過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~唯愛の賢妻と愛隷の首輪~エステル攻略戦⑩

□□□□ ~エステルと誕生日デート~ □□□□

王都イシス・城下町 ~昼~

「エステル、デートに行こうか!」

俺の唐突な一言でデートは始まった
いや、正確にはあかりからのお願いの一つに含まれていた


あかりには3つのお願いをされていた

一つ目はリアを誕生日パーティーに誘うこと
これは色々あったが問題なく誘うことができた
夕方、エステルとともにリアを迎えに行く予定だ

二つ目はエステルをデートに誘うこと
これも俺にとっては渡りに舟だった
俺は今日、エステルにプロポーズするつもりだからだ

三つ目は.....それはまた別のお話である


そんな訳で俺とエステルは今、王都イシスに来ている

{ほほ~。ここがお師匠様の思い出の場所なのじゃな!}

そう言いながら、エステルはお上りさんみたいに辺りをキョロキョロし出した

ちなみにデート地はどこにしようかかなり悩んだ

エクスペインはエステルの地元だから論外
サラセニアはデートという雰囲気にならないので論外
リブループは悩んだが、この前デートしたからパス
ベルカイムも悩んだが、よく知らないのでパス
そして消去法で残ったのがイシスとなった

.....あれ?俺ってやつは実は行動範囲狭いのか?

エステルの言う通り、イシスはいい意味でも悪い意味でも思い出の場所だ

このイリアスに初めて召喚された場所
ヘイネと初めて結ばれた場所
サーシャと少しずつ愛を育んだ場所
そして変なあだ名で呼ばれている場所.....

様々な想いが胸に込み上がってくる

「まぁそんなところだ。今日は思う存分楽しもうぜ!」

そして俺とエステルのデートが始まった

□□□□

城下町・露店クレープ屋

最初に立ち寄ったのはクレープ屋さんだ

エステルも女の子は甘いもの好きの例に漏れず甘いものが好きだ
頼んだのはチョコバナナクレープ

それはいい。それはいいのだが.....

 [天ぷら勇者様、お久しぶりですね!]

やはりか.....まだ変なあだ名は継続中らしい

「・・・」
{天ぷら勇者ってなんなのじゃ?}

興味津々なエステルに俺は事の真相を話して聞かせた
天ぷら勇者や唐揚げ勇者、餃子勇者の由来を.....
話を聞いたエステルは大爆笑だった

{お師匠様、面白すぎるのじゃ!あっ.....お、落ち込むでない!ほれ、あ~ん!}
散々笑ったやつが言うことか?でも、あ~んは頂きます!

「あ~ん.....甘いな!」
俺は甘いものが苦手なんだ!別の甘さは好きだけど.....

ちなみにクレープと言ったらお決まりのお約束があるよな?

ほっぺについたクリームを彼女がペロッと嘗めるシーン!
それを期待しながらクリームをほっぺにつけてみた

{お師匠様.....}

果たしてエステルの反応は如何に!?

{ほっぺにクリームがついてるのじゃ。だらしがないのじゃ}

そう言って、持っていたハンカチで拭き取られてしまった

「・・・」
{ど、どうしたのじゃ!?}

俺が急に膝から崩れ落ちたことに慌てるエステル

「エステルはなにも分かってない!そこはハンカチで拭き取るんじゃなくて、エステルがペロッと嘗めてくれる場面だろ!!甘いのはなにもクレープだけじゃない!俺達だって甘くなれる!俺はいちゃいちゃしたいんだ!はい、やり直し!」

そしてまたほっぺにクリームをつけた

{~~~}

エステルの顔がみるみる赤くなっていく
明らかに恥ずかしがっている。可愛い

エステルは意を決したのか爪先立ちになった。そして.....

────ぺろっ

エステルの可愛くも小さな舌が俺の頬をなでた

「お、おおおおお!?」
{~~~}

エステルは気恥ずかしいのか顔を背けている
そんなエステルはとても可愛らしい

しかし同時に分かったこともある

「これ、案外される方も恥ずかしいもんだな.....」
{今更じゃな!?}
いや、やっぱりお決まりはやっときたいもんじゃん?

その後もエステルはクレープを美味しそうに食べていた
余程気に入ったのかエステルは夢中でパクついていたのだが、たまに気付いたようにあ~んをしてくる姿に苦笑してしまった

{な、なんなのじゃ!?ニヤニヤしおって!}
「俺のことは気にしなくていいから食えよ(笑)」

そんなやり取りをしていれば当然お約束が発生するわけで.....

────ぺろっ

俺はエステルの頬についたクリームを嘗めることにした

{ひゃあ!?}

突然頬を嘗められたエステルは驚いた表情をしていた

「甘い!.....でもこれでおあいこな?それとももう一回する?」
{し、しないのじゃ!}

頭から煙りが出そうなぐらいに恥ずかしがっていた
そんなエステルがあまりにも可愛かったので、後ろからそっと抱きしめることにした

エステルの女の子特有の甘い香りが鼻をくすぐる
.....いや、クレープの香りも少し混じっているな?

「エステルは可愛いな~」
{食べづらいのじゃ!離すのじゃ!}
本当は嬉しいくせに素直じゃないな、エステルは!

素直じゃないエステルの気持ちを汲んであげることにしよう!

そう考えた俺はそのままエステルをぎゅっと抱きしめたままいちゃいちゃしまくまった

・・・。

そしてクレープを食べ終わったエステルにめちゃくちゃ怒られた

□□□□

城下町・本屋

クレープを食べ終わったエステルとともに城下町をぶらぶらしていた俺達はある本屋に入ることにした

ここは俺がイシスにいた時にお世話になった本屋だ
品揃えがいいのもあるのだが、なによりも.....

店員さんが美人で胸が大きい!

.....え?理由がくだらないって?そうだろうか?
ぶっちゃけた話、本屋なんかみんな同じだと思うんだ
じゃあ決めるポイントは何になるかと言えば、人、つまり店員さんになるんじゃなかろうか?
そう言う訳で贔屓にさせてもらっていた。特に童貞時代は!
実はそれ意外にも理由はあるのだが.....

中に入ると、今日もその店員さんは忙しそうに働いていた

 [いらっしゃっいませ~。あら?お久しぶりですね、英雄勇者様]
.....ごふっ!?ちょっ!?今、その話題はやばいから!

{英雄勇者?また新しい名がでてきたの。今度はどんな意味なのじゃ?}

先程ので味を占めたのか、興味津々なエステルは俺に尋ねてきた

.....だが断る!敢えてここはスルーさせてもらおう!

しかし現実は非常だ。更に店員さんの攻撃は続く.....

 [今日もいっぱい(本を)買っていってくださいね.....それともついに私を買われる誘う決心がつきましたか?]

そう言って、店員さんは悪戯めいた笑顔を向けてきた

ここを贔屓にしていた別の理由がこれだ
この店員さん、とてもノリがいいのだ。いい意味でも悪い意味でも

眼鏡がよく似合う文学少女?なのだが.....
文学少女は知的で寡黙的!という俺の中の文学少女のイメージを完全に破壊した人でもある

当時は来店する度にこんなふうに茶化されたものだから、童貞時代はいつもドキドキさせられた
正直サーシャがいなかったら誘惑に負けていたかもしれない.....

「悪いが、本は買わせてもらうが店員さんは買わないぞ」
 [あら、残念。私はいつでも構いませんからね?]
本気なんだか冗談なんだか。勘弁してくれ.....

────くいくいっ

その後もしばらく俺と店員さんは話の華を咲かせ続けた

────くいくいっ

「・・・」
 [・・・]

俺と店員さんは顔を見合わせ苦笑しあう

────くいくいっ

 [それではごゆっくりどうぞ~。あんまりデートの邪魔しちゃうと噛み付かれそうですしね~]

店員さんはそう言い残して、手を振りながら仕事に戻っていった

────くいくいっ

さてと.....

「どうしたエステル?さっきから俺の袖を引っ張ったりして」

店員さんと話している間中ずっと、エステルに袖を引っ張られていたのは気付いていた
気付いていた上で敢えて気付いていないふりをしていた

{・・・}

エステルは俯いたまま黙っていた

「言いたいことがあるならハッキリと言え」
{.....今は妾とお師匠様のデートなのじゃろ?}
「その通りだ」
{.....だったら妾を一人で放っておくでないのじゃ}

エステルは俯いたまま袖を掴んでいる手の力を更にギュッと強めた

「寂しかった?」
{・・・}

言葉にはならなかったが、エステルはこくりっと頷いた

その姿を見た瞬間、背中がぞくぞくっとした。そして.....
あまりの可愛さにその場で抱きしめてしまった

(あ~たまらなく可愛い!普段のエステルは勝ち気だからな。たまにちょっと意地悪したくなる時があるんだよ。そしてその時に見せる寂しそうな顔がたまらなく愛おしい!可愛いよ、エステル、可愛いよ!)

「意地悪してごめんな?でも可愛かったよ」
{ぐぬぬ.....やっぱり気付いておったのじゃな!}
おっと!そんな大声だしたら店員さんに怒られるぞ?

今にも大声で怒りだしそうなエステルの口を塞ぐにはこれしかないよな?だから俺は.....

{なんで気付いてお・・・んむぅ!?}

そっと顔を近付け、その可愛らしい唇にキスをした

{んぅ・・・お師匠様はずるいのじゃ!いつもキスでごまかそうとするのじゃ!}

顔を離した途端、エステルに睨まれてしまった
怒っているエステルも可愛い

「ごまかしてないぞ?登山と一緒だ。なんで山を登るのかと問われれば、そこに山があるからだと答えるだろ?それと同じで、なんでキスするのかと問われれば、そこにエステルの可愛い唇があるからだと俺は答える!」

{意味が全然分からないのじゃ!?どういうことなのじゃ!?}
もう分かってないな~。怒るよりもいちゃいちゃしようってこと!

「つまり.....」
{つまり?}
「もう一回キスしよう!ってことだな」
{無茶苦茶な脈絡じゃな!?}
考えるな!感じろ!唇があったらキスしたくなるだろ!

勝ち気なエステルには多少強引なぐらいがちょうどいい
だからグイグイいかないとな!

「エステルはキスしたくない?」
{しかし.....ここ店内じゃぞ?}
「関係ないだろ。むしろ俺達の愛を見せつけてやれ」
{見せつけるって.....本当お師匠様は傲慢なのじゃ}
おっ!傲慢頂きました!やっと許可がおりたか

エステル曰く、俺は傲慢なぐらいがカッコイイらしい
つまりカッコイイと言われたも同然だな

「エステル・・・愛してる」
{お師匠様・・・愛してるのじゃ}

そして俺達は店内にも係わらず熱いキスを何度も交わした

一度火がつけばエステルも積極的になるものだ
店内には俺とエステルの桃色ワールドが展開されることになった

当然そんな状態になれば営業妨害もいいところで.....

 [ちょっと~?そう言うのは宿屋でしてくれる~?]

店員さんから注意されることになった

こんな状態でも店を叩き出されないのは、偏にお得意様であることと英雄勇者のあだ名が役に立っているからだろう
店員さんも他のお客さんも俺達を呆れた様子で見ていた

まぁエステルは完全にとばっちりだがな!

その後もエステルが魔導書を選び終わるまでひたすらいちゃいちゃしまくった(主に俺が)
その都度店員さんには注意され、他のお客さんには呆れた様子で見られることになった

{~~~}

本を購入し終えたエステルは駆け足で店を後にした

何度も言うが、エステルは完全にとばっちりだがな!

(う~ん.....ちょっとやりすぎたかな?そのうち女連れは入店禁止とかになりそうだ。まぁ滅多にこないし構わないか。エステルと存分にいちゃいちゃできたから大満足だ!)

こうして幸せな気分に包まれている俺も店を後にすることにした

結局本屋を出た後、エステルにめちゃくちゃ怒られることになった


□□□□ ~唯愛の賢妻に騎士の誓いを~ □□□□

城下町・神殿前 ~夕暮れ時~

本屋を出た俺達は出店をはしごしたり、公園でまったりしたりと楽しい時間を過ごした

そして時間は夕方
いよいよ楽しい時間も残り僅かだ

{今からどこに行くのじゃ?}
「内緒だ。楽しみにしていろ」
{分かったのじゃ。楽しみなのじゃ♪}

エステルはかなりはしゃいでいる
恋人繋ぎをした手がぶんぶんと振られている
そこまで上機嫌だと俺も楽しくなってくる

そして本日の最終目的地である神殿前に到着した

夏は恋の季節とはよくいったものだ
噴水前には今まで見たことがないぐらいのカップルで溢れていた

そこに映し出されるライトアップされた噴水.....
あまりに幻想的なその光景にカップルのみならず、エステルまでもが息をのんでその美しさに心を奪わていた
エステルと繋いでいる手に力が入ったのを感じた

貴族であるエステルの心をも奪う憎い演出に脱帽する思いだ

{お師匠様.....何度見てもきれいなものじゃな}

淡い光に映し出されたエステルの横顔はどこか魅惑的だった

「確かに。何度見てもこの幻想的な光景には心を奪われるよな」

以前はリアを含めた3人で見たんだっけか?
二人っきりで見るとまた違う印象を感じるな.....

{・・・}
「・・・」

しばらく二人で神秘的な世界を堪能する
でも繋がれた手はお互いがお互いを求めるよう握りあっていた

さてと、ここは言わないといけないよな?
ヘイネ達に言ってエステルに言わないのは平等じゃない
四度目だからな、大丈夫だ。問題ない。俺は出来る子だ

「確かに何度見ても幻想的だな。でも俺の中ではエステルのほうが断然美しい。ライトアップされた噴水よりもずっと魅惑的で、幻想的だ。俺の心はエステルに魅了されていて、エステル以外が灰色に見える。このライトアップされた噴水もエステルの美しさを際立たせる一つの道具に過ぎないくらいだ」

そう言って、エステルを抱き寄せた

ふぅ。久しぶりだからやけに緊張したな
キザなセリフを吐くというのも一種の才能なのかもな
さてエステルの反応は如何に?

{くふふ。耳まで真っ赤じゃぞ?お師匠様}
ひ、人の事言えないだろ!エステルも真っ赤じゃねぇか!

時間もあまりないし頃合いかな?
ここにきたのはもはや定番のあれをやる為だしな

「エステル。俺の世界の物語なんだが、こういう幻想的な場面で騎士がお姫様に騎士の誓いをする話があるんだ」

{騎士の誓い.....以前リアが言っていたやつじゃな?}
やはり、覚えていたか。あの時気にしてたもんな?

俺は、その通りだ、の意味を込めてエステルに頷いた

俺はエステルより少し前に出て振り返り向かい合う
向き合ったエステルの前で片膝を立ててしゃがみこみ、エステルの右手を手に取った

{お師匠様!?}
「聞いてほしい」

騎士は、エステル唯一無二のお姫様に誓うよ。エステルに『絶愛』の意志を込めて、エステル唯一無二のお姫様に誓う」

{ほほ~。これが騎士の誓い.....興味深いのじゃ!}
あ、あの。こんな時まで研究心を持ち出さなくても.....

騎士は、エステル唯一無二のお姫様騎士の誓い絶愛を捧げ、そっと右手の甲にキスをした

{手にキスをされるというのもこそばゆいものじゃな}
おや?意外とお気に召しているのか?

「そして受け取って欲しい。エステルは眼鏡が似合うと思うんだ。よかったら身につけて欲しい。リボンと色を合わせた自信作だ。大切にして欲しい」

そしてキスした右手の甲をくるっと翻し、手の平に一つの眼鏡を渡した

マジックブリレ 『絶愛のザマス眼鏡』

「その眼鏡には俺の願望.....じゃなくて、愛情をこれでもか!ってぐらいに詰め込んでるんだ。エステルにはきっと眼鏡が似合うはずだ。それもザマス眼鏡。元来高飛車な.....じゃなくて、できる女はザマス眼鏡をつけていることが多い。そしてエステルは普段から白衣を愛用してくれているだろ?白衣にザマス眼鏡とか絶対似合うから!ぜひつけてほしい!それに安心してくれ!単なる伊達眼鏡だから単なるオシャレアイテムだ」

{所々、本音が漏れておったんじゃが!?}
ご、ごほん。な、なんのことかな?

これで騎士の誓いは捧げ終わった
なんだかんだ言いながらも、エステルは喜んでくれているみたいだ

早速ザマス眼鏡を装着してくれているのが喜んでいる証だろう
ライトアップされたエステルの笑顔はどこまでも美しい

俺の願望まみれだが創ってよかったと心から思えた


.....いよいよ勝負の時だ!


□□□□ ~永遠の誓いと小さな独占欲~ □□□□

エステルに騎士の誓いを捧げた俺はかなり満足していた
.....だからこそ今ここでエステルを完全に俺のものにしたかった

それこそが最高の誕生日プレゼントになるからだ!

だから今ここで覚悟を決めようと思う

「エステル。もう一つ誓いを捧げたい」
{もう一つの誓い?}

ザマス眼鏡をクイクイッとやって遊んでいたエステルが注目した

心臓がバクバクと悲鳴を上げている
二度目であっても緊張はするものだ
それでもエステルにこの想いを伝えたい!

覚悟を決めた俺は懐から一つの指輪ケースを取りだした

その箱を見た瞬間、エステルの体がビクッと反応した
どうやらこの後になにが起こるのかを理解したようだ
エステルの表情が先程までの嬉しそうな笑顔から、みるみる真剣なものになっていった

そして俺はその指輪の箱を開けながら永遠の誓いの言葉を綴った

「エステル。俺と結婚して欲しい。そして死が二人を分かつまでずっと側にいて欲しい。俺は案外寂しがり屋なんだ。エステルが側にいないことが耐えられない。だからどんな時でも一緒にいて欲しい。いつまでもバカな俺を側で支えて欲しい.....俺はわがままで傲慢だ。多分この先もエステルにたくさん迷惑をかけると思う。それでもこの先ずっとエステルと一緒にいたい。幸せにしてやるとは言わない。一緒に幸せになっていこう。俺とこの先もずっと一緒に人生を歩んでいってくれないか?もし一緒に歩んでくれるなら俺はエステルを全身全霊で愛すると『約束』する.....そしてエステルの気持ちを今、この場で聞かせてくれないか?」

俺は想いのたけ全てを綴った
そして同時にエステルの告白をも迫った

エステルが今日告白してくることはなんとなく察していた
そして決定的になったのはあかりからエステルをデートに誘うことをお願いされたことだ

だからこそ今勝負にでた
今がそのチャンスだからだ!

静かにエステルの言葉を待つ

・・・。

しばらく後、エステルがその重い口を開いた

{.....一つ確認したいのじゃ}

俺はエステルにこくりっと頷いた

{妾だけを愛することはできぬか?妾だけのお師匠様にはなれぬか?}
なるほど。エステルが悩んでいたのそれか。しかし.....

「.....悪いな。できないし、なれない。俺はヘイネやサーシャ、セリーヌやあかり、みんなの俺だ。誰か一人だけを選べないし、選ぶつもりもない。我儘なのも傲慢なのも理解している。それでも俺を愛してくれ。全てを受け入れた上で俺を愛してくれ」

俺はきっぱりと言い放った
それだけは絶対に譲れない条件だからだ

{やっぱりダメなのじゃな。いや、分かっていたのじゃ}
あれ?すんなり受け入れた?もっとこじれるかと思ったが.....

そこには憑き物何一つない晴れやかな表情のエステルがいた
まるで分かっていたことをあくまで確認しただけかのような

(あれ?これってこの後どうなるんだ?)

俺が意外な展開に錯乱している中、エステルは語り出した

{お師匠様。今更じゃが、妾もお師匠様が大好きなのじゃ!お師匠様とこれからもずっと一緒にいたいのじゃ!妾はお師匠様のことが誰よりも大好きなのじゃ!愛しているのじゃ!だから.....妾をお師匠様のものにしてほしいのじゃ!.....じゃがその前にお願いがあるのじゃ}

そう言って、エステルが俺に差し出してきたのは二対の首輪だった
エステルらしい過度な飾りのない赤と青のシンプルな首輪

(あれ?これって?どこかで.....)

「エステル。これってまさか.....」
{隷属の首輪なのじゃ}

(あぁ、思い出した。あまりいいイメージなかったから記憶の片隅に追いやってたんだ。しかしなんでこのタイミングでこれを?しかも二つって.....まさかな?)

俺が戸惑っているのを確認したエステルは説明を続けた

{これは妾が創ったマジックアイテムじゃ。名前を『愛隷の首輪』というのじゃ。市井に流れている隷属の首輪とは違うもので、隷属の首輪の機能も全くないのじゃ。ただ.....}

「?」

余程言いにくいことなのかエステルは口を噤んでしまった

{・・・}
「・・・」

(エステルが言い出すのを待っていたいのはやまやまだが、あまり時間がないんだよな。リアを迎えに行かないといけないし。エステルには悪いが確認させてもらうか.....神眼!)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『愛隷の首輪』 ランク:不明
エステルが創造せしマジックアイテム
エステルとユウジの専用アイテム
エステルの固体保有魔素を取り入れた赤の首輪
ユウジの固体保有魔素を取り入れた青の首輪
一度装着すると死ぬまで外すことができない
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『固体保有魔素』
生物の体内に存在している魔力の源
血液に近いイメージのもの
人間や魔物といった大まかな魔素の源は共通
ただし個体それぞれが識別できるよう細部の魔素は異なる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(ふむ。エステルが口を噤んだ部分は死ぬまで外せないってところか?まさかの専用アイテムってのも驚いたが、なによりも固体保有魔素を使っていることには驚いた。固体保有魔素を使われているとなるとさすがの俺でも外すことは無理そうだな。てか、いつのまに俺の固体保有魔素を集めたんだ?とりあえず.....)

「いいぞ?」
{え?}
「だからつけてやってもいいぞ?それでエステルの気が済むなら」
{ほ、本当によいのか?これをつけてしまったらもう.....}

エステルはなおも躊躇っている
気持ちは分からなくもないのだが.....

(これってあれだろ?確か隷属の首輪って所有者であることを示すアイテムだったよな?つまり首輪をつけることで、お師匠様は妾のもの~ってことを言いたいだけなんだろ?変な機能もなくなっているし、つけても全く問題ないだろ。死ぬまで外せないって制限はあるが外すつもりもないしな。それにしても独占欲をこんな形で持ってくるとはな。エステルらしいというかなんとか言うか.....とても可愛らしい小さな独占欲だ)

とりあえずシリアス先輩がくる前に想いを伝えるか.....

「そういうシリアス展開はいらん。これをつければエステルは満足するし、俺のものになってくれるんだろ?だったらつける意外に選択肢はない!喜んでエステルのものになってやるよ!死ぬまで俺達はずっと一緒なんだからちょうどいいじゃないか!だからエステル頼む。首輪をつけてくれ」

エステルは目を丸くして驚いていた

いやいや、あなたが望んで創ったものですよね?
あっさり承諾したことに驚くのはわかるけどさ?

{.....お師匠様ありがとうなのじゃ!}
目に涙を浮かべ嬉しそうに喜ぶエステル

俺はそんなエステルがあまりにも可愛くて愛情たっぷりのなでなでをしながら首輪をつけてもらった

ちなみに、かなり痛かったです.....

「これ、外す外せないとか言う次元のレベルじゃないよね?体に同化したんだが!?」
{・・・}

そう、エステルから貰った愛隷の首輪をつけてもらった瞬間、首の皮膚と同化をし出した

(なるほど。死ぬまで外せないとは言い得て妙だ!)

すごい魔技師の誕生を見た瞬間だった

とりあえずこれで万事解決だ!
だったら最後は俺らしく決めないとな!


「エステル。改めて俺のものになれ!」
{なのじゃ!}

エステルのまぶしい笑顔がようやく俺の手の中に!
愛しい愛しい唯愛の賢妻をついに手に入れた!


こうして俺とエステルのエステル攻略戦は幕を閉じた

お互いがお互いのものになるという証である首輪をつけて.....

ユウジは青の愛隷の首輪を
エステルは赤の愛隷の首輪を

生涯外れることのない愛の絆を二人一緒に....


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