魔術師改革 ~どうやらタイムスリップしたもようです~

深谷シロ

第4話 未知

 ────スザクの部屋にて。

「……疲れたな。」
「うん、疲れた。」
「……で、なんでここにいるの?」

 朝の魔法練習の後、二人は何故かスザクの部屋に再集合した。

「外、寒い。」
「そりゃあ、冬だからな。」
「スザク、冷たい。」
「そりゃあ、外にいたからな。」
「そうじゃない。」

 ユナはムッとした。可愛いな~……心が温まるな~。

「スザクの属性のこと。」

 スザクもユナの言葉にだらけていた顔を引き締めた。
 何しろ自分の事だ。自分がしっかりと把握していなければ、才能の無駄遣いである。

「情報が足りていない。私の知り合いネットワークを使う。」
「師匠は有名人だからなー……知り合いも多いのか。」
「当然。」

 ささやかな胸を強調するエッヘンという動作。素晴らしい。

「……変態。」
「すみません。」

 何処にいるか分からないお母さん、やっぱり師匠には勝てません。

「僕も今から図書館に籠るよ。」
「図書館にはそんな本は無かったはず。」
「一応、確認としてね。無かったら孤児院の大人達に聞いて回るよ。」
「分かった。」
「……あれ?ユナ、授業は?」
「……」
「……おい。」

 ダッ!ユナは走って職員室へ。一応、この孤児院に隣接する学校にも職員室はあるんです。孤児院の大人が教師だけど。ユナは非常勤講師だが授業はある。昨日は昼休み後の授業に遅れてたみたいだから、二回目は無いとか言われているのだろう。

「図書館に行ってみるか。」

 その頃、ダッシュ中のユナは。

「……スザクのバカ。」

 ムッと怒っていました。


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「無いな。」

 図書館に行ったスザクは、無数にあるようにも見える本棚に飽き飽きしつつも、どうにか任務を遂行した。
 希少属性に関しての本はあった。だが、固有属性ユニークについての本は一冊も無かった。

「無駄足だったか……?」

 頼みの綱は……司書さんだな。聞いてみるか。

「すみません……。」
「どうしたの?」
固有属性ユニークについての本はありますか?」
「その年齢でそんな事を知ってるのね……さすがユナちゃんの弟子なだけあるわね。」
「……ど、どうしてそれを。」
「昨日ユナちゃんがあなたを探してたのよ。」
「あっ、そうか。」

 自分の失態でした。テヘペロッ!あっ、自分に対して引くわ。二度としないでおこう。あれ?二回目だっけ。

「因みにあるわよ?」
「……何が?」
「本よ、本。」
「……あぁ。」

 一瞬、忘れかけていた。俺としたことが。

「見る?図書館の本というよりは私の私物なんだけどあげるわ。」
「そんな……いいんですか?」
「ええ。」
「じゃあ、頂けますか?」
「はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」

 スザクは見ず知らずの司書さんから本を貰った。
 本の題名は『固有属性ユニーク魔導書グリモア』。魔法関連の本は全て魔導書グリモアなのかな。

 これで図書館ですることも無くなったスザクは部屋で読むことにした。

 部屋に帰ったスザクは素早く本を開いた。中は白紙だった。

「なんだこれ。」

 スザクは図書館に戻ろうとしたが、それは叶わなかった。スザクは、一言も発せないまま、本へと吸い込まれた。


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「ここは……どこだ?」

 スザクが辿り着いた先は巨大な図書館だった。通常、魔導書グリモアにはこのような力は施されていない。理由は簡単だ。ただでさえ高価な魔導書グリモアに魔法を施せば、高価になりすぎて、誰も買えなくなる。
 なんて、単純な理由であろうか。流石、人だ。利益が全て。

 それを置いておくとしても、この図書館は何だろう。

 今、スザクが立っているのは巨大な魔法陣……適性属性を調べた魔法陣の数十倍の大きさがある。
 恐らくこの魔法陣を経由して、本に出入りするのだろう。

 取り敢えずスザクは魔法陣から出た。その瞬間、スザクの胸の前辺りに光が集まった。その光は形を変え、石版になった。
 石版の表面は滑らかであったが、文字を刻み始めた。勿論、スザクが刻んでいる訳では無い。

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 ようこそ。『真魔導書ベルム・グリモア』Collection:07『図書館』へ。

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 おいおい。ラテン語の「verum」と英語の「grimoire」が混ざってるぞ。なんで知ってたかって?そりゃあ、才能だよ、才能。

 しかし、ツッコミどころ満載のこの一文で終わるはずは無かった。

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 あなたは前の所有者より、この真魔導書ベルム・グリモアの所有者と認められました。よってあなたの情報を登録します。

成河なりかわ朱咲すざく

職業:魔術師
勲章:なし
二つ名:なし
適性:無限属性
備考:真魔導書ベルム・グリモアCollection:07『図書館』所有者

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「あれ?認められた?」

 思わず感情を口に出してしまうほど情報の登録はあっさりとしたものだった。血が必要などと思うほどスザクのライトノベルの影響は大きなものだった。

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 所有者:成河朱咲を登録完了。

 以降、この石版はこの図書館における所有者の補助をします。

 石版下部の液晶へ書き込み、もしくは石版に向かって質問すれば、可能範囲であれば回答します。回答できない場合は、回答不可と表示されます。

 探したい本の位置情報も検索する事が出来ます。

 必要に応じ、活用されて下さい。

 また、この図書館についての情報を表示します。

 この図書館はこの世にある全ての本を所有します。
 破棄した破棄していないは関係しません。

 以上で図書館並びに石版の利用方法の解説を終わります。

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 何なんだ……この石版。とてつもない大魔法が施されている。それは石版だけではない。図書館もだ。図書館の中では時々、光が出る。これは新しい本が追加されているのである。さらにスザクが習得していない『人類語』以外の言語で書かれている書籍も全て『人類語』に統一されている。恐らく『日本語』での統一は不可能だろうが。

 スザクは一つ石版に質問してみた。

「この中での時間の経過は外界との違いがある?」

 結果は『ない』だった。この空間にいる間も外の時間は刻一刻と経過していくようだ。あまり長居はできない。ついでに石版に時間の表示を施した……というより頼んだ。

 時間を見るにまだこの図書館に入って、30分しか過ぎていない。ユナとスザクの放課後練習までまだまだ時間はある。しかし、この量の本の中から目的の本を探すのは手間がかかる。早速、取り掛かることにした。

「石版、『固有属性ユニーク』に関する本を机の上に出して。」

 否。探し出して、取り出す作業は1分と掛からなかった。

 図書館の大机の上には次々と本が置かれている。孤児院の図書館には一冊も無かったのに。なんて日だ!

 お仕事は便利な石版に任せて、スザクは椅子に座った。

 あ~~~楽だぁ~~~。この椅子は柔らかすぎる……。もう普通の椅子には座れないようだ……。

 しかし、石版は止まらない。10分後には完了という文字が石版に表示。仕方なくスザクは作業を始めた。

 ひたすら本を読む……読む……読む……読む……よむ……よむ……よむ……よむぅ……よむぅ……むぅ……むぅ……すぅ…………おっと、寝てしまったようだ。

「石版、『無限属性』に関する記述がある本をこの机に置いてくれ。他の本は直してくれ。」

 石版は頑張り屋だなぁ。偉いぞ~。俺は少し寝るとしよう……。


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「はっ!」

 完全に寝ていたスザクは起きると、石版で時間を確認。3時間も寝ていたようだ。師匠との魔法練習まであと30分しかない。石版には完了の文字がある。急いで読もう。

 幸いな事に石版の働きは目を見張るものがあった。わざわざページまで開いてくれていたのだ。やばい……優秀すぎる。

「まずはこの本を読むか。題名は……ふむ『大魔導師の遺産』か……。」

 内容は評論文だった。どうやらその大魔導師とやらが残した遺産について様々な説があり、それの一つについて説明している。それが『無限属性』というのだ。この属性はその大魔導師の適性だったらしい……その本によると。

「無限属性の説明まではなかったな……。次の本は、っと。」

 こんな感じで20分ほど持てる限りの速読をした。スザクのスキルがあれば速読術などが追加されていることだろう。

 大体読めるだけ読んだ結果、分かったことはというと。

○ 俗に『大魔導師』と呼ばれる偉大な魔術師達が必ず適性となる属性。

○ 1000年に1回の割合で適正者が出現する。

○ 全属性が使用可能である。希少属性も含む。

○ 最も最強で最凶の属性である。

○ 別名は神属性。

 という事だ。これだけでも十分な戦果である。というよりもう分かった。つまり俺TUEEEEEEって事だ。チート最高。よし、魔法練習に行こう。

 スザクは図書館に入る時に利用した巨大魔法陣を再び利用して戻った。巨大魔法陣は中央に立つだけで魔法が発動された。なんて便利な魔法なんだ。

 帰った先は勿論、スザクの部屋だった。変化はない。やはり怪しいものでは無いようだ。
 司書さんに問い詰めようかとも思ったが取り敢えずは師匠との魔法練習だ。急がなくては!


────────────


 まだ、来ない。既に20分の遅刻。私は日本人だから遅刻には甘くない。むしろ厳しい。それにしてもスザクは何をしているのかな。

 ユナの持て余した時間。体を動かしていないユナは代わりに脳が動いた。



 私にとってスザクは始めて出来た友達のようなものだ。

 日本人は『平和への呆れ』以降、私以外誰もいなくなった。私は立ち直れないぐらい悲しみ、泣いた。でもこれでは駄目だと泣き止んだ。目の前で人が死んでも耐えた。苦しかったけど耐えた。

「……い。」

 そして魔法暦5000年。やっと会えた。日本人に。仲間に。嬉しかった。嬉し泣きしたかったけど我慢した。スザクもまだ慌てていると思ったから。
 でも違った。スザクは全く焦っていなかった。悲しんでもいなかった。もしかしたら表情に出していないだけかもしれない。でも私よりは強い。

「……ーい。」

 スザクは必ず私よりも強くなる。そして最強になる。私が届かなかった頂に行く。私はここが限界。
 前々から限界は感じていた。でも私は何故か死ねない。何故か老いない。老いない事は良いとしても死ねないというのは何かと辛いこともある。人生楽ばかりでは無いのだ。

「おーい……。」

────私はスザクみたいになりたい。

「師匠っ!!」
「きゃあ!」

 スザクは先程から何回もユナに声を掛けていたのだが、感情が入り乱れていたユナには聞こえていなかった。大声をあげて気が付いたのは良いが、今度はユナが驚いてしまった。

「だ、大丈夫?」
「……うん。」

 何故かユナの顔が少し赤い。風邪でもひいたのだろうか。

「休息も大事だよ。」

 スザクは勘違い野郎のようだ。

「……勿論分かってる。じゃあスザク、練習始める。」
「イェッサー!」

 スザクは【空歩】の無詠唱は完璧に覚えた。次のステップは飛行である。

「じゃあ飛ぶ。」
「ついに……!!」

 飛行は人類の夢だ。数々の偉人が飛行しようと挑戦し、敗れた。妥協点として飛行機であろう。しかし、人類は完全に敗北した訳ではない。完全に飛行を諦めた訳では無い。この時代の人はそれを魔法で再現しただけだ。

「【飛行フライ】」

 ユナは飛翔した。縛られることの無い大空へ。ユナは感じた。スザクとなら出来る。私の届かなかった世界へ導いてくれる。鳥のように翼を持って。限界を超えた世界へと。きっと。

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