怪談殺し

ダイナソー

襲撃と計画

 対策本部のトラックの前で、武者達は十金と待ち合わせていた。
「お早うございます。武者様、明美様、ヤミコ様」
 にこやかに話しかける十金に対し、明美はヤミコの後ろに隠れてしまった。
「ママ、この人は誰?」
 ヤミコは明美を不安がらせない様におだやかな声で説明する。
「この人はパパの友達。トラックの中で他のパパの友達も待ってるよ」
 明美はヤミコに不安気な顔を向ける。
「怖い?」
 ヤミコは首を横に振る。
「怖くない。皆優しい人達だよ」
 武者は明美とヤミコの様子を確認した後。
「それじゃあ中で話そうか。これからの事について」
 十金へ真面目な顔を向けた。
 十金もにこわかな表情を解き、真面目な表情で話す。
「ええ、それでは中へどうぞ」
 十金は三人をトラックの中へ促した。

 トラックの中で明美は対策本部の仲間達とそれぞれ自己紹介した。
 今の明美にとって見ればかつての仲間達も、よく知らない怖い存在であったが、ヤミコが怖くないと念押ししてくれた為、必要以上に怖がる事無く接する事が出来た。
 トラックの中には滝と花子の姿は無かった。今は竜宮院家で滝と一緒に留守番をしているらしい。滝が居ない間のトラックの運転はフィリップが担当している。
 明美は今はトラックの中の機材に深い興味を示し、和也にこれは何をする道具なのかとしきりに質問していた。そんな明美に和也が付き合っている間に武者達はオタマ社への襲撃計画を話し合っていた。
「昨日十金から貰った情報を見たぜ。奴等は俺達みたいな怪談は元より、人間を殺す事にも躊躇が無いみたいだな。オタマ社のデータベースの最深部に、よくもまあこんなに酷い事が出来るもんだなってぐらいの情報を俺も確認したぜ」
 武者の言葉に十金は頷く。
「ええ、教室を爆破した時の様に、目的の為なら奴等は他人を巻き込む事に躊躇がありません。放っておくのは危険な手合いです」
 十金の言葉に武者も頷く。
「ああ、放っておけねえ。だからこそ此方から素早く奴等を叩く。それで、その為のプランは?」
 十金が爆弾を取り出す。
「これで奴等の本拠地、オタマ社のビルを爆破します。要人達がビルの中で重役達の警護もしている様ですが、これでオタマ社の人間ごと全員を一網打尽にします。ああ、資金面は心配しないで下さい。私もご主人様も復讐の為なら何でもしますから」
 そう言う十金の目は本気だった。
「待て、待て、それじゃあ奴等と同じだ。関係の無い人間を巻き込むことになる。奴等だけを狙う事は出来ないのか?」
 十金は首を横に振る。
「お嬢様達を殺されているのに武者様は甘いことを言いますね。しかし奴等だけを狙う事は難しいでしょう。オタマ社のビルの窓は全て防弾使用。更にビルの中には幾十もの警備システムと何人もの警備員が配置されています。その上、社長と要人達はビルの最上階に住んでいます。やはりビルごと爆破してしまうのが最適解だと思います」
 武者も首を横に振る。
「俺はお前達に奴等と同じになってほしくないんだ。だから狙うのはあくまで奴等だけだ。その為のプランを一緒に考えよう」

 武者達の話し合いが続く中、トラックは目的地へ向けて移動していた。
「ママ、この車は何処に向かってるの?」
 明美がヤミコに質問する。
「うん、この車はファミレスに向かってるよ」
 ヤミコの言葉に明美は目を輝かせる。
「ファミレス! ママ、私パフェが食べたい」
 明美がそう言っている間に、トラックは目的地に到着した。

 話し合いを続ける武者達を駐車場のトラックに残し、明美とヤミコの二人はファミリーレストランの中へやって来た。
 二人はそれぞれパフェとコーヒーを注文し、注文がやってくるのを待っていた。
 其処へ注文より先に、二人の元へやって来る者が在った。
「お久しぶりです。明美さん」
 その黒ずくめの美青年はヤミコの記憶の中にはっきりした姿では存在しなかったが、武者の言っていた通りの容姿で、闇子の日記の中でも良く書かれていた存在だ。
「ええと、ニャルさんで合ってますよね? 待ち合わせ通りの時間ですね」
 そう言ってヤミコはニャルに自己紹介する。
「あなたはヤミコさんですね? 武者さんから大体の事情は聴いています……前に座っても?」
 ヤミコからどうぞと促され、ニャルは二人の前に座った。
「ママ、この人もパパの友達?」
 ヤミコにそう聞く明美は、ニャルが二人の元へやって来た時からずっとヤミコの手を強く握り続けていた。
「ええ、その通り。だから心配しなくても大丈夫だよ」
 ヤミコの言葉に明美は少し安心した様で、ヤミコの手を握る力が少し緩んだ。
「今日は知らない人と良く合うね」
 明美がヤミコにそう言った後で、少し間を置いてから、ニャルが二人に話しかける。
「今日から暫くの間、其方でお世話になります。そしてその間、あなた達を守ります。よろしくお願いします」

 その頃、武者達はトラックの前へやって来る二人に気付いた。
 武者がトラックから出て来て二人の前に立ちはだかる。
「お前達が何の用だ。雷、ターボ」
 雷と老婆の二人はわざとらしく両手を挙げている。
 雷が武者に切りだす。
「あの邪魔な忍者達に困ってるのでしょう? 私達はあなた達に協力したいと思っています」
 それを聞いて武者は鼻で笑う。
「お前達が俺達を利用したいんだろ?」
 武者の言葉を雷は否定せず。
「別にあなた達がどう思おうと構いませんが、今のままでは戦力が足りないのでは?」
 逆に武者達の痛い所を突いてきた。
「ああ、そうだな。その通りだ。今はお前達と協力するのが一番良いんだろうな」
 武者は雷に手を差し伸べる。
「あくまでも一時的な協力体制だが、よろしくお願いする」
 そして雷と武者の二人は固く手を握り合った。

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