ゼロの魔導騎士と封印の魔導書《グリモワール》
No.2―13 禁断の詮索
昼下がりの王都。
その中心にそびえ立つ城を環状に取り囲む中央通り。
そこから西に伸びる通りの喫茶店に、執行部全員(クリストを除く)の姿があった。
「ったく、団長遅いなぁ………」
「まあ国王との話し合いらしいから、もう少しかかるんじゃない?ほら、あの2人旧知の仲らしいし」
「へぇー、そうなの?」
「みたいですね。なんでも国王が子供の頃からの付き合いだとか………」
「というかアイツ今いったい何歳なんじゃ………?」
店内の1番奥のテーブルを占拠し、世間話に花を咲かせる5人。するととそこに、思いもよらぬ人物が現れる。
「ん?お主らここで何やっとるんじゃ?」
「おっ、サイラスか」
「サイラスこそ何してんのよ?」
「ワシは昨晩飲み過ぎての………。二日酔いじゃから有給使って仕事休んどるんじゃよ」
それを言ったらクリストとユグドも同じ量を飲んでいるはずなのだが、彼らはケロリと涼しい表情だ。もっともユグドは龍人族なため、身体の基礎治癒能力が高いせいもあるのだが。
とはいえ固有魔法使いとは言え身体は普通の人間であるサイラスは、青い顔で席に倒れ込むように腰かけてきた。
「ってサイラスも座るのかよ………!」
「良いじゃろ別に、ちょうど空いてるんじゃから。お嬢ちゃん、隣良いかの?」
「あ、はい、どうぞ………」
ソラミアが言葉を返すやいなや、どっかりと椅子に腰かけてぶふーと大きく息を吐くサイラス。ちなみに今のサイラスの服装は、魔導騎士団の礼服ではなく、普通のどこにでもあるような私服だ。
なんというか、この光景を第三者が見たら『孫達を連れて喫茶店に来たお祖父ちゃん』にしか見えない。
「ずいぶん年取ったの、サイラス」
「何言っとるんじゃ、お主らの方がワシなんかよりよっぽど長く生きとるじゃろうに」
アリスの言葉にサイラスがそう返した途端、ピシリ!と空間が凍てついた。主に、18歳のソラミアを除く4人によって。
ユグドは龍人族、ルーナは妖精族。
アリスは半吸血鬼、セリルは半不死王。
全員が見た目以上の時を生きる、人外の種族である。
故に、仲間内以外からの年齢の詮索は厳禁なのだ!
「………なあサイラス。次にその質問したら、問答無用で燃やし尽くすからな?」
いつもの馬鹿っぽい雰囲気はどこへやら、キリッと真面目な顔をしたユグドがドスの効いた声でそう告げ、他の3人もうんうんと首を縦に振る。そこには、『余計なことを訊くな』という意志がハッキリと現れているのだった。
「そ、そうか。そりゃすまんかったな………」
「ん、分かれば良いんだ」
というやり取りがあって事態は終息を迎えた。そして話題は、クリストの年齢へと逆戻りする。
「というかぶっちゃけ、誰か団長の年知らねぇの?」
「えー?とは言っても、執行部が作られた12年前にはあの姿だったし………」
「ということは、見た目の年齢を加えて27歳といったところですかね………」
リアスター王国の法令の中には、『18歳以下は飲酒厳禁!』というものがある。それを普通にパスしているということは、その年齢もあり得るのだろう。
「というか、クリストって国王様が子供の時からの知り合いなんでしょ?ってことは………」
「現在国王は34歳。つまりアイツも最低34年は生きているということになるの」
「そもそもクリストはワシの師匠じゃったからの。あれは確か‥‥‥40年ほど前じゃったか。その時すでにあの姿じゃったよ」
「つまり55くらいなのかな………?」
ふとソラミアがそう口にした途端。向かい側に座っていたユグドがブフッ!と吹き出した。
「つまり、あの団長ってあの見た目で年増のジジィなのかよ!?アッハハハハハ!!!は、腹痛てー!」
文字通り腹を抱えて爆笑するユグド。だが、それとは正反対に、他の全員は沈黙を貫く。心なしか、冷や汗が垂れている。
そして、ユグドの肩にポンと置かれる手。
「ねえユグド、何の話かな?」
「バッカ決まってんだろ!?あの団長………が………」
次第にユグドの声は小さくなって行き、完全な沈黙が周囲を支配する。いや、沈黙だけではない。それともう1つ。
スラックスのポケットに手を突っ込んで、テーブルの前に仁王立ちする少年。完璧な笑顔から放たれる怒りの波動が、周囲の音を消し去っていた。
そんな重苦しい沈黙の中、目の前の少年―――もといクリストが、穏やかな口調で問いかける。
「で?誰が何の話をしてたのかな?断片的にだけど『年増』とか『ジジィ』とか聴こえたけど………気のせいだよな?俺の名前は気のせいだよな?」
ゴゴゴゴゴ………という空耳まで聞こえそうな迫力。
真に恐ろしいのは怒り顔ではない。どこにでもある穏やかな笑みなのだ。
そして、店内の壁に掛けられた魔力石仕込みの時計がチッ、チッ、とやけに大きな音で時を数え。ついにその沈黙に耐えられなくなった者達が一斉に立ち上がって―――
「「「ユグドが、団長のこと年増のジジィって言ってたよ!!!」」」
と、立ち上がった全員―――ユグドを除くその場の全員―――が一斉に声を揃えて叫ぶ。その告げ口に全身から冷や汗が止まらないユグドは、さりげなく席を立とうとして―――ガッシとクリストの手で頭を掴まれる。
「まあ待てよ。楽しいことしようぜ?」
「………ちなみにですが、何をされるのでございましょうでありまするですか?」
「地獄の4/5殺しの刑」
それを聞いた瞬間、バッ!とユグドが拘束を振りほどいて店の出入口へと突撃し。そしてその背中目掛けて怒りのあまり最凶殺戮兵器と化したクリストが襲いかかるのだった。
その中心にそびえ立つ城を環状に取り囲む中央通り。
そこから西に伸びる通りの喫茶店に、執行部全員(クリストを除く)の姿があった。
「ったく、団長遅いなぁ………」
「まあ国王との話し合いらしいから、もう少しかかるんじゃない?ほら、あの2人旧知の仲らしいし」
「へぇー、そうなの?」
「みたいですね。なんでも国王が子供の頃からの付き合いだとか………」
「というかアイツ今いったい何歳なんじゃ………?」
店内の1番奥のテーブルを占拠し、世間話に花を咲かせる5人。するととそこに、思いもよらぬ人物が現れる。
「ん?お主らここで何やっとるんじゃ?」
「おっ、サイラスか」
「サイラスこそ何してんのよ?」
「ワシは昨晩飲み過ぎての………。二日酔いじゃから有給使って仕事休んどるんじゃよ」
それを言ったらクリストとユグドも同じ量を飲んでいるはずなのだが、彼らはケロリと涼しい表情だ。もっともユグドは龍人族なため、身体の基礎治癒能力が高いせいもあるのだが。
とはいえ固有魔法使いとは言え身体は普通の人間であるサイラスは、青い顔で席に倒れ込むように腰かけてきた。
「ってサイラスも座るのかよ………!」
「良いじゃろ別に、ちょうど空いてるんじゃから。お嬢ちゃん、隣良いかの?」
「あ、はい、どうぞ………」
ソラミアが言葉を返すやいなや、どっかりと椅子に腰かけてぶふーと大きく息を吐くサイラス。ちなみに今のサイラスの服装は、魔導騎士団の礼服ではなく、普通のどこにでもあるような私服だ。
なんというか、この光景を第三者が見たら『孫達を連れて喫茶店に来たお祖父ちゃん』にしか見えない。
「ずいぶん年取ったの、サイラス」
「何言っとるんじゃ、お主らの方がワシなんかよりよっぽど長く生きとるじゃろうに」
アリスの言葉にサイラスがそう返した途端、ピシリ!と空間が凍てついた。主に、18歳のソラミアを除く4人によって。
ユグドは龍人族、ルーナは妖精族。
アリスは半吸血鬼、セリルは半不死王。
全員が見た目以上の時を生きる、人外の種族である。
故に、仲間内以外からの年齢の詮索は厳禁なのだ!
「………なあサイラス。次にその質問したら、問答無用で燃やし尽くすからな?」
いつもの馬鹿っぽい雰囲気はどこへやら、キリッと真面目な顔をしたユグドがドスの効いた声でそう告げ、他の3人もうんうんと首を縦に振る。そこには、『余計なことを訊くな』という意志がハッキリと現れているのだった。
「そ、そうか。そりゃすまんかったな………」
「ん、分かれば良いんだ」
というやり取りがあって事態は終息を迎えた。そして話題は、クリストの年齢へと逆戻りする。
「というかぶっちゃけ、誰か団長の年知らねぇの?」
「えー?とは言っても、執行部が作られた12年前にはあの姿だったし………」
「ということは、見た目の年齢を加えて27歳といったところですかね………」
リアスター王国の法令の中には、『18歳以下は飲酒厳禁!』というものがある。それを普通にパスしているということは、その年齢もあり得るのだろう。
「というか、クリストって国王様が子供の時からの知り合いなんでしょ?ってことは………」
「現在国王は34歳。つまりアイツも最低34年は生きているということになるの」
「そもそもクリストはワシの師匠じゃったからの。あれは確か‥‥‥40年ほど前じゃったか。その時すでにあの姿じゃったよ」
「つまり55くらいなのかな………?」
ふとソラミアがそう口にした途端。向かい側に座っていたユグドがブフッ!と吹き出した。
「つまり、あの団長ってあの見た目で年増のジジィなのかよ!?アッハハハハハ!!!は、腹痛てー!」
文字通り腹を抱えて爆笑するユグド。だが、それとは正反対に、他の全員は沈黙を貫く。心なしか、冷や汗が垂れている。
そして、ユグドの肩にポンと置かれる手。
「ねえユグド、何の話かな?」
「バッカ決まってんだろ!?あの団長………が………」
次第にユグドの声は小さくなって行き、完全な沈黙が周囲を支配する。いや、沈黙だけではない。それともう1つ。
スラックスのポケットに手を突っ込んで、テーブルの前に仁王立ちする少年。完璧な笑顔から放たれる怒りの波動が、周囲の音を消し去っていた。
そんな重苦しい沈黙の中、目の前の少年―――もといクリストが、穏やかな口調で問いかける。
「で?誰が何の話をしてたのかな?断片的にだけど『年増』とか『ジジィ』とか聴こえたけど………気のせいだよな?俺の名前は気のせいだよな?」
ゴゴゴゴゴ………という空耳まで聞こえそうな迫力。
真に恐ろしいのは怒り顔ではない。どこにでもある穏やかな笑みなのだ。
そして、店内の壁に掛けられた魔力石仕込みの時計がチッ、チッ、とやけに大きな音で時を数え。ついにその沈黙に耐えられなくなった者達が一斉に立ち上がって―――
「「「ユグドが、団長のこと年増のジジィって言ってたよ!!!」」」
と、立ち上がった全員―――ユグドを除くその場の全員―――が一斉に声を揃えて叫ぶ。その告げ口に全身から冷や汗が止まらないユグドは、さりげなく席を立とうとして―――ガッシとクリストの手で頭を掴まれる。
「まあ待てよ。楽しいことしようぜ?」
「………ちなみにですが、何をされるのでございましょうでありまするですか?」
「地獄の4/5殺しの刑」
それを聞いた瞬間、バッ!とユグドが拘束を振りほどいて店の出入口へと突撃し。そしてその背中目掛けて怒りのあまり最凶殺戮兵器と化したクリストが襲いかかるのだった。
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コメント
紅梁
いつも元気もらっています、今後も頑張って下さい。