ゼロの魔導騎士と封印の魔導書《グリモワール》
No.1―9 協力者は
「さてと、これからどうすんだ?団長」
「さあねぇ。せっかく立てた計画も無駄になっちまったし、肝心のゼラスには逃げられたしな」
「………つまり打つ手無し?」
「………だな」
クリストの無計画ぶりに呆れた表情の青年と思わず苦笑いを浮かべる女性。だがどこまでもマイペースなクリストは、そんな事を気にもとめない。
「とりあえず、逃げたゼラスを追うしかないか」
「ゼラスって言うと………あの女の子連れてった魔術師だったっけ?」
「そうだ。今頃フリウス・ レイズが追ってるだろうけど………。表のヤツらには任せておけねぇからな」
「それはいいけど、どうやって追うの?」
「……………」
突然沈黙したクリストを見て、2人は察する。
―――これ、何も考えてなかったやつだ、と。
するとしばらくの間腕を組んで考え込んでいたクリストは、突如カッ!と目を見開くと―――
「お願いします、2人もアイディア出して下さい!」
その場で華麗にバックジャンピング土下座、つまりバク転からの土下座という高難易度の技を決めた。その時におでこをぶつけたらしく、ガツン!という大きな音と小さな悲鳴が聞こえたのは多分気のせいだろう。
「そう言われてもなぁ………普段からそういうのは団長の仕事だろ?」
「あっ、心配すんなユグド。脳筋のお前には最初から期待してないからさ」
「んだとぉ!」
いきなり脳筋呼ばわりされて怒るユグド。だがそんなユグドの怒りをさらりと受け流し、もう1人の仲間へと話をふる。
「ま、そんな脳筋は置いといてだ。お前はなんかアイディアあるか?ルーナ」
「ううん、全然。アタシより頭良い団長が考えてダメなんだから出るはずないよ………」 
「うーん………そっかぁ」
お手上げだ、と言わんばかりに両手を上げて降参のポーズをとる女性改めルーナ。それを見たユグドが、
「んで?結局どうすんだ?」
「仕方ねーな。アイツに頼んで力借りるか………」
クリストがそう言ったその時。
突如その場に鈴のような澄んだ音が響き渡る。それはクリストのズボンのポケットからだった。
「ん?着信が来たの?」
「ああ、まさに噂をすればなんとやらだな。ハーネスからだ」
そんな事を言いながら、クリストはポケットからある物を取り出す。それは複雑な紋様が彫りこまれた小さな丸い宝石。通信用の術式が彫りこまれているのだ。クリストがそれを耳に当てると、宝石を通して声が聞こえてくる。
『もしもし、クリストか?』
「ああ、ナイスタイミング!ちょうどお前の事を話していたところだぜ」
『む?私の事をか?』
「実はかくかくしかじかで………。お前の力を借りたいんだよ。国王であるお前の力をな」
クリストがあらかた事の顛末を説明すると、ハーネスは『なるほどな………』と呟いた後に告げる。
『よし分かった、協力しよう。どうすればいい?』
「………とにかく情報が欲しい。国王の権限を行使すれば簡単だろ?」
『………簡単ではないんだが、やれるだけの事はやってみよう。では20分後に城にある私の執務室まで来てくれるか?』 
「りょーかいした。じゃ、また20分後にな」
そう言って通信を切ると、ふぅ………と小さく安堵のため息をつく。そして一言、誰にも聞こえないような小さな声でポツリと呟いた。
「さてと、ここまでは計画通り順調だな………」
**********************
約束通りに20分間暇を潰したクリスト一行は、城のど真ん中に位置する国王の執務室へと向かっていた。
普通ならば執務室を警護している騎士に止められるのだろうが、クリスト達は顔パスだ。理由は城に入った時点で自動的に符呪された『認識阻害』の魔法によるものなのだ。
よって問題なく執務室へとたどり着いたクリストは、目の前にある重厚な扉を控えめにノックする。
「おーい、ハーネスいるかー?」
「クリストか?入って良いぞ」
部屋の主の許可を得たクリストは、両開きの扉をゆっくりと開けて中へと入る。そこそこ広い部屋をところ狭しと積み上げられた本の山が支配している光景は、いっそ図書館であると言われても疑い無く信じられるだろう。
そんな散らかった部屋の奥に鎮座する机に座る人物こそが、部屋の主でありこの国の王、ハーネス・リアスターだ。
「まったく、遅いぞクリスト!」
「へ?いやちゃんと指定された時間に来たんだが」
「馬鹿かお前は、2分遅刻だ!」
「相変わらず細かいな!………まあそんな事はさておいて、だ。情報は集まったのかよ?」
「まあ、直接居場所を割り出せるようなものはさすがになかったがな………」
そう言ってハーネスが机の引き出しから取り出したのは、いくつもの紙束。端から端までびっしりと書かれたそれは、その辺に転がっているような噂話から国家機密クラスのものまである。
「うへぇ、まさかとは思うけどよ団長………」
「ああ、そのまさかだ!4人で手分けすれば読み終わんだろ、こんな量!」
「いやこんな量って………軽く1人300ページは読むよね、コレ。アタシ読める気しないんだけど!?」
「そうか、頑張れよ?」
途端にひきつった笑みを浮かべるユグドとルーナ。そんな2人の無言の反対を完全に無視して、満面の笑みでクリストは叫ぶ。
「それじゃあみんな、頑張っていってみようか!」
「さあねぇ。せっかく立てた計画も無駄になっちまったし、肝心のゼラスには逃げられたしな」
「………つまり打つ手無し?」
「………だな」
クリストの無計画ぶりに呆れた表情の青年と思わず苦笑いを浮かべる女性。だがどこまでもマイペースなクリストは、そんな事を気にもとめない。
「とりあえず、逃げたゼラスを追うしかないか」
「ゼラスって言うと………あの女の子連れてった魔術師だったっけ?」
「そうだ。今頃フリウス・ レイズが追ってるだろうけど………。表のヤツらには任せておけねぇからな」
「それはいいけど、どうやって追うの?」
「……………」
突然沈黙したクリストを見て、2人は察する。
―――これ、何も考えてなかったやつだ、と。
するとしばらくの間腕を組んで考え込んでいたクリストは、突如カッ!と目を見開くと―――
「お願いします、2人もアイディア出して下さい!」
その場で華麗にバックジャンピング土下座、つまりバク転からの土下座という高難易度の技を決めた。その時におでこをぶつけたらしく、ガツン!という大きな音と小さな悲鳴が聞こえたのは多分気のせいだろう。
「そう言われてもなぁ………普段からそういうのは団長の仕事だろ?」
「あっ、心配すんなユグド。脳筋のお前には最初から期待してないからさ」
「んだとぉ!」
いきなり脳筋呼ばわりされて怒るユグド。だがそんなユグドの怒りをさらりと受け流し、もう1人の仲間へと話をふる。
「ま、そんな脳筋は置いといてだ。お前はなんかアイディアあるか?ルーナ」
「ううん、全然。アタシより頭良い団長が考えてダメなんだから出るはずないよ………」 
「うーん………そっかぁ」
お手上げだ、と言わんばかりに両手を上げて降参のポーズをとる女性改めルーナ。それを見たユグドが、
「んで?結局どうすんだ?」
「仕方ねーな。アイツに頼んで力借りるか………」
クリストがそう言ったその時。
突如その場に鈴のような澄んだ音が響き渡る。それはクリストのズボンのポケットからだった。
「ん?着信が来たの?」
「ああ、まさに噂をすればなんとやらだな。ハーネスからだ」
そんな事を言いながら、クリストはポケットからある物を取り出す。それは複雑な紋様が彫りこまれた小さな丸い宝石。通信用の術式が彫りこまれているのだ。クリストがそれを耳に当てると、宝石を通して声が聞こえてくる。
『もしもし、クリストか?』
「ああ、ナイスタイミング!ちょうどお前の事を話していたところだぜ」
『む?私の事をか?』
「実はかくかくしかじかで………。お前の力を借りたいんだよ。国王であるお前の力をな」
クリストがあらかた事の顛末を説明すると、ハーネスは『なるほどな………』と呟いた後に告げる。
『よし分かった、協力しよう。どうすればいい?』
「………とにかく情報が欲しい。国王の権限を行使すれば簡単だろ?」
『………簡単ではないんだが、やれるだけの事はやってみよう。では20分後に城にある私の執務室まで来てくれるか?』 
「りょーかいした。じゃ、また20分後にな」
そう言って通信を切ると、ふぅ………と小さく安堵のため息をつく。そして一言、誰にも聞こえないような小さな声でポツリと呟いた。
「さてと、ここまでは計画通り順調だな………」
**********************
約束通りに20分間暇を潰したクリスト一行は、城のど真ん中に位置する国王の執務室へと向かっていた。
普通ならば執務室を警護している騎士に止められるのだろうが、クリスト達は顔パスだ。理由は城に入った時点で自動的に符呪された『認識阻害』の魔法によるものなのだ。
よって問題なく執務室へとたどり着いたクリストは、目の前にある重厚な扉を控えめにノックする。
「おーい、ハーネスいるかー?」
「クリストか?入って良いぞ」
部屋の主の許可を得たクリストは、両開きの扉をゆっくりと開けて中へと入る。そこそこ広い部屋をところ狭しと積み上げられた本の山が支配している光景は、いっそ図書館であると言われても疑い無く信じられるだろう。
そんな散らかった部屋の奥に鎮座する机に座る人物こそが、部屋の主でありこの国の王、ハーネス・リアスターだ。
「まったく、遅いぞクリスト!」
「へ?いやちゃんと指定された時間に来たんだが」
「馬鹿かお前は、2分遅刻だ!」
「相変わらず細かいな!………まあそんな事はさておいて、だ。情報は集まったのかよ?」
「まあ、直接居場所を割り出せるようなものはさすがになかったがな………」
そう言ってハーネスが机の引き出しから取り出したのは、いくつもの紙束。端から端までびっしりと書かれたそれは、その辺に転がっているような噂話から国家機密クラスのものまである。
「うへぇ、まさかとは思うけどよ団長………」
「ああ、そのまさかだ!4人で手分けすれば読み終わんだろ、こんな量!」
「いやこんな量って………軽く1人300ページは読むよね、コレ。アタシ読める気しないんだけど!?」
「そうか、頑張れよ?」
途端にひきつった笑みを浮かべるユグドとルーナ。そんな2人の無言の反対を完全に無視して、満面の笑みでクリストは叫ぶ。
「それじゃあみんな、頑張っていってみようか!」
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