そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

ゴーレム、動く

 尻尾はゴーレムと別れたあと、すっかり暗くなった森のなかを走り抜ける。
 枝や根に引っ掛かることなく普通に地面を駆けるのと同じ位の早さで駆け抜けている、森に慣れていると言うこともあるが夜目を持っていることも影響している。
 そろそろ騒音が大きくなってきている、到着するのももうすぐだろう。

 「さて、角は善戦してくれているといいんだけどねぇ」

 相性が悪くても善戦、あわよくば撃退していてほしい所だねぇ。
 ……!? なんだい? 急に向こうから何か飛んできたよ!?
 幸い隣にある木にぶつかったけど私に当たってたら大変だよぉ!
 って、あれ? 角?

 「うぐ、なんて奴だ」
 「角! 無事かぃ?」
 「尻尾か、早かったな」
 「そんなことよりどうなっている?」
 「ありゃ、ちょっとヤベェぞ」

 角がそこまで言うほどか、まるでゴーレム級じゃないか!

 「取り敢えず、急いで戻る。やられっぱなしはお断りだ」
 「待ちなよぉ!」

 角についていき、その魔物の正体に驚愕する。
 なぜって、目の前のソイツはここらにはいるが決してここには来ない魔物じゃないか!

 四足歩行で黄土色の皮膚、先端にはかなり発達した自身最大の破壊力を持つ武器が着いた尻尾。

 「これは、ガケトカゲ!?」

 確か名前の由来は棲息地が崖だからという如何せんセンスを疑っちゃうよねぇ。
 私としてはもう少しましな名付けができると思うんだよぉ。

 そうこうしている内に角がガケトカゲと対峙している。
 どうやら、先程飛ばされたのはうっかり尻尾に当たったからだねぇ。
 だけどそれでも直ぐに立ち向かう角は耐久力だとBランクを張れると思うねぇ。

 だけどこちらの攻撃は全然通っていないみたいだ。
 ガケトカゲは傷一つついてやしない。
 そして角は一人で戦っている、恐らく部下を傷つけないためにそうしてるんだろうねぇ。
 相変わらず甘い男だよぉ。

 「私ら妖狐は角に当たらないように火を放て! ガケトカゲの注意を、グラスウルフは動き回って翻弄してくれ!」
 「はっ!」  
 「了解だ」

 妖狐は木に上り高い場所から火を放ち、牙含むグラスウルフはちょこまか動き回り注意を引く。
 その隙に角が渾身の一発をお見舞いした。
 私は状況を確認しつつ指示を出すのに精一杯だよぉ。
 想像以上に防御が硬い、そして体力も多いね。

 
 かれこれ二時間は戦闘をしているが向こうから疲れの色が全く見えないんだよねぇ。
 それにこっちは魔力切れを起こして殆ど火は出せなくてねぇ。
 それにグラスウルフの翻弄も30分もすれば見極められちゃった。
 うん、このままたとじり貧だねぇ。
 やっぱり私達は魔物のランク通りの強さしかないようだねぇ。

 苦笑いをするしかない。
 よし、諦めてゴーレムに頼もう、牙を呼んだ私はゴーレムの元へと救援をする。

 「皆!もう少しだけ粘っておくれよぅ!」

 ゴーレムの元へ、意地でも引きずり出そう。





 おっと、少しだけ騒音が止んだか、どうやら、善戦しているっぽい?
 頑張ってくれ。

 さて、こんなにうるさいと落ち着いて水切りもできないな。
 まぁ、そろそろアイツらが倒すだろう。 
 挑まれた記憶はないけどここの長って言ってた奴等が全員向かったらしいじゃないか。
 これは、もうすぐ決着は着くだろうな。
 俺はそこまで強い自信はないからな。

 ふむ、2時間ほど経ったかな。
 音がうるさくなってきました。
 死んだか。
 それは残念だ、せっかくのご近所さんは一月もしないで別れることとなったな。
 となると、あの魔物はここら一体の木を倒して暴れる、そうすると冒険者が来てしまう。
 そうなった場合、探索でもされたら直ぐに祠が見つかり、その内俺まで討伐されるのでは無かろうか……嫌な予感だ。
 いや、これは、あくまでも推測、きっと見つからない。うん、大丈夫だ……多分。

 すると狼に乗った狐人間が血相抱えてやって来た。
 相当急いだんだろうな。
 で、なんのようだ。

 「はぁ、はぁ、よかった、ここにいてくれて。ここからも聞こえるからある程度はわかっていると思うけどねぇ。協力してほしい」

 やっぱりそう来るよな。
 ここは喋れないゴーレムの必殺技沈黙をするとしよう。

 「君は喋ることは出来ないが、身ぶり手振りで簡単な受け答えは出来る筈だろぅ?」

 ちっ、勘のいい奴だ、始末してやろうか。
 やっぱり思い出したか。

 「手を貸してくれるなら左手を、断るなら右手をあげてほしい」

 仕方ない、その熱意に負けたよ、右手だ。
 どこか俺を過信しているらしいな。
 俺にそんな力があるわけがないだろうに。

 「やはり、断るか。でも、何れは君も狙われるかもしれないよ? そもそも、あの魔物だけじゃない。討伐を依頼された冒険者にも目をつけられる、そうなったら遅かれ早かれ死んでしまうよ」

 なかなか真剣な表情だな。
 それに俺が懸念していたこともしっかりと考えていたか。
 まぁ、でも隠れてしまえば静かな森になって暮らせるだろう。
 時間はかかるかもしれないが、何れはのんびり出来ると思う。
 だから別に俺がいく必要はないな。

 「良いかい? 私が見るところ君は静かにしているのが好きそうだが、今回、森が破壊されればこの辺りはまた慌ただしくなるだろうねぇ。今回の魔物、それを倒す冒険者。そして木がなくなり拓かれたこの土地は人間に有効活用されて終わりだろう。この近くの他の森は歩けば数週間はかかる、そのなかでは道中冒険者に出会い、君は静かに暮らすなんて夢のまた夢になるのさ。だから、この予想が当たっているなら君は森を守るしかないと思うけどねぇ?」

 コイツ、長々と話しやがって。
 だが、言っていることは一理あるな。
 ここで倒さなければ静かにのんびり暮らせない……か。
 予測と推測でしかないが信憑性は高そうだ。
 あと、俺の見ていないところで争って死体が出ているのは気分が良くない。
 勝てるかは知らんが、やれるだけやってやるよ。

 俺は、俺の暮らしのために邪魔をするものは追い払う! そう決めてあの魔物がいるところへ歩き出す。

 「やってくれるのかい!? 助かるよ! 本当にありがとう、恩に着るよぉ!」

 俺を動かそうと必死だったやつがよく言う。
 ただ、仕方ない、ここは乗ってやる。
 こうもうるさいと色々都合が悪そうだからな。


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