過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~初恋と悲恋~

異世界イリアスに転移して一ヶ月のある日

私は白鷺あかり。普通の高校生だった

ある日私達はいきなり女神様に勇者として召喚された
そして、私達が異世界に転移してから一ヶ月たった
最初は夢か何かかと思っていた
でも今はこの異世界で生きているのだと実感している
日常から非日常へ変化したことにクラスみんな戸惑ったが、時間とは恐ろしいもので、すっかり馴染んでいた

魔王討伐の旅立ちまで残り一ヶ月
もう一ヶ月たってしまった、なんか早かったな
毎日が訓練だ、今日も訓練の為、魔山にきている
女神アウラ様からの神託も訓練と兼ねている

『吹っ飛べ~!』

元気いっぱいの声とともに親友のなっちゃん(黒川凪)が、大きな剣(両手剣)で魔物を吹っ飛ばしていた

異世界に来てからのなっちゃんは、たまちゃんの代わりにクラスみんなのまとめ約になっていた
もともと運動神経がよく、陸上部のエースだったなっちゃんは異世界に来てからも楽しそうだ

『あかり、お疲れ!』
「うん、なっちゃんもお疲れ様。怪我してない?回復するよ」

『余裕!余裕!この辺は大分慣れたね』
「みんな魔物ぽんぽん倒せてすごいね、私怖くて」

『ぽんぽんって・・・。気にしない、気にしない!あかりは私が守ってあげるから。回復よろしくね?』
「なっちゃん、ありがとう!大好き!」

私達は今魔山の8合目にいる
私となっちゃん、野崎信二君、河本大紀君、伊藤良君の5人PTだ。
バランスがいいPTらしく、王国の人達に勝手に決められてしまった
でも私は不安だった
野崎君は不良で怖いし、河本君は影薄いからよくわからない、伊藤君はなんかぶつぶつ言ってるし・・・なっちゃんがいなかったら私も非戦闘職の子達と一緒にお留守番していたかも

〔ちっ。おら、さっさと帰るぞ。もたもたすんな!〕
野崎君がイライラした声で言ってきた。怖い

『野崎!あかりが怖がってるでしょ!・・・あかり行こ?』
なっちゃん、守ってくれてありがとう

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アカリ・シラサギ 17歳 レベル:88

体力:280000/280000
魔力:350000/350000
筋力:24000
敏捷:34000
器用:6500
幸運:78

加護:女神アウラ『治癒』
称号:ダンジョンマスター
技能:ヒール/ヒーリング/ハイヒール/ハイヒーリング
   エクストラヒール/キュア/キュアリング/体術Lv.8
   サンライト/障壁/大障壁/鑑定
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ナギサ・クロカワ レベル:92

体力:590000/590000
魔力:240000/240000
筋力:150000
敏捷:88000
器用:4200
幸運:69

加護:女神アウラ『万能』
称号:ダンジョンマスター
技能:剛力/身体強化/闘気/体術Lv.4/剣術Lv.9/スマッシュ
   衝潰/光刃/光覇刃/覇墜/鑑定
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城内で私達は訓練の疲れを癒す為、専属メイドさん達とお茶をしている
専属メイドさんの話しの中心は大体恋ばなだ
最近はある一点に集中していた

〔この間なんて、副メイド長が腕を組んでデートに行ってたみたいですよ!〕
〔そうそう!同室になる前なんて、お姫様抱っこで副メイド長を運んできた時もありました〕
〔副メイド長、幸せな顔してるんですよね~羨ましいな~〕
〔副メイド長隠してるみたいだけど、ハクト様から頂いた髪飾りを胸に抱いて寝てるだって!健気だわ~〕

副メイド長とはサーシャさんのことだ
私も何度も会っている、メイドさん達を仕切っていた人だ
今は白兎君の専属メイド
どうやら二人は付き合っているらしい
噂になりだしたのは転移してから数日後だ
手を繋いで城下町へ行ったりしているのを度々目撃され、目撃している
しかも最近同室にまでなっている、付き合ってるのは間違いないようだ

『付き合うのはいいとしても、ど、同室はまずいんじゃないかしら?』

〔いえいえ、もうお二人ともいいお年ですし、まずいことはないですよ〕

『で、でもクラスメートがそういうことはまだ早いわよね?ねぇ、あかり!』

「うん?仲良しなら一緒にいてもいいんじゃない?好きなら一緒にいたいだろうし」

『絶対意味わかってないでしょ~、あかりは!』
「?」

白兎君とは幼なじみ?友人?とよくわからない関係だ
幼稚園の頃から今まで偶然、毎回同じクラスになった
小さい頃にはそれなりに遊んだが、特に仲がいい訳ではない
仲が悪い訳でもない。話すし、話し掛けられることもある
でもそんなに多い訳でもない。
他人?と聞かれるとそうでもないよう気がする
腐れ縁ってやつかな?にしては特段仲がいいわけじゃない不思議な関係

〔アカリ様は幼なじみと伺いましたが、ハクト様はどのようなお方なんですか?あまりお部屋から出ていらっしゃらないのでよけわからないんですよ〕

「幼なじみになるのかな?白兎君、一歩引いた感じだからよくわからないんだよね」

『あ、それわかる!普通に話せるんだけど、親しくなろうとしない感じ』

〔そうなんですか?不思議な方ですね。それじゃあ副メイド長は余程気に入られたんでしょうね!〕

〔お部屋の中ではいちゃいちゃしてるに決まっています。ハクト様訓練にもいらっしゃらないみたいですし〕

〔でも副メイド長、ハクト様に付いていくらしいですよ?ハクト様大丈夫でしょうか?〕

確かに白兎君は訓練に参加した姿をほとんど見ない
一度強制参加の時は来ていたが何もしていなかった
代わりにサーシャさんが参加していたから、後に『ヒモ勇者』とか言われていて、ちょっと笑ってしまった
普通に笑った。ものぐさな白兎君に妙にしっくりくる
白兎君の加護はなんだったんだろう?見ていなかった
今度見てみよう、訓練に来ないし多分非戦闘系なんだろう

その後もメイドさん達の恋ばなは尽きない
どこから情報を仕入れているのか、覗いているのかな?
私達はそのあとも楽しく会話を続けた

□□□□

夜更け深夜、目を覚ました私は花を摘みにいこうと部屋をでた
窓からは綺麗な月が見える
窓からこぼれてくるように見える月あかりは、夜の静寂さにより、より一層綺麗に美しく映えていた

花を摘み終わった私は、普段起きていない時間なのと、綺麗な月をなんとなく見ていたい気持ちになり、自然と訓練場に足を向けていた
訓練場は城内にあるが、自然の魔力を体に貯めながら訓練する目的があるらしく天井がない
訓練場なら月が綺麗にみえるだろう

夜の静寂が城内を包む
訓練場に着いた私は扉をそっと少しあけた所で、訓練場の中から音がするのに気付いた
誰かいるの?と警戒しながら中を覗きみた
中には白兎君がいた

(なんでこんな時間に白兎君が?それに何をしているんだろう?)

訓練場にいるんだから訓練していることに、白兎君が筋トレをしているのを見て分かった
白兎君は黙々と地味な筋トレをしていた
声をかけてもよかったが、なんとなく邪魔をしては悪いと思い、ただ見ていることにした

(あんな顔するんだ。学校では見たことないかも。とても真剣な表情でちょっと怖いくらい・・・)

筋トレが終わったのだろう
白兎君が何かぶつぶつと唱えていたら、急に真っ黒でなんか重そうな剣が出てきた

(え?今の剣どこから出てきたの?ぶつぶつ唱えてたし、魔法?)

その後白兎君はひたすら素振りをしていた
時に素早く、時に型を確認するように
素人である私が見てもわかるぐらいに素振りは洗練されていた
一朝一夕にできるものではない、毎日訓練していたのだろう

(なんでこんな時間に?日中みんなと一緒に訓練すればいいのに・・・。サーシャさんも今の白兎君を見続けて好きになったのかな?でもサーシャさんはいないみたい?今日はお休みなのかな?今の白兎君はちょっと怖いくらいだけど、少しカッコイイ。普段見せない顔だからってのもあるかも)

素振りが終わりすごい汗をかいていた
真剣だったのがそれを見てもわかるぐらいだ
白兎君は汗なんか気にせずに、またぶつぶつと唱え始めたら、もう一本同じ剣が出てきた
剣を2本手にとった白兎君は静かに瞑目していた
夜の静寂に溶け合っていく様子に、私は息を呑んだ

しばらく静かに佇んていた白兎君は、瞑目したまま急に動き出した
最初は演舞?と思っていたが、見ているとなにかと戦っているようなうごきだった
2本の剣を奮いながら何かと戦っている様は、この月明かりの下、1匹の迷い込んできた夜蝶が華麗にダンスをしているようだった

(とても綺麗・・・月明かりの下、こんなに似合う演舞があるかな。ひらひらと舞う様はまさに蝶。もっと見ていたい)

私は完全に心を奪われていた
自然と手に力が入ってしまい、扉をまた少し勢いよく開けてしまった
ダンスが終わってしまい、白兎君と目が合う  

{はぁ・・・。こんな時間に訓練か?白鷺。頑張るな}

□□□□

side-ユウジ-

その日いつものようにサーシャを愛した後、鍛練に向かう 
サーシャは愛し終わると腕を絡めて眠りにつく
これを解くのにいつも苦労する
力が弱いときはいいのだが、強い時は解くと寝ているのに悲しそうな顔をする。心は痛むが愛おしい。
サーシャの柔らかいほっぺをつんつんと楽しんだ後、訓練場に向かった

訓練場はいつものように静まり返っていた
夜の行為の後の高ぶった体を鎮めるのに、この静寂は心地いい

俺の鍛練はまず筋トレから始める
重力魔法グラビティで自身に重力をかける
体を作るには地味な訓練がとても重要だ
基本は疎かにしない、技に、力に頼らず、基本をみっちりやる
この積み重ねが重要なのは過去の経験からわかっているからだ

筋トレが終わると、次は素振りだ
型を確認するのも忘れない。基本は疎かにしない
型に嵌まりすぎるのもよくないが、全くしないのも問題だからだ。
我流を凌駕するのは基本的な型だ。
そして、基本的な型を凌駕するのも我流だからだ
どちらも一長一短あるということだ

素振りが終わったら自身完全投影魔法パーフェクトフェイクの俺をイメージしながらの素振りだ
シャドーボクシングならぬシャドー剣術?だ
何の対策も練らずに実践するのはバカのすることだ
実践で多くを学ぶ為には、このシャドー剣術は必須の行程なのは身を持って分かっていた
過去の勇者時代の経験は確実に俺を強くしていた
だから『いつものように』鍛練していたが、その日は違った

シャドー剣術の最中に扉が開く音がした
テンプレなら{誰だ!?}とか言うのだろうが、見ればいいだけなので踏まない、踏まないぞ!
扉の方を、見たら白鷺がいた
驚いた、サーシャあたりかと予想していたからだ
こんな時間に訓練するほど戦いに熱心だとは思わなかったから
そしてクラスメートに鍛練がバレてしまった
俺はバレたものはしょうがない、と思いつつ声をかけた

{はぁ・・・こんな時間に訓練か?白鷺。頑張るな}

side-ユウジ- 終了

□□□□

白兎君が声を掛けてきた
訓練を邪魔してしまった、申し訳ない

「訓練じゃないよ。月があまりにも綺麗だったから、つい見に来たら白兎君がいて。邪魔しちゃってごめんね」
もっと見ていたかったのに残念

{別に構わないが。月?・・・あぁ確かにきれいだな。そう言えば、白鷺の名前って月からだったっけ?やっぱり月が好きなんだな}

私は目を見開いて驚いた
確かに私の『あかり』という名前は、月あかり、からきている
私の両親はお互い仕事の関係上、夜にしか会えず月あかりの下でデートを重ね心を通わせたらしい。
両親は恥ずかしいみたいだが、私は素敵だと思っていた
だから『あかり』と言う名前が好きだった

{なに驚いてるんだよ。小学生の時、名前の由来を調べるみたいなことあったろ?そこで言ってただろ。確か・・・月あかりからきてるだっけ?}

すごく嬉しかった
自分の好きな名前の由来も覚えていてくれたことが

「よく覚えてるね、そんなこと。結構昔のことなのに」
私は白兎君のは・・・覚えてない。ひどいな、私。

{覚えるつもりは全くなかったが、なんとなくだな。うん、なんとなく}
もうちょっとオブラートにしよ?本心でも

{それでなんで月を眺めるのに訓練場なんだよ?王宮ならもっと雰囲気のいい場所あるだろ。庭園とか}

「え?眺められるならどこでもよくない?訓練場なのはいつもいる場所だからつい、かな?」
なんだろう、眺めるだけなのに場所関係あるのかな?

{はぁ~。相変わらずだな、白鷺は。何考えてるかわからん。いや、何も考えてないのか。きっとそうだな、間違いない。だよな?白鷺は頭いいのに、意外とバカなんだよなぁ}

「雄司君、なにげにひどくない!?」
あっ。あまりにひどいこと言うから昔みたいについ呼んじゃった

{ひどいも何も事実だろ?なにいって・・・雄司君?}
あぅぅ、やっぱり気付かれた

「昔みたいに名前で呼んでもいいかな?ダメ、かな?」
なんか変に恥ずかしいかも

{別に構わないが、俺は呼ばないぞ?恥ずかしいし、変にサーシャに誤解されそうだしな}
そうだ、サーシャさん恋人なんだよね

「サーシャさんと仲いいんだね。好き、なの?」
知りたいようで、知りたくない、この気持ち・・・

{好きじゃなきゃ同じ部屋で生活しないだろ。なに言ってんだ。第一、白鷺には関係ないだろ?そんなこと。てか、月堪能したんなら部屋の前まで送ろうか?王宮内と言ってもこんな時間だしな}
やっぱりそうだよね、好きなんだよね・・・関係ない、のかな

「変なこと聞いてごめん。送ってくれるのは嬉しいけど、狼になったりしない?」

{白鷺さん!?俺のことどんな目で見てるんですかねぇ!?魅力的な提案だが、安心しろ。なったりしないから}
雄司君でも驚いたりするんだ、可愛い。でもみ、魅力的?

「み、魅力的な提案なの?」
どきどきする、なんだろう

{え?そこ食いつくのか?・・・あのな、ぶっちゃけ白鷺は美人なんだぞ、自覚しろ?自覚のない美人はタチが悪い。しかも体もエロいしな。いいお嫁さんになりそうな雰囲気を醸しだしてんだぞ?もう一度言う、自覚しろ?白鷺が自覚しなくても、周りが勝手にそう思ってる。そんな自覚のないやつが無意識で誰彼構わず優しくみてみろ。勘違い系男子が量産されるからな?頭のいい白鷺ならここまで言えばわかるだろ?白鷺がどれだけ魅力的か。これで否定なんてしてみろ。白鷺は世の女性から敵視されること間違いなしだな。分かったか?}

私は頭がパンクしそうだった
雄司君にそんなふうに思われていたことに
び、美人で、え、エッチな体で、おおおお、お嫁さん・・・
だ、ダメよ!私!雄司君にはサーシャさんがいるんだから!

「そ、そうなんだ・・・気をつけるね」
顔が真っ赤だったのはわかる。だって体全体が熱いから

{それで?どうする。送ろうか?}

「雄司君の邪魔しないからもう少し訓練見てていい?」
もう少し、もう少しだけ一緒にいたい

{え~。戻らないのかよ}
そんなあからさまに嫌そうな顔しないでよ。悲しいよ
私はもう少しいたい一心で必死にお願いした

{う~ん。居てもいいけど絶対にバラすなよ?例えそれが委員長(黒川凪)でもだ。守れないなら戻れ。理由は教えない。異論も質問も受け付けない。守るか戻るか、だ}

「分かった、ちゃんと守る。信じて」
なっちゃんに秘密にするのは心苦しいけど、私はまだここにいたい

それから雄司君の訓練が始まった
雄司君は見学している私の為に、魔法でテーブルやイス、お菓子や紅茶を用意してくれた。また秘密ができた
訓練も凄いの一言だった
雄司君が魔法を唱えたら、雄司君とうり二つ、いや、雄司君なんだろ。もう一人の雄司君がでてきた。これも秘密
本物?の雄司君は、偽物?の雄司君に何度も、何度も吹き飛ばされていた
本当に死にそうなぐらいの顔をしていたので、慌てて回復しようとしたら、邪魔だと言われた。大丈夫らしい。それも秘密
雄司君はぼろぼろになりながらも訓練は終了した
急いで回復しようとしたら、それも必要ないと言われた
加護で治癒を貰ったのに、必要とされなかったことが、悔しかった
部屋の前まで送ってもらっている途中、私はどうしてもつたえたいことがあった

「雄司君、たまに訓練見に行ってもいい?」
そう、唯一できたきっかけを逃したくないから

{は?見ててもおもしろくはないだろ?}

「そんなことないよ。タメになるし。だから、いい?」
さすがにタメにはならないかな、凄すぎて

{白鷺は回復メインだからタメにならないだろ。見学は勝手にしろ。俺はいつも通りやるだけで、そこに白鷺が勝手にいるだけだしな}
あっ、やっぱりタメにならないのバレてた

「うん、じゃあ勝手にいることにする」

□□□□

それから私はたまに、とは言ったが毎日見学にいった
雄司君はたまにじゃないのかよ、と呆れていた
だって一緒にいたいんだもん

雄司君は何もしないとは言うが、私が来ると何も言わずに見学セット(テーブル・椅子・お菓子に紅茶)を用意してくれる
紅茶は興味ないんだろう毎回同じだが、お菓子は毎回違った
そんな心遣いも私は凄く嬉しかった

ある日見学中に寝てしまった事がある
そんな私を見て雄司君は、頭を叩いて起こしてきた
私が非難すると、自分の部屋で寝ろ、と
確かに寝た私が悪いけど、もうちょっと女の子扱いしてほしかった
サーシャさんみたいに、部屋までお姫様抱っことかしてくれてもいいのに
サーシャさんが羨ましい

別の日には雄司君の回復を申し出てみた
加護が治癒だったので自信があった、そして打ち砕かれた
回復しても回復しても雄司君があまり変わらないようだった
その後雄司君は自分であっという間に回復してみせた
落ち込んでる私を見て、雄司君は苦笑しつつ見学してろ、と
私は悔しかった。何か少しでも役に立ちたかった
だから邪魔になるのは覚悟で雄司君に魔法を教えてくれるように頼みこんだ

断られた。でも諦めなかった。何度も何度も頼みこんだ 
ついには怒られた。もう来るなと。悲しかった
それでも諦めずに毎日見学にいった。
雄司君は嫌そうな顔をするが、なんだかんだ言って見学セットは用意してくれた
私は鬼になりきれない雄司君に苦笑しつつも、温かい気持ちでいっぱいになった

あまりにしつこい私に折れたのか、諦めたのか魔法を教えてくれることになった
魔法には詠唱がいらないことやこの世界では魔法は特別視されていることなど様々教わった
どうしてそんなことを知ってるのか尋ねたら、日中勉強してるらしい。訓練に参加しないのもそのためだそうだ
私は雄司君に色々魔法を教わりながら楽しい時間を過ごしていた。来る日も来る日も来る日も。
私はそれで『満足』していた

毎日のこの時間が私の楽しみになっていた

雄司君と会える楽しみ
雄司君を見つめて居られる時間
雄司君と会話ができる嬉しさ

そして・・・雄司君を好きでいるこの気持ち


私は雄司君が好きです
私の『初恋』は雄司君でした


□□最終パート□□

転移してから明日が二ヶ月目だ
雄司君とサーシャさんは私達より先に旅立つらしい

「雄司君、私も一緒に連れていってほしい」

『・・・』

{白鷺は連れていかない、なんと言われようとダメだ}

なんで?恋人じゃないから?
私もそれなりに頑張ったよ?
サーシャさんから雄司君を奪うつもりもないよ?
雄司君の邪魔をしたりしないよ?
好きだけど、雄司君にはサーシャさんがいるから一緒にいれるだけでもいいんだよ?
なんで?なんで?なんで?

雄司君に断られた私は、俯いて錯乱していた
そこにサーシャさんが雄司君に声を掛けた

『ユウジ様、少しアカリ様とお話をしてもよろしいでしょうか?』

{構わないが、・・・いくらサーシャのお願いでも白鷺は連れていかない。そこだけは覚えておいてくれ}
恋人のサーシャさんがお願いしても・・・ダメなんだ

『はい、承知しております。ユウジ様少し失礼します。アカリ様こちらへ。』

私はサーシャさんに着いて行き、雄司君から離れた

サーシャさんなんだろう?
もう私は一緒に行けないのは知ってるのに
あれかな?恋人の雄司君に手を出すな!ってことかな?
本心は出したいよ?でも雄司君の恋人はサーシャさんだから
私は本当に一緒にいられるだけでもいいの
不満がないわけじゃない、でも一緒にいたいの

私はそんなことを考えながらサーシャさんを見つめていた
私はどんな顔をしていたんだろう? 
サーシャさんは不安そうな顔で尋ねてきた

『アカリ様、ユウジ様の事がお好きなんですよね?』

「・・・ごめんなさい。サーシャさんには悪いと思ってますが、雄司君の事が好きです。でももう・・・」

『諦めてしまうんですか?アカリ様のユウジ様への想いはそんなに軽いのですか?』

「諦め・・・たくはないですが、雄司君にはサーシャさんがいますから・・・」

『なるほど。それがアカリ様の常識なんですね』

「え?どういうことですか?」

『アカリ様。確かに私はユウジ様に愛されていますが、ユウジ様の『最愛』ではないんですよ?自分でいうものも悔しいですが笑』

それから私はサーシャさんに色々教えてもらった
雄司君にはサーシャさん以外に3人愛してる人がいる事
雄司君はサーシャさん含めて全員平等に愛すると決めている事
雄司君には目標があって、それを成すには力がいる事
サーシャさんも一度断られた事

雄司君と一緒にいるだけでは『満足できなかった』ので隣に立つために努力している事
私は思えば一緒にいれただけで『満足』していた
私とサーシャさんの決定的な違いはそこなんだろう
満足してしまったら、その先はないのだから

『アカリ様。私も実はまだまだなんです。それでも日々努力してユウジ様の隣にいれる励んでおります。ユウジ様に護ってもらうのではなく、ユウジ様を守れるぐらい強くなりたい、強くありたいと思っています。これからも私は自分に満足することなく、精進していきます。きっと満足できる日はこないでしょう。歩みを止めてしまったら、ユウジ様のお側にいられませんから。』

サーシャさんのとてつもなく大きい想いに私は自分自身が恥ずかしくなった
サーシャさんはひたすら雄司君を想って行動し、隣にいる権利を得た。
それも不変ではないから、これからも歩み続けるらしい

私はどうだっただろう・・・
雄司君の事は好き、想ってもいた
でも自分が中心ではなかっただろうか・・・
穴があったら入りたい
この程度の気持ちでサーシャさんを前にして、好きだなんてよく言えたものだ。恥ずかしい・・・

『アカリ様。このまま歩みを止められてしまうのでしょうか?私は悲しく思います。まだアカリ様がユウジ様の事を想っておられるならどうぞ私達と同じ場所まで駆け上がってきてくださいませ。そうすれば必ずユウジ様は愛してくれるはずです。私はアカリ様を応援致します。』

私はサーシャさんの優しさに涙した
本心で応援してくれていたからだ
きっと雄司君もこのサーシャさんの優しさに恋をしたのだろう
だったら私も諦めない、諦めたくない!
頑張って、頑張って、必ず雄司君の隣までいってやる!

「サーシャさん!ありがとうございます!私諦めません!次に逢う時までに必ず皆さんと同じ場所まで駆け上がってみせます!」

『はい。同じ愛するひとのため、頑張りましょう!』

私達はお互い笑顔で微笑んだ
サーシャさんとお話しできてよかった
まるでお姉ちゃんみたいな温かい安心感を得る
だから私は・・・

「サーシャさん、ありがとう!大好き!」
サーシャさんに抱き着いた

抱き着かれたサーシャさんはとても綺麗な笑顔だった

そして私に耳元で
『私はもう既にユウジ様から『ご寵愛』を頂いております。一歩リードです。アカリ様も頑張っくださいね?』
と、悪戯っぽい笑顔を向けてきた

私は真っ赤になって俯いてしまった
そんな私をサーシャさんは頭を撫でで抱擁してくれた
とても優しくて、温かい抱擁だった

そして、雄司君とサーシャさんは旅立っていった

□□□□

深夜の訓練場はとても静かだった
昨日まで当たり前にいた、愛しい人はもうはいない
寂寥感でいっぱいだった
でも悲しんではいられない
これからが勝負なんだ

私は虚空を見上げつぶやく、

「雄司君。こんなに好きになるなら、もっとお話ししておけばよかったね。私にはチャンスがたくさんあった。でも全部掴まなかった。だから今の結果なんだよね。会えなくて淋しいよ・・・。でも諦めないよ。もうチャンスも全部掴み取る。
私の気持ちはまだ伝えられるものじゃなかったけど、次逢う時には雄司君の『隣』で気持ちを伝えるね。その時はちゃんと女の子扱いして聞いてほしいな」

見上げる頬に涙が一雫ながれた
悲しみの涙ではない
決意の涙だ


「雄司君。必ず隣に行くからね!愛してる」  


夜空の月は、そんな強く固い決意をした少女を優しく包み込みように月あかりが照らしていた


【加護 勇者ユウジ『親友』を取得しました】
【加護 女神ヘイネ『神援』を取得しました】



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