怪談殺し
父と娘
「悪いがこの島の、屋敷の人間には死んでもらった。私の独断だ。恨むなら私を恨め」
老婆は鎖を振り回すのを止め、半蔵と杓の出方を注意深く観察していた。
半蔵の後ろから、杓が怯えながらも老婆に問いかける。
「どうしてこんな事をした? お前達は何処の組織だ?」
杓の問いかけに老婆はククッと笑う。
「組織なんて大それたものじゃないさ。私達はただ、お前達に恨みを持つ者達の集まりさ。ひょっとしてお前の親や其処の忍者が何をしているか知らないのか? いや、薄々は気付いてるんだろう?」
老婆の言う通り、父親や半蔵達が裏で自分達に不都合な人間達を殺している事を、杓は薄々気付いていた。だが杓は父親達がそんな恐ろしい事をしている筈がないと目を背け続けて来た。
老婆は言葉を続ける。
「私の相棒は私達の仲間を殺された事にも怒っていたが、何よりもお気に入りだった生徒達をまとめて殺された事に強く怒っていたな。今までもそんな生徒を殺す馬鹿共は居たが、そいつらは揃って今はこの世に居ない」
老婆は再びその手に持つ鎖を振り回し始める。そして言う。
「お前達もそうなるんだよ」
半蔵が不意に、いつの間にかその手に持っていた手裏剣を老婆めがけて投擲する。
老婆はその手裏剣を、鎖を回転させて悠々と弾く。
しかし手裏剣を弾いた老婆の表情は、油断ならない相手と出会った時のものに、最大限の警戒をあらわにした表情になっていた。
半蔵は老婆が手裏剣を弾くのと同時に老婆の周位を円状に超高速移動する。
風が、竜巻が老婆を中心に発生しようとしていた。
「だがこの程度は」
老婆はそう言いながら、自分の周囲に円を描く様に、半蔵の走る向きとは逆回転で鎖を振り回す。
半蔵の目の前に鎖が迫る。
「想定済みだ」
半蔵はそう言いながら跳躍して鎖を回避し、跳躍した先の木を使って三角跳び。三角跳びからの飛び蹴りを老婆めがけて放った。
老婆も鎖を持ったまま跳躍し、半蔵の飛び蹴りを回避。半蔵の着地を狙って鎖を鞭の様に振るう。
半蔵は鎖を掴み腰の刀を抜き放つ。そして鎖ごと空中の老婆を引っ張り、刀で老婆を切り捨てるべく待ち構える。
老婆は自分の体が引き寄せられるのと同時に鎖を手離し、両腕を超高速回転させて竜巻を発生させた。
半蔵は竜巻が発生するのを確認すると一瞬で老婆の地上後方へ移動、其処から跳躍して空中の老婆へ跳躍した。
空中の老婆へ半蔵が迫る。老婆は空中で振り向こうとするが、老婆が振り向いてから何かをするよりも、半蔵が老婆の元へ追い付き刀を振る方が早いと半蔵は勝利を確信した。
老婆が振り向き様に何かを投げる。半蔵はそれを刀で弾く
次の瞬間、辺りを閃光と爆音が轟いた。
半蔵は空中で一瞬意識を失い、次の瞬間には、老婆に地上へ蹴り飛ばされていた。
半蔵は思い切り地面に叩き付けられ、すぐ後に老婆が着地する。
老婆はゆっくりと半蔵へ近づきながら拳銃を抜き放つ。
半蔵は起き上がるが、足が縺れてまたすぐに倒れてしまった。
「なぜあの至近距離の爆発で、お前は平気で居られるんだ」
半蔵の問いに老婆は答える。
「爆発の直前に感覚をシャットダウンした。エネルギー操作の応用だよ。それじゃあ死んでくれ」
老婆の手に持つ拳銃から何発もの弾丸が発射される。弾丸は一発も外れる事なく半蔵の急所を貫いた。
半蔵の死亡を確認した後、老婆はインカムで対策本部の和也と連絡を取る。
「屋敷の人間と半蔵を殺した。後は一緒に居た川津の娘を殺すだけだ」
インカムの先で和也は老婆に反対した。
「子供は殺す必要無いだろ。それに屋敷の人間も、殺しはしない予定だったろ」
老婆は首を横に振る。
「私にとっては雷の頼みが最優先の条件だ。奴らを一人残らず殺す様に言われてるんでね。それじゃあ連絡を切る」
老婆は木の陰に隠れていた杓を見つけると、ゆっくりと近づきながら拳銃に弾を装填した。
「悪いが、父親や半蔵の後を追ってもらう。それが相棒の望みなんでね」
そして老婆は杓の隠れる木の裏に回り込んだ。しかし其処に居るはずの杓の姿は消えていた。一瞬で。
老婆が振り向くよりも早く、老婆の急所を背後から手刀が貫いた。
「知りませんでしたか? この娘の本当の父親は僕なんですよ」
そう言いながら、杓は手刀を老婆の体から抜く。
老婆は膝を突きながら、背後の杓に尋ねる。
「お前は……一体?」
杓はクスクスと笑う。愉快そうに。
「やだなあ僕ですよ。フロッグマンですよ。雷先生の友達の」
蛙男の怪談、フロッグマンを名乗った杓は話を続ける。
「貴方達は僕がこの世を去ったものと思っていたのでしょうが、それは違う。僕は死の直前、自らの肉親に憑依した。長年の研究の成果ですよ。凄いでしょう?」
老婆は地面に消え、杓の言葉に答える者はもう居なかった。
「ああ、もう死にましたか。思い切り急所を狙いましたもんね。では歌いましょう。貴方達の為にレクイエムを」
杓は歌う。半蔵と老婆の死を弔う歌を。楽しそうに。楽しそうに。
老婆は鎖を振り回すのを止め、半蔵と杓の出方を注意深く観察していた。
半蔵の後ろから、杓が怯えながらも老婆に問いかける。
「どうしてこんな事をした? お前達は何処の組織だ?」
杓の問いかけに老婆はククッと笑う。
「組織なんて大それたものじゃないさ。私達はただ、お前達に恨みを持つ者達の集まりさ。ひょっとしてお前の親や其処の忍者が何をしているか知らないのか? いや、薄々は気付いてるんだろう?」
老婆の言う通り、父親や半蔵達が裏で自分達に不都合な人間達を殺している事を、杓は薄々気付いていた。だが杓は父親達がそんな恐ろしい事をしている筈がないと目を背け続けて来た。
老婆は言葉を続ける。
「私の相棒は私達の仲間を殺された事にも怒っていたが、何よりもお気に入りだった生徒達をまとめて殺された事に強く怒っていたな。今までもそんな生徒を殺す馬鹿共は居たが、そいつらは揃って今はこの世に居ない」
老婆は再びその手に持つ鎖を振り回し始める。そして言う。
「お前達もそうなるんだよ」
半蔵が不意に、いつの間にかその手に持っていた手裏剣を老婆めがけて投擲する。
老婆はその手裏剣を、鎖を回転させて悠々と弾く。
しかし手裏剣を弾いた老婆の表情は、油断ならない相手と出会った時のものに、最大限の警戒をあらわにした表情になっていた。
半蔵は老婆が手裏剣を弾くのと同時に老婆の周位を円状に超高速移動する。
風が、竜巻が老婆を中心に発生しようとしていた。
「だがこの程度は」
老婆はそう言いながら、自分の周囲に円を描く様に、半蔵の走る向きとは逆回転で鎖を振り回す。
半蔵の目の前に鎖が迫る。
「想定済みだ」
半蔵はそう言いながら跳躍して鎖を回避し、跳躍した先の木を使って三角跳び。三角跳びからの飛び蹴りを老婆めがけて放った。
老婆も鎖を持ったまま跳躍し、半蔵の飛び蹴りを回避。半蔵の着地を狙って鎖を鞭の様に振るう。
半蔵は鎖を掴み腰の刀を抜き放つ。そして鎖ごと空中の老婆を引っ張り、刀で老婆を切り捨てるべく待ち構える。
老婆は自分の体が引き寄せられるのと同時に鎖を手離し、両腕を超高速回転させて竜巻を発生させた。
半蔵は竜巻が発生するのを確認すると一瞬で老婆の地上後方へ移動、其処から跳躍して空中の老婆へ跳躍した。
空中の老婆へ半蔵が迫る。老婆は空中で振り向こうとするが、老婆が振り向いてから何かをするよりも、半蔵が老婆の元へ追い付き刀を振る方が早いと半蔵は勝利を確信した。
老婆が振り向き様に何かを投げる。半蔵はそれを刀で弾く
次の瞬間、辺りを閃光と爆音が轟いた。
半蔵は空中で一瞬意識を失い、次の瞬間には、老婆に地上へ蹴り飛ばされていた。
半蔵は思い切り地面に叩き付けられ、すぐ後に老婆が着地する。
老婆はゆっくりと半蔵へ近づきながら拳銃を抜き放つ。
半蔵は起き上がるが、足が縺れてまたすぐに倒れてしまった。
「なぜあの至近距離の爆発で、お前は平気で居られるんだ」
半蔵の問いに老婆は答える。
「爆発の直前に感覚をシャットダウンした。エネルギー操作の応用だよ。それじゃあ死んでくれ」
老婆の手に持つ拳銃から何発もの弾丸が発射される。弾丸は一発も外れる事なく半蔵の急所を貫いた。
半蔵の死亡を確認した後、老婆はインカムで対策本部の和也と連絡を取る。
「屋敷の人間と半蔵を殺した。後は一緒に居た川津の娘を殺すだけだ」
インカムの先で和也は老婆に反対した。
「子供は殺す必要無いだろ。それに屋敷の人間も、殺しはしない予定だったろ」
老婆は首を横に振る。
「私にとっては雷の頼みが最優先の条件だ。奴らを一人残らず殺す様に言われてるんでね。それじゃあ連絡を切る」
老婆は木の陰に隠れていた杓を見つけると、ゆっくりと近づきながら拳銃に弾を装填した。
「悪いが、父親や半蔵の後を追ってもらう。それが相棒の望みなんでね」
そして老婆は杓の隠れる木の裏に回り込んだ。しかし其処に居るはずの杓の姿は消えていた。一瞬で。
老婆が振り向くよりも早く、老婆の急所を背後から手刀が貫いた。
「知りませんでしたか? この娘の本当の父親は僕なんですよ」
そう言いながら、杓は手刀を老婆の体から抜く。
老婆は膝を突きながら、背後の杓に尋ねる。
「お前は……一体?」
杓はクスクスと笑う。愉快そうに。
「やだなあ僕ですよ。フロッグマンですよ。雷先生の友達の」
蛙男の怪談、フロッグマンを名乗った杓は話を続ける。
「貴方達は僕がこの世を去ったものと思っていたのでしょうが、それは違う。僕は死の直前、自らの肉親に憑依した。長年の研究の成果ですよ。凄いでしょう?」
老婆は地面に消え、杓の言葉に答える者はもう居なかった。
「ああ、もう死にましたか。思い切り急所を狙いましたもんね。では歌いましょう。貴方達の為にレクイエムを」
杓は歌う。半蔵と老婆の死を弔う歌を。楽しそうに。楽しそうに。
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