そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

隣人?

 角、尻尾、牙、カウントゴリラ、ガケトカゲとの勝負から1ヶ月近く経っていた。

 その間になし崩し的にカウントゴリラも森の住人になり、角の領地である東側を拠点としたようだ。
 こっちに来なくて助かった、既に魔物よりも面倒な魔物みたいな人間がいるんだ、これ以上増やされて堪るか。

 「ランドさん、失礼な事考えてます?」
 「なんの事だ?」

 危ない危ない、これ以上考えるのは止めておこう、寝首をかかれるかもしれないからな、寝ないけど。
 暗殺者を敵に回すと大変なことになる。
 攻撃は通るかは分からないが、こっちが見ていない時に刺され続けるのも面白くない。
 のんびりを邪魔されるのは御免被るのだ。

 1ヶ月前の決闘が始まったせいで忘れていたが俺達が人里である辺境ファンに行って得た(エマが)情報を尻尾達と集まり話した。
 話すと行ってもそれほど重要ではなく、この森に冒険者が来ないかと言う情報やこちらの魔物のランク等、改めて確認をする程度の物だ。

 因みにエマが買ってきた酒は角に渡したところその場で飲まれ、また買ってきて欲しいとせがまれた。
 そして辺境の事ばかりの情報だと心許ないと言うことなのでエマはこの国についても改めて調べたと言う。

 そう言えば俺は国とか言うことを知らなかったな、目覚めたら森だったし人里もファンが初めてだろう。
 国についてエマから聞いたとき尻尾達に聞いたところ魔物はそんな事を気にする奴はいないとの事だ、一人で聞くのも面倒だったので、尻尾のみを巻き込んで国について聞いた。
 情報は大事だからな、取り敢えず集めて後々必要不必要で分ければいい、尻尾は仮にもこの森の頭脳だ、そんなやつが勉強を疎かにしてはいけない。

 どうやら辺境ファンと他にも沢山ある街、都市等で1つの国として存在しているらしい。
 そんな国が沢山あり、今俺がいる国の名前はプラウド王国、何でも世界で随一の力を今持っているらしい。
 他にも人間以外が取り仕切っている国もあるらしい、獣人が王の国、魔族と言う種族の国、王は魔王とか呼ばれており、人間の支配する国にちょっかいを出したりしているそうだ。

 魔族と魔物は別らしく、魔族は主に人の形をしているらしく、角が特徴的らしい。それなら角であるオーガは魔族じゃないのかと思ったが違うらしい。
 何が違うのかさっぱり分からないが尻尾も知らんらしかった。

 なら尻尾は獣人じゃないのかと思ったのだが魔物の図鑑にのってる時点で魔物扱いだとか、それに尻尾は達妖狐は獣の姿にもなれる、だから魔物と言う扱いらしい。
 本人達は全く気にしていないので、それなら良いだろう。

 話は戻ってプラウド王国の話だ、何でも人間国の中でもずば抜けた国力を持ったのはエマ曰く、勇者と呼ばれるこの世界の人間ではない者達によるところらしい。

 別の世界の人間だなんて話はにわかに信じがたいが事実らしく、その話は尻尾も興味が涌いていた。

 何でも、この世界の冒険者等よりも、スキル等の能力が何倍もあり、成長する速度もおかしいらしい。
 それで何故この世界に来たのかと言うと、魔王を討伐するために喚ばれたのだとか。
 かなり傍迷惑な話だ、俺は突然呼び出されたらやる気は起きないだろうな、とんだ聖人君子達だ、絶対会いたくない。

 誰がそんな化け物達で魔物でありながら会いたいと言うのだろうか、出会ったら即死だ。
 この森から出る予定もないので、遭遇することは無いだろうけどな。

 一先ず面白い話を聞き終えた所で、その場は解散……もとい、尻尾を解放した。
 向こうは中々身になる話だったと逆にお礼を言われた程だ、俺は無理矢理連れてきただけだがな。

 尻尾が去ったあと、何かと退屈だったので、代わり映えない森を歩こうかと思いついた。
 西側は最初の頃は端まで行ったが、少ししか見ていないのだ、良い機械だ、探索しよう。

 思い立ったが吉日なんて言葉が思い浮かんだので、取り敢えず実行するために立ち上がり、西側へ向けて歩く。

 「私も行きますよー」

 エマが気付いたのか着いてくるらしい、必要無いと思うんだけどな。

 「だってランドさんここにいると一切動かないんですもん、石か! 石でしたね、兎に角! じっとしてるのは飽きました、たまには体を動かさなきゃですよ!」

 失礼な、そりゃじっとしているが、スキルの練習も欠かすことなくしているつもりだ。
 なにもしていない訳ではない。

 「どうせ着いてくるんだから何も言わない」
 「ふふふ、何処までも着いて行きますよ」
 「それは止めろ」

 四六時中引っ付かれると疲れるからな、程々にしてほしい。

 エマは荷物を取りに祠へと入っていく、荷物は置いている癖に寝るときは外、全然意味が分からない。
 待つことなく先に行くことにしようか。

 「ちょっと! 待ってくれても良いじゃないですか!」

 流石は冒険者、準備が早いな、俺が数分歩いただけで追い付かれてしまった。

 「これは、あれだ、如何に準備を早く出来るかを試した」
 「それ、待たない理由になりますかね?」

 さて、無視しよう。
 端まではそこそこ長いのだ、今から騒いでいたのでは体力的に厳しいからな。
 俺は疲れないがエマは疲れるのだ、そう、これはエマを配慮した結果であり、決して逃げたわけではない。断じて。

 それから狼の集落を通過しようとすれば、

 「挨拶くらいしましょうよ!」

 と言われ嫌々牙とガケトカゲに声をかけて直ぐに探索を開始する。
 全く、魔物の言葉が分からない癖に何故挨拶をしようとしてるのやら。
 言っておくがお前がしゃべっている間に牙とガケトカゲは困惑していたからな、こっちがわざわざ説明してやったんだからな。

 集落から離れて暫く経っただろうか、俺達は今立ち止まっている。
 別に大きな壁や穴等があるわけじゃないんだ、ただ目の前にゴブリンがいるだけ。

 「あの、ランドさん、この森ってゴブリン居ましたっけ?」
 「居るんじゃないのか? 俺は大部前に見たことはあるぞ」

 懐かしい、あれは最初のお隣さんだったのに突如謎の死を迎えたんだ、この森特有の挨拶で茂みに消えその後死体で見つかった。
 その後犯人は見かけることは無かった、ちくしょう、許さねぇからな。

 「おい! お前! 話を聞いているのか!」

 おっと、考え事をしていたら何か話していた様だ。

 「なんだ?」
 「だから、この森にいたゴブリンを知らなかったかと聞いている!」
 「あぁ、それならかなり前に1匹見かけたぞ、生憎亡くなっていた……折角良い仲になれると思ったのだがな……」
 「そ、そんな……誰が殺ったんだ!」
 「それは知らん」
 「ちっ、やっぱりこの森の奴らは糞だな! お前もグルか!」

 何故か勘違いされているようだ、ゴブリンとは確か知能は低かったっけな、多分そのせいだ。

 案の定襲いかかってきたので蹴り飛ばして、一撃で沈めてやった。

 「いきなり蹴るなんて酷いですね」
 「正当防衛だ、それよりも行くぞ」

 こうして探索を続ける事にした。

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