過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~最愛のデートと果たされた約束~

邪竜王フリ?なんとかさんを倒してから、9日がたった。ついに明日最愛の人に逢える。心が落ち着かない
でも同じ過ちは犯さないぞ!サーシャたちを悲しませたらいけない。あの日のことは鮮明に覚えてる。だから話さないとな、明日の事を。

「サーシャ、大切な話がある。明日なんだが、大事な用があるから休みにしようと思う。サーシャも羽を伸ばして貰っていい。ただ、そうだな、夕方ぐらいには時間を空けておいてもらえると助かる。そこで大切な話・・・違うな。これだと誤解する場合があるか。大切な人をサーシャに引き合わせたい」

俺は真剣な眼差しでサーシャを見つめ、サーシャの手をほんの少し強く握った

{それは以前お話があった人ですか?確か異世界の方とお聞きしましたが。}
サーシャも茶かさず真剣に聞いてくれている

「あぁ、俺の最愛の女神が明日降臨する。どういう仕組みかはまだ話せないが、20日に1回しか逢えないんだ。だから俺はデートをしたい。多分向こうもサーシャに逢いたいだろうから、夕方ぐらいに時間を取りたいんだ」  
ちゃんとこういうのは伝えておかないとな・・・
偶然ばったりなんてお約束は省きたい

{わかりました。ではお待ちしていますね}

「サーシャ。・・・ついて来ないでね?」 
釘指さないとな!出羽亀メイド多すぎるしな!

{え?なんで!?}
サーシャ、お前もか!やめてください、お願いします!
しっかりおなっでなでのふっにふにすえました  


□□□□

翌日
王都近郊の雑木林

俺はここでヘイネを待っていた
いちお陰陽スキルで出羽亀対策はバッチリだ
しばらく待つと一瞬まばゆいばかりの光が放たれ目が眩んだ
視力がだんだん回復していき、光の場所を見ると待ち焦がれた最愛の人ヘイネが微笑んで立っていた。

(あぁ、美しい。その笑顔をどれだけ待ち望んだことか。その笑顔に俺は癒され、惚れたんだ・・・)

『ありがとう。ユウジ。待たせてごめんね?』

「ヘイネさん!?心読まないでくれます!?てか下界でも使えるのかよ!」

いつか神界でもあった懐かしいやりとりに二人は笑いあった

「ヘイネ、逢いたかった。まだ迎えに行けなくてごめん」
ヘイネを愛おしむように抱き寄せた、甘い香りが漂う

『うぅん、気にしないで。ずっと待ってるから。私も逢いたかったよ、ユウジ!』
ヘイネも同じ気持ちでいてくれたのが凄く嬉しい

二人は雑木林の中、ひとしきり熱い抱擁を交わし、自然と唇を合わせた
恥ずかしがったヘイネは久しぶりだ
凄くかわいく見えた、いつまでも初なヘイネが愛しい
だから強く抱きしめた

『ユウジ、逞しくなったね。それに顔つきも凄く精悍になってるよ!』
頬をちょんちょんとつついてくる、ちょっと気持ちいいです

「毎日鍛練してるしなぁ。強くなってないと迎えにいけないもんな。ヘイネには感謝してるよ。目覚まし時計と抱き枕にはかなり癒されてる、あともふもふ」 
もふもさは忘れちゃいけないよな!もふもさ最高!

『ありがと。最近はよく私を選んでくれてて、すごい嬉しいんだよ?』
本当に嬉しそうだ、よかった。・・・じゃない!なんで知ってんの?

「え?な、なんで知ってるの?」 
なんだろう?本当にわかる何かがあるのだろうか?

『ふふ、だってあれ、私が話してるんだよ?気付かなかった?いくら私でも具現魔法はともかく毎回違うシチュエーションはできないよ?多分』

多分って言いました?できそうなの?
てか、毎回会話してたのかよ!どんな時計だ!?
会話と追体験出来ちゃう時計とかスペック高すぎだろ!
でも確かに高性能だったけど、会話できてたと納得はする。・・・あれ?じゃあ妹と同級生は?

「妹と同級生はどうやって?結構なりきってたような?」
そう、ぶっつけでできるようレベルじゃなかった
怖い、開けてはいけないパンドラの箱のように

『えっとね、ユウジの部屋にあった雑誌を参考にしてるんだよ。妹好きお兄ちゃん設定とか、同級生は幼なじみ設定とかはユウジの雑誌からだよ。好きなんでしょ?』

確かに好きです
ヘイネは忠実に再現していてくれたんだ
ありがとうございます!
でもとても恥ずかしいから、性癖暴露しないでください!
ヘイネさんピュアすぎます、女神だけに?やかましいわ!

「そ、そうか。でも毎日ヘイネと会話できるのは嬉しいな。神道具をありがとな?」
そういってヘイネの頭をなでる、しっとりさらさらだ 

『うん!私ももっと勉強するね!』
しなくていいです、ごめんなさい!

「それじゃあ、デートに行こうか」

『ねぇ、ユウジ。腕組んでもいい?』
可愛く上目遣いでお願いされたら断れません
断るつもりもないけど、てか断るはずがない!
ヘイネのお願いならなんでも聞いちゃう自信が俺にはある!

「もちろん、おいで」
『えへへっ。ここ私の場所ね?』
・・・ぐはっ!かわいすぎる
いつか見たほんのちょっぴりの独占欲に俺は完全に心を射抜かれた

「かわいすぎるヘイネにごほうびな」
愛しい、愛しい、俺のヘイネ

軽くキスをした


□□□□

王都城下町

今日も盛況なようだ 
静かすぎもせず、うるさくもない感じだ
俺達は会話をしながらぶらぶら歩いていた
クレープ風な出店の前でヘイネは聞いてきた

『これがクレープってやつ?』
あぁ、そうか。知ってはいても食べたことはないのか

「に近いかな?見た目はまんまだが。どれがいい?」  
食べる?なんて不粋なことは言わない、買うのは前提だ

『じゃあチョコがいい!クリーム増し増しで!』
え?常連さん?頼み方すでに極まってるよね?

『ねぇ、ユウジ。もう一つ頼んでいい?』
「おぅ、構わないぞ。好きなの頼め。」
デザートは別腹ってやつ?クレープぐらいなら平気だろ

『はい、ユウジ。あ~ん』
「あれ?食べないのか?」
あっ、でも、あ~んは頂きました。逃すわけがない

『はんぶんこずつ食べよ?』
「気にしないで食べてもいいんだぞ」
はんぶんこって言い方、かわいいな・・・

『私がユウジと一緒に食べたいんだよ?ダメ?』
上目遣いは反則です!
「ありがとう、ヘイネ。頂くよ。はんぶんこな」
『えっと、上のほうが多いんだったよね?』
「それ、鯛焼きね!?和洋折衷!?」

ヘイネはおいしそうにクレープを食べていた
女の子はやっぱり甘いもの好きなんだろうな、神様でも
ほっぺにクリームが着くお約束の展開は俺にではなく、ヘイネにきたので俺がテンプレを踏襲してやろうとクリームを抄くったら、まさかのヘイネが指パクっをしてきた。ちょっとドキドキしたのとヘイネの口の中が温かったのが気持ちよかった

『ん、おいし♪』
ヘイネは満面な笑顔だったが、俺は鼻血が出そうだった
ヘイネはこんなに可愛かったのか?
昔の俺はよく自制できたな?聖人か、俺は!?
かわいいな~と眺めながら、食べ終わるのを待った

□□□□

服飾店

その後もぶらぶら歩きながら、出店でかい摘まんでいた

「どこか行ってみたい店ある?」
『服見てみたいかも。ほら神っていつもこれだから』

女神様は確かにいつも白いワンピースだった
ヘイネもアウラ様も

「あぁ、なるほど。俺もかわいいヘイネを見たいな」
『これじゃ可愛いくない?』

不安そうな上目遣いで見つめてくる
でも俺はわかっているぞ、この展開!これ演技だろ!
俺が慌てる様を見てからかうつもりだ
ナメるな!テンプレは踏まん!

「可愛くない。だからかわいい服を着て可愛くなってくれ。それって他の女神様も一緒なんだろ?俺は無個性なヘイネより個性的な俺だけのヘイネを見てみたい」
『ユウジがそういうならうんっと可愛くなってあげるね。もっと私を好きにさせちゃうよ?覚悟してね?』

今でも十分好きなんだけどなぁ。これ以上あるのか?って感じで

服飾店に入ったヘイネはお店内にある服を片っ端から自分に当てて、これがいいかな~あれもいいな~、なんて言いながら選んでいた
たまにヘイネから感想を求められていたが、俺にはヘイネならこれ!って基準があったのでしっかり伝えていた
すると気に入ったのだろうか、3着の服を手にして、こちらにやってきた

あれだろ?どれがいい?的なやつ
全部俺好みだし、ヘイネに似合う

『ねぇ、ユウジ。どれが一番似合う?』
やっぱりか、なら俺の答えは決まっている

「すいません、これ全部ください。あとこれとこれもお願いします」

ヘイネは驚いていた
テンプレで悩む必要はない
選んできたのだからどの服にも気になるポイントが必ずあるはずだ。金がないなら仕方ないが、俺にはある。だから全部だ!
ヘイネが驚くのはわかっていたので、驚いてる隙をついて、メイド服とキャミソールもどさくさ紛れに購入しました。

いや、ヘイネのメイド服見たいじゃん?さすがにサーシャのを着せるわけにはいかないしな。・・・あれ?それもいいな。

服3着は金貨12枚だった。1着金貨4枚か。高いのか?相変わらずよくわからん。
あれ?サーシャの時は金貨2枚だったような?なんでそんなに違うの?
ヘイネが着替えてる間に店員に尋ねたら、生地が違うらしい
サーシャは遠慮していたみたいだ、ちょっとショック。
俺は服に興味ないからなぁ、後でまたサーシャと買いにくるかぁ~と考えていたら、ヘイネが出てきた

美しい・・・ただその一言。店員すらも心を奪われていた
ヘイネは女神だ。地上の美とはもともと比べようがないぐらい美しい。それがこうまで変わるとは・・・

ウェーブロングヘアで金髪碧眼のヘイネはもともと女神服でも抜群に似合っていた。
それが今は白を基調とした水色を彩るフリルのワンピースは、上品でどこか儚げな印象を与える。
日傘を差し海岸線を歩いているのが頭に浮かびそうだ
普段の快活で少し子供っぽいヘイネとのギャップに萌えた

『どうかな?ユウジ』
「・・・」
『ユウジ?』
「・・・あぁ、ごめん。完全に見惚れてた。美しすぎる。どこかのお嬢様、いや、まさしく女神だ」
『女神だよ?変なユウジ』
ヘイネはくすくすっと笑っていた

(違うんだよなぁ。職業女神ではなく、その美貌がまさしく女神だってことなのに。犯罪的な美しさだよなぁ)

『ありがと、ユウジ。そんなにき、綺麗かな、私?』
ちょっと嬉し恥ずかしそうにしているヘイネはすごく可愛い

「とても綺麗だ。飾っておきたい。お人形みたいだ」
『飾るぐらいなら、いつまでも一緒にいて愛でてほしいな』
「もちろん、ずっと一緒だ」

嬉しそうに腕を組んでくるヘイネの頭をなでなでした
ヘイネの髪はふわっふわでシャンプー?の香りがした
ずっと撫でていたい髪だなぁと思っていたら、ヘイネの碧眼が潤み蕩けていたので、これ以上はまずいと判断し、店をでた

「そういえば、荷物はどうするんだ?異空間ボックスは俺にくれたわけだし。預かろうか?」
『大丈夫だよ、ユウジ。また作ったから』
へ?作った?そんなに簡単に作れるの?

「は?作った??作れるもんなの?」
『簡単には作れないよ?こうちょちょいと?』

「ちょちょいと?じゃねぇ!ヘイネどんだけ規格外なんだよ!?目覚ましとかの前例もあるし」
『ふっふ~。私を誰だと思ってるの?』
ドヤ顔だ、それはもう綺麗なドヤ顔だった

「俺の嫁だろ?決まってるじゃん」
『そうそう。ユウジの嫁・・・ふえぇ?お嫁さん!?』
恥ずかしがってる、恥ずかしがってる

「ダメだぞ?嫁以外は認めない、逃がさない。そう言ったろ?もうヘイネはヘイネだけのものじゃないんだから」
『それはそうだけど・・・私が言いたかったのは女神だよ!ってこと。もう、バカユウジ!それにいきなりは恥ずかしいよぉ』
「ごめん、ごめん。悪かったよ、許してくれるだろ?」
『じゃあ強く抱きしめて?そしたら許してあげる!』

俺はヘイネを強く抱きしめた
『・・・ユウジ、愛してる』
「俺も愛してる、ヘイネ」
見つめあう二人はそのままキスをした
ヘイネのキスは甘かったです。雰囲気にも、現実的にも

□□□□

冒険者ギルド

桃色空間全開な俺達はデートを再開した
俺はヘイネに甘え、ヘイネも恥ずかしがりながも甘えてきた

『ねぇ、ユウジ。さっきのお店もそうだったけど羽振りいいんだね。お金どうしてるの?私も持って来たんだよ?』
「ヘイネは出さなくていいよ、俺がヘイネのために出したいんだからさ。気になるなら笑顔でいてくれ、それだけでいい。金は冒険者だな。魔物を倒して素材を売ってる。ほら、そこがギルドだよ」
まぁ俺は大死滅圧してるだけで、何もしてないがな!

『へぇ~。お金稼ぎながら強くなってるんだぁ~。面白そうだね、私にもなれるかな!?』
「へ?興味あるの?なれるだろうけど、偽造大丈夫か?バレたらまずいだろ?」
冒険者ヘイネ、いいな!いい!

『私を誰だと思ってるの?』
「え?だから俺の嫁だろ?」
『そうだけど、め・が・み!意地悪ユウジ!でもバレても大丈夫だよ?洗脳操作するから。まぁバレないけどね』
「今なんて言った?洗脳操作?ねぇ?俺のヘイネへの愛は本物だよね?操作されてないよね!?」
『確かめてみる?・・・ん!』
妖艶な笑みをしたヘイネはキスしてきた
「本物でした。とても気持ちよかったです」
『よろしい!なんちゃって笑』
かわいい、かわいすぎるな!抱きしめちゃいました

ギルドに入り、受付のお姉さんリアさんに挨拶をする
俺は素材を度々換金しにくるうちに仲良くなった

「こんにちは、リアさん。今日もお仕事に精を出されてますね、ご苦労様です」
{こんにちは、ユウジさんもお疲れ様です。今日も換金ですか?それにそちらのうつくし・・・てっ!なんなんです!?見たこともないぐらいすごい美人なんですが!え?え?}
「そうでしょう?俺の新しい仲間です」
『どうも始めまして。ユウジの『嫁』のヘイネです』

ちょっと、ちょっと、ヘイネさん?
普段は恥ずかしがるくせになんで強調したの?
親しく話してたからやきもち妬いちゃったの?

{え?嫁?ユウジさんのお嫁さん?あれ?でもこの前別の女性といっしょ・・・は!ご、ごめんなさい!ユウジさん!}
「はぁ~。なにを勘違いしたかなんとなくわかりますが、サーシャもいちお俺の嫁ですよ、まだヘイネたちとは結婚はしてませんが。」
『ユウジ!『いちお』じゃないでしょ?サーシャちゃんがかわいそうだよ?』
「! そうだったな。反省するよ」
{ユウジさんのお嫁さんが二人・・・}
「まぁ今のところはそうですね。ところでリアさん、ヘイネの登録してもらっていいですか?」
{へ?登録?あぁ、冒険者のですね?わかりました。説明はユウジさんから・・・ってユウジさん聞いてませんでしたもんね?}
ジト目だ。興味なかったし?リアさんから視線を逸らした

『大丈夫ですよ。リアさん?でしたっけ?手を出してもらえますか?』
{はぁ?これでいいですか?}

リアさんはわけがわからないと首を傾げた
俺も意味がわからない。不安だ。なにをするつもりだ?
手を握り握手したヘイネはリアさんに微笑みかけた
微笑れたリアさんは少し赤くなっていた、気持ちはわかる
でもヘイネの笑顔は俺だけのものだ、後でヘイネに注意しとこう

ありがとうございます、リアさん。わかりましたので説明はなさらなくて結構ですよ。』
{は?え?今ののですか?}
『はい、リアさんの記憶を覗かせて頂きましたから』

ちょっと、ちょっと、ちょっと!?ヘイネさん、なにしてるの?それって神の力だよね?なにさりげなく使ってるの?てか、心読もそうだが神の力使えるのかよ!

{はぁ?まぁユウジさんのお嫁さんですし、問題ないかな?}
「どういうこと!?」
『{そういうことだよ(です)}!』

え~なんでハモったの~?
どんな目で見られてるんだよ、俺

ヘイネの登録も終わり、冒険者ギルドをあとにした
ヘイネは冒険者の身分を示す、冒険者プレートを嬉しそうに眺めていた
はしゃいでるヘイネは凄くかわいかったが、俺はあることを注意した

「ヘイネ、俺以外に笑顔とかあまりしないでくれ。ヘイネはあまり独占欲はないみたいだが、俺は違う。ヘイネの全部を俺だけのモノにしたい。ヘイネの笑顔も、体も、心も全部だ。ほかのやつにそれらがいくことは許せないんだ」
『ふふ、ユウジは我が儘で、欲張りさんだね』
「あぁ、俺は我が儘で欲張りなんだ、それとスケベでもあるな。こんな俺は嫌いか?」
『嫌いじゃない、愛してる。わかったよ、ユウジ。『約束』してあげる』

二人はキスをして、新しい『約束』を交わした

ヘイネとの『約束』
ヘイネの全ては生涯ユウジに捧げるものとする

□□□□

定食屋

新しい『約束』を交わした二人は桃色空間にいたが、ヘイネのお腹の虫によって現実に戻される
台なしである、でもなんかヘイネらしくもある

「俺も「小腹」が空いたから、なにか食べるか。「小腹」だけどな?笑」
『もう!バカにして!ユウジがお腹空いてないなら別に食べなくてもいいよ?いいんだからね!』
「あはは、ごめん、ごめん。お腹空いたからヘイネとタベタイナー笑」
『むぅ、なんかまだ納得いかないけど、せっかくだし一緒に食べてあげる!ほら、早く!』

腕を引っ張って嬉しそうな顔をするヘイネはかわいい
ヘイネとのこんな軽口をつける間柄に、ユウジは癒しと愛しさを感じている
サーシャの献身的な癒しと愛しさとは違う、温かさである
ヘイネにはヘイネの、サーシャにはサーシャの、温かさを改めて感じた

定食屋に入り、俺はパスタ風なものを、ヘイネは唐揚げ風な定食を頼んだ
普通逆じゃね?と思ったが、実際店員さんも逆に配膳した
俺の所に唐揚げを、ヘイネにはパスタを。

ヘイネの乙女心の体裁を保つ為黙っていたが、ヘイネはようやく異常なことなのだと理解したようだ
真っ赤になって俯いてぷるぷる小刻みに震えているのを見て、俺は我慢できずに吹いてしまった
ヘイネは怒ったが、とても可愛かった

俺達は時折会話を挟みつつ食事を楽しんだ
ヘイネは唐揚げ風なやつを気に入ったのか、おいしいおいしい言うので、一つ強奪してみた。それはもう烈火の如くお怒りになられました
俺のパスタ風なやつにフォークを突き刺し、おもいっきりぐるぐる掻き混ぜていた。でもあまりにデカくなってしまって食べづらくなったパスタにヘイネは困惑していた
あ~そういう人いるよね~と苦笑しつつ、ヘイネに食べ方を教えてあげた
結局俺のパスタも半分あげ、よほどパスタが気に入ったのか別のパスタも注文していた、俺がね?だってヘイネ恥ずかしそうにしてたしさ

(にしてもよく食べるな~。暴食系ヒロインなのか?まぁ暴食って量じゃないか。でも幸せそうに食べるな。なんかこっちまで幸せになる。あぁ~幸せだな~。でも太らないかな?心配だ)

話を聞いてみると太らない体質らしい
というか、太っている神はいないらしい
え?それも神の力なの?なんでもありだな、神!
でもいつまでも最高な体のヘイネとかたまらん!
俺は料理よりヘイネが食べたい!
今日は絶対ヘイネを食べる、絶対にだ!
食べ終わるのを待つ間そんなことを考えていた

「おいしかったか?満足した?」
『うん、とっても!神界でも練習してみるね!』
あぁ、料理頑張るんだっけ、ヘイネの手料理楽しみだなぁ

『それでね、ユウジ?お願いがあるんだけど・・・あの、えっとね・・・その・・・』
手料理の件か?サーシャもお弁当を言い出した時恥ずかしそうにしてもんな

「おぅ!なんでもいってみろ。お願いきいてあげるから」
『ありがとう、ユウジ。それじゃあ・・・神界でも練習するんだけど、味の確認したいから唐揚げをお土産に買ってくれない?』
顔を真っ赤なりんごにして、上目遣いでお願いしてくるヘイネ

(お前それ!味の確認したいんじゃなくてただ食べたいだけだろ!ねぇ?俺のピュアなハート返して?)

「お、おぅ?べ、別に構わないぞ?どれぐらい欲しい?」
『ありがとう!ユウジ!数はね~、定食が5個だったからそれの10倍ぐらい?』
「ごごごご、ごしゅう!?」
『・・・やっぱり、ダメ?』

ヘイネは泣きそうだ、凄く悲しそうだ
そんな顔は見たくない!やるしかないだろ!

「ダメじゃない。ちょっと待ってろ?」
ヘイネの頭を撫でながら、俺は微笑んだ

店員を呼び、店長を呼んでもらった
ヘイネはなぜ店長?と小首を傾げていた

「わざわざお忙しいのにすいません。ちょっとお尋ねしたいんですが、このお店の1日の平均的な売上っていくらですか?」

ヘイネはますますわからないといった顔だ
店長からは金貨5枚との、単価が銀貨だから妥当か?繁盛してそうだしな

「じゃあ、金貨20枚出すので今日は閉店してください。それと今から従業員総出で、夜までに唐揚げを作れるだけ作ってください。余った金貨は頑張ってくれた従業員さんにボーナスでもあげてください。では先払いで金貨20枚です」

これにはヘイネを始め、店長や従業員、さらにはお客としてきていた人達も仰天していた
さらに見た目がいかにも小僧で冒険者風な若者が、大したことなくね?と軽々金貨20枚を出していたことにも仰天していた。もう用はないので、店を後にした

「ど、どうした?ヘイネ?」
店を出てからずっと見つめてくるヘイネ

『いいの?』
「だって「練習」するんだろ?期待してるよ?」

俺はわかっている、ヘイネは味の確認をしたいんじゃない
いや、少しはあるかもしれないが。。。
きっと食べたいのだ。でも言い出しにくいから事実を嘘で隠したのだ。だったら騙されたフリをして、想像を上回る数用意してあげるのが男ってもんだろ?わかるよな? 

『うん!美味しい唐揚げ作ってあげるね!』

うん、嬉しい。ヘイネの手料理なら満足だ
でもね?唐揚げ以外もお願いします!

俺は確信した。ヘイネは『暴食系ヒロイン』なのだと!

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後日、王都のあちこちで、唐揚げのために店を貸し切りにした勇者がいると噂が流れた
もちろんその噂はユウジにも届いた
人々はその勇者のことを後に『唐揚げ勇者』と呼んだらしい
その日傷心したユウジは、目覚ましを「ヘイネ」にしたことは想像に難くないだろう
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□□□□

川原

ヘイネが暴食系ヒロインだと衝撃の事実を知った俺は、ヘイネと一緒に川原にきていた
食休みというやつだ、俺のね?
ヘイネはきっと休ませる必要はないだろう、多分

「ちょっと休んで行こうか」
『そうだね。はい、膝どうぞ』

差も当たり前のように膝枕してもらった
停止世界ではこれが当たり前だったからだ
ヘイネが頭を撫でてくれている、気持ちいい

「まだこれからだけど、デートはどう?」
『幸せだよ。ずっと楽しみにしてたからね、それに甘えてくれるし。これが毎日だったらって思う。』
「必ず迎えにいって、毎日にしてみせるさ」
『うん、待ってる。だから必ず迎えにきてね』

ひとしきり膝枕を堪能した俺は今現在、子供達と楽しそうに遊んでいるヘイネを眺めている
膝枕してもらっていた時に、どこからか子犬がやってきて、ヘイネが触りたそうにしていたので膝枕をやめた
子犬というのは子供を集める愛くるしさがあるのだろう
わらわらといつのまにか集まっていた
最初ヘイネは集まり始めた子供達に困惑していたが、自然と子供の輪に溶け合っていた

なにかヘイネが魔法で作り始めた
不安だ、不安しかない
ヘイネが作りだしたのは地球でいうところのシャボン玉だ
子供たちは驚いていた、そりゃそうだろう
魔法使ってるのし、見たことないもの作り出したんだから

(ちょっと!またヘイネやらかしてるよ!この世界にシャボン玉ないから!なにさも当たり前のように作ってんの!?)
仕方ないなぁ~と思いつつ、でもヘイネならいいかぁ~と納得していた

初めてみるシャボン玉に子供は大興奮していた
初めはヘイネのを見ていたが、次第に自分も、自分も、と
ヘイネは一気に魔法で複製し、子供達に渡していた
だから魔法は注意してね!?意識して?
子供達にシャボン玉を教えているヘイネをずっと眺めていた
その視線に気付いたヘイネは俺に優しく微笑みかけた

(まるで聖母のようだ。さすが豊壌と子宝の女神。美しさってのはここまで昇華されるのか。ヘイネは子供が好きだって
言ってたがこれを見ればわかる。きっといいお母さんになるのだろう・・・俺はヘイネが欲しい)

子供達がシャボン玉の泡を追いかけていなくなった
またヘイネは子犬と遊んでいる
俺はそんなヘイネを後ろから抱きしめた

「・・・」
『どうしたの?ユウジ』
「・・・」
『ユウジ?』
「・・・ヘイネ、お前が欲しい」

一瞬ヘイネはびくっとした
意味がわかったのだろう

「ヘイネが欲しい、いいか?」
『・・・うん』

□□□□

宿屋

俺達はお互い無言のまま、でも手を繋いで宿屋に向かった
俺もヘイネも緊張していた
部屋をとって今、ヘイネと向かい合っている
まだ外は明るい、さすがにこのままではまずいので部屋にサイレントをかけた

「・・・」
『・・・』
「・・・」
『・・・』

部屋の中を静寂が支配する
お互いの心臓の鼓動がきこえそうだった

『ねぇ、ユウジ。お願いがあるの』
「なに?」

『ユウジには私の全部を貰って欲しいの。だからこっちの私とあっちの私も同時に貰ってほしい』
「下界でも停止世界使えるのか?」

『うん、使える。だから貰ってくれる?』
「ヘイネが望むなら」

俺はヘイネを抱き寄せキスをした。始めは軽いキス
お互見つめ合い、そして次第に激しいキスへと移っていった
停止世界でお互いがお互いを貪ったのを思い出すように

段々お互いがお互いを求め合う箇所が増えていき、俺はヘイネをベッドに寝かせる

「ヘイネ、そろそろいいか?」
『ちょっと待って。このままだと赤ちゃんできちゃうかも』

「人と神だとできるのか?」
『うん、神はいちお人族だから。だから避妊魔法かけるね』

「俺はできても構わないよ?」
『私がまだユウジと二人でいたいの。ダメ?』

「ダメじゃない。なら頼む」
『ありがと。後で魔法教えるね、必要でしょ?』

「そうだな。でも今はヘイネしか見えない」
『初めてだから、優しくしてね?』

「もちろん、・・・でも理性きかなかったらすまん」
『大丈夫、ユウジの好きにして?』

『「愛してる」』

お互いが気持ちを確認しあってキスをしたあと、

ふたりのからだは重なっていくのだった





長い、長い、時間をかけて紡いできた『約束』は遂に成就した




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