「我が名はレギオン。我々は大勢であるがゆえに」
 武者は気配の数を数える。ざっと百は超えている。
「こいつら全部相手にするのは正直面倒だぞ」
 明美と闇子、十金も構えを取る。
 闇子は大声で言う。
「明美ちゃん! こいつらは私が昨日言っていた低級の怪談達だよ!」
 明美は闇子に昨日言われた事を思い出す。
「闇子ちゃん、どうする? 札の貼ってある建物の中ならこいつらも入ってこれないと思うけど」
 その時、武者はさらに後方から近づく一つの気配を感知した。
 武者は叫ぶ。
「誰だ!」
 其処には此方へ歩いてくるニャルが居た。
「おい、それ以上近づくな!」
 武者はニャルに吠える。
「俺達はまだお前が敵か味方かの判断も付いてねえ!」
 ニャルは片膝を突き両手を地面に着ける。
「こうすれば味方だと信じてくれますか?」
 ニャルがそう言う間にも鼠達は終結し、今まさに明美達へ一斉に跳びかかろうとしていた。
 だが、鼠達は跳びかかる事が出来なかった。
 突如鼠達の下の地面が陥没し、鼠達は地中に飲み込まれた。そして鼠達は生き埋めになった。
「僕は地面を自由にコントロール出来ます」
 ニャルは立ち上がり明美達に自分の能力を説明した。
 明美はニャルに問う。
「あの、ニャルさんも要人なの?」
 ニャルは首を横に振る。
「いいえ、僕は怪談。怪談としての名はニャルラトホテプです」

「低級の怪談程度をけしかけてもこんなものでしょうね」
 山の上から一部始終を雷は見ていた。
「私が奴らを倒してこようか?」
 雷に老婆が提案したが、それを雷は却下する。
「いえ、私達が動くのはもう少し後でも良いでしょう。夢の世界への入り口は確実に手に入れなければ」
 老婆はその場に寝転がる。
「じゃあ私はもう寝るが、必要であればいつでも言ってくれ」
 雷は老婆に答える。
「ええ、頼りにしてますよターボ……おやすみなさい」
 老婆も雷に答える。
「ああ、おやすみ」

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