過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~魔術大会と恋の自覚~

帝都エクスペイン・『迷宮区』迷宮『常住不滅』

帝都エクスペインに到着してはや三ヶ月

俺とアオイとサリーも入学してから三ヶ月たった
今俺とアオイとシャル、シルヴィ、エルナは帝都エクスペインにある迷宮『常住不滅』で、間もなく開催される魔術大会に向けての特訓をしている

魔術大会ってなんだ?、って?話は二ヶ月前にも戻る

□□□□

魔法学校マギスコレー ~昼食~ 二ヶ月前

いつものように仲良く俺、アオイ、サリー、シャル、シルヴィ、エルナで昼食をとっていた
そんな楽しい一時の中、シルヴィが切り出した

〔シャルロッテ様、午後は実習ではなく魔術大会の選手決めとなります。クラスへのご指示よろしくお願いします〕
シャルはクラスの委員長的な存在らしい

「魔術大会?初めて聞くな。なにそれ?」
まぁ名前からしてそうなんだろうけど・・・

[あら。ハクト様はご存知ないんですのね。魔術大会とは、魔法学校が主催する武闘大会の事ですわ。魔術クラスが対象で、各クラスから3名選出し、日頃の成果を披露するんですのよ。魔法学校の威信と誇りをかけますので、一般公開され帝室の方々も観覧される大変名誉ある大会ですわ]

「ふ~ん。帝室がくるとかめんどくさいな。俺はスルーかな。優勝しちゃったら絶対めんどくさいことになりそうだしな」

〔残念でした。ハクトさんの意思は尊重されません。全てはクラスの総意が全てです。クラス総意なら従ってもらいます〕
な、、んだと!?個人の意思を尊重しないとか横暴だろ!

「仮に選ばれたらサボ・・・」
〔ちなみにですが、サボった場合は停学または退学処分になるそうです。選手は事前に教員に通達します。名誉ある大会に傷をつけることになりますので重い処分も妥当でしょう〕
逃げ道を防ぎやがった・・・。この百合女が!

「そ、そうなんだ・・・。でも魔術クラスが対象って、1~3年が対象だろ?1年が普通は不利なんじゃないか?」
まぁ、俺には関係ないが。そもそも出たくない

[そんなこともないですわよ。去年は1年生が優勝されましたし、今年はエステル様もいらっしゃっいますから]
〔シャルロッテ様も組み合わせ次第では優勝を狙えますよ〕
【うんうん、シャルロッテ様ならいけるよぉ】

(はぁ~、本当仲良い三人組だなぁ。ただ、シャルならいいところまではいくだろうが、優勝は無理だろうな。エステルはウザいチビだけど実力は確かだしな。それに去年優勝したやつが1年なら今年は2年だろ?どんなやつなんだ?)

「去年優勝したやつってどんなやつなの?」
[確か・・・ブラッド=クロイツ様ですわね]
・・・ん?なんだその厨二くさい名前は?

[男性の方で・・・]
「あぁ、いい!男は興味ないからいい!説明もいらん!」
男をリサーチとか誰得だよ!知りたいのは女の子たけだ!

『ユ、ユウジ義兄さん!?』
{あにさま?}
[ハクト様は相変わらずですわね]
〔はぁ~。本当どうしようもない方ですね〕 
【ハ、ハクト君らしいよねぇ】
みんなひどい!?男が男を知りたいとかないわー

こうして魔術大会の情報を仕入れた俺は憂鬱な気持ちで午後の授業に向かった
もうやだ、この後の展開とかテンプレ過ぎるんだよなぁ

1年A組からは、ユウジとシャルロッテ、そして・・・最後の一人はアオイが選ばれた

どうしてこうなった!?なんでアオイなの!?
貴族様方はプライドないの!?いちおアオイは奴隷だよ!?

魔術大会の選手にアオイが選ばれた
最近のアオイはめきめきと力をつけている
もともとアオイはエルフだから魔法には長けていたのだろう
そこにお姉ちゃんセリーヌの力になりたいという純粋な想い
呪いのせいで魔法を使えなかった過去から解放され魔法が使える、学べる嬉しさ
これらが合わさり綿が水を吸うかのように教えをどんどん自分の力にしていっている
クラスの中でも一番成長が目まぐるしいのがアオイだ
選ばれるのも当たり前だったのかもしれない

しかしそうなると問題が出てくる
アオイ自身のステータスの問題と攻撃手段だ

ステータスの方は魔山も考えたが危険なのでやめた
そこでシャル達に相談してみたら迷宮がいい、との答えを得た
すっかり存在を忘れていた
迷宮でシャル達と一緒に訓練しよう!みたいなピクニックのノリで誘われたのだから苦笑しかなかった
まぁ、俺が一緒だし大丈夫か

次にアオイの攻撃手段だ
アオイは優しい性格からか攻撃魔法を覚えたがらない
また精霊達に指示しての攻撃もさせたがらない
完全な防御・支援タイプだ
普段の生活や旅ならそれでもいいのだが・・・
さすがに魔術大会でそれはまずいと思う
さて、どうしよう・・・


そして冒頭に戻る

□□□□

迷宮『常住不滅』地下22階

「よし、アオイ!今の演奏はなかなか良かったぞ!魔物がぐっすり寝てた!」

俺が選んだ攻撃手段・・・それは演奏魔法だ!
アオイはイジメられていた時に少しでも良い印象を持ってもらいたいとの気持ちから、里にあった楽器で音楽を独学で学んだらしい
ハープやリュートなどがそれで一通りいけるみたいだ
すごく悩んだ結果ハープにした。リュートも捨て難かったが・・・
だってエルフにハープは定番だろ?それに絵になるしな!
結局魔術大会では攻撃するのではなく、状態異常で相手を戦闘不能にしてしまう作戦にした

演奏魔法を行うには楽器が必要だ
そこで俺は一つのハープをプレゼントした

マジックキタラ『愛妖精マナエルフの小ハープ』

可愛いアオイが弾くハープだ
市販の物で妥協はできない、全力で作らせてもらいました!

ハープを弾くアオイの姿はとても美しい、幻想的だ
最近は練習も兼ねて、夜がセリーヌの日は弾いてもらうようにしている。あくまで練習である。うん、練習
そしてそのまま三人で寝るのがもはやお馴染みとなっている

「アオイもどうだ?ハープは馴染んだか?」
『う、うん。すごく使いやすいよ?ありがとう、ユウジ義兄さん』
うんうん、気に入ってくれたなら義兄さんは嬉しいよ

「使いやすいのは当然だな。俺の希望を全力で注いだからな!この世に一つしかない、アオイのための究極のハープと言ってもいい!」
『あ、愛・・・。ぼ、僕のため・・・』
赤くなって俯いてるアオイは可愛いらしいな。役得、役得

〔そのやりとり、絶対兄妹のやりとりじゃないですよね?まるで恋人のそれですよ?〕
「純粋な義妹愛だな。ただアオイと恋人、というのも悪くはない。アオイは可愛いらしいし、気が利くしな。まぁアオイにその気がないだろうから恋人にはならないだろう」

[まあ!アオイさんが羨ましいですわ!]
・・・え?シャルさん、羨ましいの?

【あ、兄と妹の禁断の愛ですぅ】
禁断って・・・。アオイは義妹だから!

〔シスコン〔変態〕お兄さんはいいとして、アオイさんのハープには何か細工してありますか?通常ハープはあまり音が拡がらないので魔物に届きにくいはずですが〕
変態を強調するんじゃない!シスコンは文化だ!

「さすが「変態」百合女だな。いい着眼点だぞ?「変態」なのにな。音が拡がらないのはアオイの演奏を聴いてる時に気付いた。だから『空間振動魔法』をハープに付与した。ハープの音を空間で振動させるようにな。これでアオイと同じ空間にいるやつには必ずハープの音が届くようになった。更に演奏系の最大の弱点である耳栓対策もバッチリだ。空間振動魔法に『脳内反響』のスキルも付与したから耳栓は意味がない。耳栓あるから効かないよ?みたいなテンプレは予め潰す!」
テンプレは踏まん!予想できるテンプレは予め潰す

〔二回も強調しないでください!それにしても本当ハクトさんは無茶苦茶ですよね。アオイさんのハープは実質強制的に聴かされるんですよね?防ぎようないじゃないですか〕
なんとなくたがシルヴィは詩乃とポジション被るよなぁ

「防げるぞ?気合いだよ、気合い!古来より精密な精神攻撃は気合いが凌駕してきたからな!気合いで乗り切れ!さぁ、みんなもご一緒に!1、2、3、○ァっー!」

・・・。

す、スベッた・・・
周りからの奇異な者を見る視線が痛い

「・・・ごほん。まぁ防げないことはない。実際俺には効かないからな。シャル達にも教えたが、魔法にとって大事なのはイメージだ。想像だ。想いだ。より強い想いはより強い魔法となる。それに対抗するには同じぐらいかそれ以上の想い、力があればいいだけだ。何も魔法に限った事じゃない。武術も同じ事だ。だから武術における気合いが有効なのは間違いじゃないんだぞ?武術家にとって精神攻撃はやっかいなものだからな。それ故に厳しい修業をして精神を鍛えるんだ」
アオイのきらきらした尊敬の眼差しがたまらん!

〔・・・なるほど。素直に最初からちゃんと教えて下さればいいのに。めんどくさい方ですね〕
めんどくさいとか言うな!恥ずかしいんだよ!

[さすがハクト様ですわ!あ~、ステキですわ!]
そうだろ?ステキだろ?惚れてくれていいんだよ?

【ハクト君はぁ、真剣になるときはカッコイイんだよねぇ。たまになんだけどぉ】
たまに、は余計なんだよなぁ。嬉しいけど

「第一考えてもみろ。防げる防げないは別としても、俺のアオイの演奏を聴かないとか許せないだろ?不遜だよ。皇帝だろうが、神だろうが、関係ない。全員聴け!聴かないのは俺が許さん。全員等しく拝聴しろ。それだけの価値がアオイにはある!」
アオイの頭を優しくなでなでする

『ユ、ユウジ義兄さんの僕・・・。で、でもユウジ義兄さんにはお姉ちゃん達が・・・ごにょごにょ』
何言ってるかわからんが、赤い顔してるアオイは可愛い

[本当仲の良い兄妹ですこと。羨ましいですわ]
シャル達三人も同じぐらい仲がいいだろ?

【ア、アオイちゃんはハクト君に愛されてるねぇ】
そうだな!一人の家族として愛してるな

〔不遜はハクトさんでしょ。なにが、俺のアオイ、ですか。無意識なのがタチが悪いですね〕
無意識って・・・。俺のアオイ義妹だろ!間違ってない

その後も五人ピクニック気分で迷宮探索をした

□□□□

『居住区』ユウジ邸 ~魔術大会前日の夜~

夕食後、アオイの演奏を聴きながら家族全員まったりしていた
アオイの演奏は夜の調べというべきか、静かで、夜の静寂さと溶け合うかのような緩やかで優しい演奏だ

俺はサーシャに膝枕してもらいながらアオイを眺めていた
月の光に照らされた銀髪はキラキラと輝き、流れるようなしなやかな手の動きには美しささえ感じる
やはりアオイは美しい。ハープとアオイはよく似合う。

《本当素晴らしい演奏ですね。王宮の楽奏隊にも劣りません》
<美しい調べですの。さすがセリーヌの妹ですの>
それぞれ王宮に身を置いていた二人からのお墨付きだ

「明日の魔術大会は闘技場で一般公開されるそうだ。みんなも時間あったらアオイの晴れ舞台を見てやってくれ」
いよいよ明日か。やれるだけのことはやった

アオイちゃんの晴れ舞台ですからね。必ず見に行きます。ユウジ様も、アオイちゃんも頑張ってください》
<当然見に行きますの!アオイの成長ぶりを確認しますの!>

アオイの夜の調べはみなが眠りに誘れるまで続いた

□□□□

side  -アオイ- ~開始~ ユウジ寝室・魔術大会前日の夜

今日はお姉ちゃんとユウジ義兄さんが一緒に寝る日だったから、僕も一緒にお姉ちゃん達と寝床を共にしている
ここ最近お姉ちゃんの日はずっと三人だ

最初は遠慮したよ?だって恋人同士の寝床だしね?
そういうことをするものだと思っていたから
でもお姉ちゃんが15になるまではただ一緒に寝るだけみたい
ユウジ義兄さんのたっての願いだと聞いた時は驚いた
でも同時に本当にお姉ちゃんを大切に想ってるんだな、とも思った

普段のユウジ義兄さんは女性にだらしないけど、
本当に大切な人にはすごく優しいし、カッコイイ
お姉ちゃんだけじゃない、家族みんなにも優しい
僕もその一人だ。明日の魔術大会の為にハープをくれた
ユウジ義兄さんが僕の為に創ってくれたハープ・・・

そうだよね・・・明日なんだよね、魔術大会。怖いな・・・
どうして僕が選ばれちゃったんだろ・・・
ずっとそのことを考えながらなかなか寝付けないでいた

「寝れないのか?アオイ」
『う、うん。なかなか寝付けなくて・・・』

ユウジ義兄さんの背中越しから声が掛かってきた
ユウジ義兄さんはお姉ちゃんと抱き合って寝ていたはず
僕が起きていたのがなんでわかったの?

ユウジ義兄さんが体勢を変えて僕と向き合った
うっ。すごい近い・・・。すごくどきどきする・・・

「そんなに震えていたら誰だって背中越しでもわかるぞ?」
『え?震えてい・・・』

本当だ・・・。ぷるぷる震えてる
考え事してたから全然気付かなかったよ

「やっぱり怖いか?魔術大会」
『う、うん。やっぱり戦うのは怖いよ』
人を傷つけるのも、傷つけられるのも嫌だよ・・・

「本当にダメだと思ったら棄権すればいい。無理する必要はない」
『で、でも僕が逃げちゃったら、ユウジ義兄さんやシャルさん、クラスのみんなに迷惑かかっちゃうよ?』

「シャル達三人なら大丈夫だ、友達だしな。アオイの味方だ。それとクラスの連中には文句は言わせない。俺がアオイを護ってやる。それに俺はアオイのお義兄ちゃんだぞ?迷惑だなんて思わないし、むしろどんどんかけてくれて構わない。もっとお義兄ちゃんに頼れ?俺はいつまでもアオイの味方であり、お義兄ちゃんなんだから」

ユウジ義兄さん、ありがとう・・
すごく安心する、本当にいい義兄さんだ

「まだ震えは止まらないか・・・。よし!震えが止まるおまじないだ。なにかで見た記憶があるが、まぁいいだろ」
『え?ユ、ユウジ義兄さん!?』

ユウジ義兄さんの顔がどんどん近づいてくる
な、なに?なにするの?おまじないってなに?
混乱している僕を余所にユウジ義兄さんは近付いてきてついに

『あっ・・・』
僕の額に温かい感触が伝わる

え?おでこにキスしたの?・・・きききき、キスぅ!?
お、おまじないってキ、キスなの!?う、嬉しい・・・
じゃなくて!お姉ちゃん!お姉ちゃんにバレたりしたら・・・

お姉ちゃんに視線を向けたら既に夢の彼方だった
よかった・・・。でもどうして?
混乱している僕を更にユウジ義兄さんは混乱させる
僕を抱き寄せたからだ

「ほら、震えが止まった。おまじないは成功だったな。怖いのなんて吹き飛んだだろ?」
あれ?確かにいつのまにか震えが止まってる・・・

ユウジ義兄さんが僕を抱きしめたまま優しく囁きかけてくれた
すごく温かくて、安心して、胸が高鳴る。心地いい・・・
でも・・・。お姉ちゃんに悪いよ。お姉ちゃんは裏切れないよ

『ユ、ユウジ義兄さん、ありがとう。・・・でもお姉ちゃんに悪いよ』
「安心しろ。今日だけだ、特別だ」

そ、そっか・・・
今日だけ特別なら・・・いいよね?
今日だけユウジ義兄さんを独り占めにしてもいいよね?
ユウジ義兄さん、温かい・・・
サーシャお姉ちゃんがよく頭をすりすりしてるけど、
なんか気持ちわかるかも。僕もしていいのかな・・・
ううん!今は僕だけのユウジ義兄さんだ!してみよう!
すりすり~。ユウジ義兄さん~。ユウジ義兄さんの匂いだ
・・・なるほど。きっとサーシャお姉ちゃんの狙いはこれだね

「ぷっ。サーシャみたいだな」
!!!はぅ~、恥ずかしい・・・。でも怒られないからいいんだよね

「落ち着いたみたいだな、アオイ。魔術大会は無理しない程度でいい。アオイは戦うんじゃない、演奏しに行くんだ。アオイの素晴らしい演奏をみんなに聴いてもらうんだ。俺はアオイに頑張れとは言わない。むしろ頑張らなくていい。頑張らなくていいから、思いっきり演奏を楽しんでこい!みんなにアオイの演奏を楽しんでもらうんだ。そしてみんなに自慢させてくれ。俺の自慢のアオイ義妹はこんなにも素晴らしい娘なんだ、ってさ!」

僕は戦うんじゃないんだ・・・
僕の為に学んだ音楽を今度はみんなの為、ユウジ義兄さんの為に演奏していいんだ・・・
僕が演奏を楽しめばユウジ義兄さんの自慢になれる・・・

『ユウジ義兄さん、ユウジ義兄さんは僕の自慢の義兄さんだよ!』 
「アオイ、ありがとう」

こちらこそだよ、ユウジ義兄さん
僕に目標をくれただけでなく、力もくれた
一人ぼっちだった僕に本当の家族もくれた
ユウジ義兄さんの自慢にもなれて、僕の自慢にもなった
・・・。
なんとなく前々から気付いてた
でもようやくわかった。僕は・・・

ユウジ義兄さんの温かい胸の中で僕はそのまま眠りについた

□□□□

帝都エクスペイン・『迷宮区』闘技場 ~魔術大会当日~

僕の心は穏やかだった
心地いい緊張感が全身を包んでいた
いつもとは違いすごく冷静でいられる
ユウジ義兄さんもシャルさん達も驚いていた
僕もかなりビックリしている

長い開会式も終わり出番が近付いてくる
緊張感と高揚感が競り上がってくる
わくわくしてる?僕が?あんなに怖かったのに?
そして、僕の出番がきた

『ユウジ義兄さん。僕が頑張って演奏できたらなにかご褒美が欲しいの!お願い、聞いてくれる?』
なんだろう?言いたいことがすんなり言える?

「なんかずいぶんと心が成長したな、正直驚いた。そしていい顔だ。美しいぞ、アオイ!お願いなら聞いてやるさ。だから素晴らしい演奏でみんなを、俺を楽しませてくれ。そして俺にアオイを自慢させてくれ!行って演奏してこい!俺のアオイ奏姫!」

『うん!行って演奏してくるよ、ユウジ義兄さん!』

武舞台に向かい、対戦相手と向き合う

たくさんの視線が注がれる
以前ならきっと気後れした、でも今は心地いい
みんなが、家族が、お姉ちゃん達が、そしてユウジ義兄さんが僕を見てる
みんなの心に響く音楽を早く奏でたい!

対戦相手からは殺気のようなものを感じる
以前ならきっと怖かった、でも今は全く怖くない
昨夜震える怖がりの僕の為に、ユウジ義兄さんが特別な勇気をくれたから
ユウジ義兄さんの期待に早く応えたい!

試合の合図だ

『いくよ、精霊さん達。いつものように楽しくいくよ。・・・僕はユウジ義兄さんの為に音楽を奏でたい!』


前々から気付いてたんだ
お姉ちゃんやサーシャお姉ちゃんを見てて、なんとなくそうなんじゃないかって・・・
気付かない振り、ううん、自覚したらいけないんだ、ってずっと思ってのかも・・・


僕は・・・ユウジ義兄さんが好き
家族としてじゃない、義兄さんとしてじゃない
一人の異性として、一人の男性としてユウジさん・・・・・が好き!
この想いはきっとお姉ちゃん達にも負けない!!!

だからこそ僕はこう想うんだ
きっとこの想いは伝えたらいけないんだって・・・
だから僕は心の奥底にこの想いをしまおうと思う

だって想いを伝えなくても、ユウジ義兄さんはきっと愛してくれるから


『ユウジ義兄さん。僕は家族として、一人の男性として、ユウジさん・・・・・を愛しているよ』

想いをのせた音楽ラブソングが闘技場全体を優しく包み込む
まるで聴く者全ての心を奪うかのように・・・


【加護 勇者ユウジ『奏姫』を取得しました】
【スキル『恋慕』を取得   ランク:不明】


side  -アオイ- ~終了~

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