そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

少しの実験

 こうして異世界へ来て、十日ほどたっただろう。
 訓練でも多少レベルが上がるらしく、俺は、ステータスを見ていた。

 Lv3
 スキル:付与[攻撃小up][防御小up][速度小up][回転][硬化][軟化]

 二つも覚えた。
 だが、回転と嘘を言っている今、全く実験できない。

 [硬化]はそのまま、固くなるだけだ適当な石で試して、剣聖に切ってみろと構わずぶん投げたらあっさりと切られた。

「なんだこの石! すごく固かったぞ!」

 まずまずの実験結果は得られたが、変わりにクラスからの信用度は減った気がする。
 気のせいだろう。

 そして[軟化]これはスゴいぞ。剣聖が休憩している間に剣に付与したところ、剣聖が振ったらバルンバルンとワカメの様になっていた。

 驚いた剣聖は剣の腹でビンタをされて痛そうだったな。そして空かさず俺の剣を手渡し、処分しておくと言ったら感謝された。

 クラスからの信用度が上がった。そして、軟化した剣は硬化をかけると元に戻るのでそのまま使う。

 因みに硬化と軟化は人体に使うことができなかった。おそらく構造が複雑だからだろう。

 それとレベルが上がったからか、半径三メートル以内なら触れずに付与できるようになった。

 訓練は主に対人戦が多いな。
 俺は回転しか使えないことになってるから誰も相手をしてくれなかった。
 なので俺だけは素の剣だけというハンデだ。
 俺は、強くはないぞ。

 結果はボロボロのコテンパンだ。
 アイツら俺をサンドバッグにしやがる。のでたまに訓練中に回転を付与してあげる。

 皆喜んでくれるのでこちらも遣り甲斐がある。
 なぜか剣聖は怒ってくるけどな。

 そして今日だが、俺達は城の門前にいた。今日の訓練は実戦経験を積ませるために迷宮に入るとか何とか。

「よし、集まったな。今回は迷宮での訓練だ。暫くは迷宮を進みながら実力をあげていく。俺等騎士団が先導するから安心してくれ」

 とは言ってもその迷宮はとびきり危険だと言うわけでもなく中級くらいらしい。一番簡単なものがこの国にはなく、迷宮の平均的な難易度が高いらしい。

 だから引率、指導も兼ねて騎士団が同行する。

「では、さっそく五人一組のパーティーを組んでくれ」

 マジでか、友人のいない俺からしてみれば鬼の所業。回りはどんどん決まっていく。
 いっそ一人でと思うがクラスは丁度四十名あまりは出ない。
 そうつまり必然的にパーティーには入れる。

「おーい、回転野郎。こっちにいれてやるぜぇ」

 獣化男が俺を呼んでいるようだった。
 後一人が見つからなかっただけだろう。
 仕方ない、あそこで良いだろう。

 獣化男の回りのメンバーはいつも一緒にいる奴等だ。全員の性格が悪い。
 あと、俺を毛嫌いしているようだ。やれやれ、だからお前らはモテんのだ。(俺もモテない)

「よし、決まったな。最初は俺等が一パーティーに引率するが、来週には自分たちで迷宮を進んでもらう」

 パーティーに別れた意味はちゃんとあるらしい。どうにもこの国には、小さな迷宮のある場所が近いらしい。なので、全員じゃなく、バラバラに攻略し、ローテーションで回るそうだ。

 俺としては何でも良いんだが、仲良くやれるとは思えないな。
 俺に気づかれてないとでも思っているのか、後ろで薄気味悪い笑いかたをしているのが丸わかりだ。

 そうして、俺達はそれぞれ迷宮へと向かった。


 因みに剣聖のパーティーは女子の倍率が高く、くじ引きで決まった。
 女子も多かったが男子の倍率も高めだ。
 なぜなら剣聖と共にいればまず間違いなく死ぬことは少ない。それと女子がよってくると言う下心ありまくりだったのだろう。

 結局剣聖のパーティーは全員が女子だった。
 しかも役割がきれいに別れていたが、流石だな。
 バレないようにしているつもりかもしれないが俺には分かるぞ。


 鼻の下が伸びている。

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