ゼロの魔導騎士と封印の魔導書《グリモワール》
No.2―9 風見鶏亭
城での情報交換は終わり。
とりあえず今日はお開きとなって。
クリストたちの姿は今、いきつけの酒場にあった。
『風見鶏亭』という西区の大通りから少し路地へと入った場所にある酒場は、立地のわりに客が多い。
それは、単に常連が集まる店というのもある。
そしてもう1つ。
「なあ団長、やっぱ可愛いよな?」
「そうだな。そこだけはお前と同意見だ」
「ワシもそう思う」
看板娘たちのファンである。
何を隠そう、ユグドもその1人だ。
現在ユグドはすでに12杯目へと突入しており、かなり酔いが回っている。クリストも同じだけ飲んでいるはずなのだが、こちらはケロリとしていた。
つまり、超酒豪なのだった。
 
「団長ー、もう一杯頼んでいいかー?」
「自腹なら良いぞ?」
「りょーかい、分かった。すんませーん!ビールもう一杯大至急でー!」
お待たせしましたー!と銀髪エルフの娘がジョッキを持ってくると、ユグドはそれを受けとる。そして去っていく後ろ姿を見ながら、呟く。
「86………いや、88・69・88か?」
「馬鹿言え、ありゃあ87・67・90じゃ」
「衰えたなサイラス。89・66・92は確実だ」
悪どい笑みを浮かべてクリスト・ユグド・サイラスの3人は言い合う。彼らが呟く謎の数字は、とあるゲームのためのもの。
その名も、『スリーサイズ当てっこゲーム』という1歩間違えばセクハラ容疑で監獄行きの、大変スリリングなゲームである。
都市伝説では、巷で流行していたこのゲームのために街1個の酒場全体が封鎖されたところもあったとか無かったとか。
とにかく、今や街酒場ではお馴染みなのだ。
だが、ここの酒場では時に命取りとなり得る。
ここの看板娘には熱狂的なファンが多いため、万が一バレた暁には夜道で背後から刺されるというのがもっぱらの噂だ。なんでも、もうすでに何人か殺られたとか殺られてないとか。
「そう言えば時にクリスト。最近の都市伝説はどうなっておるのじゃ?」
「んー?たわいも無いのばっかりだよ。『イートルの街で巨大な岩が空を飛んだ』とか、『セントナ墓地で動き回る死体が出た』とかだね」
「ふーむ。セントナ墓地といえば、東区じゃの。ちょっと行ってみんか?」
「やだよ。エネルギー節約してんだから」
はぁ、とため息を吐くクリスト。こんな感じで都市伝説が溢れかえるこのリアスター王国は、別名『魔窟』と呼ばれるほどに不可思議だらけだ。
それこそ大通りの上空で謎の爆発なんて日常茶飯事。
それどころか王都地下貯水場の崩落なんかも、『へーそう、そんなことが………』くらいのものだ。
まあ大体は、執行部の仕業なのだが。
それに都市伝説の中には、以外と事実もある。故に魔導騎士の中には、都市伝説マニアも多く存在する。クリストやサイラスも例に漏れずその1人だ。
「いいではないか、少し付き合え」
「じゃあここ奢ってくれて、ついでに明日の3食おやつ付き保証なら行ってやるよ」
「よし、今日は飲もうではないか!」
「………チッ、誤魔化しやがった」
こうしてたわいもない話をしながら、夜は更けていくのだった―――
**********************
そして深夜。
サイラスとも別れ、自宅へと帰ったクリストとユグドはさすがに疲れたのか、吸い込まれるように自室へと入っていき。数分後には、静寂が訪れた。
だが、その静寂を破る者がいた。
全員が寝静まったのを確認しながら、そーっと音を立てないように歩く人物。
 
誰であろう、クリストだ。
「ふあぁぁぁ………。ホントは俺も寝たいんだけどな」
誰ともなくそう嘯き、階段を下りる。
そして1階へと下り、魔導具店の店内を抜けて暗闇に包まれた外へ。
そして、夜の冷たい風を大きく吸い込むと、自身の感覚を研ぎ澄ませていく。意識的に、普段のものから戦闘モードへと。
「8………15………24。結構いるな。そんなに魅力的かね、あの魔導書が」
そう言いながら、スラックスのポケットに手を突っ込み、魔導具を取り出す。小さな正方形をしたソレは、クリストお手製のとある結界用のもの。
「範囲指定、距離200M。効果指定、全24」
そう囁くと、魔導具が起動する。
クリストを中心に指定された範囲を複製。
そして別次元に固定された空間へと、魔術師を誘う。
一瞬の浮遊感が身体を包み、そして消える。
瞬時に別次元の街に降り立ったクリストは、赤い宝玉を握りしめて言葉を放つ。
「『喚装』」
瞬間的に宝玉が輝き、1本の長大な漆黒の魔剣へと変貌した。クリストはそれを肩に担ぐと、
「まったく、魔導書にわんさか群がって来やがって。不様に斬られて死ぬくれぇの覚悟はあるんだろな?」
暗闇が支配した世界に今。
復讐に突き動かされる1人の怪物が放たれた。
とりあえず今日はお開きとなって。
クリストたちの姿は今、いきつけの酒場にあった。
『風見鶏亭』という西区の大通りから少し路地へと入った場所にある酒場は、立地のわりに客が多い。
それは、単に常連が集まる店というのもある。
そしてもう1つ。
「なあ団長、やっぱ可愛いよな?」
「そうだな。そこだけはお前と同意見だ」
「ワシもそう思う」
看板娘たちのファンである。
何を隠そう、ユグドもその1人だ。
現在ユグドはすでに12杯目へと突入しており、かなり酔いが回っている。クリストも同じだけ飲んでいるはずなのだが、こちらはケロリとしていた。
つまり、超酒豪なのだった。
 
「団長ー、もう一杯頼んでいいかー?」
「自腹なら良いぞ?」
「りょーかい、分かった。すんませーん!ビールもう一杯大至急でー!」
お待たせしましたー!と銀髪エルフの娘がジョッキを持ってくると、ユグドはそれを受けとる。そして去っていく後ろ姿を見ながら、呟く。
「86………いや、88・69・88か?」
「馬鹿言え、ありゃあ87・67・90じゃ」
「衰えたなサイラス。89・66・92は確実だ」
悪どい笑みを浮かべてクリスト・ユグド・サイラスの3人は言い合う。彼らが呟く謎の数字は、とあるゲームのためのもの。
その名も、『スリーサイズ当てっこゲーム』という1歩間違えばセクハラ容疑で監獄行きの、大変スリリングなゲームである。
都市伝説では、巷で流行していたこのゲームのために街1個の酒場全体が封鎖されたところもあったとか無かったとか。
とにかく、今や街酒場ではお馴染みなのだ。
だが、ここの酒場では時に命取りとなり得る。
ここの看板娘には熱狂的なファンが多いため、万が一バレた暁には夜道で背後から刺されるというのがもっぱらの噂だ。なんでも、もうすでに何人か殺られたとか殺られてないとか。
「そう言えば時にクリスト。最近の都市伝説はどうなっておるのじゃ?」
「んー?たわいも無いのばっかりだよ。『イートルの街で巨大な岩が空を飛んだ』とか、『セントナ墓地で動き回る死体が出た』とかだね」
「ふーむ。セントナ墓地といえば、東区じゃの。ちょっと行ってみんか?」
「やだよ。エネルギー節約してんだから」
はぁ、とため息を吐くクリスト。こんな感じで都市伝説が溢れかえるこのリアスター王国は、別名『魔窟』と呼ばれるほどに不可思議だらけだ。
それこそ大通りの上空で謎の爆発なんて日常茶飯事。
それどころか王都地下貯水場の崩落なんかも、『へーそう、そんなことが………』くらいのものだ。
まあ大体は、執行部の仕業なのだが。
それに都市伝説の中には、以外と事実もある。故に魔導騎士の中には、都市伝説マニアも多く存在する。クリストやサイラスも例に漏れずその1人だ。
「いいではないか、少し付き合え」
「じゃあここ奢ってくれて、ついでに明日の3食おやつ付き保証なら行ってやるよ」
「よし、今日は飲もうではないか!」
「………チッ、誤魔化しやがった」
こうしてたわいもない話をしながら、夜は更けていくのだった―――
**********************
そして深夜。
サイラスとも別れ、自宅へと帰ったクリストとユグドはさすがに疲れたのか、吸い込まれるように自室へと入っていき。数分後には、静寂が訪れた。
だが、その静寂を破る者がいた。
全員が寝静まったのを確認しながら、そーっと音を立てないように歩く人物。
 
誰であろう、クリストだ。
「ふあぁぁぁ………。ホントは俺も寝たいんだけどな」
誰ともなくそう嘯き、階段を下りる。
そして1階へと下り、魔導具店の店内を抜けて暗闇に包まれた外へ。
そして、夜の冷たい風を大きく吸い込むと、自身の感覚を研ぎ澄ませていく。意識的に、普段のものから戦闘モードへと。
「8………15………24。結構いるな。そんなに魅力的かね、あの魔導書が」
そう言いながら、スラックスのポケットに手を突っ込み、魔導具を取り出す。小さな正方形をしたソレは、クリストお手製のとある結界用のもの。
「範囲指定、距離200M。効果指定、全24」
そう囁くと、魔導具が起動する。
クリストを中心に指定された範囲を複製。
そして別次元に固定された空間へと、魔術師を誘う。
一瞬の浮遊感が身体を包み、そして消える。
瞬時に別次元の街に降り立ったクリストは、赤い宝玉を握りしめて言葉を放つ。
「『喚装』」
瞬間的に宝玉が輝き、1本の長大な漆黒の魔剣へと変貌した。クリストはそれを肩に担ぐと、
「まったく、魔導書にわんさか群がって来やがって。不様に斬られて死ぬくれぇの覚悟はあるんだろな?」
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