そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

王都へ

「王都まで? 何のためにだ」

 辺境ファンなら兎も角、王都? コイツに王都での交流があるとは思えないが、長く生きているらしいしその可能性も無くはないか。
 例えば、牙や角達と出会う前には色々と旅をしていたとなれば頷ける。

「王都にも私の古い友人がいてねぇ。ソレに手紙を書いたんだよぉ、だから渡して来てくれないかい?」
「……それは俺以外でも出来るだろう。ファンでギルドに頼めば届けてくれるんじゃないのか?」
「それはそうなんだけどねぇ。機会逃しちゃった。と言うか帰ったあとに思い出しちゃって、そこからは手紙の内容に迷ってさっき出来たところなのさ」

 重要な事をうっかり忘れるなよ。戻ってからと言うことは1ヶ月程内容に困っていた訳だな。
 いくら久しぶりに連絡をとろうと思ってもそこまでかかるのか、面倒だな手紙。俺は書かないようにしよう。

「まぁ経緯はどうでも良いか。それで、誰に届ければ良いんだ?」
「鍛治を営んでいる。トッポギと言う男に頼むよ」
「面白い名前の奴だな。まぁ、退屈しのぎにはなるか」
「そうだねぇ、1ヶ月もぐーたらしてるからね君は。そろそろ働きな」
「手紙に1ヶ月係った奴には言われたくないがな」
「おっと、ぐうの音もでないねぇ」

 尻尾は、カラカラと乾いた笑い声をあげた後に懐から手紙をだし、俺に差し出す。それを受け取り無くさないようにしまっておく。

「じゃぁ、早速行ってくるぞ」
「おや? もうかい。準備なんか要らないのかい?」
「持っていく物なんて殆ど無いぞ」
「それにしてもお金くらいは持っておいた方が良いと思うよぉ」

 それもそうか。金とられるかもしれないしな。ここは年長者の意見を取り入れておこう。

「そうしておく。少なくとも今日中には出発するとしよう。こんな森に何か起こるとは思えないが気を付けろよ、冒険者が来ないとも限らないからな」
「そこは任せておくれよ。来たらミンチにして夕飯にするさ、もちろんエマくんにもあげるよ」
「……それは流石にやめておけ」

 共食いさせようとするんじゃない。嫌がらせにも程があるぞ。それに、エマの事だ気づかなかったらおかわりまでするだろうが。
 ふざけあった後に尻尾に別れを告げ、祠へと金を取りに戻るとしよう。


 ◇


 再び祠へと戻った俺は金の入った袋をゴソゴソと漁っている。袋の在りかはエマが就寝するベッドの下にヘソクリの様に隠されている。
 殆ど冒険者が来ないが取り敢えずの対策らしい。この時俺が思ったのは流石にベッドの下は誰でも覗くんじゃ無いかと言うところだ。

 そしてベッドの下から取り出した金の入った袋をじゃらじゃらと漁る。相場が良く分からないので適当に銀貨30枚程持っていくか。
 足りなければ王都にもあるであろうギルドで依頼を受ければ良いと思うしな。

「エマにはそれ以外を残しておけばなんとかするだろう」
「何を残すんですか?」
「ん? いや、エマの為に幾らか金を残そうと思ってな。これならファンに行ってもなんとか出来るだろう? ……ん?」

 声がした方を振り替えって見ると後ろ手に手を組んで此方を見ているエマと目が合う。一体いつの間に……。

「なんだかランドさんが祠に入っていくのを見ちゃいまして」
「……感想は?」
「強盗の間違いでしたね」

 そう言って後ろ手に組んでいた手から突然短剣を抜く。物騒過ぎるだろ。

「何故に短剣をだす」
「今度は一体何をする気何ですかね?」

 どつやらコソコソと何かを使用としていることが不満らしい。特に隠す事でもないので教えるとしよう。

「野暮用でな、暫く森を離れる事になった。じゃあそう言う事で」
「私も行きますよ?」

 言うと思ったよ。分かっていたさ、バレた時点でエマは着いてくると。
 しかし疑問だな、何故わざわざ着いてくるんだろうか。行き先すら言ってないと言うのに。

「まだどこに行くか言ってないんだが……」
「関係ないですよ? 私はどんなときでもついていきますよぉ!」

 ドンッと胸を張るエマだが、何をそんなに堂々としているのだろうか。そこを主張されても此方は嬉しくは無いぞ。

「なんで着いてくるんだよ」
「ぶっちゃけ森、飽きました」
「人間には辛いだろうな」
「ランドさんもたまに人間くさいですけどね」

 何を言ってるんだコイツ。好きで人の形にはなっているが俺は人間じゃないぞ。
 うん、無駄話に華を咲かせている場合ではないな、森は広いんだからさっさと出ないと暗くなってしまう。

「じゃ、留守番よろしく」
「いや、だから私も行きますって」
「……」

 突っぱねても這ってでも着いてきそうだったので諦めた。
 ベッドなんて1度しか使ってないじゃないか……俺の苦労を返してほしいところだ。

「じゃ、行くぞ」
「ひゃっほう! 旅行ですねぇ!」
「違う」

 嬉しそうに跳びはねているエマを他所目に森から出ていく。
 王都の場所が分からないと思うだろ? エマが知っているのだから問題はない。

 エマがいなきゃどうするつもりだったのかと言うと、適当に走ってれば着くんじゃ無いかと思っていたりする。
 そんなことを伝えたりするとバカにされた目をされたのだが道がわからないんだからそれくらい許してほしい。

「さぁさぁ! さっさと王都で新しい冒険の始まりですよ!」
「慌てるなよ、冒険は逃げん……多分」

 森から抜けた俺達は王都へと足を運ぶ。エマは俺の手を取り王都の方向へと走って行こうとする。
 本来ならばエマに引っ張られても動くことは無いんだが今回は大人しくしておいた。





「むにゃむにゃ……ふふふ、お肉が沢山ですよ~」

 夜になり、俺は寝ているエマを当然の如くお姫様抱っこをしながら王都への道を走っている。
 ここで心底後悔した。

 エマ、かなり邪魔である。

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