そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

少しの日常

 人の住むところ……ねぇ。
 それはあれか、俺に森を出ろと、そう言いたいのか。

 「……何のためにだ」 
 「え? せっかく人っぽくなったんですから気になりません? 人間の住む国や街って」

 正直どうでも良いなぁ。
 俺は静かに暮らせればそれで良いし、行きたきゃ勝手に行けよ、そして戻るな。

 しかし、国か、そう言えば俺のいるこの森はどこの国にあるんだ?
 ……うん、情報は大事だ、考えておくとしよう。

 「なぁ、俺等のいるこの森はどこの国なんだ?」
 「へ? あぁ、そこからですか、ここはプラウド王国の端、辺境ファンの森の中ですよ。」

 プラウド王国か、どっかで聞いたような気がするが、ま、良いか。
 辺境……つまりかなり端っこと言う認識で良いのだろう。

 「辺境とは言え、そこそこ賑わってますよ? どうですか? 行きますか? 行きましょうよ」
 「ぐいぐい来るなお前は」
 「良いじゃないですか、お喋り出来るようになったんですよ? もっとお話ししましょうよ」
 「……はぁ、静かにしてほしいんだがな」
 「じゃあ、特訓しましょうよ! 特訓! もともとそういうつもりでこの森に来たんですから!」

 その夜は強引に特訓に付き合わされた俺、因みに30回勝負して俺は無敗だった。
 スキルは一切使わない、石の剣だけを使ってだが。

 女冒険者をボコボコにして、なかなか濃い1日を俺は終えた。
 と言っても全く寝る必要がないので夜は結構暇である。
 そして、この体を手にした俺は最高の実験をしようと思う。
 それは、水切りだ! そう、今の俺はデカイゴツゴツした手を持ったゴーレムではない、限りなく人間に近いそれなのだ、良い結果が期待できるに決まっている。


 *


 ……ばかな、記録が落ちている……だと!?
 いやいやいや気のせいだ、そう、体に慣れていないからだうん、絶対そうに決まっている。

 よ、よし、もう一回。

 ──ヒュン! パッ、パッ、ピチャン。

 2回……だと……そんなバカな、まさか、不要な部分で水切りの才能すらも捨てたと言うのか!
 はっはっは、バカめ、才能がないなら作れば良い、努力に勝る天才なし! どこの言葉が知らんが良い響きだ!
 良いだろう! 俺の水切り捌き、見せてくれるわ!





 ──チュンチュンチュン

 久しぶりに聞いたぜ、雀見たいな鳥の声をな。
 俺は今、川の底に沈んでいる。
 女冒険者の腰の高さしかないし、そもそも息をする必要がないので、平気ていつまでもいられる訳だ。
 それに石だし、普通に沈んで浮かばない。

 あと水切りなんてもう絶対やらない。
 なんであんなもんに嵌まっていたんだかね、別にあんなのやらなくても生きていけるし。

 さて、そろそろ上がるとするか。
 俺は勢いよく上に跳ね上がる。

 「うひゃあ!」

 どうやら女冒険者も起きてきて顔を洗うところだった様だな。

 「……そんな所で何をしている」
 「こっちの台詞ですよ! なんで川底になんているんですか!」
 「気分だ」

 森の片付けも終わっているし、今は比較的に平和な筈だ、やることが無いな、さてどうするか。
 そう言えば、ここの森のやつらは基本的に何をしているのやら。
 その辺りを聞くのも良いかもしれないな。 
 もしくは祠を調べてみるか? 俺は入れるか分からないが行ってみるとしよう。

 ふむ、改めて見るとなかなかだな、早速入るとしよう。

 これは、遺跡だな、女冒険者の言う通りだな、1階には何もない、と言うか普通に入れた、俺魔物なのにな。

 さて、問題の地下室だ、そこそこ長い階段を下りた先には長方形の箱の様なものがある。

 「これが棺桶の様なものか」
 「そうです、不思議ですよね」

 !? 一体いつから! ……あぁ、『隠密』のスキルか、下らないことで使うなよ、そのまま攻撃されてたら死んでるぞ。

 さてこの棺桶、石で出来ております。
 つまりどうするかと言うとだな、『物質操作』でこじ開けようかなと思っている。
 死者の冒涜? ははは、知らん。

 「よし、開けるぞ」
 「そんな罰当たりな!」

 とかなんとか言ってるけど興味津々じゃねぇか、何が罰当たりだ。
 よし、行けそうだな、『物質操作』!

 上の蓋のような場所だけを取り外し可能にする。
 うん、できたな。
 蓋をずらして中身を拝見だ。

 ……なんだコレ。
 まぁ、人は人だ、普通に人間だ。
 だが、全然腐ってもいない。

 「どうなっている」
 「腐敗もしていないなんておかしいですよね。それに、黒髪なんてこの世界じゃ珍しいですし」

 その多分死んでる人間は不思議な雰囲気だ。
 黒髪か……へぇ、この世界では珍しいのか。
 服装も狐人間が着けていた様なものよりも上質と言う感じがする。

 「好奇心で見てみたが、特にわかることもないな」
 「そうですね、戻しておきましょうか」

 棺に蓋をして取り敢えず『物質操作』で固めた。
 安らかに眠るが良い。

 「所で、あの、扉の様なものはゴーレムさんのスキルで開きますか?」
 「ん? やってみよう……ダメだな、びくともしない」
 「何か分かると思ったんですけどねー」

 俺はそのまま祠を立ち去る。
 不思議な場所だな。 なにも分からないが。



 外へと出ると狐人間が立っていた。

 「おやぁ? ゴーレム君は祠に入れたのかい?」
 「何故かな、だが、分かることは何も無かったぞ」
 「それは、残念だねぇ」
 「それで、狐人間、何の用だ」
 「そうそう、忘れていたよぉ」

 話をしている途中に女冒険者も祠から出てきて、狐人間の話に耳を傾ける。

 「ゴーレム君とエマ君に、ファンまで行って貰いたいんだ」
 「良いんですか?」
 「何故俺まで必要なんだ?」
 「ゴーレム君は強いけど世間を知らないからねぇ、それと、エマ君1人にしてたら絶対死ぬよ? というのは建前、本音としては、情報収集だね」

 指を1本立てて話を続ける狐人間。
 正直面倒だ、確かに女冒険者1人だと死ぬかもしれないと言うのは分かる。

 「エマ君が森に来てくれたお陰で、より頻繁に人里へと行くことが出来る。そうなれば情報も新しくなるし、何より人の物が手に入り易くなる訳だよ。私たちはお金を持っていないからねぇ、冒険者である君なら多少は稼いで物を帰るだろう?」
 「まぁ、そうですけど、そうとなるとお金を稼ぐために依頼を受けるので、直ぐには帰って来れませんよ?」
 「大丈夫、ここは滅多なことじゃ人は来ないからねぇ、今は他にもガケトカゲ君もいるから戦力的には問題ないよぉ」
 「なるほど、分かりました、では準備が出来次第向かいますね!」
 「頼むよぉ、あと、角のお酒を忘れないでねぇ」

 そう言うと立ち去っていった狐人間。
 俺の意見は無視だな。

 「ふふふ、やりましたね! ゴーレムさん! これで念願の街に行けますよ!」
 「願っていたのはお前だろう」
 「そう言わずに、ささ! 準備しましょう」
 「はぁ、所で、距離的にはどれくらいかかる予定だ?」
 「そうですね、私が来たときは2日程ですね」
 「面倒だな、仕方ない、今回は付き合ってやる。準備するぞ、俺は特に無いけど」

 俺は、仕方なく辺境、ファンへと向かう準備を整える。
 街……か、気にならないでもない。

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