ゼロの魔導騎士と封印の魔導書《グリモワール》
No.2―2 舞い込んだ依頼
「今日は、執行部に依頼があって来た」
部屋に入るなり開口一番そう切り出すハーネス。だがその視線は部屋をぐるりと見渡すと、ある一点で停止する。それは3階へと繋がる階段だ。
「………クリストは今どこに?」
「2度寝するんだってよ」
ため息混じりにユグドがそう答えると、ハーネスは額に手を当てて「まったくアイツは………」と呟く。
「………起こして来よっか?」
「頼めるか、ルーナ」
「任せといて!」
そう言って階段下へと意気揚々と向かっていくルーナを見ながら、ソラミアは少し疑問を覚えていた。この家で過ごしてもう1週間、クリストの寝起きの悪さは身をもって知っていた。恐らく1度寝たらたとえ世界が滅んだとしても起きないだろう。
ならばどう起こすのか、やっぱり力ずくかな?と予想を立てながらソラミアは見つめる。
だが、ルーナのとった行動はシンプルだった。
「団長ー!儲かる仕事が舞い込んできたよー!」
ルーナがそう叫んだ瞬間。
天井から何かが落ちる盛大な音が響き、ドタドタと足音がして―――
「生・活・費ーッ!」 
目をギラギラと輝かせながら、金の亡者が凄まじい勢いで飛び出してきた。そしてそのまま階段へと差し掛かったその時。
不意にツルッと足を滑らせた。
「うおわっ、またかよぉぉぉぉぉ!?」
クリストの身体はデジャブ感満載な動きで階段を落下し、下にいたルーナの上へと墜落する。至近距離から2人の視線が交差し、思わずクリストが動きを止めたその時、遠くから声が響いた。
「なっ、何してんのよセクハラ団長!」
そう叫んだソラミアの左手から紫電が放たれ、クリストの身体を撃ち抜いたのだった。
**********************
そして数分後。
「なあ、お前最近凶暴になってないか?」
まだ身体の痺れが抜けきらないクリストがそう尋ねると、少し思うところがあるのかソラミアは静かに目を逸らす。その反応を見たクリストは「まあいいか」と言って依頼人と向き合う。
「んで?俺らに依頼って何だ?」
「うむ。それがだな………お前ら、最近起きてる狙撃事件を知っているか?」
「狙撃事件?」
そういうことにはまるで興味ないユグドと、帰って来たばかりのセリルとアリスが揃って首をかしげる。だが他の3人は険しい表情を浮かべる。人一倍そういうことには敏感なクリストが口を開いた。
「それってあれか?国のお偉いさんが殺害予告を受けた後に狙撃されて亡くなったってヤツ」
「そう、その事件だ。ちなみにお前らどこまで知ってるんだ?」
 
「ぜーんぜんなんにも。国からの発表待ちだよ、世間と同じくな。確か、どっかの街の領主が殺られたとかなんとか……。でもそれだけだろ?」
先ほどまでのダメ人間な雰囲気は引っ込み、真面目な顔になったクリストが言う。だが、ハーネスは首を横に振って続ける。
「ここからは機密情報なんだが………殺られたのは3人だ。そして昨日、私にも届いた」
「「ええっ!?」」
驚愕する執行部メンバーを見ながら、ハーネスは懐から1枚の紙切れを取りだして読み上げる。
「『ハーネス・リアスター国王殿。私は貴殿の様々な国策を愚の骨頂と感じた、よって天誅を下す』」
「………つまりどゆこと?」
脳筋であるユグドには難しかったらしく、頭を抱えてうんうん唸っている。すると見た目通りの秀才であるセリルが助け船を出す。
「つまり要約すると、気に食わないから殺害するってことですよ」
「つまり、典型的な頭おかしいヤツだな」
あまりに長すぎる文章をセリルが要約し、ユグドはポンと手を打って「なるほど!」と理解完了。
「それで?俺達に何をやれってんだ?」
「うむ。執行部にはその犯人を捕まえてほしい。無論私の安全に配慮する必要はない」
「………お主も何気に歪んでおるの、国王殿。自分の命はどうでもいいという訳か」
アリスのそんな指摘に、ハーネスは驚いたように目を見開く。その驚きは発言へのものか、自覚していなかったことを指摘された驚きか。
「………そうなのかも、しれないな」
ハーネスは目を伏せて呟くと、「だが」と続ける。
「それでもやってもらわなければ困る。私は国王、国を維持するのが仕事だ。命を賭ける覚悟はもうすでに決めている」
「………どうするの、クリスト?」
今まで黙って事の成り行きを見守っていたソラミアがそう尋ねると、クリストはふうと軽いため息を1つ。
「………昔のよしみだ、やってやるよ」
「本音は?」
「国王助けたら報酬ガッポリ出るんじゃね!?」
「「………………ダメ人間」」
ルーナの言葉にあっさり本音を暴露するクリスト。
結局最後まで締まらないダメ人間なのだった。
部屋に入るなり開口一番そう切り出すハーネス。だがその視線は部屋をぐるりと見渡すと、ある一点で停止する。それは3階へと繋がる階段だ。
「………クリストは今どこに?」
「2度寝するんだってよ」
ため息混じりにユグドがそう答えると、ハーネスは額に手を当てて「まったくアイツは………」と呟く。
「………起こして来よっか?」
「頼めるか、ルーナ」
「任せといて!」
そう言って階段下へと意気揚々と向かっていくルーナを見ながら、ソラミアは少し疑問を覚えていた。この家で過ごしてもう1週間、クリストの寝起きの悪さは身をもって知っていた。恐らく1度寝たらたとえ世界が滅んだとしても起きないだろう。
ならばどう起こすのか、やっぱり力ずくかな?と予想を立てながらソラミアは見つめる。
だが、ルーナのとった行動はシンプルだった。
「団長ー!儲かる仕事が舞い込んできたよー!」
ルーナがそう叫んだ瞬間。
天井から何かが落ちる盛大な音が響き、ドタドタと足音がして―――
「生・活・費ーッ!」 
目をギラギラと輝かせながら、金の亡者が凄まじい勢いで飛び出してきた。そしてそのまま階段へと差し掛かったその時。
不意にツルッと足を滑らせた。
「うおわっ、またかよぉぉぉぉぉ!?」
クリストの身体はデジャブ感満載な動きで階段を落下し、下にいたルーナの上へと墜落する。至近距離から2人の視線が交差し、思わずクリストが動きを止めたその時、遠くから声が響いた。
「なっ、何してんのよセクハラ団長!」
そう叫んだソラミアの左手から紫電が放たれ、クリストの身体を撃ち抜いたのだった。
**********************
そして数分後。
「なあ、お前最近凶暴になってないか?」
まだ身体の痺れが抜けきらないクリストがそう尋ねると、少し思うところがあるのかソラミアは静かに目を逸らす。その反応を見たクリストは「まあいいか」と言って依頼人と向き合う。
「んで?俺らに依頼って何だ?」
「うむ。それがだな………お前ら、最近起きてる狙撃事件を知っているか?」
「狙撃事件?」
そういうことにはまるで興味ないユグドと、帰って来たばかりのセリルとアリスが揃って首をかしげる。だが他の3人は険しい表情を浮かべる。人一倍そういうことには敏感なクリストが口を開いた。
「それってあれか?国のお偉いさんが殺害予告を受けた後に狙撃されて亡くなったってヤツ」
「そう、その事件だ。ちなみにお前らどこまで知ってるんだ?」
 
「ぜーんぜんなんにも。国からの発表待ちだよ、世間と同じくな。確か、どっかの街の領主が殺られたとかなんとか……。でもそれだけだろ?」
先ほどまでのダメ人間な雰囲気は引っ込み、真面目な顔になったクリストが言う。だが、ハーネスは首を横に振って続ける。
「ここからは機密情報なんだが………殺られたのは3人だ。そして昨日、私にも届いた」
「「ええっ!?」」
驚愕する執行部メンバーを見ながら、ハーネスは懐から1枚の紙切れを取りだして読み上げる。
「『ハーネス・リアスター国王殿。私は貴殿の様々な国策を愚の骨頂と感じた、よって天誅を下す』」
「………つまりどゆこと?」
脳筋であるユグドには難しかったらしく、頭を抱えてうんうん唸っている。すると見た目通りの秀才であるセリルが助け船を出す。
「つまり要約すると、気に食わないから殺害するってことですよ」
「つまり、典型的な頭おかしいヤツだな」
あまりに長すぎる文章をセリルが要約し、ユグドはポンと手を打って「なるほど!」と理解完了。
「それで?俺達に何をやれってんだ?」
「うむ。執行部にはその犯人を捕まえてほしい。無論私の安全に配慮する必要はない」
「………お主も何気に歪んでおるの、国王殿。自分の命はどうでもいいという訳か」
アリスのそんな指摘に、ハーネスは驚いたように目を見開く。その驚きは発言へのものか、自覚していなかったことを指摘された驚きか。
「………そうなのかも、しれないな」
ハーネスは目を伏せて呟くと、「だが」と続ける。
「それでもやってもらわなければ困る。私は国王、国を維持するのが仕事だ。命を賭ける覚悟はもうすでに決めている」
「………どうするの、クリスト?」
今まで黙って事の成り行きを見守っていたソラミアがそう尋ねると、クリストはふうと軽いため息を1つ。
「………昔のよしみだ、やってやるよ」
「本音は?」
「国王助けたら報酬ガッポリ出るんじゃね!?」
「「………………ダメ人間」」
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結局最後まで締まらないダメ人間なのだった。
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