そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

迷宮攻略


 訓練所に無理やり連れてこられた俺は、非常にやる気が無い。
 そもそも戦う理由もない。
 なぜ、奴のワガママに付き合わなければならないのか。
 面倒なのでさっさと終わらせられるもんなら終わらせたい。

「準備はいいな!」
「勝手にどうぞ」
「天馬君! がんばって!」

 外野が五月蝿い。
 そしてどこから聞き付けた。
 クラスの女子の大半が来てるぞ。

 仁王立ちの女子は審判の役割を買って出ている。
 他の女子は悔しそうだ。
 どうでもいい。
 さっさと負けよう。


「いくぞ!」   

 そう言って走り出した剣聖は俺目掛けて上段の大振りで斬りかかる。
 そこはちゃんと回避する。
 だって一撃目でやられたらどんな目で見られるか堪ったものじゃない。
 少しの演出は大事だと思う。

「この程度は避けるか、なら、これはどうだ!」

 近接戦闘をしてくれるから簡単に射程に入ってくれる。
 俺は、こっそりと剣聖のステータスを下げていた。
 そして俺のは上げる。そうでもしないとすぐやられるからな。

 なんでも、ここに来るまでに剣聖の能力を教えてくれた。ステータスにかなりの補正が掛かるそうだ。
 贔屓にも程がある。
 俺もちゃんと教えたよ、回転はただ回転をする、させるだけだと。

 とまぁ、結構ギリギリでかわしていたりするわけだ。
 そろそろやられようかな。

「流石だ! まだまだ隠しているな!」

 おっと、少し余裕があるのがばれた。
 これはもう少しかかるな。よし、反撃して盛り上げるとしよう。

「ふっ!」
「む! なかなか良い太刀筋だ、俺も負けていられない!」

 ヤバイ、コイツ暑苦しい。
 そろそろ頃合いかな。

 俺は、剣聖に雑に剣を振り、剣を絡めとられると剣を吹き飛ばされ、飛んだ方向をみる。
 すると、喉元に剣聖の剣があてがわれていた。

 因みに飛ばされるのは予想してなかったので思わずみてしまった。流石は剣聖。
 お陰でなんかかっこよく終わった。

「やっと終わった。じゃ、帰る」

 俺は、さっさと剣を取り、訓練所を出る。
 これでやっと静かに一人になれる。
 剣聖は俺を止めようとしたが女子が群がり動けなくなった。

「ちょ、ま!」
「良いじゃないあんな奴! それよりお祝いしましょうよ!」
「「「そーよ、そーよ!」」」

 訓練所は暫く黄色い歓声に包まれていた。

 おかしいな、俺は、訓練の時には剣聖にも真剣に取り組んでいるように見せていた。
 それなのにあの鈍感男が気づく訳がない。


 そんなことを考えながら俺は、部屋への廊下を歩いていると。壁に凭れている男と目があった。

「よぉ、剣聖様と決闘したらしいなぁ、どうだったよぉ」
「俺と剣聖の実力の差は分かるだろ負けたよ」

 へぇ、と獣化の男は汚い笑みを浮かべていた。

「それで、なんで、俺と剣聖の決闘を知っている」
「んぁ? あー、それはだな、剣聖がお前の部屋に居たのを見たからだ。たまたまな」
「お前の部屋は愚か、他の取り巻きも俺の部屋より遠く、通り道にもならないそれなのにたまたま見たのか?」

 つくならもっとましな嘘をつけ。
 ガキ見たいな真似をする奴だ。

「う、うるせぇ! たまたま見たって言ってんだろ!」
「そういうことにしといてやる」

 大方アイツが言い触らしたのだろう。
 まぁ、だからなんだと言うことだが。



 獣化の男は去っていった彼をずっと見ていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 剣聖との決闘から一週間がたち、迷宮も色々と回った。

 そして今日からはパーティーだけで迷宮に潜ることとなり。騎士たちは入り口で待つらしい。

 今日潜るのは最初の時と同じソルト迷宮だ。因みに十五層までは突破しており、全パーティーが最下層まで辿り着ければ、もっと強力な迷宮へと挑ませるつもりらしい。

 俺等は特に親しく喋るわけでもなくすぐに十五層まで辿り着き、十六、十七と順調に突破していく。
 獣化男の魔物のストックも増えかなり順調だ。なかなか使える男である。

 そんな俺は回転しか使わないのであまり活躍がない。
 だが、雑魚の処理ならばかなり役に立つらしく、使われていた。
 別に、そんなことで怒るような真似はしない。適材適所だ。

 ついに二十層。なんでも、二十層はボス部屋となっているらしく、ここではレベルが違うほどに段違いの強さの魔物が出現するらしい。

「へっ、俺からしてみりゃあボス部屋だって楽勝だぜ」

 アホめ油断していると死ぬぞ。
 伝えておこう。

「それが命取りになるかもしれないな」
「黙ってやがれ! 役にも立たねぇゴミが!」

 酷い言われようだな。
 心が折れるぞ、折れないけど。

 獣化男はボス部屋の扉を開き、他のやつらは中に入っていく。
 俺も後ろからついていく。
 邪魔な障害物は何一つない。
 と言うかボスがいない。

「んだぁ? ボスがいねぇじゃねぇか」

 ────ヒュュュュュュュ

 花火を打ち上げる時のような音が空間内に響き渡り、天井の見えない真っ暗な場所からなにかが落ちてくる。

 ────ドッダァァアアン

 何かが落ちてきた衝撃で地響きがおこり、俺等はバランスを崩すし、転倒する。

 体を起こしながら何かが落ちてきた方向を見ると、巨大な骨の魔物がいた。

 あれが、このソルト迷宮のボス。

 ────ジャイアントホネホネだ。

 暇だったので図鑑で見た。
 名付け親のセンスが疑いたくなる魔物だ。

 ジャイアントホネホネは隊長五メートルはあるだろう、そしてその手には剣を左右一つずつ持っており後は剥き出しの骨だ。

「行けぇ! いつもの通りだ!」

 獣化男が指示をだし。空気砲男が牽制の一発をお見舞いする。
 頭に当たり、仰け反った隙をついて、自分の身体能力を上げるスキルの持ち主で手斧を使う男と、いつの間にかゴリラの様な魔物に変身していた獣化男がジャイアントホネホネの両足を掬い上げる。

 転倒したジャイアントホネホネの顔に接近した獣化男は力任せにひたすら顔面を殴っていた。

 すると暴れ始めて振り落とされる獣化男。
 ジャイアントホネホネは立ち上がろうとするが、そこで俺は、動き出す。

「回転」

 ジャイアントホネホネを縦に回し、再び転倒させる。そして獣化男と、手斧、そして空気砲が畳み掛ける、そして起き上がるジャイアントホネホネを転ばせてを繰り返し、力尽きたのか、光の粒子となって消えていった。

 倒せたことにより喜ぶ三人。そして俺の元へとやってくる。

「おぅ、てめぇのお陰でやり易かったわ、助かった」

 手を差し出す獣化男。
 そうだろうそうだろう、俺が居なければわざわざ力任せに倒さなければならなかっただろうしな。

「だから、もう用済みだ、死ねや」
「え? ぶっ!」

 差し出していた手を拳にし下から殴り付けてくる獣化男。腹を抑え踞る俺を蹴飛ばす。

 起き上がるものの、空気の不可視の弾丸が俺の頭を殴り付ける。
 ジャイアントホネホネのように仰け反った俺をいつの間に後ろにいたのか手斧の男が振りかぶっていた。
 転げ回るように交わした後、距離をとる。
 こいつら完全に俺を殺すつもりだな。
 流石に三対一は振りすぎる。
 ここは形振り構わず付与を使うしかないだろう。

 そして変身をして、この迷宮に居た一番素早い狼の様な魔物に変わった獣化男は飛びかかってくると同時に手斧男も走っているのが見えた。
 獣化男を交わした俺は、手斧男を対処しようと剣を抜くが、空気砲により弾かれ遠くへ滑っていく。
 その時には手斧男が目の前におり、手斧を振り下ろす。
 三メートル以内に入った手斧男を縦回転で転倒させると手斧を蹴飛ばし遠くへ飛ばす。
 そして空気砲男の元へと駆け出すが、空気砲は不可視だ、何とか堪えてら自分に[攻撃小up]、相手に[防御小down]を付与して殴る、全力でやったので暫くは起きないハズ。
 その時に俺の体に衝撃が走り真横へと滑り転がる。いつの間にかゴリラになっていた獣化男が殴ってきたのだろう。本気だった為か右腕が使い物にならない。

 獣化男は急接近し上から右拳を振り下ろす。
 俺は、着地地点の地面に硬化を付与して転がるようにかわす。するとかなり大きい砕けた音がなるが、地面に傷ひとつついておらず、砕けたのは獣化男の拳だ。
 これで右拳は使えない。
 少しずつ、ほんの少しずつだが、挽回していく。
 すると押されているのに奴等は笑っている。
 一人倒し、主力の拳は砕けた、後は、逃げれば俺の勝ちだと思っていた。その気までは。

 ──ドスッ

 「……え?」

 俺の体に少しだけ衝撃が走る。
 衝撃の走った腹部を見ると、鋭利な刃物が刺さっていた。
 そしてそれを力任せに引き抜かれ後ろから蹴られる。
 腹部からは大量の血が流れている。
 おかしい、視界には三人をちゃんと捉えていた。


 三人・・? おかしい、パーティーは一つ五人の筈だ、なぜもう一人の存在を忘れていた!
 背後を見ると薄ら笑いを浮かべている男が居た。
 そいつは今までのどの戦闘にも参加をしていなかった。
 それほど影が薄く、また、その系統スキルを持っていたのだろう。
 全く気づかなかった。

 倒れている俺を起こさせると、手斧男とナイフ男が俺をガッチリと捉える。
 そこで獣化男が砕けていない左拳を全力で俺の腹へと叩きつける。
 そして、目を覚ましたのだろう、空気砲男がありったけの空気砲を乱射しており、俺の体は骨は碎け、血塗れになり、全身が打撲傷で沢山だった。

 俺の意識は半ば飛んでいるが起こされる。
 なぜ……なぜこんな仕打ちを……されなければならない……
 自分が好かれているとは微塵も思っていない。
 たが、だからといって殺す程まで行くのか…。
 朦朧とする意識の中で俺は、奴等の顔を見た。
 ……笑っていた。
 これは、遊んでいる子供と何ら変わらない。
 コイツらは憎いから殺そうとしているのではない。
 楽しんでいるんだ。
 だからクラスでも大した人物じゃない俺を狙ったのか。

 遂に俺は、解放され床に仰向けで転がされた。
 そして歪んだ笑顔の獣化男はナイフ男のナイフを借り、俺に向けていい放った。

「あばよ、楽しかったぜ。てめぇをいたぶるのぁ」


 俺の心臓にナイフを突き刺し、そのまま扉へと出ていった。



 心臓を刺された俺の意識はそこで完全に途絶えた。






 俺の異世界転移は呆気なく短かった


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