ゼロの魔導騎士と封印の魔導書《グリモワール》
No.1―4 路地裏の逃走劇
「はぁ、はぁ………くそっ、まだ追ってきやがんのかよ………」
路地を全力疾走しながらそう呟くのは、クリストだ。
クリストは自分でも運動神経は良いほうだと思うが、さすがに5分間も全力で走れるほどバケモノではない。
さらに、後ろからひっきりなしに炎やら風の刃なんかが飛んでくるこの状況。
一瞬でも速度を緩めようものなら、その時点で即死確定だ。
「ちょっ、どうするんですか!?このままじゃ死んじゃいますよ!」
「うーん、どうするか………。そういやぁ全然考えて無かったな」
「無計画にもほどがありますね!?」
「だよな………。俺も今結構本気で焦ってるところなんだよ……」
叫ぶソラミアとは正反対に、クリストはどこまでもマイペースだ。
その余裕はクリストが戦闘に慣れている事を物語っている。
「ソラミア、まだ走れそうか?」
「いえ………ちょっと………限界が近そうです………」
「そうか………。よしソラミア、お前魔法使えるか?」
「えっと、魔法ですか。一応『ストライクボルト』が使えますけど………」
するとクリストは走りながらアゴに手を当てて考え込むという無駄に器用な走り方をしながら、ブツブツと呟き始める。
どうやら何かを考えているらしいが、内容はさっぱり
分からない。
少しの間うーん、でもなぁなどと唸っていたクリストは、やがてイタズラを考えついた子供のようにニヤリと笑ってソラミアを見る。
「ソラミア、俺がアイツらに巨大な炎の魔術を撃たせるから、お前はそれを魔法で撃ち抜いてくれ!」
「ええっ、魔術を撃たせるってそんなのどうやってやるんですか!?」
「良いから任せとけって!それより頼んだぞ!」
そう告げると、クリストはクルリと後ろを振り向いて考えついた作戦を実行に移す。
「おーいゼラスさんよ!アンタらさっきからバンバン撃ってんのに1発も当たんねぇじゃねえか!所詮魔導教団の魔術師なんてこんなものってことっすかねぇ!?」
作戦その1、挑発だ。
クリストは普段から仲間に『ホントに人をイラつかせる天才だよね〜。悪い意味で(笑)』と言われている。
まあクリストとしても少し傷ついているのだが、無意識にやっている事なので直しようが無い。
だが今こそその無駄な特技が生きる時!
「まあ多勢に無勢で女の子を襲うようなダメ人間の集まりだからな!どうしたよ、悔しかったらお得意の炎の魔術とかでも使ってみてくださいよぉ!ちゃんと当たるようなでっかいヤツをさぁ!」
「上等だよ!おいお前ら、あのクソ野郎にデカい炎をお見舞いしてやれ!」
「了解です!」
まんまとクリストの作戦に乗ってしまうゼラス。
その様子を見てクリストは心の中でほくそ笑む。
クリストがやれる事はやった。
あとはソラミアの魔法次第!
「頼むぜソラミア、撃ち抜いてくれよ!」
「ええ、分かりました!何するかは知りませんけど、任せて下さい!」
ソラミアは叫び返して立ち止まると左手をゼラス達へ、正確にはこれから放たれる魔術へと向ける。
左手に意識を集中させると、バチバチと音をたてて紫電が放出されていく。
そして向かい側に立つ魔術師達も全員で一斉に炎の魔術を起動させる。
「『紅蓮の業火よ・我が手に宿りて・焼き尽くせ』」
その詠唱に反応して、全員の手のひらに直径50cmほどの炎球が生成される。
作り出された炎球は、ゼラスが掲げた手のひらへと集まって行き、合わさってその大きさを増す。
その大きさはあっという間に直径2mほどにもなり、路地全体を燃やし尽くすほどの熱気を放つ。
「跡形もなく燃え尽きろ!」
「こんなところで死ぬ訳には………行かない!」
ゼラスの炎球とソラミアの紫電が同時に発射され、ちょうど中心で激突する。
ビリビリとした振動が大気を震わし、凄まじい衝撃を辺りに撒き散らす。
「ぬおぉッ………!」
「はあぁッ………!」
お互いに気合いの声を洩らす2人。
だが、その均衡は徐々に崩れ始めた。
ゼラスの炎球がソラミアの紫電を押し返し始めたのだ。
それはゆっくりと、しかし確実にソラミアへと近づいてくる。
(だめ……死んじゃうッ………!)
ソラミアが死を覚悟したその時。
後ろから声が聞こえた。
「ふむ………やはり1人じゃ無理か………。しゃあない、俺が手伝ってやる」
クリストはそう言うと、迫ってくる炎球へと歩いていく。
その姿はあまりにも無防備で、頼りない。
激突の余波で聞こえないと分かっていても、ソラミアは叫ばずにいられなかった。
「何してるんですか!?早く逃げてください!」
そのソラミアの叫びが聞こえたのか、クリストの口元に笑みが浮かぶ。
―――大丈夫だ、安心しろ。
クリストの口がそう言った気がした。
そしてクリストが炎球に手をかざした瞬間―――
バシュッ!と音と共に炎球が一回りほど縮んだのをソラミアは確かに見た。
今までの炎球の圧力が嘘のように軽くなり、炎球の進撃が止まる。
それどころか逆にどんどん押し返されて―――
ついに紫電が炎球のど真ん中を貫いた。
その瞬間路地に爆音と閃光、熱風が放出される。
あまりの爆発に吹っ飛ばされたソラミアの体は路地の石畳を転がって行き―――
ガシッ!とクリストの腕の中に収まった。
どうやら爆発の直前に後ろへと跳んでいたらしい。
まだ路地に黒煙が立ち込める中、クリストがソラミアの耳元で囁く。
「今がチャンスだ。行くぞ」
そう言うやいなや、ソラミアの手を引いて歩き出す。
ソラミアは一瞬後ろを振り向いてみたが、黒煙の中にゼラス達の姿は見えなかった。
路地を全力疾走しながらそう呟くのは、クリストだ。
クリストは自分でも運動神経は良いほうだと思うが、さすがに5分間も全力で走れるほどバケモノではない。
さらに、後ろからひっきりなしに炎やら風の刃なんかが飛んでくるこの状況。
一瞬でも速度を緩めようものなら、その時点で即死確定だ。
「ちょっ、どうするんですか!?このままじゃ死んじゃいますよ!」
「うーん、どうするか………。そういやぁ全然考えて無かったな」
「無計画にもほどがありますね!?」
「だよな………。俺も今結構本気で焦ってるところなんだよ……」
叫ぶソラミアとは正反対に、クリストはどこまでもマイペースだ。
その余裕はクリストが戦闘に慣れている事を物語っている。
「ソラミア、まだ走れそうか?」
「いえ………ちょっと………限界が近そうです………」
「そうか………。よしソラミア、お前魔法使えるか?」
「えっと、魔法ですか。一応『ストライクボルト』が使えますけど………」
するとクリストは走りながらアゴに手を当てて考え込むという無駄に器用な走り方をしながら、ブツブツと呟き始める。
どうやら何かを考えているらしいが、内容はさっぱり
分からない。
少しの間うーん、でもなぁなどと唸っていたクリストは、やがてイタズラを考えついた子供のようにニヤリと笑ってソラミアを見る。
「ソラミア、俺がアイツらに巨大な炎の魔術を撃たせるから、お前はそれを魔法で撃ち抜いてくれ!」
「ええっ、魔術を撃たせるってそんなのどうやってやるんですか!?」
「良いから任せとけって!それより頼んだぞ!」
そう告げると、クリストはクルリと後ろを振り向いて考えついた作戦を実行に移す。
「おーいゼラスさんよ!アンタらさっきからバンバン撃ってんのに1発も当たんねぇじゃねえか!所詮魔導教団の魔術師なんてこんなものってことっすかねぇ!?」
作戦その1、挑発だ。
クリストは普段から仲間に『ホントに人をイラつかせる天才だよね〜。悪い意味で(笑)』と言われている。
まあクリストとしても少し傷ついているのだが、無意識にやっている事なので直しようが無い。
だが今こそその無駄な特技が生きる時!
「まあ多勢に無勢で女の子を襲うようなダメ人間の集まりだからな!どうしたよ、悔しかったらお得意の炎の魔術とかでも使ってみてくださいよぉ!ちゃんと当たるようなでっかいヤツをさぁ!」
「上等だよ!おいお前ら、あのクソ野郎にデカい炎をお見舞いしてやれ!」
「了解です!」
まんまとクリストの作戦に乗ってしまうゼラス。
その様子を見てクリストは心の中でほくそ笑む。
クリストがやれる事はやった。
あとはソラミアの魔法次第!
「頼むぜソラミア、撃ち抜いてくれよ!」
「ええ、分かりました!何するかは知りませんけど、任せて下さい!」
ソラミアは叫び返して立ち止まると左手をゼラス達へ、正確にはこれから放たれる魔術へと向ける。
左手に意識を集中させると、バチバチと音をたてて紫電が放出されていく。
そして向かい側に立つ魔術師達も全員で一斉に炎の魔術を起動させる。
「『紅蓮の業火よ・我が手に宿りて・焼き尽くせ』」
その詠唱に反応して、全員の手のひらに直径50cmほどの炎球が生成される。
作り出された炎球は、ゼラスが掲げた手のひらへと集まって行き、合わさってその大きさを増す。
その大きさはあっという間に直径2mほどにもなり、路地全体を燃やし尽くすほどの熱気を放つ。
「跡形もなく燃え尽きろ!」
「こんなところで死ぬ訳には………行かない!」
ゼラスの炎球とソラミアの紫電が同時に発射され、ちょうど中心で激突する。
ビリビリとした振動が大気を震わし、凄まじい衝撃を辺りに撒き散らす。
「ぬおぉッ………!」
「はあぁッ………!」
お互いに気合いの声を洩らす2人。
だが、その均衡は徐々に崩れ始めた。
ゼラスの炎球がソラミアの紫電を押し返し始めたのだ。
それはゆっくりと、しかし確実にソラミアへと近づいてくる。
(だめ……死んじゃうッ………!)
ソラミアが死を覚悟したその時。
後ろから声が聞こえた。
「ふむ………やはり1人じゃ無理か………。しゃあない、俺が手伝ってやる」
クリストはそう言うと、迫ってくる炎球へと歩いていく。
その姿はあまりにも無防備で、頼りない。
激突の余波で聞こえないと分かっていても、ソラミアは叫ばずにいられなかった。
「何してるんですか!?早く逃げてください!」
そのソラミアの叫びが聞こえたのか、クリストの口元に笑みが浮かぶ。
―――大丈夫だ、安心しろ。
クリストの口がそう言った気がした。
そしてクリストが炎球に手をかざした瞬間―――
バシュッ!と音と共に炎球が一回りほど縮んだのをソラミアは確かに見た。
今までの炎球の圧力が嘘のように軽くなり、炎球の進撃が止まる。
それどころか逆にどんどん押し返されて―――
ついに紫電が炎球のど真ん中を貫いた。
その瞬間路地に爆音と閃光、熱風が放出される。
あまりの爆発に吹っ飛ばされたソラミアの体は路地の石畳を転がって行き―――
ガシッ!とクリストの腕の中に収まった。
どうやら爆発の直前に後ろへと跳んでいたらしい。
まだ路地に黒煙が立ち込める中、クリストがソラミアの耳元で囁く。
「今がチャンスだ。行くぞ」
そう言うやいなや、ソラミアの手を引いて歩き出す。
ソラミアは一瞬後ろを振り向いてみたが、黒煙の中にゼラス達の姿は見えなかった。
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