そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

リベンジ・尻尾!2

 歓迎もある程度受けた訳だし、そろそろ此方から出る。

 俺は久しぶりに使ってみよう。
 『付与』[回転]を。
 取り敢えず火を消化するために使うことにする。

 俺の体は勢い良く回りだし、俺は全く景色がブレブレで何も分からない。

 ……攻撃に使えないな、俺が見えなきゃ意味がない。

 「うああああああ!」
 「し、尻尾様ぁ! お助けをぉ!」
 「むりむり! これは無理!」
 「ラ、ランドさん! ちょ、止め!」

 ダメだ、風の音で何も聞こえないな、以前にも有ったな、そろそろ火が消えただろうし、止めよう、戦いはこれからだ。

 回転を終えると俺の周りにはまるで台風でも通ったかのように俺を中心とした円形に周りが荒れていた。

 俺が回転中に風の魔法の様なものを使ったのだろうか……そう言えば魔法をまだ見たことがない気がするな。

 辺りを見回すと他の妖狐達は頭から茂みに突っ込んだり、木の上にぶら下がっていたりしている。

 こっちが燃えている間に何遊んでるんだか、緊張感をもってほしい物だ。

 エマは髪がボサボサになっていて、面白い髪型になっている。
 狐人間も同様に着ている着物がぐちゃぐちゃで着直している。

 「いやぁ、酷いや、最初見たときは遠かったから無事だったものの、成長した私でも危ういねぇ」

 何言ってるのやら、まだ戦いは終わっていない、始めの合図は無かったものの、この世は弱肉強食、待つつもりはない。

 服を叩いている狐人間に向けて走り、すぐさま拳を振り抜く。

 「ん?」

 拳は直撃するはずだった。
 だが何故か狐人間をすり抜けた、すると俺の背中に衝撃が入り、前のめり状態の俺はバランスを崩す。
 後ろを振り向くと狐人間がいた。

 「ははは、引っ掛かったねぇ?」

 立て直した俺は今度は蹴り上げるが、これも捉えるには至らず片足立ちである俺の地面についている足の膝間接を押され凄い体勢で転んだ。

 転んだ俺の目線の先には狐人間が立っており、俺は膝かっくんをされたのだど理解。

 「ははは、ここまで引っ掛かるのは面白いねぇ」

 狐人間は俺を見て笑っている。

 ……ちょっとムカついてきたな。
 とは言うものの、この不思議な現象はコイツの幻覚だと感じる。

 さて、攻略方法が全く分からないな、恐らく既に目の前のコイツは幻覚となっているだろうし、いや、もしかすると俺が別の場所を探せば「こっちが本物でした~、折角のチャンスなのに~残念!」とか言ってきそうだな。

 ……ものは試しだ、やってみよう。

 俺は目の前の狐人間に向けて寝た状態で拳を放つ。
 だが、それすらも失敗し、この狐人間は幻覚だったと言うわけで先程から幻覚の反対側から現れるのでそちらにも蹴りを入れておく。

 まぁ無駄に終わってしまい寝たまんまで片手片足を伸ばしたおかしなやつになっただけだった。
 めちゃめちゃ恥ずかしい。

 「面白いねぇ、でも残念! 君の考えも私はちゃんと考えた上で対策させてもらったよぉ」

 狐人間は木の上で寛いでいた。
 ……ここで使ってみようか、丁度射程内にいるので『物質操作』[木]を発動。

 枝を動かし拘束してみる。
 今度は本体で俺にそんな能力が有ることを知らなかった様だ、油断をついて拘束に成功した。

 「えぇ!? なにさこれ! そんなこともできるのかい?」
 「残念だったな」

 既に回り込んでいた俺はそのまま拳を振り抜き狐人間は吹き飛んだ。
 久しぶりの殴る感触でスッキリした。

 まぁ勝負は終わってないので追撃させてもらうけどな。

 コケにされた分はちゃんと返そうじゃないか。

 近づいた俺は頬を擦っている狐人間を確かめる上で『物質操作』[土]で今度は拘束して、本体か確かめる。

 うん、本体だな。

 「ちょっとちょっと! 無抵抗な魔物を殴るなんて虐待だよぉ!」

 こいつ清々しいほど保身的だな。

 確かに一理あるかもしれない、無抵抗な奴を痛め付けるのもな……考えものかもしれない。

 まぁこれは決闘。後で話せば分かってくれるさ、今は殴のはやめて、代わりに大好評な[回転]をさせて上げよう。

 「え、その動きって回すつもり? ははは、冗談だよねぇ? いやぁ、ゴーレム君も冗談が上手だね」

 冷や汗をかいてるところ済まない、本気である。

 「ぎゃああああああああ! 止めてぇ! エマくん! 助けてぇ!」
 「これは勝負なので私にはどうにも……」

 目がキラキラしてるぞエマ。
 楽しそうじゃないか逆に。
 狐人間、済まないな、たっぷり2時間コースだ。

 2時間後、やっと回転を止めたら狐人間は倒れ込み、盛大に吐いた。
 これは見せられないな。

 まだ気分が悪いのか、ふらふらしながらも立ち上がる狐人間に止めの1発をお見舞いしたら怒られた。

 「何で殴るのさ!」
 「忘れたか、勝負は終わっていないぞ」
 「おおお、落ち着こうか、よし分かった、私の敗けでいいから。マジで勘弁してほしいよねぇ」

 こうして俺は勝利を手にした。

 暫くしてようやく回復した狐人間と向かい合って座って話している。
 ちなみにエマも一緒だ。

 「いやぁ、勝てると思ったんだけどねぇ、予想外に君の能力を見くびっていたようだ」
 「そうだな、こっちも外傷はなかったがめちゃめちゃ腹が立ったぞ」
 「ダメージ無かったのかい……ショックだよぉ」
 「まぁ、ランドさんってゴーレムですし、ゴーレムって物理と魔法耐性有りますからね……でも、幻覚などの精神系は弱いんですね」
 「これが弱点かも知れないな」

 どうやら外的要因には強いがメンタル的にはまだ手を出せる余地があるらしい。
 自分で完全無欠だと思っていないし、今回で弱点が知れたことは収穫だろう。

 「それよりも、ランドって言うのはゴーレム君の事かい?」
 「そうですよ、ギルドに登録する際、必要でしたので、ランドさんが自分でつけたんです」
 「これからはランドと呼べ狐人間」
 「君さ、前々から思っていたんだけど狐人間って言い方止めないかな?」
 「あ、角さんの時もそうでしたね、何で名前呼ばないんですか?」
 「答えは単純だ、覚えてないからな」
 「はぁ、ちゃんと呼んで上げてくださいよ、尻尾さんです」

 狐人間……尻尾と言う名前か、俺と互角だったのだから呼ぶことにしよう、仕方ない。

 「わかった、改めてよろしく頼む、尻尾」
 「うん、よろしくねぇ、ランド君」

 なんとなく握手をしたが、なぜしたんだろうか。
 それにしても角と言い尻尾と言いかなり強くなっているな。

 「ふふん、これでも鍛えたし、エマ君のお陰でスキルの理解もしたからねぇ、君ならともかくその辺の魔物には負けないよぉ」
 「頼もしい限りだよ」

 そのあと尻尾と他愛ないをして、俺らは祠へと戻った。
 これ、狼とかも挑んで来ないだろうか……そうなると面倒だな。

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