ゼロの魔導騎士と封印の魔導書《グリモワール》

本城ユイト

No.0―1 プロローグ

ここは、リアスター王国の王都、トライス。
街の至るところに水路が張り巡らされ、レンガと石で造られたこの街は、国内有数の観光地でもある。
そんな観光地も今は夕暮れ時で、オレンジ色に染まっている。そんな王都の路地裏を、

「うおぉぉぉぉ!?し、死ぬぅぅぅ!?」

という叫び声と共に、1人の少年が駆け抜けていく。
少年の名はクリスト。
茶髪に茶色の瞳、平均的な体つきとこれといった特徴に欠ける容姿だ。色んな所を走ってきたのか、クリストの服は泥などで汚れている。

だが、今のクリストには、そんな事を気にしている余裕は無い。

何故なら、路地を走るクリストの後ろを、鉄の棒や短刀を持ったチンピラ達が追いかけてきているのだ。

「テメェ、待ちやがれ!さっきからずっと逃げやがって!」 

「ハッ、馬鹿か!?テメェらが殺る気マンマンで追いかけてきてんのに、立ち止まる奴がいると思ってんのか!?」

そう叫び返して、クリストは路地を右へ左へと器用に曲がって逃げていく。

「くそっ、速えぇ……なんなんだ、あのチビ……」

思わずチンピラの1人が呟く。
すると、クリストがすごい勢いで振り返り、

「おい、今誰かチビって言ったな!?聞こえてんだぞ!マジでぶっ飛ばす!」

ぶちギレた。
見たところクリストの身長は160センチ程だ。
どうやら身長が平均より小さい事がコンプレックスらしい。クリストの弱点を知ったチンピラ達は、ここぞとばかりに馬鹿にし始める。

「チビなの気にしてんのかよ……。おい待てよチビ!チビだからすばしっこいのか!?(笑)」

「チビはいいよな、速くてよ!俺も小さくなりてぇなぁー!(笑)」

「テメェら!俺の事をまたチビって言ったな!?覚えてろよ!後で知り合いの強い人に言い付けて仕返ししてやるかんな!マジで覚えてろよ!」

「自分でやんねーのかよ!」

いっそ清々しい他力本願ぶりだ。
まあ、クリストらしいといえばらしいのだが―――



************************



まあそんなこんなで、クリストは何とかチンピラ達を振り切って、大通りへと脱出していた。
時刻は午後11時。すっかり辺りも暗くなって、居酒屋が大繁盛している。
そんな夜の街を、クリストは1人で愚痴りながら歩いていく。

「はぁ……疲れた……。全く何で俺がこんなことに……」

ガックリと肩を落としながら大きくため息をつく。
トボトボと歩いていると、街のあちこちから声をかけられる。

「おっ、クリストじゃねーか!ちょっと一杯飲んでいかねーか!?」

「あれ、クリスト君。新しいお酒が入荷してるわよ。寄っていかない?」

「おっす、クリスト!奢るからよ、一緒に飲もうぜー!」

―――何故だろう、お酒の誘いばかりだ。
それは、小さい身長のせいで幼く見えるが、クリストはちゃんとお酒が飲める年齢だからだ。 
ただ、外見がどうみても少年なので、年齢確認をされることが多々ある。
本人としてはそれにイラッとするらしい。

普段のクリストなら、ここでみんなとお酒を飲んで朝帰り、ということになっていただろう。
だが、今日のクリストは違った。
別に禁酒を心掛けようとかそんな事じゃない。
単純に、路地裏を走り回ったからヘトヘトなのだ。
なので誘いはキッチリ断り、我が家への帰り道を歩いていく。 

「やれやれ、明日はいい日になると良いな……」

そんなクリストのささやかな願いは、叶うことがないのだった―――



初めてなので面白いか分かりませんが、気に入って頂けたら幸いです!
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