そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

遭遇

 冒険者騒ぎの翌日の早朝、俺はずっと川を眺めている。
 何でかって言ったらそれはもうひとえに俺に凭れながら涎を垂らしているこの女冒険者のせいだろうな。
 起こすのも悪いかと思って動かなかった訳じゃない、何度も動いた。
 するとこの度に同じ位置に凭れてくるんだ、そこからは少し恐怖を感じてもう動かないことにした。
 腕は涎でベトベトだ、不快、気持ち的に不快である。

 「ん……んー、はっ! 私はいつの間に寝てたんですか!」  

 すごい勢いで起きてきた女冒険者。
 マジでかコイツ、寝相で俺を追いかけてくるのかよ。
 早く出ていってもらいたいものだ。

 「あ、ゴーレムさん、おはようございます、先日は助けて下さりありがとうございます」

 まだ言うか、コイツは俺が魔物だと言うこと忘れてないか?
 人の形してるけど大きさが違うからな? それに微妙にゴツゴツしてるし、横腹ヒビ入ってるし。
 直すの忘れてたわ、直し方わからねぇけど。
 よし、コイツが目を覚ました所で作業に戻るとしよう。

 「ん? ゴーレムさん、どこに行くんですか? 私も着いていっても良いですか?」

 ダメに決まってるだろ、魔物の巣窟だぞアホめ。
 とりあえず首は横に降っておいて「お前は待機!」っていう意味も込めておいた。

 「お留守番ですか、残念です」

 シュンとしていたがダメなものはダメだ。 
 コイツが見つかるものなら森がパニックだ、下手したら殺されるのでは?
 どっちでも良いんだけど俺が見てないところで死んでほしいものだ。
 あれ、俺が匿ってる状態じゃね? バレたら危ないの俺じゃね?
 そ、そんなことはないはずだ。
 み、みんな優しいし? 人間が1人や2人増えた所で…ねぇ? やっべ、自信なくなってきた。


 「やぁ、君か、おはようぅ、今日で殆ど終わりで後は放置しても問題は無くなるよぉ、だから、君の仕事は木を後2往復分運ぶだけで良いよぉ」

 そう言えばもう終わりか、早いものだな。
 それに良く見ると立派な家建ってるし、なるほど、四つ足の狼でも快適に過ごせそうだ。
 良く考えられているのが素人目でも分かるな。

 「あ、そうそう今日で終わりと言うことで、ガケトカゲの処遇も決めるんだ、当然君も参加だよぉ、後、集合場所は君の祠にした。よろしくねぇ」

 そうか、今日でガケトカゲは死ぬのか。
 素材は活かせよ。
 って、集合場所は祠……だと、ちょっと待て、そこは今はダメだ。

 慌てて拒絶しようとするも狐人間はいってしまった。
 マズイ、実にマズイ。
 バレると言うお決まりのパターンだ、魔物からも人間からも敵対されちゃおちおち静かに暮らせねぇよ。
 あ、そうだ、あの女冒険者が偶々生き残ってて、偶然祠に辿り着いた事にしよう。
 俺は何も知らないゴーレム、知らないふりをすれば万事解決、よしそうしよう。

 ああ、1往復目が終わってしまった。
 祠に着いたときには女冒険者は川にいて遊んでやがった。
 テメェのせいでこっちの心労がフルスロットルじゃバーカ! と言いたいが言えなかったので土の塊を遠くから投げつけるだけで許した。
 死角からの攻撃にコケて水中へとダイブしていたが気にしない。

 「敵襲!?」

 とか言ってたが無視だ無視。
 アイツはかなりアホな奴だと俺は確信した。
 2度目の往復が終わって俺の仕事は終わりを迎えた訳だが、仕事の事はどうでも良いんだ、問題はその後の集まりだ。

 俺の知らないふりがどこまで通じるか、狐人間達がどの様に対応するかが問題だ、女冒険者が死ぬだけなら問題はない、ただ、その飛び火が俺にまで舞い込んで来ないことを祈るしかない。
 一先ず祠へと戻るとするか。


 「おや、ゴーレム君、戻るのかい? なら、移動も面倒だからねぇ、私も行こう」

 そう言って狐人間は俺の肩に乗ってしまった。
 くそ、これでは先に祠での準備が! 
 ……特になかったな問題ない。

 「んだ? ゴーレムさぁん、尻尾さぁん、もう行くだか? オラもついていくべ」

 こちらに気付いたガケトカゲも同行するようだな。
 すると近くにいた狼も同行すると言い出した。

 「我も行こう、道中でガケトカゲ殿と話ができるからな」

 コイツら仲良くなりすぎなんだよ。
 これから処遇の話するんだよわかってる? どうせお前は殺すのは反対だ! とか抜かすんだろ? 俺もだよ。
 するとどうだろう、道端に既に酒を飲んで出来上がってるおっさんがいた。

 「角、君はもう飲んでるのかい? やれやれ、仕方ないやつだよぉ」 
 「固いこと言うんじゃねえよ、仕事は終わったろーが!」
 「このあと話し合いだよ? ちゃんと話し合いが出来なかったら酒の倉庫はわたしが管理するからねぇ」
 「なんだと! 話し合いが終わるまでは我慢してやる……やっぱりこの1杯は飲んでからだな、勿体ない」

 我慢する気0だな。
 まぁ、おっさんは正直通常だろうと飲んでようと頭が悪いから良いだろう。

 「ゴーレム、なんか変なこと考えちゃいねぇか?」

 無視だ、コイツは頭が悪いが勘が良い。
 と言うか表情のないゴーレムの考えがわかんのかよ……おまけに喋れねぇんだぞ。
 俺専属の通訳になってもらいたい。
 さて、いつの間にか話し合うメンバーは揃っているわけだが、ねぇ、ここで良くない? もう、ここで話し合いしない? いや、ほらさぁ来ると思わなかったからさ、部屋の掃除とかしてないんだよね。

 「ゴーレム君、止まってどうしたんだい? 早くいかないと日が暮れる、急ごうかぁ」

 ちっ、確かに、ずっと止まっていたら余計に怪しまれるか、知らないふり作戦を本格的に実装するしかないようだな。

 騒がしく(俺以外が)歩いて、目と鼻の先に祠が見えた。
 そして祠の前にはやつがいた。
 未だにどっかへ行ってくれない涎を垂らしす寝相の悪い女冒険者だ。

 「あ! ゴーレムさん! お帰りなさーい! 待ってましたよー!」

 バッカお前!
 なに堂々と名前だしてんだよ! 何なついてんだよ!
 みろ、他のやつらの顔、そして皆魔物なんだけど!少しは危機感持てや!
 ほら、他の魔物は目が点になってんぞ。

 「ね、ねぇ、ゴーレム君、なんで冒険者がこんなところにいるの!?」
 「おいおい! 全員ぶっ殺したんじゃねぇのか!?」
 「ふむ、あれが人間、噂には聞いたが実物を見るのは初めてだな」
 「おぉ、人間さんだぁ、仲良くなれっかなぁ」

 はて、何のことやら、もしかして取り逃がした奴かも知れないなぁ。
 俺はあんな冒険者のことなんて知らないな。
 後半2匹、危機感持て、まだ仲良くしようとするな。

 「ん? おぉ! ゴーレムさんのお友達ですか? 紹介してください!」

 目を輝かせながらこちらへ駆け寄ってきやがった女冒険者、お前冒険者辞めちまえ!

 「ゴ、ゴーレム君!? 一体なんで祠に人間が!? それにこっちに来るよぉ!」
 「尻尾! とりあえず警戒はしろ、俺たちを油断させる気かもしれん!」
 「我からしてみればあの眼の輝きは違うものだと思うが」
 「好い人そうだべ」

 さて、祠に人間がいる話か?
 わかんないな、今日初めてみましたよ。
 ガケトカゲ、のんびりしすぎだ。

 「ん、何をお話されているんですか? 私も混ぜて下さい!」
 「に、人間! この森に何のようだいぃ!? 返答によっては燃やす!」

 警戒を限界まで引き上げた狐人間とおっさん。
 一方のんびり観察している狼とガケトカゲ。
 俺は知らないふりだ。

 「ん? こちらの狐さんは私の言葉が分かるんですか? ゴーレムさんと同じですね!」
 「ゴーレム君と? ちょっと! ゴーレム君!? これ説明してもらえるかなぁ!?」

 え? 説明? 無理だよ? 
 だって俺、喋れないし、それに何その子知らない。

 「ちょっと! なんで空見上げてるのさ! 話を聞いてよぉ!」
 「それよりお話ししましょうよ!」


 そうして慌ただしく魔物と人間の遭遇が始まった。
 なお、落ち着いたのは、もう少し先になる。 
 

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