過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~再開と気付き~

「「ええええええぇぇぇぇぇぇぇ」」

神界にある空間にお互いの叫びが木霊した。

『どうしました、ヘイネ?なにか問題でも?』

「いえ、アウラ様。大変失礼致しました。なんでもございません。」

『?・・・なら構いませんが、しっかりして下さいね』

アウラ様に謝罪している、ヘイネ様。

俺はじ~っと、目の前にいるヘイネ様を観察する。 

(あのヘイネ様・・・だよな?同名の別人?神様でそんなことあるのか?でもここはアウラ様の管轄世界。ヘイネ様も自分の管轄世界を持っていたし、上位神なんだよな。ならこんなとこにはいないはず・・・)

俺はただひたすら目の前にいる、ヘイネ様のようなヘイネ様じゃない?人物を観察していた。

じ~っ・・・
じ~っ・・・・・・
じ~っ・・・・・・・・・

(で、でかい・・・。白鷺と同じかそれ以上か?アイツには劣るが・・・)

観察していたのは顔ではない。山脈だった。
いや、顔も美しいよ?でも山があったら登るだろ?男のロマンだしな!

(小さいのも好きです!でも大きいのはもっと好きです!)

一瞬背中に悪寒を感じた。
俺はこの感覚を知っている。
振り返るといつもアイツは笑顔だった。でも目の光は消え、漆黒の瞳には生気を感じない・・・ただひたすら恐怖だった。
頬に一筋の汗が伝う。
覚悟を決めろ!悲しませた俺が悪いんだ!

覚悟を決めて、目を閉じて後ろを振り返る。
(ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。)

どれだけ時間がたっただろうか、いや、大して時間はたっていないのかもしれない。
そっと目を開いた先には真っ白な空間が広がっていた。

(そうか、ここは神界なんだよな。まだアイツらとは逢えていないんだった・・・。安心はしたけど、なんか寂しいな・・・。調子に乗りすぎた!シャキッとしますか!)

「それでヘイネ様?これはどういうことです?」

「・・・もう!わかっててそれ聞く?」

豊饒と子宝を司る女神ヘイネ
かつて雄司がお世話になった、元上位神だ

「いや、詳しい事情は知りませんよ。ただヘマをして下位神?になったのかな、と思っています。アウラ様が部下と言っていましたし。」

「さすがだね、元勇者様。ちょっと、いや、かなり?エッチだけどさ」

(ふふふ・・・)
雄司は額に青筋を浮かべ、元上位神ヘイネ様の両頬を引っ張ったり、ぐりぐりしたり、こねくりまわす。

「ふぉへぇんふぁさい、いふぁい、いふぁい」
涙を浮かべ謝る元上位神?ヘイネ様

「それで?何やらかしたんですか?」
(ヘイネ様の肌、しっとりすべすべでスゲー緊張したわ!ドキドキした・・・)

「う~。あのね、ユウジさん?いちお私も元ではあるけど、上位神だったんだから心は読めるよ?」
ジト目でユウジを睨めつける。

「ちょっ!マジ!?それずるくないです!?」
あまりの恥ずかしさに顔が真っ赤になっていくのがわかる。ヘイネを直視できず、思わず顔を背けた。

「ふふ、照れちゃって可愛いいんだから。・・・ありがとう。でも嘘じゃないんだよね?」
自分でもよくわからない感情が心に溢れてきたのを感じたヘイネは、先程のユウジの心の本質を確認したくなってたまらなかった。

(あぁ、ユウジさんは落ちこぼれた私にも以前と変わらない態度で接してくれてる。でも落ちこぼれた内容を知ったら、周りの神同様邪険にするのかな・・・。知られたくないな・・・)

「・・・。心を読めるってことは本質を覗けるってことじゃないんですか?」

「うぅん、そうとは限らないよ。大概は本質だけど、あくまでそれは無意識化でのこと。無意識の内にあるときは本質に限りなく近いってだけ」

「つまり、意識したり、されたら、それは本質でなくなると?」
(なるほど。でも、そういうものか?意識したら本質じゃないって、暴論では?告白とかは意識して初めて本質になるのでは?)

「今ユウジさんが考えた通り、意識したら本質じゃないってのは暴論だと思う。告白はとてもいい例だと思うんだ。」

「ちょっ!なんか違和感半端ないんですが・・・。会話しなくても会話が成立する感じで」
雄二は思わず、アウラ様とのやりとりを思いだし苦笑する。

「ふふ、便利でしょ?」
ヘイネもまた釣られて苦笑する

「確かに便利といえば便利ですよね。見張りや商売、交渉なんかの時には特に。・・・でも今は違います。できることならヘイネ様と『会話』をしたいと思っています。それ心読ってスキルですか?切ることできません?」
雄二は確信はないが自信はあった。心を読む力はきっとスキルであると。

「・・・よくわかったね。スキルだって。もちろん切ることもできるよ。参考までにどうしてスキルだと思ったか教えてくれる?」

「確信はないんですよ、勘ではありますがそれでも自信はあります。」
雄司はそう言ってにっこりと微笑む。
幼さは残りつつも、それでも自信に満ちた笑顔だ。

(あぁ、以前もこんな感じで笑っていたかも・・・)
ヘイネは懐かしさを感じながらもそれとは違う別の感情に胸を締め付けられていた。それでもまっすぐユウジを見つめて。

「まず心読ってスキルがどうやって取得できるかどうかです。神様達が生誕されて取得できるなら上下の差なく取得できるはずです。でも最低位の使徒や恐らく下位神には無いように思われます。根拠はありません。では、上位神が生誕されて取得できるかどうかという点ですが、恐らくこれもかなり確率が低いかほぼ無いでしょう。これはアウラ様が神様達には昇進や降格があると言っていたことなのでかなり自信があります。上位神は生誕されないか、かなり確率は低い。そして上位神にはある程度数が決められている。これはヘイネ様を見ていればわかります。ヘイネ様はおっちょこちょいですが、きちんと仕事はされる方です、おっちょこちょいですが。では心読はどうやって得られるのか・・・。アウラ様は言ってはいませんが、上位神の上がいるんじゃないですか?仮に最高神としましょうか。この存在はかなりの確率でいると思っています。・・・いや、いるんでしょうね。居なくては上位神の暴走を抑えることができません。そして最高神が上位神に与えているとしたら、それはスキル以外の何物でもないでしょう。加護もスキルの1つですからね。神様だけの特別な力だ、と言えないような気もします。ただ最高神がいても下位神や使徒は最高神の存在を知らないし、何らかの事情で会うこともできないんでしょう。だから心読は使えないって感じですかね?まぁ全部推察ですが」

ヘイネは大きく目を見開いていた。
驚きを禁じ得ない。
ユウジの仮説はほぼ正しいからだ。
細かい部分に誤りはあれど、そんなことは些細なことだ。

(正直ここまでとは・・・。私はどこか彼をまだまだ子供扱いしていました。もぅこんなに頼りになる顔をできるようになったんですね・・・あの子たちがうらやましい)
ヘイネは以前自分が管理していた世界で、ユウジに心を寄せる2人の女の子のことを思い浮かべる。
それと同時に心がチクりと傷むのを感じた。

(この心がちくちくする痛みはなんだろう?とても切なくて、とても辛い・・・。うぅん、きっと私はもうわかってる、この痛みの正体を・・・。でもきっと解決はできないものだから・・・)

「・・・ネ様?」
「ヘ・ネ・・!」
「ヘイネ様!?」

肩を揺さぶられて、ハッと意識を戻したヘイネは、ユウジの顔があまりにも近いことに気付き狼狽して、そして自身の体全体が赤く熱を上げるのを感じた。

「大丈夫ですか?どこかお加減悪いとかですか?」
とても心配そうに顔を覗き込むユウジ

「え、えぇ・・・だ、大丈夫です。ごごご心配をおかけしましゅた」

「なんで敬語!?しかも噛んだ!?ヘイネ様そんなキャラだっけ!?!?」
(なんだ?ヘイネ様のギャップが非常に萌えるんだが!?ハッ!しまった・・・もう遅いよな・・・)

チラリとヘイネ様をみやる。
ヘイネ様は茹でだこのようになっていた。

(頭からシュ~って煙があがってるぞ。初めて見た・・・。てか、こんな状態なら心読無理なんじゃね?試してみるか?いや、でも神様だしなぁ。それなら・・・)

「ヘイネ様~。大丈夫ですか~?お~い」
ヘイネ様の顔の前で手の平を何回もひらひらさせてみるが全くの無反応だ。まるでしかば○のようだ。

(よし、大丈夫そうだな。にしても大きいよなぁ、アウラ様ほど美人ではないが、あそこまで美人だと緊張しちゃうんだよな・・・ヘタレ上に!その点ヘイネ様は落ち着く。アウラ様よりもヘイネ様のほうがいいなぁ~。アウラ様が王女だとしたら、ヘイネ様は貴族、いや俺は貴族嫌いだから、帝国の姫かな?あれ?変わんなくね?でも美人プラス大山脈だしな!・・・ちょっ、ちょっと触ってみても平気かな?いやいやさすがに恐れ多いよな。美人は眺めてるだけでもいいもんだ、眼福♪眼福♪)
雄二は満足していた。
その視線の先は大山脈であったが。

「・・・アウラ様より私がいいって本当?」

「はい!」
恥ずかしさを臆面も出さずに、満面な笑顔を返す雄二。

(なるほど・・・。私が聞いているとわかった上での心話か。意識した心話・・・本質じゃないのかもしれない。でもなんとなく本質のような気がする。うれしい!今私にできること・・・それは!)
いつかユウジに見せた心からの笑顔であった。

(やっと笑ってくれた。ヘイネ様には笑顔が似合う!聞かれているかもしれませんが、俺はその笑顔が好きなんです!)
雄司も精一杯の笑顔で返す。

「ヘイネ様。いつか話せるときがきたら話して下さい。ヘイネ様のおっちょこちょいな話を」

「うん!いつか笑って話せる時がきたときにね!」



『ヘイネ~まだ~?仕事遅すぎない?』

遠くからアウラ様の催促の声が聞こえ、俺とヘイネ様は顔を見合わせ共に苦笑した。
それでもヘイネ様の笑顔は美しいと思ってしまった。

コメント

  • 白華

    絶対そんな長文で説明するような奴いない、もう少し短くかけクソ

    0
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