怪談殺し

ダイナソー

廃屋と日記

 何も無い小さな部屋。
 武者は再び此処に来ていた。
 武者の目の前には黄金の騎士が居る。
「また此処か」
 武者は騎士に質問する。
「此処はドリームランドなんだろ?」
 騎士は武者に答える。
「そうだ」
 騎士の言葉を確認した武者は質問を続ける。
「俺の肩には此処とのアクセスを遮断する札が貼られている。なのにどうして俺は此処に来れるんだ?」
 騎士は別の話題を武者に促す。
「それはお前が特別な存在だからだ。それよりもだ」
 騎士は言葉を続ける。
「お前に再び簒奪者が迫っている。気を付けるのだ」
 武者は騎士に問う。
「簒奪者ってのは仮面の女の事だよな。ただ、奴は何を奪ったんだ?」
 騎士は武者に答える。
「奴が奪ったのは神の魂だ。その核だ」
 騎士の語調が荒くなった。
「奴等を利用するのは良いが決して気を許すな。奴ら要人は皆、簒奪者なのだから」

 武者がトラックの上で目を覚ますと、その下で三虎がニャルを質問攻めにしていた。三虎の傍らには十金も居る。
「あなたとクトゥルフ神話はどういう関係があるの?」
 ニャルは三虎に答える
「あれは僕の認知を広めるために僕が作家さんに書いてもらった物語だよ。昔アメリカに居た頃の事だね」
 三虎はニャルに質問を続ける。
「この村とクトゥルフ神話には深い関わりがあったりするの?」
 ニャルも三虎に答え続ける。
「物語を書いてもらう時にこの村に現れた怪談の名前を拝借させてもらったけど、あまりこの村とクトゥルフ神話に深い関わりは無いと思うよ」
 この村にクトゥルフ神話が深く関わっていると考えていた三虎は、憶測が外れて少し残念そうだった。

 明美と闇子はトラックの中で和也の話を聞いていた。
「という事で年表によるとこの村では五十年前までこの村の神様、九頭龍様の怒りを鎮めるための祭りが行われていた様だな」
 明美が和也に質問する。
「それより後はどうなったんです?」
 和也は明美に答える。
「滅んだんだろ」

 三虎はまだニャルに質問を続けていた。
「よくもまあ。あんなに聞くことがあるよな」
 その時だった。巨大な蟷螂が武者の視界に入る。
 その蟷螂は真っすぐ武者達へ向かって来る。
 武者が叫ぶ。
「十金! 三虎をトラックの中へ! 滝とフィリップもだ!」

 トラックから明美と闇子も出て来た。蟷螂がすぐ近くまで迫っていた。
 武者達が戦闘態勢を取った時、蟷螂が風景に溶け込むように姿を消した。
 闇子は辺りを見回す。
「ワープ?」
 武者は闇子に応える。
「いや、気配は消えてねえ。姿を消してるだけだ。来るぞ!」
 透明な蟷螂の刃と武者の刀がかち合う。
 武者が弾き飛ばされる。
「全員で四方八方に攻撃してみるか?」
 武者がそう言ったすぐ後でニャルが提案する。
「僕に良い考えがある!」
 ニャルはそう言うとすぐに地面に手を突いた。
 地表が振動する。
 再び蟷螂が武者達に迫る。
 直後、地表がさらに大きく振動し大きな砂埃が起きた。
 砂埃が透明な蟷螂に降り積もる。
 蟷螂の居場所があらわになった。
「今だ!」
 ニャルの声に呼応する様に、十金の機関銃から何発もの弾丸が放たれる。
 それらが全て蟷螂の体に叩き込まれ、蟷螂はその場に崩れ落ちた。その体には怪字が書かれていた。

 朝食のサンドイッチを食べ終わり、明美がニャルに聞く。
「ニャルさんは今日、何処に行くつもり?」
 ニャルは明美に顔を向け。
「僕? 僕はね」
 ニャルは少し勿体を付けて言った。
「蛙男の家に行こうと思ってる」

 その廃屋は小さな家々の中でも一際こじんまりとしたものだった。
「まさかあいつがこの村に住んでいたとはな」
 武者はそう言いながら入口の扉を開ける。
 明美とニャルがそれに続く。
「闇子ちゃん達はハスターの祠を調べに行くって言ってたけど大丈夫かな?」
 明美は心配そうに言う。
「まあ大丈夫だろ。なんたって闇子は明美の師匠だからな。それに十金も付いてる」
 そう言いながらも武者は家の中を物色し始める。
「それにしても明美さん達も蛙男を知っていたとはね。出来れば僕があいつを探し出して敵を討ちたかったんだけど、明美さん、武者さん、ありがとう」
 明美はニャルに問う。
「それはどういう事?」
 ニャルは少し寂しげな目を見せながら言う。
「あいつはこの村の住人を皆殺しにした犯人だよ」

 明美達は気になるものを三つ見つけた。
 破壊された檻と窓、そして蛙男の日記。
 明美達はその日記を開いた。
 日記は途中までは普通のものだったが、途中から内容が一変する。
 その内容によると蛙男は元は人間の男であったが要人であり、さらなる力を求めた。
 蛙男は昆虫や鼠に怪談を憑依させる実験を行っていた。
 始めは低級の怪談を憑依させるのがやっとであったが、ある日蟷螂に上級の怪談を憑依させる事に成功する。
 遂には自分の体に上級の怪談を憑依させ、男は蛙男になった。
 蛙男は人々に迫害される様になり、憑依させた怪談に意識を蝕まれつつも、更なる力を求めて研究を続けた。
 蛙男の研究によると、要人の力とは元々一つのアザトースという神の力が十人の人間に分けられたものであり、その力を奪う事でより強くなる事ができ、それを求める事が怪談の本能だという。
 そして蛙男の最終的な目的は、自分以外の九人の要人を殺し完全な神の力を得る事だった。
 日記は其処で終わっていた。

 蛙男の家を後にする三人。
 ニャルは蛙男の家で扉と鍵が見つからなかった事を残念がっていたが、明美と武者は蛙男の日記の内容について考え込んでいた。
 武者は思う。
(アマデウスが言うには要人は皆、簒奪者だと言っていた。和也の話では十人の勇士が宝を持ち帰ったと、蛙男の日記には十人の人間が神の力を分け与えられたと言っていた。つまり要人は、元々はこの村の人間達がドリームランドの神の力を奪ったのが始まりという事か)
 武者がそんな事を思っていたその時だった。
 山と砂浜の方角から大きな爆音が響いた。

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