そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

スキル


 王女に連れられやって来たのは訓練所と言うか場所らしいな。
 そしてこの後忙しいとか何とか言って変わりに変なおっさんが現れた。

「俺の名前はボルドー、このプラウド王国の騎士団の団長だ。これから長く付き合っていくからな気安く接してくれ」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」

 クラスの奴等が揃って頭を下げた。 
 目立つのも嫌なのでほどほどに下げておこう。

「なかなかやる気じゃねぇか! こいつぁ楽しみだ!」

 等と言っている。お兄さーん、こっちにやる気のない奴がいまーす。俺だ。

「さて、おそらく見たところ実践経験なんて有るようには見えん基礎から教えるとして、まずは自分たちの力の確認だな」

 ほぅ、ちゃんと教えてくれるのか。
 それはそうか、魔王が本当に悪ければここで勇者に手抜きなんてしたら終わりだ。

「ステータスと念じてくれれば直ぐに分かるぞ、どんなスキルが備わっているか楽しみだ」

 なるほど、少しわくわくするな。
 何せ一応異世界だからな、魔法とかもあるんだろう。
 はい、ステータス。

 Lv1 
 スキル:付与

 付与? なんだそれは。
 よく見てみると、どんな効果か見ることができた。

 付与:指定し、触れたものに付与したい効果を念じると魔力を消費し、その効果を発揮する。

 強いのか弱いのかわからん。
 というかアバウト過ぎるだろ。
 どこまでなら付与ができるのだろうか。

 すると、出来るものがリストアップされた。

 付与:攻撃小up 防御小up 速度小up 回転

 Lv1だし、こんなものだろう。
 一人で納得していると回りの奴等は興奮していた。

「どうやら良いスキルだったみたいだな」

 おっさんは渋い顔ではにかんでいた。

「おーい、お面君、どんなスキルが手に入ったんだぁ」

 下卑た笑い声をあげながらクラスの奴が話しかけてきた。
 はて、誰だったか。
 そして何故だろうかクラス全員がこっちを見ている。
 そうか、全員でスキルの詳細を共有していたのか、俺はいつも一人でいるから誰もわかっていないだろうな。

「人に聴くならまず自分から言うのが常識じゃないのか?」

 すると俺に話しかけた奴は顔を怒りで歪め、自分のスキルが良かったのだろう。
 得意気になり自慢してくる。

「へっ! 俺のスキルはなぁ、獣化だ!」

 名前だけ言われてもな、おそらく獣に化けるとかそんな辺りだろう。
 強そうだな。

「おい、今度はテメェの番だろうがぁ」
「ん、あぁ、悪いな、俺のスキルは回転だ」

 半分嘘だが、本当にある能力だ。完全な嘘をついた訳じゃない。

「はっは! おい、聞いたか回転だってよぉ! 回るだけなんてくその役にも立たねぇな!」

 人の能力を聞いて笑いたいだけか。
 クラスにもちらほらと笑っている奴がいるな。
 まぁ、こんなもんだろう。

「おい、やめないか、俺達は仲間なんだぞ!」

 熱血正義こと三神天馬が割り込んできた。
 お前が来ると綠なことにならん。帰れ。

「だってよぉ、天馬ぁ、こいつぁ正直弱すぎんだろ。剣聖様だってそう思うだろ?」
「強いか弱いかじゃない! これから切磋琢磨して強くなれば良いんだ! なぁ、そう思うだろ?」

 こっちに話を振らないでくれ。
 というか、剣聖か、絶対強いな、さすが勇者。

「彼だってきっと役に立つ! 俺達は全員が一つになって戦うんだ! 必要ない人間はいない!」

 おっと、獣化男が俺をバカにして祭り上げようとしていたのに自分が怒られて悔しそうにしているな。
 気にすることないのにな。

「努力すれば報われるさ、一緒に頑張ろう!」
「天馬君が言うんだから間違いないよ! 一緒に頑張ろうね!

 なんか女子が割り込んできたぞ、後なんか視線が痛い気もするな。
 肩に手を置くんじゃない。友達じゃないだろうに。
 それと遠回しに役立たずって言われてるような物だ。

「話合いは終わったか? では、それぞれ軽く能力の確認を指定って、今日は終わりにしよう」

 それはありがたい。
 早速回転を試してみたいからな。

 ──ゾワリ

「っ!?」

 はて、何の感覚だろうか。見られていたような、まぁ良いだろう。


 俺は訓練所の端っこでとりあえず剣を借りて回転を自分に付与する。
 回転切りの様なものをイメージする。

 ──ブォォン!

 勢いよく回った俺の体。
 ヤバイ、気分が悪くなってきた。 
 おまけに視界が回っているせいか、周りの様子がわからない。風の音で聞こえもしない。

「おおおおおおおおぉぉぉぉ!」

 数分後、止まった俺は、平衡感覚を失い当然倒れる。吐きそう。
 あれ、手に持っていた剣が無いな、どこだ。

 気持ち悪いが見渡すと、獣化のスキルを持った男が壁にへたり込んでおり、頭のギリギリのところに剣が刺さっていた。

 何してんの、アイツ。
 さて、俺の剣はどこだ。

 キョロキョロしていると剣聖に呼ばれた。
 近寄ると何か怒っていた、回ってただけなのに大袈裟だな。
 剣聖の回りには女子が数人群がっていた。これだからモテる奴は。

「君が何故呼ばれているかわかるか」

 俺は、首を横に振る。
 回っただけだ、誰も巻き込んではいない。

「よく言えたな! 彼を見ろ!」

 獣化男? 変わった座りかたしてるな。
 あれは変身するためのポーズだろうか。

「違う! 君が投げた剣が彼に飛んでいったんだ!」

 あー、あれ俺の剣か。
 いやー、無事でよかった。

 剣聖から離れ、剣を抜き取ると俺は自分がいた場所に戻り、再び回転を付与しようとする。

「ちょちょちょ! ちょっとまって! 何をしようとしてるんだ!」

 何ってスキルの確かめだろうに。
 そのための時間だろう、お前に構ってる暇は無いんだがな。

「君が飛ばした剣のせいで、人が怪我しそうになったんだぞ! それに、あの風! なんなんだ!」

 風? 何の話だ。
 全く、剣は俺が悪いとしても風ごときで何をごちゃごちゃと、それに事あるごとに俺のせいにされては困る。
 お前は何でもかんでも妖怪のせいにする小学生か。

「とりあえず、自分で回転するのは止めてくれ」
「わかった」

 仕方なく頷いた俺は、剣聖の肩に手をおき、回転を付与する。
 そんなにやりたかったなら言ってくれれば良いのに。

「なっ、これはぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」

 風強いな、やれやれコイツが起こしてたんじゃないか。全く人のせいにするとは勇者失格だな。


「とぉぉぉぉめぇぇぇぇてえぇええぇえ!!」

 付与、回転はなかなか強いな、気に入った。

 俺は回る剣聖を放置して、自分も回ろうかと思ったが、剣聖の取り巻きどもに止められた。剣聖も止めるように言われた。

 あんなに楽しんでいるのに、お前らはケチだな。

 仕方なく止めてやると、剣聖は盛大に吐きました。

「うわぁ……」

 その後、俺は団長から拳骨をもらいました。

 解せぬ。

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