ゼロの魔導騎士と封印の魔導書《グリモワール》

本城ユイト

No.2―8 魔法と魔術

クリストの魔術使える発言から5分後。
その場にいた全員が落ち着きを取り戻し、クリストの説明を聞くことになった。

「んで、さっきも言ったけど………俺、一応魔術使えるんだよね。こんな風にさ」

試しに《ブレイズ・バースト》を発動し、手のひらに炎球を生み出してみせるクリスト。

「使える魔術は、攻撃全般と簡単な回復、後は身体能力強化くらいかな………」

世間話をするような気軽さで重大な事実を言い放ったクリストを、全員が呆気にとられたように見る。

当然だろう。
魔法を扱うクリストには、魔術は使えないはずなのだから。ただし、その重大さを理解していない(できない)ヤツがいた。脳筋野郎ことユグドである。

「………それって凄いのか?」

そう軽く問うたユグド。
それを聴いた他の7人は、揃って驚いたような顔をすると、

「なあ、やっぱ馬鹿なんだろ、お前?」

「さすがにここまでとはね………」

「アタシでも知ってるよ?」

「むしろ魔導騎士の一般常識なのでは?」

「「「………以下同文………」」」

と可哀想な人を見る目でそれぞれ一言。
全員から哀れみの視線攻撃を受けたユグドは、半涙目で逆ギレ的に苦し紛れの抵抗を行う。

「なっ、何だよ!そんなこと無いだろ!?」

「ところがあるんだよ。裏から入ったお前は知らないだろうけど、表では筆記試験がある。そこの問題のトップがこれなんだ」

「ま、マジかよ………」

「マジなんだな、これが」

あっさりとハーネスに言い負かされたユグドを見て、さすがに可哀想に思わざるをえない7人。5分ほどの押し問答の末、最終的に多数決で役割を押し付けられたクリストが、ユグドに常識を教えることとなった。

「えーっと、魔法と魔術は『回路』が違うのな?」

「………『回路』ってなんだよ?」

完全にふて腐れたユグドに、デリカシーの無さで評判のクリストも頬をひきつらせる。

(こいつ、超やりにくい………ッ!!!)

だが、背後からの『後は任せたぞ』という無責任オーラの影響で、引き下がる訳にもいかないのだ。
よって、気を取り直して進めるしかない。

「オホン、つまりだ。要は『回路A』と『回路B』があると思えばいい。魔力マナが通る線が二股に分かれてこれに繋がってるんだな」

「………それで?」

「魔法にしても魔術にしても、使うには100%の魔力が必要なんだ。だからどっちかにしか送れないってワケ。分かった?」

「………うーん、まあなんとなくな」

いまいち(というか絶対に)理解していないユグドに、クリストは心の中でため息を吐く。

するとここで、黙って後ろで事のなり行きを見守っていたはずの奴らまでが、謎の授業に参戦してくる。

「はーいクリスト先生!」

「誰が先生だよ!?それで、何かな?ルーナ君」

「案外団長もノリノリじゃん………。じゃなくて、回路を切り替えて使えば良いんじゃないですかー?」

本来の想定には無い質問に、クリストの動きが一瞬止まる。だが脳内の知識をフル動員して、関連する記憶を引っ張り出してくる。

「それは、元々線と回路が繋がってないからなんだよな。言ってる意味分かる?」

「ぜーんぜん?」

「じゃあアレだ。今お前の手元には100ユールがあるとする。そして目の前には一本100ユールの『串焼きA』と『串焼きB』がある」

「ふんふん、それで?」

「その場合、どちらかを買うしかないだろ?そして買い直しは出来ない。これで分かったか?」

「う、うん………。1度繋げたらもう繋ぎ直しは出来ない、そういうことだね?」

「そういうことだ」

ふんす、と胸を張って一仕事やり遂げたような晴れ晴れとした顔をするクリスト。だがそれを見ながら、全員がクリストの分かりやすい説明に驚いていた。

それこそ、騎士なんかよりもその辺の学校で講師でもやったほうが良いんじゃないかというレベルで。

だがそんなことなど知るはずもないクリストは、得意気な顔でスラスラと説明を続けていく。

「ちなみに魔導書グリモワールなんかも根本的には同じだね。あれは本自体に『回路』が埋め込まれていて、それを通して魔法を使うっていう―――」

「そ、それよりさぁ。魔導書使えば普通の人間でも魔法使えるんでしょ?なら魔導書って完璧な魔導具なんだよね?」

基本的に勉強嫌いなユグドがついに頭から煙を出しそうなほど唸り始めたのを見て、ソラミアは慌てて話題を変更していく。

だが、それを聴いたクリストは、より一層目をキラキラと輝かせながら熱弁をふるっていく。

「いや、それは違う。魔導書は基本魔導法則3の魔力の変化に――(略)――だから世界に及ぼす現象には多少制限がかかり―――(略)―――つまり、崩壊の一途を辿るってことなんだよ!」

「え、あ、うんそうなの?つまりどういう………?」

10分間に及ぶ専門用語で塗り固められた熱弁に、ユグドはおろか頭のいいハーネスやセリル、アリスといった面々までがギブアップ気味だ。

自分でも頭は良いと思っていたルーナやソラミアでさえも、全く理解不能な領域。故に簡潔に結論を伝えてくれるよう、クリストへと頼む。

「つまり、魔導書には使用回数制限があるってことなんだなー!分かった!?」

「「「………分かったよ、多分………」」」

笑顔でサムズアップしながら、クリストはそう答えた。その満開の笑みを視界の端に捉えながらも、頭の中が謎の知識で一杯なソラミア達は、口を揃えてそう言うのだった。

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