そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814


 さて、結構歩いたがスゴいぞ1日の内にこんなに挨拶をしたのは初めてだ。
 俺は最初のオーガ達と別れた後、次々に他のオーガにも歓迎されていた。
 その全てに挨拶回りをしたが、近所付き合いは大変だな。
 探索が終わった暁にはのんびりするとしよう。

 最初のオーガ達から二時間ほど経過しただろうか。
 狐人間達のいた広場の様なところに出た。
 規模はあれ、よりも広いのだが。

 そこをキョロキョロと入っていくと前から数人のオーガが出てきた。
 最初のやつより明らかに強そうだ。
 するとどうだろうそんな奴等よりも強そうなのが一匹出てきた。
 背は俺よりも低いものの頭一つ程度しか変わらない。
 筋骨隆々のごりごりだ。
 手には酒が入っているのか瓢箪を持っていた。

「おい! てめえが俺の子分どもと仲良くしてくれたってのぁ本当か!」

 コイツ、声がデカイな。
 正直好きじゃないタイプだ。
 他の探索をしようかとも思ったけど俺は端が見たいんだ、譲れないな。

「おい、なんか言ったらどうだ?」

 言えねえっての。
 頭悪そうだなコイツ。
 ん? 確か狐人間が角は頭悪いとか言っていたな。
 もしや、コイツが角か?

「俺は角! うちの子分どもを可愛がってくれたお礼をしてやるよ」

 なんだ、意外と歓迎ムードか。
 敵対かなとか思っちゃったぜ。
 ただのお礼なら素直に受け取るべきだろう。 
 角は絶対に絡んでくるってそういう意味か、なるほど手厚い歓迎と言うことだな。

「おら、挨拶代わりだ! いけぇ!」
「「「おおう!」」」

 3人ほどこっちに走ってきたぞ。
 笑っている。
 気さくな奴等だな。
 俺も自ら行った方が良いだろうか。
 ん? 思ったよりも足が早いな俺が行く前に着くな。待とう。

「おらぁ!」
「くらえや!」
「これが俺らの挨拶だ!」

 うんうん、かなり手厚い歓迎だと両手を使うのか。
 これで鍛えているのはやっぱり違うなぁ。
 これがオーガの強さの秘密ってやつか、まずは自分達を知ってもらおうと言うことだな。
 オーガはスゴいな俺じゃなきゃ死んでるんじゃないかな。
 それくらい多分威力は高いと思う。
 本気の挨拶とは素晴らしいものだろう。

「くそっ!固ぇ!」
「こっちの拳がやられるぞ」
「金棒だ! 金棒を抜け!」

 するとどうだろう。
 背中に背負っていた金棒を取りだし、一斉に俺に叩きつける。
 両手を使ってのパンチが最大の挨拶だと思っていたが金棒が最大の挨拶なのか。
 オーガは挨拶にも命がけだな。
 流石に俺の体も少しだけ欠けた。
 でも向こうの方が大変だ。

「んな!?」
「嘘だろ!」 
「か、金棒が!?」


 叩きつけた金棒が俺の固さに耐えきれなくて折れてしまったのだ。
 悪いことをしたな。
 体が固くて済まない。
 でも君達の挨拶をすると言う心は多分受け止めたぞ。
 と言うか俺の体固すぎないか?
 石の筈なのに。
 いや、恐らく金棒にヒビが入っていたのだろう。
 若しくは錆びていたかだな。

「くそっ! 新しくしたばかりなのに!」 
「俺なんて無理して手に入れたんだぞ!」
「俺は母ちゃんに頼み込んでやっとの思いで買って貰ったのに!」

 罪悪感は感じないでもないが。
 金棒も歓迎の為の犠牲だ誇らしく散っただろう。
 あと、正直に言おう、お前らの損失はしらん。
 特に最後のやつ、自分で買えよ。

 よし、向こうからの挨拶は多分終わりだろう。
 今度は挨拶を俺が返す番だな。

「はばら!」
「ひびり!」
「ふぶる!」

 うん、我ながら言い挨拶だ。
 3人は茂みに飛んでいったぞ。
 器用なことをするね。
 するとどうだろう。
 酒を持った残りの鬼は驚いており酒を落としていた。

 挨拶が違うからな。
 恐らくたが、カルチャーショックなのではないだろうか。
 新人なんだ、そこは許してほしい所だ。
 するとぶるぶる震えだし、ただえさえ赤い顔と体に酒で赤くなっているくせにもっと赤くなった。
 3段階で赤くなるやつは初めて見るな。
 意外と面白い。

「てめぇ、良くもやってくれたな!」

 いや、お前がやらせたんだろうに。
 責任転嫁じゃないか。
 俺は無実だ。
 良く見れば怒っている?
 なんで怒ったんだろうな。

 多分短気だから、文化の違いも認められない頑固親父なんだろう。
 酔っぱらいの絡みは五月蝿いって言うしな。
 ん? 誰が言ったんだ?
 この知識も俺の謎だよな。


「うおぉぉぉぉぉ! 死にやがれ!」

 一人でいろいろ考えていると、怒り狂ったおっさんが走りだし俺へと拳を叩きつける。
 やれやれ。これだから酔っぱらいは。

 ──ドゴァァァァァァァァァァン!!

 凄まじい音と衝撃が周囲に鳴り響く。
 流石に驚いた。
 俺も少しだけバランスを崩すほどだ。
 しっかしあれだな。
 思ったより強くはないな。
 いやいやいや、油断はいかん。
 やつはまだ2段階の変身を残しているかもしれないのだ。

「……まさか、俺の拳を受けておいて吹き飛びもしないとはな。なかなかやるじゃねぇか」

 なぁ、右手大丈夫か?
 俺は少しだけ体が欠けたけど。
 右手パンパンに膨らんでるよ。

「こんなに良い戦いは久しぶりだ! よし! テメェは絶対にぶっ殺す!」

 ダメだこいつ。
 ハイになってるな、あと、酒のせいで痛覚が鈍くなっているのだろう。
 後で痛いぞぉ。

 しかし、こいつ、俺をぶっ殺すなんて言った?
 なんでそんな話になってるんだよ。
 やる気はない。
 戦う理由もない。
 相手したくないなこいつ。

 こんな暑苦しいやつは嫌だな。
 以前にも有ったような気がしてムカついてくる。
 わざとやられようかな。
 でもなぁ、こう言う奴は気付きそうだし。
 黙らせた方が早いだろう。
 初の戦闘だ緊張する。
 幸い、攻撃は今のところ効いてないからな。
 心置きなくやるとしよう。

「おぉぉぉぉらあっ!」

 今度は左手による正拳突きを放ってくる。
 それを体で受け止めて、顔をひっぱたく。
 すると盛大に吹き飛んでいき、茂みに消えた。
 おい、ここで挨拶のボケをするのか。
 センスがあるな。

「やるじゃねぇか! まだ終わってねぇよ!」

 勢い良く茂みから帰ってきたと同時にその勢いを利用した拳。
 折角だからかわして空いた背中に手刀をすると、地面に叩きつけられ反動で戻ってくる。
 戻ってきて防御すらしていない体へと張り手の要領で腕を突き出す。

 盛大に吹き飛ぶものの、空中で立て直した。
 だが、血を口から吐き出し動けない様子だった。

「げほっ! て、テメェ、なかなかやるじゃねぇか」

 肩で息をしているおっさん。
 正直客観的に見るともう無理だと思うんだけどな。
 立ち上がろうとしている。
 いや、終わっとこうよ。
 俺疲れた。嘘だけど。

「角様! 頑張ってください!」
「そうだ! そんな奴に負けないでくれ!」

 おや、何処から湧いたのだろうか結構な数のオーガが広場を取り囲んでいた。
 なにやら、おっさんを応援しているようだな。
 え? これ、俺が適役か? てことはやられないといけないのだろうか。
 おっさんは唖然としていた。

「お、俺の為に、応援してくれるのか?」

 すると微笑み、何かを覚悟した目をしている。
 なに主人公っぽいことしてるんだよ。
 なんか変身とか最後の力とか出してきそうだな、少しだけ何が出るのか楽しみだ。

「うおぉぉぉぉぉ! この一撃に俺のすべてを懸ける! 行くぞ! ゴォーレムゥー!」

 今までで最速で迫り、本気の一撃を俺へと放ってくる。
 周りのオーガ達は皆、気迫があり、「いっけぇ!」等、完全に俺が負けてしまうパターンが出来ている。

 そんな都合は無視して虫を叩き落とす要領でおっさんを上から叩く。
 叩かれたおっさんは盛大に地面へと激突し、おっさんを中心に大きなクレーターが出来上がった。

 しまった、何かムカついたから思わずやってしまった。
 別に良い勝負をしていた訳でもないし五分五分の戦いだったわけでもない。
 それなのにあんな雰囲気になるとは思わなかった。

 広場に集まっていたオーガ達は口を空けたまま動くことが出来ていなかった。
 なんとなく気まずくなった。
 よし、今日は帰ろう。
 踵を返し、俺は祠の方へと帰る。

「つ、角様ぁぁぁぁぁあ!!」

 後ろが騒がしくなった。
 あれなら大丈夫だろう。
 それにしてもあのオーガ達の顔は面白かったな。

 予定よりも時間がかかったな。
 これは少しだけ探索が延びるかもしれない。
 あのオーガ達が今後どうするかは、興味がないから放っておこう。

 また、何回でも勝負だ! とか言われたら嫌だなぁ。

 

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