過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~賢妻とメイド~恋の相談会①

商都リブループ・ユウジ別荘 とある夜

今夜はとても月が綺麗です
ここリブループはエクスペインの都会特有の喧騒もなく、とても静かな場所です
夜の静けさと虫の合唱が心地好く自然と気持ちが安らぐ、そんな印象を受けます

私サーシャは今自室にてゆっくりと過ごしている最中です

本当ならユウジ様のお側に行きたいところですが、今夜のユウジ様のお相手はアカリさんです
ユウジ様の夜のお務めは仲良く順番に!
これはお嫁さん会議で決めたことなのでしっかり守らないといけません
そういう訳で今日は自室で大人しく過ごしている最中です

私は夜に魔法の鍛練をするようにしています
日中はもちろんセリーヌちゃんとの鍛練ですね
私の目標はセブンバレットの二式以上の獲得です
私はまだ一式しか使えないので早く全てのセブンバレットを覚えたいものです

セブンバレットは今のところは私とユウジ様しか使えない魔法です
ユウジ様が私を信頼してくださったからこそ教えて頂けた魔法だと思うんです
だからこそ私とユウジ様を強く結ぶ魔法なだけに、いつまでも一式しか使えませんではユウジ様の信頼にお応えすることができないと思うんです
一日も早く全てを習得することが望まれます!

さて、今日も魔法の鍛練を頑張りますか!!


─────コンコンっ


私が鍛練を開始しようとしていた時に不意に扉をノックする音が聞こえました
こんな時間に来訪者なんてあまりないことです
何かあったのでしょうか?

私は扉を開け来訪者を確認してみるとそこには・・・

{こ、こんばんはなのじゃ。少し話がしたいのじゃ}

エステル様がいらっしゃいました。

予想外でした。私とエステル様はあまり接点がないからです
エステル様はどこか落ち着きがなくそわそわしているようでした
普段のエステル様とはどこか違う印象を受けた私は余程大事な話なのだろうと思い、とりあえず立ち話もなんですので、とエステル様を部屋の中に招き入れることにしました

部屋の中に入ったエステル様はやはりどこか落ち着きがないような感じでした
とりあえず私は就寝前に飲んでも問題なく、それでいてリラックスできる紅茶を用意しながらエステル様の話を待つつもりでいたのですが・・・

{・・・}
〔・・・?〕

一向に話してくれる気配がありません
困りました。あまり夜更かししてしまうとユウジ様に怒られてしまいますし・・・

〔〔それにしてもどうしたんでしょうか?エステル様は。普段とは全く違ったご様子ですし。余程言い出しにくい話なんでしょうか?〕〕

このままでは拉致が開かないと判断した私は、思い切って私の方からエステル様に尋ねてみました
心当たりが、というよりもほぼ確信があったからです

〔ユウジ様のことですか?〕
{!!!な、なぜ分かったのじゃ!?}

驚きすぎですよ、エステル様
そもそも分かったというよりも、私とエステル様の間で話すことといったらユウジ様のことぐらいしかないような気もするのですが・・・

私とエステル様は普段から親密にしている訳でもないですし、またその機会もあまりありません
私はメイド業と鍛練でそれなりに忙しいですし、エステル様はユウジ様といつも一緒にいるのでなかなか接する機会がないのですから

・・・。

〔〔そう、エステル様はいつもユウジ様と一緒なんですよね。正直羨ましいです・・・私だってユウジ様と一緒にいたいです。王都にいた時みたいに一日中ユウジ様のお側にいて、ユウジ様のお世話をしたり、ユウジ様に抱きしめられたりして甘えたいです。ユウジ様にもっと私を、私だけを見て欲しいんです・・・〕〕

だけど私にはユウジ様との間で交わした果たすべき『約束』があります
いつまでもユウジ様の隣で、ユウジ様が愛してくださる私の笑顔を見せ続けること
その『約束』を守る為にも、そして私の居場所を守る為にも日々精進しなければなりません!

〔〔・・・だからでしょうか。かつての私と同じように、一日中ユウジ様とずっと一緒にいるエステル様の気持ちが私には痛いほどよくわかります〕〕

〔ユウジ様のことで何かお悩みなんですよね?私でよければ相談に乗りますのでどうぞお話になってください。もしエステル様が望まれるなら膝もお貸ししますが・・・〕

セリーヌちゃんとエステル様は、大概ユウジ様の膝上にいることが多いのでそのほうが落ち着くかと思い提案してみたのでしたが・・・失礼でしたでしょうか?

{サーシャありがとうなのじゃ。遠慮なく座らせてもらうのじゃ。─────実はの・・・}

そう言ってエステル様は私の膝上にすっぽりと収まりました

〔〔あっ。そこは遠慮なく座るんですね。まぁ提案して正解だったということでしょうか?・・・それにしてもユウジ様がセリーヌちゃんやエステル様を膝上抱っこしたがる理由がよく分かります。なんというか、とてもなでなでしてあげたくなる衝動に駆られますね。小動物を愛でるような感覚でしょうか?〕〕

私は自然と、エステル様の小動物みたいなあまりの可愛さにぎゅ~と抱きしめていました


こうして私とエステル様の恋の相談会が始まりました


□□□□

side  -エステル- ~開始~

お師匠様からの告白への答えを出すべく妾は日々悩んでおるのじゃが、一向にその答えがでないのじゃ
かと言って、ずっとお師匠様を待たせる訳にはいかないのじゃ
有り得ぬとは思いたいが、万が一お師匠様の気持ちが妾から離れるなんてことがあったら・・・

{{嫌なのじゃ!絶対嫌なのじゃ!妾はお師匠様が好きなのじゃ!お師匠様に嫌われたくないのじゃ!妾はお師匠様だけのものなのじゃ!───でも自分自身の気持ちにも嘘をつきたくないのじゃ。ごまかしたくないのじゃ。───妾はお師匠様を独り占めしたいのじゃ・・・妾だけを愛して欲しいのじゃ。でもお師匠様を妾だけのものにすることは現状難しいのじゃ・・・}}

毎回毎回こんな考えばかりが頭の中をぐるぐる回る日々
これでは何も進まないのじゃ。このままでは本当にお師匠様が妾から離れてしまうかもしれないのじゃ

そんなことになるぐらいならいっそ・・・


そして妾は意を決してある人物の部屋の前まできたのじゃ

お師匠様には既に婚約を交わした相手が4人いるのじゃ
女神のヘイネ、王女のセリーヌ、幼馴染のあかり、そして・・・

{こ、こんばんはなのじゃ。少し話がしたいのじゃ}
〔こ、こんばんは。お話ですか?・・・わかりました。立ち話もなんですから中へどうぞ〕

妾が夜半に訪れたのはサーシャの部屋なのじゃ
お師匠様が婚約を交わした相手でもあり、お師匠様の専属のメイドでもあり、そしてお師匠様から深い愛情を注がれている人物でもあるのじゃ

{{妾とサーシャにはあまり接点はないのじゃが、お師匠様から深い愛情と信頼を得ているサーシャなら信用できるし、妾も安心できるのじゃ}}

今回妾がサーシャの部屋に訪れた目的はただ一つなのじゃ

妾がいつまでも告白の答えを出さないことで、もしかしたらお師匠様が妾から離れてしまうかもしれない・・・
そんな恐怖を日々感じてしまうぐらいならいっそ・・・
今までひた隠しにしていた気持ちを押し出して誰かに相談してみよう!と思ったのじゃ

そして相談するなら、サーシャが一番適任だと判断した上でサーシャの部屋を訪れたのじゃ

□□□□

妾はサーシャに勧められるままに部屋へと入ったのじゃが・・・
いきなり手持ちぶさたになってしまったのじゃ

{{話をどう切り出したらいいのかが全くわからぬのじゃ。サーシャとは普段から仲がいい訳でもないので話すネタもないのじゃ。いきなり本題を話し始めてもよいのじゃろうか・・・}}

サーシャを見るとなにやら紅茶の用意をしてくれているのじゃが、やはり妾の態度に困惑しているみたいなのじゃ

{・・・}
〔・・・?〕

妾とサーシャの間になんとも言えぬ空気が流れているのじゃ
そもそも妾がサーシャに相談しにきたのじゃ
妾から話し始めねば何も始まらぬのじゃ
そう思っていた時にサーシャから不意に言葉がかかってきたのじゃ

〔ユウジ様のことですか?〕
{!!!な、なぜ分かったのじゃ!?}

驚いたのじゃ。まさにお師匠様のことを相談しにきたのじゃ
でもなんで分かったのであろう?
やはり女の勘というやつなのじゃろうか?

サーシャはお師匠様の婚約者の中でも嫉妬深い性格なのじゃ
そして妾もきっと嫉妬深い女なんだと思うのじゃ
だから妾と同じ嫉妬深いサーシャなら、妾の気持ちに共感しやすいのではないかと考えたのじゃ
これが相談するならサーシャが一番適任だと考えた大きな理由なのじゃ

〔ユウジ様のことで何かお悩みなんですよね?私でよければ相談に乗りますのでどうぞお話になってください。もしエステル様が望まれるなら膝もお貸ししますが・・・〕

その後サーシャが膝を貸してくれると言うので遠慮なく座らせてもらったのじゃ
妾はこの膝上抱っこもなでなでの次に好きなのじゃ
こうして座っていると高確率でなでなでもついくるからなのじゃ!
もちろんお師匠様のなでなでや膝上抱っこが一番なのじゃが、それでもサーシャの膝上抱っこは優しい感じがしたのじゃ

{{サーシャはいい匂いがするのじゃ。それにお師匠様とはまた違った安らぎを感じるのじゃ。まるで母上に抱かれているような・・・}}

サーシャの気遣いで落ち着きを取り戻した妾はようやく本題を切り出すことができるようになったのじゃ
ありがとうなのじゃ。サーシャ!
途中何故かサーシャが妾をぎゅ~と抱きしめてきたのじゃが、悪い気はしなかったのじゃ


こうして妾とサーシャの恋の相談会が始まったのじゃ


side  -エステル- ~終了~

□□□□

〔エステル様の話をまとめますと、エステル様はユウジ様のことが好きでユウジ様を受け入れたい気持ちはあるけど、その半面ユウジ様を独占したい気持ちもあってどうしたらいいか迷っていると言うことですね?〕

〔〔なるほど。エステル様の気持ちは痛い程よくわかります。私も今は王都にいた時よりかはマシにはなりましたが、それでもユウジ様を独占したい気持ちは確かにありますしね〕〕

{サーシャは、サーシャはないのか?お師匠様を独占したい、自分だけを愛して欲しいと思う気持ちが}
〔もちろん普通にありますよ?毎日思ってもいます〕

〔〔ご本人が目の前にいるので口に出して言えないですが、むしろ私なんてエステル様にすら嫉妬しているぐらいですしね!毎日毎日ユウジ様にべったりしているし、ユウジ様もユウジ様です!エステル様ばっかり構ってて!もっと私に構って欲しいです!〕〕

{そうなのじゃな。やはりお師匠様の婚約者ともなると妾とはちが・・・ふぇええ!?毎日思っておるじゃと!?}

エステル様から聞いてきたのになんで自己完結しようとしたんでしょう・・・
とりあえずこれは相当思い煩っているということでしょうか?

〔〔私には親友のセリスがいて相談にも乗ってくれたので助かりましたが、エステル様は誰にも相談せずに、相談できずに一人で悩んでいたんでしょうね。もっと早く気付いてあげるべきでした。ユウジ様がエステル様にお熱を上げているのはかなり前から分かっていましたのに・・・エステル様がいずれ私達お嫁さんの中に加わることになるかもしれないことは薄々感づいていましたのに・・・ユウジ様の専属メイド失格です。誰よりもユウジ様の身辺に気を遣っていないといけませんのに。それにもっと私達は積極的にエステル様と交流すべきでした───そもそもエステル様もエステル様ならユウジ様もユウジ様です!いつもベタベタベタベタ!べったりしすぎなんです!もっとこう、私達家族と積極的に関わってくれればこんなことには───はっ!落ち着いて。落ち着いて。とりあえずこれからはエステル様との時間を、交流を増やしていかないとですね!エステル様が気兼ねなく相談できる関係にならないと!〕〕

{サーシャは毎日お師匠様を独占したいと思っているのに今の現状を容認しておるのか?サーシャはお師匠を独占できておらぬのに・・・}

むっ。確かに私はユウジ様を独占できてはいないですが・・・
なんかこう気に障る言い方ですね。
とりあえず今はスルーしますか

〔そもそも私には今の状況を容認する資格はないんですよ?確かに私はユウジ様の婚約者になってはいますが、あくまで婚約者(仮)だと思っています。私だけじゃありません。アカリさんだってユウジ様のお嫁さんになってはいますが、正解にはお嫁さん(仮)なんです。私達の中では唯一セリーヌちゃんだけが正式な婚約者となっているんです〕

{(仮)?どういうことじゃ???}

あ~エステル様はマリー様のことは知らないんですね
といっても私もお話を聞いただけなんでお会いしたことはないんですが・・・
そこで私はエステル様に話で聞いたマリー様像を覚えている限り教えてあげることにしました

とにかく強くてユウジ様でも本気を出さないとまずい相手なこと
とにかく嫉妬深くてセリーヌちゃんが恐怖を抱いていること
マリー様の逆鱗に触れて犠牲者が何人も出ていること
ちょっとめんどくさい性格で私達はそのマリー様に認めてもらう為に毎日鍛練していることなどなど

話を終えてエステル様を見てみると、どう反応したらいいのか困っているようでした
気持ちはわかります。話だけ聞いてもちょっと信じ難い内容ばかりですから

〔私も最初はちょっと信じられない内容でした。ユウジ様より強い存在など本当にいるのか疑問でしたし。でもヘイネ様の存在が私の中の考え方を変えさせてくれました。嫉妬にしたって、私達みたいな規格外の人間が他にもいると考えたらそういう人が一人ぐらいいてもおかしくないはずです。だから私はその話を信じて毎日鍛練に励んでいます。婚約者(仮)という立場ですが、マリー様に認めてもらってユウジ様の本当の婚約者になる為に。ですから私が今の現状についてどうこう言える資格はないですし、そんなことを言っている余裕すらないんです〕

{ぐぬぬ。確かにサーシャの言う通りなのじゃ。なるほど、サーシャはそのマリーとかいうのに認めてもらう為に鍛練しておるから今はあまり余裕がないのじゃな・・・しかし嫌な気持ちになったりはせぬか?妾は別にサーシャ達のことは嫌いではないのじゃ。でもお師匠様を独占したいと思った時にはどうしても・・・}

やっぱりセリスが言った通りでした
誰でも嫉妬はしちゃうし、嫌な気分になったりするんですね
かつての、いや今の私でもそうですし
私はそれをセリスに教わり受け入れることができました

今のエステル様はかつての私と一緒です
・・・いや、ちょっとだけ私より嫉妬深い子にしときましょう
以前私がセリスから教わったように、今度は私がエステル様に教えてあげる番です!

〔エステル様。これは私の親友が言っていたことなんですが、嫉妬なんて誰でもしちゃうものらしいですよ?あのユウジ様だってきっとしちゃいます。だから別に嫉妬や独占欲を持つことは悪いことじゃないんです。先程も言いましたが、私なんて毎日嫉妬しちゃってますから。でもそれを含めた私の全てをユウジ様は愛してくださっているんです。ですから私は嫉妬することはあってもあまり嫌な気分になったりしません。その分ユウジ様に甘えていますから!ですからあまり気に病まないでください。エステル様のそれは当たり前のことであって、悪いことではないのですから〕

上手く伝えられたでしょうか?
エステル様は大変頭が良いとユウジ様から聞いてるのですが・・・
エステル様のお顔を伺うと少し晴れやかな顔になっているようです
どうやら少しは私の話もお役に立てたみたいです

{サーシャ、ありがとうなのじゃ。でも独占欲のほうはどうしたらよいのじゃろう?妾がひたすら悩んでおるのはそこなのじゃ・・・現状お師匠様を独り占めすることができないのは理解しておるのじゃ。でも妾はどうしてもそこだけは譲れないのじゃ!しかし仮に独り占めできたとしても今度はサーシャ達に迷惑をかけてしまうのじゃ。それも妾は嫌なのじゃ!妾はお師匠様とずっと一緒にいたいのじゃ。でも妾だけのものであっても欲しいのじゃ。しかしサーシャ達に迷惑かけたくもないのじゃ・・・妾はどうしたらいいのじゃ・・・}

う、う~ん。詳しく聞くと独占したいけどみんなに迷惑はかけたくないってことですか
色々矛盾してはいますが、なんとなくエステル様の気持ちは分かります
私もユウジ様を独占したい気持ちはありますが、それ以上にユウジ様が構ってくれますし、何よりユウジ様のお側にいれることが嬉しいんですよね
一生懸命努力してようやく手に入れかけている場所だから

私とエステル様だと立場が違うので、どうしてもその辺りはお役に立てないのかもしれません
愛しい人ユウジ様を追いかける立場の私と、愛しい人ユウジ様から追いかけられている立場のエステル様

〔〔・・・やっぱりちょっと悔しいし、羨ましいです。例えユウジ様を独占できなくとも、ユウジ様から求愛されるなんて夢のようなことです。私ならきっと泣いて喜びます。なんなら私がエステル様と変わってあげたいぐらいです!・・・それでもエステル様はエステル様なりに悩んでいらっしゃっるんですよね。同じ愛しい人を愛する仲間です。なんとか力になってあげませんと!〕〕

〔エステル様。エステル様のお悩みを解決する手段が今の私には思い当たりません。力不足で申し訳ありません。ただ相談に乗ることならできますので、宜しければ今後もお話ください。一緒になにかいい解決策を見つけていきましょう〕

{よ、よいのか?今後も相談しに来てよいのか?迷惑になったりせぬか?}

エステル様からは縋るような、そしてとても不安そうな表情が伺い知れました
とても贅沢な悩みで張り倒・・・ではなく、エステル様からしてみれば本当に悩ましい問題だったのでしょう
今まで一人で悩んできた苦労が滲み出ていました

そこに解決の糸口となるかもしれない手をさしのべました
後はその手を掴むかどうかはエステル様次第です
もしエステル様が掴んでくれたなら私は全力でサポートしようと思います

〔迷惑になるかならないかはわかりません。でも私はエステル様のお手伝いをしたいと思います。エステル様のユウジ様への想いは本物ですから。ユウジ様風に言えば、エステル様に頼まれたからお手伝いするのではなく、私がお手伝いしたいからするんです!エステル様は遠慮なく手伝われてください!っと、こんな感じでしょうか?〕

私は私なりにエステル様に気を遣わせないよう気を配ったつもりでしたが、エステル様は・・・

{似ておらんな。お師匠様はその言葉の裏に下心を隠しておるからな。サーシャみたいな純真な心は一切ないのじゃ。でも、まぁそこがお師匠様のカッコイイところでもあるのじゃが・・・裏表のない素直な気持ちが伝わってくるしの。そして、サーシャありがとうなのじゃ。今後もよろしく頼むのじゃ!}

なにやらユウジ様がひどい事を言われてますが・・・
どうやら私が気を遣う必要もなかったみたいです
確かに頭の回転が早く賢い方なのでしょう

私がさしのべた手は見事捕まれました
それなら私は全力でサポートしようと思います!

〔エステル様。私から提案があります。今後私達と接する機会を増やしてみてはいかがでしょうか?協力を得るなら数は多いに越したことはありません。手始めにユウジ様の婚約者達から始めてみてはいかがでしょうか?〕

{そうなると、サーシャにセリーヌに、あかりなどじゃな?}

〔その通りです。機会があればヘイネ様も交えてみてもいいかもしれません。いずれエステル様も私達と同じ婚約者になるのですから、早いうちに親睦を深めておくのはいいことだと思います。きっとユウジ様も喜ばれますよ!それに私以外の婚約者にも相談しやすくなると思います!それはきっとエステル様のお悩みの解決の糸口になるかもしれません。エステル様、ユウジ様の為に一緒に頑張りましょう!〕

エステル様の顔からはとても明るい笑顔が見られました
さすが公爵令嬢です。とても美しいものでした

でも!ユウジ様の一番好きな笑顔の座は譲りませんからね!

エステル様が一安心されたのかとても眠そうな顔をしています。とかく言う私も少し眠いです
私達は随分長い時間話し込んでいたみたいです
エステル様は今にも眠ってしまいそうです
そこで私はあることを閃きました

〔エステル様。早速親睦を深めましょう。今日は私と一緒に寝ましょうか〕

エステル様からの返事はありませんでしたが、私に抱き着いてるでこれは了承なのでしょう

〔〔そういえばユウジ様以外の方と一緒に寝るのは妹のタリス以来でしょうか。今はもうほとんど連絡をとっていません。妹のタリスは元気にしているでしょうか・・・今度連絡してみるのもいいかもしれません〕〕

私はそんな感じで感傷に浸っていましたら、セリーヌ様が・・・

{う~ん。サーシャは母上みたいな匂いがするのじゃ。落ち着くのじゃ~}

〔〔あ、あの。私、婚約したと言ってもまだ未婚ですし、まだ子供いないのですが・・・母親みたいって褒め言葉になるんでしょうか?でもエステル様みたいな可愛い子供だったらきっとユウジ様も喜んでくれますよね。・・・いや、私よりも可愛かったらユウジ様が手を出しかねないですし、私のことを構ってくれなくなっちゃうかもしれません。・・・生まれてくるなら私よりもちょっと下ぐらいのほうがいいかもしれませんね〕〕

エステル様は既に夢の中へと旅立たれたようです
すぅすぅと可愛い寝息が聞こえてきました
私もまだ見ぬ将来の我が子に嫉妬しつつ意識を手放しました


こうして私とエステル様の恋の相談会はお開きとなりました

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