そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

帰還パーティー


 帰還した天馬達が早速案内されたのは、大広間だった。
 その大広間には、他のクラスメイトが並べられた豪華な食事に舌鼓をうっており、楽しそうな雰囲気を放っていた。
 その様子を見た天馬達も自然と頬が緩む。

 しかし、内心では毎度こんな歓迎をされて申し訳ないとも思う。

 天馬達が上級ダンジョンであるサルサ大迷宮に入った辺りから、階層主を倒すごとにこうした豪華絢爛な食事が用意される。
 当初は天馬も断ってはいたのものの、王様からは士気を保つため、そして無事に帰ってきてくれた事への感謝の気持ちと言われてはそう簡単に断ることは出来ずに、諦めてしまった。

 こんな頻繁にパーティー等をしてしまって国のお財布は無事でいるのかが気になるが教えてもらえないのでもやもやとしている。
 しかし天馬達もダンジョンに入る度に深く潜っていくのでかなりの間はまともな食事は出来ない。
 なので申し訳なく思いつつも美味しい料理を堪能するのだった。

「なぁなぁ、天馬。今回の階層主はどうだったんだよ」

 天馬へとクラスメイトの一人が話しかける。その雰囲気は勇者死亡の事件当初よりも明るく、持ち直しているようにも見える。
 心の中で安心した天馬は質問に答える。

「あぁ、今回のは猪をかなり大きくした魔物でさ、突進と防御が厄介で全然刃が通らなくて苦労したよ」
「はあ~、お前がそんなに手こずるのか……」
「俺一人だったら大変だったね、これもルーチェ達のお陰だよ」
「おうおう、人を立てるね~。流石は勇者」
「勇者は君もだろ?」
「いや、まぁそうだけど……別の意味で勇者なんだよなぁ」
「ん? 何か言ったか?」
「何でもねぇ」

 美女を3人も侍らせているイケメン勇者は色々な意味で勇者だなとクラスメイトの一人は思いつつも食事を続けていく。

「そうそう、美女と言えば」
「そんな話してたか?」
「良いんだよ気にすんな。3人はどこに行ったんだ?」
「えーとそこに……あれ? いないな」

 どこに行ったのだろうと天馬ともう一人のクラスメイトはキョロキョロとしている。
 すると入り口となっている扉からお目当ての3人が入ってきていた。
 どうやら着替えてきていた様で、服も清潔であり、ついでに汗も流したのだろう、ほんの少しだけ髪に水気があった。

「なるほど、良く良く考えてみたら俺もボロボロだな。着替えてくるとするよ」
「気がつくの遅すぎだろ、料理もまだあるし、ゆっくり風呂にでも入れよ」
「お言葉に甘えてね」





 その後汗と汚れを落とした天馬は再び大広間へと向かって歩いていた。

「ん? あれは……田嶋?」

 天馬が歩いている場所は勇者達が部屋を借りている寮代わりの場所。
 田嶋は自らの自室から出て何処かへ行くようだった。

「そういえば大広間には来てなかったな。それに見るのも久しぶりだぞ、体調くらいは聞いておくか」

 そうして久しく姿を見せた田嶋を追いかけ始めた。




「あれ? 見失ったな……何処に行ったんだ?」

 天馬は田嶋を追って外にまで出たが途中に見失ってしまう。
 そして遂には大して行きもしない、行った事すらない城の裏側でさ迷う羽目になっていた。

「これはマズイ……早く戻るつもりだったんだけどな。これじゃあ長風呂が過ぎると言われてしまいそうだ」

 かなりどうでもいいことを思いながらも歩き続ける天馬は、少し開けた場所へとやって来ていた。

「あ、いた。なにをやってるんだ?」

 偶然か必然か、天馬は木陰の様な場所でただ立っている田嶋を見つけ、声をかけようと近寄ろうとする。
 主に帰り道を聞こうとしたことは言うまでもない。

 だがそこへ予想もしていなかった人物がやって来て、天馬は足を止める。
 どころか建物の影に隠れて様子を見ることにした。

「お待たせしました」
「あぁ~? 遅ぇんだよ、いつまで待たせてんだ」
「ここは今来たところと言うのが普通では? レディに対して失礼ですよ?」
「んなもん知るか。てめぇをレディって言うなら世の中全員レディだらけだぜ、腹黒姫よぉ」

 田嶋の隣に現れたのはこの国の姫、サナ=アーデン=プラウドだった。
 それを見た天馬は驚愕する。

「……なんで二人が、なるほどそういう関係だったのか、知らなかった」

 ずれたベクトルの勘違いを起こしていた。

「そういえば、大広間にはサナさん来てなかったもんなぁ……合うためか、こう、決定的な瞬間をみている気分だ」

 人に知られては行けない秘密を喋っている所を偶然目撃してしまった第三者の気分になっている天馬。
 実際にはその通りなのだが、この勇者は割りと残念だ。

「概ね間違ってはいませんね」
「ところでよぉ、天馬達が70層を突破したんだってなぁ」
「あら? 部屋に籠っている貴方にも伝わってましたか」
「あんだけ周りがドタバタしてたら気がつくだろうが」
「そりゃそうですね。その通りです、彼らはどんどん知からをつけていますが、貴方の方はどうなんですか?」
「引き籠ってたから変わってねぇよ。……そろそろ行動に移すしかねぇがな。力もつけなきゃなんねぇしな」
「ええ、是非私の目的のためにも働いてくださいね」
「っとに、腹黒だな」
「従順に従う貴方も貴方ですけどね」
「違いねぇ」
「おっと、そろそろ会食に顔を出さないと不味いですね。では、失礼しますね」
「あぁ、俺は後で行くとする」

 その後、サナは来た道を引き返し恐らく食事で賑わっている大広間へと足を運ぶ。
 もう一方の田嶋は頭を掻いた後で、怠そうに大広間へと向かっていく。

 その場に取り残された天馬は立ち尽くしていた。

「……なんの話をしていたのかサッパリだ!」

 ただ、二人の怪しい雰囲気は何となく感じたらしく、気を付けるように自分に言い聞かせ、自分もまたその場から離れる。

 そして迷子になった。

「そのゴーレム、元人間につき」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く