ゼロの魔導騎士と封印の魔導書《グリモワール》

本城ユイト

No.1―1 始まりの出会い

ここは王都トライスにある、とある住宅。
その一室で、クリストはベッドの上に寝転がって本を読んでいた。

現在の時刻は朝の9時。マトモな人間なら、とっくに仕事に出掛けている時間である。現に、彼と同じ家に住む同僚達は、もう1時間も前に仕事に出掛けた。

といっても、クリストは無職な訳でも、引きこもりな訳でもない。きちんとした仕事には就いている。

では、何故この少年は仕事にも出掛けず、家のベッドでゴロゴロしながら本を読んでいるのか?

答えは単純。この少年は、無気力・不真面目・無一文と3拍子揃った、自他共に認める『ダメ人間』なのだ。

「あー、面白かったー。やっぱこの本は何度読んでも飽きねーよな!」

という感想と共に、ようやく本を読み追えたクリストは、ベッドから立ち上がると、タンスから洋服を取り出して着替え始める。

「さてと、そろそろ行かねーと。またみんなが怒るからなー」

そんなのんびりとしたことを呟きながら着替えを済ませ、玄関への階段を降りていく。
そして、ガチャッと扉を開けて、外の通りへと歩き出して行った。

「はぁ、今日も1日頑張るかな……」

大きなため息と共に―――



************************



家を出てから30分後――

「ふあぁぁぁ……。ダメだ、超絶眠い……」

そう言って死んだ魚のような目をしながら、大あくびを連発するクリスト。今は仕事場へと向かっている最中なのだが、すでに遅刻ギリギリの時間である。

なので、今は王城へと真っ直ぐ伸びる、知る人ぞ知る近道の路地を疾走している。だが、今のペースではこの近道を行っても遅刻は確定だ。

しかし、遅刻寸前だというのに、クリストに慌てる様子は見られない。それどころか、

「さーてと、今日はどんな言い訳にしようかな…やっぱ『困っている人を助けてたんで遅れましたー』的なやつが妥当かなー」

なんて事を言っている始末だ。
クリストの中では、『遅刻』や『無断欠勤サボり』という言葉は日常の一つとして、当たり前のことになっているのだった。

「うーん、でもその理由は一昨日使っちゃったしな。なんか他にうまい言い訳ねーかな?」

どうやら今日も遅刻前提らしい。
それもそのはず、このクリストは今の仕事に就いてから一回も遅刻しなかった日が無いのだ。なので上司からは毎日ありがたいお説教を頂戴するハメになってしまっている。

「つーかアイツ頭固すぎだろ!別に良いじゃねーか遅刻ぐらい!ケチだなぁ!」

ブツブツと上司への不満を遠慮なくぶちまけるクリスト。誰も聞いていないからと言って油断しているのだろう。

「大体、給料安すぎんだろ!俺このままじゃ今月の食費すら怪しいってのに………」

一応言っておくが、これはクリストの仕事が決してブラックなのではない。遅刻グセの治らないクリストが何度も減給された結果なのだ。
つまり、自業自得である。

「くそおっ、いつか絶対に給料上げさせてやるからなぁッ………!


そんな事を考えながら、薄暗い路地裏を歩いていくクリスト。するとそこへ、

「きゃぁぁぁ!ちょっ、どいてくださぁぁぁぁい!」

という叫び声と共に、1人の少女が屋根の上から飛び降りてくる。 

「ええっ!?ちょっ、マジかよ!?」

そう言って慌てて退こうとするクリスト 。
だが、一足遅かった。

ドスーンという音と共に、クリストの背中に華麗かれいに着地する少女。
幸いにも、少女はクリストの上に着地したため、怪我はなかった。その代わりに、踏まれたクリストが頭から勢いよく地面に倒れていく。

(いったいなんだってこんな事に………?)

倒れる寸前にそんな事を考えていると、おでこにガツーンという衝撃。その瞬間、クリストの意識は急速に薄れていった。

「ちょ、ちょっと大丈夫ですか!?大変、どうしよう!?」

意識を失う寸前、そんな慌てた言葉が聞こえた気がした―――

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