怪談殺し

ダイナソー

雷と九頭龍

 仮面の女と老婆、そしてニャルが神殿の最奥部へやって来た。
 夕日の差し込む薄暗く広い部屋の中で、仮面の女達はその怪談と相対する。
 それは八本の触手の先に八つの龍の頭を持つ、巨大な蛸の化け物だった。
「要人が私に何の様だ?」
 その巨大な化け物、九頭龍は威厳のある声でそう言った。
 仮面の女はその声に答える。
「担当直入に言おう。私達はお前の持つ地図を探している。それを寄越せ」
 仮面の女の答えに、九頭龍は低い声で笑った。
 その後、九頭龍は仮面の女に言う。
「なぜお前に地図を渡さなければならぬ。断る」
 仮面の女は高い声で笑った。
 その後、仮面の女が九頭龍に言う。
「近衛家」
 近衛とは明美の苗字だ。
「何!」
 仮面の女の短い言葉に九頭龍が大きく反応した。
 仮面の女が言葉を続ける。
「近衛家の者を人質に取らせてもらった。彼女は今、近衛家の血を引く最後の一人だぞ」
 この部屋に来る前に仮面の女は仮面の男の悲鳴を聞き、恐らく明美達が人質の状態から脱したであろう事も考えていた。その場合、この発言はブラフだ。
 九頭龍は少し黙ってたが再び低い声で笑った。
 そして九頭龍が仮面の女に言う。
「私にはテレパシー能力がある。その者は既に人質では無いぞ。更に言わせてもらえばお前達はハスターとクトゥグアの祠の下から鍵を見つけた様だが、それだけでは神の玉座へたどり着く事は出来ない」
 仮面の女は舌打ちをする。
 更に九頭龍は言葉を続ける。
「要人、お前は神の玉座にたどり着いて何をするつもりだ?お前が新しい神になるのか?そして神になって何をする」
 九頭龍の問いに仮面の女が答える。
「そうだ。私は新たな神になりたい。お前が近衛家の者をそうさせたかった様に。そして私は神になって何がしたいのかだって?」
 仮面の女は一瞬勿体付けた後、言葉を続ける。
「私はドリームランドとこの世界を融合させる。そして私はこの世界に怪談の楽園を作るんだ」
 仮面の女の答えに九頭龍は唸る。
「下らない。そんな下らない考えの者に神の玉座は相応しくない。此処で私が殺してやる」
 九頭龍の八本の触手が、八つの龍の頭が、仮面の女への敵意を剥き出しにした。

「ターボ。あなたはニャルラトホテプを見張っていてください」
 老婆は頷き、ニャルと共に後ろへ下がる。
 そして仮面の女は刀を構える。
 直後、八つの龍の頭から高圧の水弾が放たれる。
 水弾は全て高速だ。
 仮面の女は超高速に加速し、それら全ての水弾を避ける。
 直後、八本の触手が辺りを手当たり次第に打ち付ける。
 触手は全て高速だ。
 仮面の女は超高速で動き続け、それら全ての触手を避ける。
 次の瞬間、仮面の女は八本の触手を全て切り落とした。
 更に次の瞬間、仮面の女は九頭竜の本体を切り裂いた。
「フン、他愛もない」
 背後に九頭龍の沈む音を聞きながら、仮面の女は刀を鞘に納める。
「雷! 後ろだ!」
 老婆が叫んだ直後、一本の触手が仮面の女を横なぎに弾き飛ばした。

 仮面を弾き飛ばされ、雷は壁に叩きつけられた。
「油断しちゃったな」
 雷の口から血が滴る。
 雷の視線の先には高速で体を再生させていく九頭龍の姿が在った。
 八つの龍の頭から再び高圧の水弾が放たれる。
 雷も再び超高速に加速して水弾を避け、一本の触手を切り落とした。
 しかし九頭龍の触手は再び高速で再生する。
 このままではきりが無い。
 八本の触手が再び辺りを手当たり次第に打ち付ける。
 雷は超高速で動き続け、全ての触手を避け続ける。
「このままお前の活動限界を待って、それからゆっくり殺してやる」
 九頭龍は勝利を確信していた。
 だが。
「だがこの程度か」
 雷の口元が僅かに歪み、その口元は笑っていた。
 そして雷は再び八本の触手を全て切り落とした。
「無駄な事を」
 九頭龍は触手を再び高速で再生させようとした。
 しかし九頭龍の触手は再生しなかった。
「どういう事だ!?」
 九頭龍は狼狽えた。そして足を止めた雷を見る。
 雷の手に持つ、その刀に電流が走った。
 恐らくその電流に焼かれたのであろう、九頭龍の触手の先は全て焼け焦げていた。
「何なのだ!? それは!?」
 狼狽える九頭龍に雷が説明する。
「私の友達が物や生き物に怪談を憑依させる研究をしていたんだけどね。私もこの刀に電気の力を持つ怪談を憑依させてもらった」
 雷はゆっくりと九頭龍へ近づいていく。
「そして王手だ」
 雷は九頭竜の本体に刀を突き立て、その刀から電撃が迸った。

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