そのゴーレム、元人間につき
会議と誘い
<魔物の集会所>
その集会所には角と呼ばれる魔物と新しく牙に任命された狼の魔物がいた。
席は一つだけ空いているがそこは尻尾の席だ。
話し合いの時間になってもやってこない尻尾に、角は怒りと不安を浮かべている。
怒りは遅れていること、そして不安はもしかすると殺られたのでは?と言う思いがある。
「もしや、尻尾殿は殺られたのではないか?」
「いや、奴に限ってそれはない!……と言いたいが今回ばかりはマズイかもしれんな」
「いやいやぁ、勝手に殺さないでよぉ」
するといつの間にか殆ど包帯姿の尻尾が部下に支えられながらやって来ていた。
実は尻尾は、大袈裟に包帯を巻いていた。怪我はしているものの、ここまでするほどではない。
角は驚いていた。
尻尾と言えば、この森における角と同じ三大勢力の一つだ。
尻尾の種族は妖狐、力こそ無いものの、その魔力と狡猾な頭で敵をじわじわと追い詰めると言うのが特徴的な魔物。
そして尻尾はこの中でも頭一つじゃ表せないほど才能が抜きん出ている。
それは角も、世代交代を果たした牙も知っている。
そもそも同じ種族の中でもかなり優秀でなければ勢力を纏めることなどできないのだから。
そしてそんな尻尾にここまでの傷を負わせる得体の知れぬ相手に戸惑う角と牙。
角は、尻尾ならば最悪勝てないにしても、ボロボロになるまでやられるとは微塵も思っていなかったのだ。
「無事か!?」
「何とかねぇ、でもあれは化け物だよぉ。私達じゃどうにも出来なかったよぉ。」
「お前にそこまで言わせるほどか!」
「尻尾殿、その相手とはどんな者で?」
尻尾は部下に座らせてもらい、一息ついて口を開いた。
「この森に存在する筈がない魔物だったよぉ」
「そ、それはいったい?」
「私も見たときは驚いたねぇ、あれはゴーレムだよぉ」
その発言に目を見開く角と牙。
ゴーレムと言えば迷宮や遺跡に存在する魔物であり、森しかないこの場所に存在する筈がないのだ。
「ゴーレムだと、なぜそんな魔物がここにいる!」
「そんなこと私に言われてもねぇ」
「ゴーレム、奴が先代牙の仇
(ふふふ、乗ってきたねぇ)
尻尾は一人心の中でほくそ笑む、正直に言うと角がゴーレムに勝てるかはわからないがそんなことはどうでも良い。
尻尾の興味はゴーレムに注がれていた。
あれのゴーレムは未知だ。
ゴーレムには意思がないとは言え、基本的には道を阻むガーディアンで、自らの意思で徘徊をすることは殆ど無い。
(なのに何故あのゴーレムは動くのかなぁ? 角とぶつければ何か分かるかも知れないしねぇ、わからなくても角を殺ってくれればどさくさに紛れて覇権を握ろうかなぁ)
実際、尻尾はこの森の支配には興味がない。
面白可笑しく生きていれればそれで良い。
どちらに転ぼうとも面白そう、それだけだ。
「まぁ、何にせよ、私は暫く動けないからねぇ、療養に努めるよぉ。君らはどうするんだい?」
「我らは未だに代替わりしてゴタゴタしている。やることは沢山あるので動けはしない」
「俺は特にねぇが、そうだなゴーレムが現れたなら俺がただの石ころに変えておいてやるよ」
得意気に言う角を見て尻尾はにっこりとした笑みを浮かべる。
尻尾の評価としては、角の戦闘をここ数十年見てはいないが、ゴーレムと比べると劣っている様に思う。
角は自分の強さに酔いしれている。
それも全盛期の頃の自分にだ。
今の角は鍛練をしている様には見えない。いや、もしかするとしているのかも知れないが、決してそんな風には見えない。
日中は酒をのみ、夜も飲んでばかりなのだから。
それと、気になるのはやはりゴーレムだ。
なぜこんな森にいるのか、どうやって現れたのかと言う情報が一切わからない
「では、ここまで来るのにも無理をした。すぐに戻るとするよぉ」
「わかった、こっちに来た場合は任せときな」
その自信満々な声を背中で受け止めてそのままさっていく。
<森の中>
俺は森の南側を探索している。
取り敢えずは端を目指しながら真っ直ぐ進んでいる。
西側は、平原しか見えなかったし、もしかすると何か見えるのではないだろうか。
今日は変わった狐人間は居なかったな。
恐らく出掛けているのだろうか。
しかし、この森は平和だ。
いろんな魔物がいるけれどボスとかはいるんだろうか。
絡まれるのは面倒だな。
もし攻撃されたら成す術もな良いだろう。
その時は全力で逃げよう。
そう言えば、あの狐人間達は俺に火を掌から出していたな。
あれは俺にも出来るのだろうか。
今度あったら聞いてみよう。
と思っていたよ。俺、喋れない。
どうやったら喋れるようになるのだろう。
まぁ、所詮石造りのゴーレムである俺に声なんて要らないのかも知れないな。
いつかは俺が何者であったかなど思い出せるだろうか。
だが、本当に何者であったかもわからないんだがな。
最初からゴーレムだったかもしれないしな。
こうして真っ直ぐにひたすらに歩くとアッサリと着くな、ここは端だろう。
こちらもひたすらに平原しかない。
正直ガッカリした。
でも、良く目を凝らすと遠くに影のような物が見える。
まぁそれだけでも十分だろうな。
昨日の事をおもいだすんだが。
あの狐人間達、結構小さかったな。
ゴブリンの時もそうだったが魔物のサイズが小さい気がする。
そして、この木もだ、木って言うのはわりと大きい物な気がするのだが、高さは俺と同じくらいか少し高い程度だ。
この森はどうなっているのだろうと思っているんだが、ここで暇なので俺は一つの仮定を立てた。
森が小さいのではなく、俺が大きいのでは?
と言うものだ。
そんなことを言ったって俺のサイズを確かめる術がなかった。
速攻で諦めた。
するとどうだろうか。
歩いていると向こうから狐人間が来ているのが見えた。
あれは昨日挨拶をした奴だな。
俺が挨拶をした奴は二度と来てくれないからな、正直今回もダメかと思っていたが良かった。
引っ越した訳じゃないのか。
挨拶も終わってるし様もないから無視するがな。
「やぁ、昨日ぶりだねぇ」
ふむ、どうやら俺に話しかけている様だな。
流石に後ろには誰もいないし、独り言と言う線もないだろう。
それに、世間話だろう。
退屈だし聞くとしよう。
「昨日は断られちゃったけど立ち話もなんだし、私の家に来ないかい?」
なるほど、昨日誘われたっけな?
全然記憶にないわ。
でも、こいつ狐目で奥が見えないけど、下らないと考えてそうなんだよな。
よし、行こう。
返事が出来ないからな、オッケーマークを作って意思を示してみよう。
「おお! 来てくれるんだねぇ、助かるよぉ、こっちだよぉ」
何が起こるかわからないからな。
用心はしておくとしようか。
ん? 俺はこんなに疑り深かったか?
気にするのはやめにしよう。
何かここの手懸かりとか掴めるかもしれないしな。
そして、俺はご近所さんのご厚意?
で家に上がり込むことにした。
でも、この狐人間、小さいのだが、俺は家に入るのか?
その集会所には角と呼ばれる魔物と新しく牙に任命された狼の魔物がいた。
席は一つだけ空いているがそこは尻尾の席だ。
話し合いの時間になってもやってこない尻尾に、角は怒りと不安を浮かべている。
怒りは遅れていること、そして不安はもしかすると殺られたのでは?と言う思いがある。
「もしや、尻尾殿は殺られたのではないか?」
「いや、奴に限ってそれはない!……と言いたいが今回ばかりはマズイかもしれんな」
「いやいやぁ、勝手に殺さないでよぉ」
するといつの間にか殆ど包帯姿の尻尾が部下に支えられながらやって来ていた。
実は尻尾は、大袈裟に包帯を巻いていた。怪我はしているものの、ここまでするほどではない。
角は驚いていた。
尻尾と言えば、この森における角と同じ三大勢力の一つだ。
尻尾の種族は妖狐、力こそ無いものの、その魔力と狡猾な頭で敵をじわじわと追い詰めると言うのが特徴的な魔物。
そして尻尾はこの中でも頭一つじゃ表せないほど才能が抜きん出ている。
それは角も、世代交代を果たした牙も知っている。
そもそも同じ種族の中でもかなり優秀でなければ勢力を纏めることなどできないのだから。
そしてそんな尻尾にここまでの傷を負わせる得体の知れぬ相手に戸惑う角と牙。
角は、尻尾ならば最悪勝てないにしても、ボロボロになるまでやられるとは微塵も思っていなかったのだ。
「無事か!?」
「何とかねぇ、でもあれは化け物だよぉ。私達じゃどうにも出来なかったよぉ。」
「お前にそこまで言わせるほどか!」
「尻尾殿、その相手とはどんな者で?」
尻尾は部下に座らせてもらい、一息ついて口を開いた。
「この森に存在する筈がない魔物だったよぉ」
「そ、それはいったい?」
「私も見たときは驚いたねぇ、あれはゴーレムだよぉ」
その発言に目を見開く角と牙。
ゴーレムと言えば迷宮や遺跡に存在する魔物であり、森しかないこの場所に存在する筈がないのだ。
「ゴーレムだと、なぜそんな魔物がここにいる!」
「そんなこと私に言われてもねぇ」
「ゴーレム、奴が先代牙の仇
(ふふふ、乗ってきたねぇ)
尻尾は一人心の中でほくそ笑む、正直に言うと角がゴーレムに勝てるかはわからないがそんなことはどうでも良い。
尻尾の興味はゴーレムに注がれていた。
あれのゴーレムは未知だ。
ゴーレムには意思がないとは言え、基本的には道を阻むガーディアンで、自らの意思で徘徊をすることは殆ど無い。
(なのに何故あのゴーレムは動くのかなぁ? 角とぶつければ何か分かるかも知れないしねぇ、わからなくても角を殺ってくれればどさくさに紛れて覇権を握ろうかなぁ)
実際、尻尾はこの森の支配には興味がない。
面白可笑しく生きていれればそれで良い。
どちらに転ぼうとも面白そう、それだけだ。
「まぁ、何にせよ、私は暫く動けないからねぇ、療養に努めるよぉ。君らはどうするんだい?」
「我らは未だに代替わりしてゴタゴタしている。やることは沢山あるので動けはしない」
「俺は特にねぇが、そうだなゴーレムが現れたなら俺がただの石ころに変えておいてやるよ」
得意気に言う角を見て尻尾はにっこりとした笑みを浮かべる。
尻尾の評価としては、角の戦闘をここ数十年見てはいないが、ゴーレムと比べると劣っている様に思う。
角は自分の強さに酔いしれている。
それも全盛期の頃の自分にだ。
今の角は鍛練をしている様には見えない。いや、もしかするとしているのかも知れないが、決してそんな風には見えない。
日中は酒をのみ、夜も飲んでばかりなのだから。
それと、気になるのはやはりゴーレムだ。
なぜこんな森にいるのか、どうやって現れたのかと言う情報が一切わからない
「では、ここまで来るのにも無理をした。すぐに戻るとするよぉ」
「わかった、こっちに来た場合は任せときな」
その自信満々な声を背中で受け止めてそのままさっていく。
<森の中>
俺は森の南側を探索している。
取り敢えずは端を目指しながら真っ直ぐ進んでいる。
西側は、平原しか見えなかったし、もしかすると何か見えるのではないだろうか。
今日は変わった狐人間は居なかったな。
恐らく出掛けているのだろうか。
しかし、この森は平和だ。
いろんな魔物がいるけれどボスとかはいるんだろうか。
絡まれるのは面倒だな。
もし攻撃されたら成す術もな良いだろう。
その時は全力で逃げよう。
そう言えば、あの狐人間達は俺に火を掌から出していたな。
あれは俺にも出来るのだろうか。
今度あったら聞いてみよう。
と思っていたよ。俺、喋れない。
どうやったら喋れるようになるのだろう。
まぁ、所詮石造りのゴーレムである俺に声なんて要らないのかも知れないな。
いつかは俺が何者であったかなど思い出せるだろうか。
だが、本当に何者であったかもわからないんだがな。
最初からゴーレムだったかもしれないしな。
こうして真っ直ぐにひたすらに歩くとアッサリと着くな、ここは端だろう。
こちらもひたすらに平原しかない。
正直ガッカリした。
でも、良く目を凝らすと遠くに影のような物が見える。
まぁそれだけでも十分だろうな。
昨日の事をおもいだすんだが。
あの狐人間達、結構小さかったな。
ゴブリンの時もそうだったが魔物のサイズが小さい気がする。
そして、この木もだ、木って言うのはわりと大きい物な気がするのだが、高さは俺と同じくらいか少し高い程度だ。
この森はどうなっているのだろうと思っているんだが、ここで暇なので俺は一つの仮定を立てた。
森が小さいのではなく、俺が大きいのでは?
と言うものだ。
そんなことを言ったって俺のサイズを確かめる術がなかった。
速攻で諦めた。
するとどうだろうか。
歩いていると向こうから狐人間が来ているのが見えた。
あれは昨日挨拶をした奴だな。
俺が挨拶をした奴は二度と来てくれないからな、正直今回もダメかと思っていたが良かった。
引っ越した訳じゃないのか。
挨拶も終わってるし様もないから無視するがな。
「やぁ、昨日ぶりだねぇ」
ふむ、どうやら俺に話しかけている様だな。
流石に後ろには誰もいないし、独り言と言う線もないだろう。
それに、世間話だろう。
退屈だし聞くとしよう。
「昨日は断られちゃったけど立ち話もなんだし、私の家に来ないかい?」
なるほど、昨日誘われたっけな?
全然記憶にないわ。
でも、こいつ狐目で奥が見えないけど、下らないと考えてそうなんだよな。
よし、行こう。
返事が出来ないからな、オッケーマークを作って意思を示してみよう。
「おお! 来てくれるんだねぇ、助かるよぉ、こっちだよぉ」
何が起こるかわからないからな。
用心はしておくとしようか。
ん? 俺はこんなに疑り深かったか?
気にするのはやめにしよう。
何かここの手懸かりとか掴めるかもしれないしな。
そして、俺はご近所さんのご厚意?
で家に上がり込むことにした。
でも、この狐人間、小さいのだが、俺は家に入るのか?
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