そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

遠征

 田嶋との決闘の様な喧嘩の様な出来事があって暫く経った。

 上級ダンジョンであるサルサ大迷宮を攻略した天馬、アゲハ、ルーチェ、玲華を残し、他の面子はそれぞれが強くなるために迷宮を攻略しに行っていた。

 まだ上級ダンジョンに到達したものはいない。

 あの田嶋すらも攻略に参加していると聞いて天馬は内心で少し驚いていた。
 どういう心境の変化だろうか。
 だが、嫌な予感は拭いきれていなかった。

 そんな天馬パーティーは、王の間に呼び出されていた。
 そこにいたのは国王、サナ、数人の大臣、そして見知らぬヒョロヒョロとした七三分けをしている貴族っぽい人がいた。

 貴族っぽい人も気になったが、国王の隣に平然と立っているサナに天馬は目が行ってしまう。
 あれから何もないとは言え気になるものは気になる。
 だがそうやって見ていると後ろから機嫌を悪くした3人につねられる。

 解せない天馬くん。

「国王様、俺達が呼ばれた理由をお聞きしてもよろしいでしょうか!」

 本来なら天馬はサルサ大迷宮第100層のボスにリベンジしたいところだった。
 リベンジと言うよりは初挑戦の方が正しいだろうか。

 だが準備中に大臣の一人に呼ばれたので、着いていくとアゲハ達も丁度やって来た所で一緒に話を聞くことになったのだ。

「まぁ、落ち着いて欲しい。まずは彼の方から紹介しよう」

 国王は七三の貴族へ目配せをすると、少し緊張してるのか、男はビクッとしながらも振り返り、天馬達へと礼をする。

「お初にお目にかかります。私はブンシャ家当主のシン=ブンシャと申します。以後お見知りおきを」
「あ、はい。俺は天馬と申します。勇者やってます、作法は得意じゃないので許して下さい」

 ヘコヘコと礼を返す天馬は、内心では、「経済とゴシップに詳しそうな人だな……」とか考えていた。

 アゲハ、ルーチェ、玲華もまた然り。

「それで、ブンシャさんが俺達と関係があるって事ですか?」
「うむ、その通り。実は彼がついこの前、辺境へと出向いている時に魔物に襲われたらしくてな」
「……それって外に出れば誰にでも起こりうる事では?」
「そうだな、その程度ならワシはこやつをわざわざ呼んだりせんよ」
「酷い言われようだね」

 さらっと見下されるシン=ブンシャ。
 メディアはいつの時代も嫌われものである。
 何の話だろうか。

「と言うことは余程の事が」
「うむ、それが見たこともない魔物らしくてな、それも群れだったらしい」
「その時はたまたま駆けつけてくれた冒険者が助けてくれた訳ですけどね」
「ブンシャさんは護衛連れてなかったんですか?」

 そう聞くと苦笑いを浮かべながら頭を掻くブンシャ。

「実は全員が結構な傷を追ってましてですね……」
「歯切れが悪いですね」
「それもそうだ、こやつは辺境へと孤児院を潰しに行って返り討ちにあって帰ってきたのだからな」
「ちょ!?」
「それに本来ならそのまま魔物に食われてしまうのは助ける必要なぞ全く無い」
「孤児院を潰す!?」

 なんでそんな男が王にあっているのか、そもそもこの国では孤児院は大切に扱われているのだ。
 それをしておいてこの場にいる。
 本来なら処刑されても文句は言えない筈だった。

「だから、それは私は命令されてやったんですよ! 本来ならそうはしたくなかったと言ってるじゃないですか!」
「ふん、どうだかな。口では何とでも言えるわ」
「だから命令してきた貴族の名前と仕出かしてきたことを纏めて持ってきたんじゃないですか!」
「分かっておるわ、冗談じゃ冗談」
「国王様が言うと冗談に聞こえないんですよ!」

 まるで長年の親友の様に話す二人に天馬達は少し驚く。
 相手は王であるにも関わらず、この男はちょいとばかし失礼だったのだから。

「国王様、その……俺が言うのもアレですけど、言葉使いとか良いんですか?」
「ん? ああ、気にせん。普通の貴族ならこうすると嘗められるがこやつは小心者だからな、ワシを脅せばどうなるか位はわかっておるよ」
「これでも結構内心焦ってるんですけどね」
「にしてもブンシャよ。皮肉だな、孤児院を潰しに行って返り討ちにしてきた冒険者に助けられるのは」
「あー、彼にはもう頭が上がりません……」
「え? 返り討ちにしてきた人が助けてくれたんですか?」
「そうなんですよ。物凄い速度でやって来て魔物を追い払ってくれましたから」
「聖人ですね」
「勇者様程ではありませんよ。私を貴族として全く扱ってくれませんでした」

 「この世界にそんな人もいるんだなぁ」と天馬は思いつつ、話が脱線しているのがわかった。

「国王様、それで俺達が呼ばれた理由はなんですか?」
「そうじゃった、すっかり忘れとった。ブンシャを襲ったと言う魔物の調査、そして機があれば討伐して欲しい」
「……それは王都にいる冒険者ではダメなのですか?」
「それがのう、王都って言うのは比較的安全な地帯でな、高ランクの冒険者は少数しか常駐しておらんのだ。それにこれはお主らの功績を立てるためでもある」
「功績?」

 そこから国王は説明をする。

 天馬達は勇者として召喚されて以来、訓練やダンジョン攻略に尽力してきた。
 それは、勇者と言う者を育てるためにやって来たことであり、実際には勇者としての活動などこの半年ほど何一つとして成していない。

 そのためか、城下町、牽いては周辺の国々にまで「勇者は本当にいるの? 嘘じゃね?」となってきている。

 プラウド王国は、勇者を育てるための支援金等を他国から支給されてその金で現在潤っている。
 だが、このままだとあらぬ疑いを掛けられ、支援が無くなってはいくら大国と言えども勇者の支援は厳しくなるのは目に見えていた。

 ダンジョンの攻略も功績にはなるが、一般市民からしてみれば凄さが良く伝わらない。
 だが、見知らぬ魔物を討伐し町を救うとなれば話は別だ。

 魔物は一般人としても、畑を荒らしたり、移動中に襲われることが多々あり、ダンジョンよりも近しい存在だ。
 そんな中で新種、見たことの無い強力な魔物と言うのは恐怖の対象に成りうる。
 そう言ったものを勇者が討伐し公表すればダンジョンとは違って民衆の指示を得やすい。

 国としては是非とも取り組みたい内容なのは間違いはない。

「成る程、事情は分かりました。その件、受けたいと思います」
「うむ、助かる。しかし、道等や馬車での長距離移動に慣れてはいないお主達は、準備を整え次第冒険者ギルドへと向かって欲しい」
「それは、何故ですか?」
「そこでこの辺の地理に詳しい冒険者を同行させようと思っとる」
「成る程、確かにおっしゃる通りですね、分かりました。早速準備に取りかかります」

 1度礼をした天馬達はそのまま王の間を出ていき魔物討伐のために動き出した。
 

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