そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

近所のつきあい方


 俺は森の中をひたすら進んでいる。
 迷う心配などない。
 何故なら自分が踏み締めた跡が残ってるからな、これを辿れば問題なく帰れる。

 俺は進み続けたのだが、未だにご近所ゴブリンを殺害した犯人は痕跡すら残さない。
 完璧すぎる。
 見た目は子供で頭脳が大人な出掛ける度に事件を背負うアイツでもこの謎は解けないだろう。

 一時間ほど歩き回っただろうか。
 遠吠えが聞こえてくる。
 結構近いと思うんだよな。
 どうにもここには魔物がそこそこ居るらしいな。

 俺はまた歩き始める。
 すると今度は近くの茂みが揺れていたりする。
 もしや、犯人がついに俺を狙ってきたのだろうか。
 怖いなぁ。
 力には自信が無いんだ、勘弁してほしい。

 先程よりは少し警戒度を高め、ゆっくりと前へと進んでいく。

 ──ガササッ

 いつの間にか俺の前の茂みに移動していたのだろう。
 そして、立ち塞がる様に飛び出てきた。

 ──グルルゥゥゥ

 なんか、狼っぽいの来た。
 灰色の毛皮を纏い、歯を剥き出しにしている。
 円らな瞳がチャームポイントだ。
 可愛いな。
 でも結構大きい。
 多分魔物だな。

「ワレラノナワバリ二、ナンノヨウダ?」

 おっと、喋るのか。
 というか俺はまた不法侵入をしてしまった様だ。
 軽率に動いてはダメだな。
 仕方ない。
 やっぱり大人しく帰るとしよう。

 俺はそのまま背を向けて来た道を戻ろうとするが、はて、いつの間に移動したのだろうか。
 既に後ろに狼がいる。
 と思ったら横からも出てきた。

 分身の術?
 と思ったけど違うな。
 最初の狼とは違って小さい。少しだけ。
 ここは天国か。
 こんなに可愛い狼が七匹も居るぞ。
 それぞれが違う吠え方をしている。
 なるほど、十人十色とは良く言ったものだ。


 でも、なんか、似てるんだよな。
 友達どうしかなと思ったけど。これは違うな。


 うん、これは、ご家族だな。

「ニガストオモウカ?」

 後ろの狼が話しかけてくる。
 なるほど、歓迎しているのか。
 でもな、せっかく家族で居るんだしその時間は大切にするべきだ。
 俺はお呼びでは無いだろう。

 なかなか退いてくれないな。
 いやいや、俺のことは構わずに一家団欒してくれ。

「スキアリ!」

 すると俺を最初に歓迎してくれた狼が俺の肩に飛び乗った。
 おいおい、可愛い奴だな。
 あまがみ《・・・・》をしてくれるとはフレンドリーなご近所さんだ。
 こう言うのを大切にしたいな。

「クッ! ナンテカタサダ! オイ! オマエラモカカレ!」

 おっと今度は皆さんであまがみの歓迎か。
 いやぁ、かなりいいご近所さん達だ。
 もしかしてこれが狼流のご挨拶?
 なるほど、魔物によって挨拶が違うんだな。

 俺は、どんな風に挨拶をしたら良いだろうか。
 うん、ゴブリンにやった時として同じで良いか。

「ボス! ゼンゼンキカナイ!」
「ヒルムナ! ココデニゲレバ、ハジダゾ!」

 でもやっぱり余所者がいると邪魔だからな。
 挨拶だけでも済まして、場所を移動しよう。
 すみませんね、空気が読めなくて。
 もう帰りますんで、後は、家族でゆっくりしてください。

 俺はゴブリンへと行った挨拶を、まずは俺の足をあまがみしてくれている狼さんにする。

「シ、シマッタ! グベヘェ!」

 おや? 流行っているのかな?
 ゴブリンがやったときと同じように飛んでいったぞ。

 俺は次は左の太股に居る狼さんにご挨拶。
 今度はさっきの狼さんとは違う方向に飛んでいった。

 ほほう、これは特にどこに飛ぶ決まりはないのだろう。
 もし有るとすれば、挨拶され、触れた方向の逆に飛ぶと言うことだろう。
 いつかやってみるとしよう。

 次々に挨拶していくと、皆戻ってこなくなったな。
 恐らく、挨拶が終わって何か良いものでも見つけたのだろう。
 最後の一匹は俺の肩に乗って今は降りて震えている彼だ。
 寒いのだろうか。
 そんなに暖かそうな毛皮を着ているのに。
 俺は良く考えたら温度を感じないな。
 ん? なんだ? 元々感じてたかな。

 まぁ良いだろう。
 これからもよろしくお願いします。

「ギャンッ!」

 横っ飛びして茂みの奥へと去っていった狼さん達。
 うん、きっと仲良くなれるな。
 全員と仲良くなった気がする。

 そして、俺はそのまま道を突き進んでいく。
 でもやはり、喋れる様にはなりたいな。
 そうすれば意志の疎通も可能となるだろう。
 人付き合いは好きではないが、向こうのご厚意を無下にするほど鬼畜生ではない。

 さて、だいぶ真っ直ぐ進んだお陰だろうな。
 森から出た。
 出たとは言っても見晴らしの良い場所に着いただけだ。
 見渡す限りの平原が見える。
 それだけだ。
 別段面白いこともない。
 遠くに何か見えるが良く分からないな。

 お陰で少しだけここの地理がわかった。
 どうやら俺が最初に居た場所は少しだけ高台になっており、そこからは特に拓けた場所もない森だ。

 秘境かな? とは思っていたがここはさすがに誰も気付かないな。
 いや、森は多分誰かが気づくだろう。
 だが、俺の居た場所までは分からなさそうだ。

 平原をのんびり散歩しても良いかなとは思ったが、そこだと悪目立ちする可能性があるので止めておこう。

 そこから数日間。
 特に何をするでもなくのんびりしていた。
 ゴブリンさんは殺人鬼に殺されてしまったし。
 狼のご家族もいなかった。
 恐らく引っ越したのだろう。
 だからあんなに歓迎してくれてたのか。
 最後だからと。

 涙が出るぜ。出ないけどな。
 取り敢えずは俺は拠点としている(勝手に)
 祠を中心として西へと進んだ結果があの平原だ。
 今後は東と南を探索しようと思う。
 北は断崖絶壁になっていたので探索の意味がない。
 と言うか断崖絶壁見えてるからな。
 のんびりするのも終わりにして、明日からだな。




 ───────────────────────

<???>

 そこでは魔物の集団が集まり何やら話し合いをしていた。

 そこにはそれぞれの魔物が種族ごとに座っていた。

「オイ! 牙の連中はまだか!」

 一匹の魔物は怒鳴り声を上げ、誰かを待っているようだ。
 そこえ、もう一匹の魔物が落ち着いた表情で応える。

「短気は行けませんよぉ、角」
「うるせぇ! 酒が切れて気分が悪りぃんだよ!」
「おやおやぁ、それは私にあたる理由じゃないよぉ」

 笑いながら飄々と言い返す尻尾と呼ばれる魔物。
 そこへ堪忍袋の緒が切れた角と呼ばれる魔物が暴れようとする。

「た! 大変です!」

 尻尾と呼ばれた魔物に良く似た魔物が入ってくる。

「何事だい?」
「き、牙の連中の内、牙を含めて幹部7人が死亡したとの報告です!」
「「な!?」」

 角、尻尾と呼ばれる魔物は揃って声を上げ席を思わず立ち上がる。

「そ、それで、どこからの情報だい?」
「き、牙の連中の下っ端どもが戻ってこない牙の連中を探したところ死体で見つかったとのことです!」

 角と呼ばれる魔物は驚愕した。
 牙と言えば森の全勢力を三分割した自分達の中でも速さに於いて他の追随を許さない。
 西側を統べる魔物だ。
 そんな上位者が何者かによって倒されたと言うのだ。

 角は東、南は尻尾とそれぞれが仕切っており、勢力争いを繰り広げていた。
 だが、それぞれが強いために昔は争ってはいたものの、今では憎まれ口こそ叩き会うが仲は悪くなく、寧ろ定期的に集まって宴をするほどだ。

 そんな中、西の勢力、一族の誇りを持った牙がやられたのだ。

「誰だ! 牙のやろうを殺ったのは! ぶっ殺してやる!」 
「角、落ち着いて欲しいねぇ、誰か分からないから調べるんだろぅよ」

 真っ赤になった角を落ち着かせる尻尾。
 落ち着いている尻尾だが、内心では怒りが煮えきっている。

「取り敢えず、情報集めが先だねぇ、ここは私ら尻尾に任せて貰おうかなぁ」
「ちっ! 仕方ねぇ、テメェらに譲ってやる、だが、牙を殺った奴は俺が殺す!」

 突如起こった森の異変に対応すべく、今後の話し合いをする角と尻尾。
 後に牙の後釜となる狼を呼びつけ、情報収集を任せた。
 

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