ゼロの魔導騎士と封印の魔導書《グリモワール》

本城ユイト

No.1―13 激突する戦力

「なんと言うか………こんな場所薄暗いところならユグドとじゃなくて団長とが良かったな〜」

「おい、一体何を期待してんだ、何を」

「やだなー、ナニに決まってるじゃない」

「ちょっと待て、お前いまなんつった!?」

「冗談だよ。……半分くらいは」

「半分本気マジ、だと!?」

結局冗談なのか本気なのかよく分からないルーナの言葉に、少し戦慄を覚えるユグド。そんなユグドの叫びが薄暗い通路にこだました。

「まあ、ルーナが団長大好きなのは知ってるけどさ」

「うんうん、カッコいいよね、団長ってさ!」

「いや、正直アレのどこがいいのかさっぱりなんだけど………。だって普段はダメ人間だし、ニートだし、お金に汚いし、チビだし、そのくせ口は悪いし」

「最後のはユグドもだよね?」

クリストの特徴的なところを指折り数えていくユグドを、ルーナはジト目で睨み付けて(強制的に)黙らせる。その慌てた反応を見て満足したのか、ルーナは機嫌をもとに戻すと―――

「さてと、そろそろ立ち聞きしている人達にも出て来てもらおうかな?」

「だな。居るのは分かってんだ、出てこいよ。それとも………力ずくで引っ張り出してやろうか?」

前を向いたまま2人がそう口にすると、一体どこに隠れていたのかと思わず訊きたくなるほどの人数が現れる。その数ざっと20人弱ぐらいだろうか。

「あ〜あ、やっぱり罠なのね。これもユグドと一緒にいたからかな?」

「おい、人を不幸なヤツみたいに呼ぶな」

どこまでいっても通常運転な2人が口喧嘩を始めようとすると、前に立つ集団は無言でそれぞれの武器エモノを構える。

「おいおい、最初っから全力モードか?」

「それじゃあアタシ達も全力で行きますか!」

ルーナがそう言うと同時、2人揃って右手で複雑な紋様が刻まれた小さな宝石を取り出す。それは、城でハーネスがクリストへと手渡したのと同種のものだ。
2人はそれを手に握り込むと、一言叫ぶ。

喚装コール!双拳エリトレイター!」

喚装コール霊杖れいじょうフェルン!」

その瞬間。
2人の言葉に反応した宝石がまばゆい光と共に形状を変化させ、ユグドの両腕に籠手を、ルーナの右手に杖を造り出す。それは固有魔法オリジナルの使い手を象徴する武器である、魔導器。

「………貴様ら、固有魔法使いか!」

「ああ、そうだぜ?『爆炎操作エクスプロージョン』の使い手とはオレのことだ!」

「ちなみにアタシが『速度領域カウントテリトリー』だよ?参考までに言っとくけど」

「………いや、どっちも知らんな」

「「な、なんだってーーー!?」」

揃って首をかしげる魔術師達を見て、2人はなにやらショックを受けた様子でのけぞる。背景にガガアッと雷が落ちるのが目に見えるような感じで。

「まさかオレ達の知名度が低いだと………?」

「お、おおお落ち着いてユグド、大丈夫!アタシ達は非公式な組織、知名度が無いのは当然!むしろ良いことなの!だから大丈夫、大丈夫………」

最後の方は半ば自分に言い聞かせるかのように繰り返し呟いていたルーナ。どうやら魔術師が放った何気ない一言は、2人の弱点に直撃クリティカルだったらしい。

「ま、まあ知らねぇってんなら仕方ねぇ。この戦闘でしっかりその目に焼き付けな!」

「だね!後方支援は任せてね、ユグド」

「ああ、頼んだぜ」

気を取り直したユグドは、一歩前に出て軽く拳を握って構える。ユグドの意識が戦闘用へと切り替わると、それに呼応するかのようにその両拳に炎が宿る。

「よっしゃあ、行くぜ!」

その叫びと共に、敵めがけて一直線に突っ込んで行くユグド。こうして闘いの火蓋が切って落とされたのだった―――



**********************



「………ん?何事だ?」

天井を見上げて呟いたのは、フリウス・レイズ。
本来なら災害時の水を貯める場所として機能するはずの巨大な空間には、現在フリウス、ゼラス、ソラミアの3人しかいない。
すると、通信用の宝石を耳に当てて誰かと会話をしていたゼラスが、こちらを振り返って報告する。

「現在、この場所に何者かが侵入した模様です。すでに部下達が交戦中、先ほどの震動はそれが原因かと思われます」

「………人数は何人ほどです?」

「確認できているのは2名、それともう1人『団長』と呼ばれる者がいる模様」

「なるほど、了解です。それでは尚更急がなければなりませんね。そう思いませんか?」

そう言って目を向けた先に居るのは、両手両足を縛られ、口を塞がれた少女。そして、フリウスにとってもっとも重要な標的ターゲット

「…………………」

「おや、だんまりですか。仕方ありませんね、あまりこういうことはしたくないのですが………」

フリウスがパチンと指を鳴らすと、呟く。

「『発射ストライク』」

その瞬間。
周囲に存在する水が、まるで弾丸のごとくソラミアへと発射され、その体を軽々と弾き飛ばす。

「ぐうぅっ………!」

「ああ、これはすみません。私の魔法は威力は高いのですが、その分制御が効かなくて………」

まったく的外れなことを口走るフリウスに向かって、先ほどの衝撃で口枷が外れたソラミアは言う。

「………こんなことで、私が大人しく情報を渡すとでも思ってるんですか?」

「ええ、まあ。私の持論としては、相手の口を割るには暴力が一番でして」

「なら口だけでなく実践してみたらどうです?」

フリウスの言葉に強気で返すソラミア。だがその態度が虚勢であることは、誰の目にも明らかだ。
故にフリウスは、まずその虚勢の仮面を剥がしにかかる。

「ゼラス、焼きなさい。そうですね………瀕死ぐらいで良いでしょう」

「な、何をするんですか、フリウス様!」

「相手に一度絶望を与えた方が、口が軽くなると思うんですよ。痛みと絶望、それが私の完璧な持論です」

薄笑いをいっそう暗く深いものにしながら、フリウスは最後の一言を告げる。わざと、ソラミアにも聴こえるように。

「それに、『あの方達』からも少女はどうなってもいい、と言われていますから」

「………承知しました。『紅蓮の業火よ』」

ゼラスの詠唱で魔術《フレイム・バースト》が起動し、ソラミアへと一直線に放たれる。その炎球はソラミアの体を吹き飛ばし、絶望を与える。
そのはずが。

ガキィィィン!という派手な激突音と共に、炎球が消滅し、その余波が近くの柱を粉々に破壊する。それと同時に巻き起こる爆煙が、ソラミアの体を覆い隠す。

「………いったい、何が!?」

いきなりの事に困惑するフリウスとゼラスに、爆煙の中から声が飛んでくる。その声は、2名とも聞き覚えがある声だった。

「いやぁー、危なかった!ギリギリセーフだったぜ」

「何者ですか、あなたは」

徐々に爆煙が晴れ、声の主が姿を表す。右手に1本の長剣を携えた少年は、フリウスの問いに不敵な笑みを浮かべてこう返す。

「魔導騎士団執行部団長、クリスト様だぜ?よーく覚えときな、クソ野郎ども」

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